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目標と現実

作者: あーさー

さて。

これからお話しする事は、ただの一般人が仕事の合間にちょっとした趣味で書いているという事に理解を置いて頂きたい。


皆さんは子どもの頃の夢を、大人になった今覚えているだろうか?

プロスポーツ選手?学校の先生?コックさん?大きな会社の社長?はたまたコンビニやスーパーの店長?

上げ始めたらキリがないだろう。

だが今その夢が叶っている人はどれくらいいるのだろうか。

自信を持って『今自分はかつて子どもの頃夢に見ていた仕事に就けている!』と言える人は多くないだろう。

多くの挫折を経験し、葛藤があり、妥協して今の仕事をしている人が大半なのではないだろうか。

僕も多くの挫折を繰り返し、夢に見ていた仕事には就いていない。

今からする話は自分の実体験で、嘘偽りのない本当の話しである。


親に勧められ、始めたサッカー、小学生の頃はプロサッカー選手になるのが夢だった。

だが現実はそう甘くなかった。中学生になり、自分の限界を気付かされた。限界なんて自分で決める事ではない、と思う人もいるだろう。まだまだ諦めるのは早いだろう、と思う人もいるだろう。だが、気付かされてしまったのだ。周りの取り巻く環境と自分の甘さによって。

それが初めての挫折だ。当時はその事を挫折だと思わなかったが、今に思えば挫折だろう。

そんな初めての挫折を味わった中学時代から高校生になった。

高校一年生の頃は特に将来の夢なんて決まってなく、アルバイトと学校の往復を繰り返していた。

あっという間に一年が過ぎ、二年生になった秋頃。

当時の担任と母親を交えた三者面談が行われた。

その時はまだ全く先の事なんか見えていなかったが、夢と言えるほどのものではなかったが、就きたい職が二つほど候補があった。それは、『教師』と『料理人』だ。

その話を担任にはもちろん、母親にも話していなかったので、その時に話したら当然驚かれた。まぁ無理もない。

料理人はアルバイトをしていたから、といった理由があったからこそ出てきた候補だが、教師なんて言葉は一度も言ったことがなかった。しかも教科は国語と言ったから尚更だ。

だが、その時担任は、どちらも賛成してくれた。逆に僕が驚かされてしまった。

当時の言われた事は今でも鮮明に覚えている。

『お前は文章を書く能力に長けている。そこに説明をできる力が備われば教師にもなれる』と。

そんな事を言われたのは初めてだった。素直に嬉しかった。その後、面談が終わり、学校から親と帰っている途中、やはり将来の事についての話しになった。

『本当に自分のやりたい事をやりなさい。教師でも料理人でも。ただ一つだけ言いたいのは、やるなら中途半端な気持ちではやらない事。』そう言ってくれた。

今思い出してみると、親から、この仕事をしてほしい、この仕事以外は許さない、と言ったドラマやアニメなどで見聞きする厳しい言葉はなかった。むしろ好きにしていいよ、と言った感じで割と緩い方だった。

その日の内に、父親にも面談で話した事を大まかだが話しをした。返ってくる答えは母親と一緒だった。

正直迷っていた。

教師と料理人。

天秤にかけた時、将来イメージできるのはどちらだろうか。

四年生の大学に進学し、教員免許を取得し、教壇に立っている姿。

二年生(場所によっては一年生もある)の料理の専門学校に進学し、料理人をしている姿。

より鮮明にイメージができたのは料理人の方だった。その事を両親に話しをした。

『今せっかく飲食店でアルバイトをしていて、やるからにはもっと深いところまで追求していきたい。』と伝えた。紛れも無い本心だった。

両親は応援してくれた、全力で背中を押してくれた。

その後、三年に進級した春頃に三者面談が行われた。その時にハッキリと自分の将来を担任に伝えた。この時に自分の将来の夢がしっかりと定まった。担任は、少し残念そうだったが、それでも背中を押してくれた。

そして、秋頃。専門学校の面接。受け答えなどの練習もしっかり行い、練習の成果も出す事ができた。

ちょうど同じ時期に卒業旅行があった。まぁ最後の思い出作りだ。メインはそこではなく、その卒業旅行の前日。無事合格通知が家のポストに届いていた。

卒業旅行当日、担任もいたので、そのことを報告した。『おめでとう』と言い、握手を交わした。高校卒業後の進路が決まった事を一緒に喜んでくれた。冗談でもなんでもなく、本当にいい担任だった。

そしてあっという間に高校の三年間は終わった。卒業式の日は全く涙は出なかった。むしろ早く四月になって欲しいと願うばかりだった。

涙が出なかったのは、高校二年生の頃からイジメを受けていたからってのもあるが。またそれは別のお話し。

そして、待ちに待った専門学校の入学式。

僕が通った学校は一年生の学校で、卒業したら即社会人といった過密日程の学校だった。

しかし、経験を得るなら少しでも早い方がいいと思い、その学校を選んだ。

専門学校は大きく分けてカリキュラムが二つに分かれていた。今までと変わらず、各クラスの教室に、担当の講師が来て授業が行われる座学、そして班毎に分かれ、実際に料理をする実習。

入学したての頃は、アルバイトの経験もあり、優越感に浸れた。周りには、フライパンどころか、包丁も握った事のない人たちばかりだったからだ。

だが、それは優越感でも何でもなく、ただ天狗になっていただけだった。

ある日の和食の実習の時だった。入学前までは、和食のお店で働きたいと思っていたのだが、その日の実習ですぐさまその考えを諦めた。まともに大根の皮が剥けなかったのだ。小さな挫折だった。だが、やはり初めて大きな挫折を味わった中学の頃とは違い、『人には向き不向きがある』と言い聞かせ、できない事はできないと自分に言い聞かせてしまったのだった。本当に良くない。

それからと言うもの、和食の実習の時は少しもやる気を見せず、適当にその時間を過ごしていた。今思えば、どうしてそんな無駄な時間を過ごしているのだ、と激怒してやりたい。だが、当時はそんな事は思わず、自分の得意な分野だけ、積極的に実習を行なっていた。同じ班の奴からは苦笑いされていた。だが、実際入学したての頃は頭一つ抜けていたって程ではないが、実力差はあったのだ。それが天狗になってしまった原因でもあるだろう。

そんな状況が続き、夏休みに入った。夏休み中には、約二週間ほど、実際の飲食店に行き、現場を体験させてもらえる機会があった。どの専門学校に通っていた人たちなら分かると思うが、いわゆる『現場実習』というやつだ。

右も左も分からず、即戦力どころか、延々と皿洗いだけをしていた記憶しかない。だが、それは当然だ。ハタチにもなってない、しかも学生がいきなり一つのお店の一つのポジションを任される訳もない。しかも八月の繁忙期にだ。だが、それが物凄く悔しかった。自分が居ても居なくても変わらない、むしろいない方が助かる、と思われていただろう。厳しいと思うかもしれないが、これが現実だ。それを受け入れられなかったら、自分自身一生そこで立ち止まって、永遠に天狗のままだっただろう。いい経験ができたと思うしかなかった。

そんな八月も終わり、九月になって各々の実習先の話しをクラスの奴らと話していた。

周りの友人は、色々と経験させて貰ったと話していて、焦った。心底焦った。

『実習中、いや、夏休み中自分は何をやっていた?何も思い出せない、違う、何もしていなかったから、何も言えない。』その時初めて自分のバカらしさを実感した。

そして、九月に実習班のメンバーが変わった。明らかに手際が悪くなった。自分が出来ていたのではなく、周りのサポートが充実していたから、何も不備なく実習を行えていたのだと実感させられた。自分は無力だった。心底腹が立った。周りにではなく、自分自身に。最初の頃からなにも変わってない、それどころか周りに置いていかれ、気付いた時には手遅れだった。

学校を辞めたくなってしまった。だが、専門学校に入るのだってタダではない。教科書や包丁だって貰ったわけではない、むしろ高いお金を出して買っている。それなのに、辞めるなんて両親には口が裂けても言えなかった。言える訳がなかった。辞めたところで、先が決まっている訳でもない。中途半端どころか、素人に毛が生えた程度の知識量しかない人間を雇ってくれる会社なんてある訳がない。嫌々学校に通い続けた。だが、その遅れを取り戻そうと必死になりきれない自分がいた。と言うよりも、最初の頃に比べてやる気などほぼ皆無だった。

しかし、一つの転機があった。

それは夏が終わり、十月半ば頃。

僕の通っていた学校は、普通の大学とは違い、複数の会社に面接を受け、複数の内定先から選んで入社すると言った事が出来なかった。言ってしまえば、一つの会社で内定を貰えれば、その会社に就職する事がほぼ決定的だった。

そう、面接を受けていた会社から一次選考通過の連絡が来たのだ。

大はしゃぎをした。子どもがオモチャを買ってもらえたかのように。

その二日後に、いわゆる役員面接が行われた。それが最終面接だった。そして、その面接も無事通過。就職先が決定したのだった。

そこからと言うもの、今までとは打って変わって、日々の実習に精を出した。卒業をし、就職して少しでも早く認めてもらえるよう日々努力をした。正に180度自分が変わった。それは周りから見てもそうだったらしい。良くも悪くも分かりやすいと言われ続けていたが、今回はいい方向に向いたのだ。

そして、とうとう専門学校の卒業。本当にあっという間の一年間で、数週間後には社会人。高校生の頃から夢に見ていた料理人の世界に飛び込むのだ。

不安もあったが、それ以上にとても楽しみだった。

新しい事を学び、吸収し、技術を上げていく。これ以上に楽しみな事はあるのか?

そんな思いを胸に、四月一日入社式を迎えた。

しかもなんと、配属先の店は、専門学生だった時に実習でお邪魔した店だったのだ。そして、そこで初めて自分の上司ができたのだ。少しでも早く仕事を覚え、一日でも早く戦力になれるよう頑張ります!思い出せないが、恐らくそんな事を言っただろう。

しかし、現実はそんなに甘くなかった。

今まで自分がやってきた事が何一つとして通用しなかった。それどころか、年齢は自分より歳下だが、歴は先輩の子の方がよっぽど技術も知識も勝っていた。

甘かった。考えがとかではなく、全てが甘かった。

天狗になっていた訳でもないし、自分に実力がないのも充分承知の上だったが、正直かなり精神的にくるものがあった。

泣いた。次の日が休みの時は夜遅くまで泣いた。

悔しくて悔しくて堪らなかった。仕事が辛いとか、上司や先輩が怖かったとかではなく、またしても自分の無力さを実感した。

耐えられず、母親にも相談をした。その時に、『当たり前だよ。経験も何もかもが違うのにその中で対等でやれる訳がない。でもそれは承知の上。だったら自分が出来ることはなんなのかしっかり考える事。』こんなにもいい母親はいるのだろうか。

それ以降、色々と仕事を任せて貰えるようになった。陰では先輩より僕の方がと言ってくれていた人もいた。確かに当時は自分でもそう思っていたが、口には出せなかった。若い頃はどうやら相当尖っていたらしい。自分でも今思い返せばそう思うし、相当生意気だったのだろうと思う。

そうこうしている内に、あっという間に一年が過ぎた。そして、そのタイミングで異動が決まったのだ。

辛かった。仕事を覚え始め、本格的にメインで任せていくからな、と言われた直後だったからこそ辛かった。

一年可愛がってくれた上司から離れ、新しい店に配属になった。しかし、その店はクセの強い人たちで溢れ返っていたのだ。店長も、料理長も、同じタイミングで異動してきた先輩も、周りのアルバイト、パートさんも全てが自分には合わなかった。だが、合わせるしかなかった。それが本当にしんどかった。その状況が数ヶ月続き、店長、先輩の異動が決まり、料理長が店長へ、新しく料理長が異動してきたのだった。

そこでまた一つ転機が起きたのだ。

同じ店のパートさんとお付き合いをする事になった。

より一層仕事に熱を持つことができた。周知の事実で、それなりに幸せの時間が続いた。だが、またしても僕の異動が決まった。しかも、今までの店よりも更に遠い所への異動が決まった。普通なら、しんどい、と思うだろう。しかし、最初の店で働いた時の上司がその店にいたから、何も不満は感じなかった、むしろ好都合だったのだ。

そして店を異動。今までとは違い、更にレベルアップしたお店だった。正直最初はかなり手こずった。土台作りは出来ていた物の、応用をきかせることが出来なかったのだ。怒られ続けた、それこそほぼ毎日だ。八つ当たりや周りに分からせるために自分に怒っていた事もあったかもしれない。何度かそういう風に言われた事もある。だが、その上司は嫌いになるどころか、一生ついていきたいと思える存在だった。

そして、異動し年が明けた三月、会社の退職を決めた。

元々三年で辞めようと考えていた。それは両親にも話しをしていた。色々な経験を若い内にしたいと。

上司には止められた。だが、背中も押してくれた。泣きそうになったが、堪え、頭を下げ、一言。

『お世話になりました、ありがとうございました。』と伝え、その会社を退職した。


そしてその時から五年の月日が流れた。

今でももちろん料理人をやっている。今でも多くの挫折を味わっている。その度に、負けずに立ち上がっている。

小さい頃に描いていた夢とはかけ離れてしまっているが、高校生の頃に描いていた夢を叶えて、さらにその先に進もうとしている。

今後どのように自分が成長していくのか、変わっていくのかが楽しみだ。


これを読んでくれた人が少しでも前向きになってくれたら僕は嬉しい。

『理想と現実』

中々理想通りにいかない世の中ではあるが、それでも人は生きていかなければならないし、妥協して、挫折を味わって、現実を見なければいけない。

妥協した先に、いい人生が待っているかどうかは自分次第になってくるのだと思うし、そう信じたい。

挫折した先に、自分が成長できるか、そこで立ち止まって、諦めてしまうのか、それも自分次第。

しっかり地に足をつけ、一歩一歩進んでいける人こそが強い人間なんだと僕は思う。

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