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(私、本当に先輩の恋人になったんだ......)

 高鳴る鼓動により余計意識してしまう悪循環に陥りながらも、エリーゼはライの腕の中で大人しくしている。

 密室で二人きりになるのは今まで何度もあったが、こんなにも密着して過ごすのは初めてだ。

「意識してる?」

 耳元から聞こえてくるライの声にエリーゼは今にも蒸発しそうだ。

「は、はい......」

 忘れていたがライも男だ。エリーゼは抱きしめられたことによってそのことを思い出した。

「キス、してもいい?」

「はい?!?!」

「恋人なんだからいいよね?」

「付き合って一日も経たずにキスって早くないですか......?」

「人によるね」

 ライの顔が近づいたことによってエリーゼの肩が上がった。

 そのまま徐々に距離が縮まる。


(このままだと先輩とキス......!?)

 恋人とはいえ仮だ。それにエリーゼはまだファーストキスを済ませていない。

「先輩! あくまで仮なので......!」

 貞操観念の問題もあるし、何よりエリーゼの頭にはアロンの顔を浮かんだ。

「今、他の男のこと考えたでしょ?」

「?!」

 考えていたことを当てられエリーゼは固まった。

 そして、固まっているうちにキスされた。

「せせせせんぱい?!」

「仮とはいえ恋人なんだから、一緒にいるときに他の男のこと考えちゃ駄目だよ」

「はい!」

 確かにその通りだな。とエリーゼは素直に思った。

 が、流石に二度目のキスをされそうなことには抵抗をする。

「先輩、流石にキスはどうかと」

「恋愛観合わせる練習だよ。 頑張れ」

 逃がさないと言わんばかりに腕の力を強められ、身動きが取れなくなったエリーゼにライは何度も何度もキスをした。

「良い子だね、エリーゼさん」

「あ、ありがとうございます......」

 キスを交わすうちにエリーゼの頭は霧がかかったようにはっきりしなくなっていく。

(キスってこんなぼうってするんだ......)

 次第に目も開けていられなくなり、エリーゼの瞼は本人の意思とは裏腹に閉じていった。


 目が覚めたエリーゼは見知らぬ豪華な部屋の中にいた。

「ここ......」

 起き上がろうとしたとき、手足に違和感を感じた。

 手枷と足枷が付いていた。

「何これ、え?」

 手を動かすと手枷についている鎖がじゃらじゃらと音を立てた。

 そして、外から足音が聞こえてくる。

(何何何、怖い)

 エリーゼが意識がなくなる前に一緒にいたのはライだ。

 信じたくないが、もしかしたらエリーゼを拘束したのはライかもしれない。

「おはよう」

 ドアを開け入ってきたのはライだった。

「先輩......これ何の遊びですか?」

「遊び? 遊びじゃないよ、俺は本気だよ」

  ゆっくりとライが座り込んでいるエリーゼに向かってくる。

「冗談でも怖いんで、手足のやつ外して欲しいんですけど」

「良い子にしてたらちゃんと外してあげる」

「私、ものすごく良い子ですよね? 先輩?」

 ライはエリーゼに視線を合わせて膝をついた。

「この部屋から逃げないって約束できる?」

「は、はい、約束します......」

(隙を見て逃げるんで嘘ですけど)

「嘘はだめだよ」

 ライはエリーゼをベッドに押し倒した。首を圧迫されてエリーゼは呼吸が上手くできない。

「ごめんね。 本当はもっと時間をかけるつもりだったんだけど、ホテルにのこのことついて着たから心配になって予定より早く監禁することにしたんだ」

(今、改装中で部屋使えないからホテルに暮らしてるって、変なことしないって言ったじゃん......!)

 信頼している先輩とはいえ、ホテルに着いていったのは自分でも落ち度があると思ったが、まさかこんな目になるとは誰も予想できないだろう。

「本当君は警戒心薄いよね。 でも大丈夫、これからはずっと俺が守るから」

「俺のこと好き? 好き?」

「あがっ......!」

「好き?」

 首を絞める力がどんどん強くなっている。

「好き? 好き? 好き?」

「す、すき、です」

「嘘つき」


 意識が復活しては、また意識不明にさせられる。

 首絞めに飽きたのか、水やら電気やら様々な方法で責め苦は続いた。

 次第に四肢が無くなり、枷の必要性はなくなった。服が邪魔なので常に裸でいるようになった。生きるためにライに媚びるのが上手くなった。

 自身の感情などもうどうでもよくなった。


「俺のこと好き?」

「好きです」

 幾度の拷問と呼んでも差し支えない行為により、心身ともにボロボロになったエリーゼの瞳は絶望に染まっていた。

「本当に?」

「本当です。 本当に好きなんです」

「でも、逃がしてあげるって言ったら逃げるでしょ」

「逃げません。 先輩のことが好きだから絶対ずっと一緒にいる」

 もうエリーゼの言葉には感情なんて微塵も残っていなかった。

 ただ生きたい。生きて家に帰りたい。とにかく外に出たい。

「それがエリーゼさんの答えなんだね」

「はい」

「よかった。 実は諦めようと思っていたんだ。 これ以上エリーゼさんに酷いことはしたくないから。 でも、エリーゼさんがそれを望むなら期待に応えられるように頑張るよ」

 『諦めようと思っていた』その言葉は聞き飽きた。

 あたかもエリーゼ自身がライと一緒にいることを望んでいるかのような言い方だ。

(......諦めよう、全部。 そうしよう、もう何も望まない)

「私、今すごく幸せです」

 エリーゼの目尻には涙が溢れていた。

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