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森を抜け町に到着


「……………カテリーナ…………さま?」


「『さま』は不要よ。

私、少々魔法を嗜んでおりますの…………お役に立てたようで良かったですわ。

あなたはこの先の町の方かしら?」



男は土下座の姿勢のままコクコクと高速で頭を上下させる。



「ふふ、丁度良かったわ? 町で宿を取りたいのだけど、今あいにくと手持ちがありませんの。

この時間でも宝石を換金してもらえるお店を教えて頂けますか?」


「はぁ……………換金……………? あ、なら町の冒険者ギルドなら夜中でも対応してもらえる…………俺は町のギルド所属の冒険者だ、是非案内させてほしい!!」



熊のようなヒゲモジャの男にキラキラとした熱量の高い瞳で見上げられ、思わず後ずさってしまいそうになる。



「やはり冒険者の方だったのですね?」


「まぁ…………その…………最低ランクだが……………一応、冒険者の…………オラフだ。

獣を捕まえる罠に引っかかっておいて、冒険者と名乗るのも恥ずかしいが………」



オラフはガックリと肩を落としているが、ギルド所属の冒険者ならほぼ職員扱いで仕事も通常の冒険者がやりたがらないような雑用が多く冒険者ランキングはなかなか上がらない。

その代わり少ないながら安定して毎月ギルドから報酬が支給されるので、ギルド所属を希望する冒険者は少なくない。





私はオラフに町のギルドまで案内を頼んだ。しかし、オラフは暗い森の道を歩き慣れてないようで、石や木の根に足を引っ掛けては盛大に転がる……………。



「……………………


オラフさん、大丈夫ですか?」


「こ……これくらい、何ともないっ!!」



落ち葉まみれの頭をさっさと振り払い、ニカッと笑みを作るが鼻血が垂れて色々台無しである。



「……………『ライト』」



掌の上に柔らかな光の玉が現れ、フヨフヨと宙を浮かぶ。

魔物が寄ってくる可能性があったので今まで使わなかったが、もうすぐ森も抜けそうだし町も近いだろうから、まぁ使っても大丈夫だろう。



「おぉ……………有り難い!俺は魔力持ちじゃないからな…………助かるよ。はは」



オラフはポリポリと申し訳無さそうに頭を掻く。

殆どの貴族は魔力を持って生まれてくるが、庶民での魔力持ちは少なく全体の一割もいないと言われている。

なので冒険者でも魔力の有無はランクに大きく影響している。魔力を持たない冒険者はどれだけ剣の腕を磨いても、Cランクが限界だろう。


足元がよく見えるようになったおかげで、オラフは転倒することもなくなり慣れた足取りで進んでいった。

やはり、明るい日中だけ森で狩りや採取をしている冒険者なのだろう。



「カテリーナさん、あれが町の入り口だ」


オラフが指差す方に、魔道具のランプがついた簡易的な門が見えた。

魔道具のランプは魔石に含まれる魔力を使って灯りがつくので魔力の無い庶民でも簡単に使える。魔石の魔力が無くなれば、魔力の籠もった魔石に入れ替えるだけだ。



門の辺りには松明を掲げた男たちが数人集まっており、こちらを用心深い表情で見ている。



「ん?あいつら、こんな時間に集まって何してるんだ?


おおーい!!」



どうやら集まっていた男達はオラフの顔見知りらしく、オラフが男達にブンブンと手を振る。

男達はオラフに気付くと驚いたような顔をしてこちらを指差し、慌てて町の中へ戻る者、こちらへ駆け寄って来る者………と、慌ただしく動く。



「はぁ………はぁ………お、おい、オラフ!!大丈夫だったのか?お前が夜になっても戻って来ないから今からこいつらと探しに行こうとしてたんだ」



オーガのようにひときわ体格のいい男が、怒り半分、ホッとしたのが半分のような顔でオラフに声を掛ける。



「へ??あぁ……………心配かけてすまない…………獲物を追いかけている途中に足を滑らせて罠の穴に落ちちまって……………足を痛めて動けなかったんだ…………」


「……………ったく、自分で仕掛けた罠にかかるなよ……………で、足は大丈夫なのか?平気そうに見えるが…………」


「あぁ……………それなら、この女神さま……………じゃなかった、カテリーナさんが………………」



そこで初めて気配を消して立っていた私に気付いた男はギョッとしたあと訝しげな視線で私を見る。

フードをすっぽり頭から被り、夜の森を彷徨いているなんて間違いなく怪しく見えるのだろう。



「ん?なんだ?この怪しいちびっこいのは?」


「お………おい!!この方はなぁ………」



眉を釣り上げ威嚇するような男の態度にオラフが慌てて間に入るが、私はスッと手を上げオラフを制止する。

そして、優雅な所作でフードを取り、フワリとお辞儀をした。



「んな……………………!!」



口をあんぐり開けたまま固まる男にこてりと首を傾げる。



「カテリーナと申します。

怪しいものではございませんわ。


オラフさんが怪我をされていたところにたまたま出くわしたので治癒魔法をかけさせて頂きましたの」


「あ……………あ……………お、俺はこの町のギルド長のボンズだ。


治癒魔法とは…………………失礼な態度を取ってしまい申し訳ない!

うちの冒険者を助けてくれて感謝する」



先程までとは違い、キリッとした言動に謝罪を受け入れるとボンズは集まっていた男達にオラフが無事だった事を説明した。

男達は驚いたように顔を見合わせると、ウオーーー!!良かったぜーー!!飲むぞーーー!!と勝手に盛り上がり、あっという間にオラフを両側から腕を抱え引き摺り町中へと連れていく。

オラフはちょっ!!まっっ俺は!!と、こちらをチラチラ見ながら抗おうとしたが、みんなオラフよりも腕っぷしが強いようで抵抗虚しく男達と共に消えていった。



門に残されたのは気配を消していた私と置いてけぼりをくらったギルド長のボンズだけとなり、とりあえずボンズにギルドまで案内を頼むことにした。



読んでいただきありがとうございます。

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