冒険者登録できました
翌朝、私はフードを目深に被り念の為に口元も口布で隠すと宿屋を後にした。
ギルド長のボンズさんに紹介してもらった宿屋は清潔感があり部屋も広く家具も高級感があり下級の貴族や富豪向けの宿屋のようだった。
まぁ、私がどう見ても貴族の令嬢なので、上宿を選んでくれたのかもしれない。
広場を抜けてギルドへ向かう。町の中は朝から賑やかで、大通りには昨夜は無かった屋台がいくつも開いている。
思ってたよりも活気がある町なのね…………屋台で焼かれていた串焼きの匂いにソソられたが換金しないことには好きなものも買えない。
後ろ髪を引かれつつ少し足早にギルドへの道を迷うことなく進むと、ギルドの入り口にソワソワと落ち着き無く立っている男がいた。
「?…………………もしかして、オラフさん?」
「あ、カテリーナさん!!
その…………昨日はギルドまで案内する約束だったのに………悪かった」
こざっぱりとした服装に、ヒゲも剃られていたので印象が随分変わっていたけどオラフさんで間違いなかったようだ。こうして見ると意外と若いようで、くたびれたおじさんだと勝手に思っていたことを心の中でこっそり謝っておく。
「オラフさんが不可抗力で連れて行かれたのは理解していますから謝罪は不要ですわ。
それにこちらのギルド長さんから報酬を頂いたので宿にも無事泊まれました」
「ギルド長が…………」
オラフさんはホッとしたように肩の力を抜く。
どうやら私が野宿していたのではと心配をしてくれていたらしい。
「あ…………なら…………俺からもお礼を…………えっと…………一緒に食事で「お礼は不要ですわ?私はこれから冒険者登録しなくてはいけませんので……………では失礼いたします」
「え……………冒険者?」
唖然とするオラフさんに、ニッコリと微笑でスカートを摘んでフワリとお辞儀をすると、ギルドの入り口をくぐった。
ギルド内では冒険者達が依頼が貼り出してある掲示板を眺めたり、カウンターで職員と話したり、脇の飲食スペースで仕事の打ち合わせをしたりとなかなか賑わっている。
少し見回してから空いたカウンターに向かった。
「いらっしゃい、何かご依頼ですか?」
カウンターの向こうに座るぽっちゃりして人の良さそうな眼鏡の男性がおっとりとした口調で尋ねてきた。すっぽりとフードで顔を隠した私は訳アリ貴族の依頼者に見えるのかもしれない。
「違いますわ。この宝石の換金と、冒険者への登録をお願いしたいの」
「宝石の換金と………………冒険者への登録ですね。
ええっと……………年齢は十二歳以上ですか?あと手数料として銅貨五枚頂きますがよろしいですか?」
冒険者の登録は十二歳以上なら性別や身分を問わず誰でも出来る。私は受付の男性の問いに頷く。
「では換金される宝石はこちらで鑑定しますので一旦お預かりしますね。
では、まずこの鑑定板に手を置いてください」
宝石の入った袋を渡すと受付の男性は別の職員へ袋を渡し、カウンターの上に金属で出来た板のような物を置いた。
表面には魔法陣が彫り込まれており、端っこに魔石が埋め込まれている。
私は手袋を外すと板の上に白くほっそりとした手を乗せた。
すると魔法陣から光が漏れ出し板に差し込まれたカードに次々と文字が刻み込まれていく。
そういえば、私のステータスはどう表示されるのだろう?
「……………はい、お疲れ様。
これが君の冒険者登録カードだよ。無くさないようにね?
あと、色々書いてあると思うけど、鑑定板に嵌めないと他人には名前とランクしか見えないから安心してね?
まずは最低ランクのFランクからスタートだ。規定ポイントが貯まれば試験を受けてランクアップ出来るから受けたい依頼があればあそこの掲示板から依頼書取って冒険者カードと一緒に受付に持ってきてね」
「ありがとうございます。
登録手数料は宝石の換金額から引いておいて頂けますか?」
「あぁ、丁度換金も終わったみたいだね。
査定額から銅貨五枚、引かせてもらって………………金貨三十二枚、銀貨八十枚、銅貨九十五枚…………………だ」
若干引きつった表情の受付男性から布袋をいくつか受け取ると中を確認することもなく冒険者カードと共にアイテムボックスへ放り込む。
「えーっと、早速依頼を受けるかい?」
「急いでいますので、今日はやめておきますわ」
私は受付の男性に礼を述べると、混み合ってきたギルド内の人混みをスルスルとすり抜けて外に出た。
ふぅ……………これでやっと『彼』を探すことが出来ますわ!!
あぁ、愛しい貴方………………
貴方……………………あれ??………………『彼』の名前は……………?
嘘………………顔は…………………?
え………………どうして
………………思い出せない……………………
読んでいただきありがとうございます。
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