とりあえず現状確認をします
お父様とお母様は私の豹変ぶりにオロオロとしながらも、きっと頭を打ったせいで混乱しているのだろうと勝手に納得すると、しばらくお妃教育を休ませてもらうように城へと使いを出した。
私…………カテリーナは殿下の婚約者候補となった十歳の頃より、幼い頃から受けてきた屋敷での公爵令嬢としての教育に加え、週に一度程は城へと上がりお妃教育を受けている。
しかし二歳年上の第一王子は、婚約者候補であるカテリーナに興味がないのか月に一度の決められたお茶会以外で会うこともなく、そのお茶会も当たり障りのない最低限の会話だけでさっさと切り上げてしまうのだ。
幼い頃から、天使だの天才だのチヤホヤされていたカテリーナはプライドを傷付けられ、自分に興味を示さない王子を意地でも振り向かせようと、ドレスや化粧は年々派手になり、思うようにならないストレスは下級貴族の令嬢や屋敷の使用人達に当たり散らすことで発散していた。
するとさらに王子から避けられるようになるという悪循環だ。
そんな過去の頭の痛くなる言動を思い浮かべ、私は思わずため息をついた。
「あぁ………可愛いカテリーナ、殿下にお会いできないのは寂しいだろうが、今はしっかり休みなさい………」
「……………はい、そうさせていただきますわ、お父様。
……………殿下へは私からも手紙を書いておきます」
お父様とお母様が部屋から出ていくと、緊張している侍女に紅茶を淹れてもらう。
「…………………ありがとう、美味しいわ」
「っ!?…………………めっ………滅相もございませんっっ」
………………もう使用人達に八つ当たりするつもりなんて無いけど、………………時間がかかりそうね。
侍女の態度に心の中で小さくため息をついた。
侍女を下がらせ部屋に一人きりになると、改めて部屋の中を見て回る。上等な家具や調度品が乱雑に並べられた落ち着かない部屋……………。
クローゼットを開けば煌びやかで派手なドレスが所狭しと並び、装飾品も目がチカチカとしてしまいそうな悪趣味なデザインばかりで思わず眉を寄せる。
ゲンナリとした気分で、次は本棚を見る。令嬢の部屋に置くにはやや大きめの本棚には難しい魔術書や歴史書………他国の本まで並んでいる。
ドレスのセンスは全く理解できないけど、蔵書の取り揃えはなかなか素晴らしいわね…………。
「……………これは」
一冊の本のタイトルに視線が止まる…………
『聖女リリアナ・ヴァルカン』
………………少し戸惑ったものの、その本をゆっくりと本棚から引き抜く。
それは子供向けの絵本で、表紙に描かれていた聖女の姿が私に似ている………と、お父様が隣国へ行ったお土産に買ってきてくれたものだ。
内容は、ある国の美しいお姫様が恐ろしい魔王に攫われて勇者に助けられる………そこまではありきたりなストーリー…………ただ、助け出されたお姫様が聖女として目覚め、国中の人を癒やす冒険に出発し、勇者に封印されていた魔王を改心させるという、冒険物語だ。
まさか自分の『前世』がこのように物語として描かれているとは……………まぁ………大まかには間違いではないけど……………
実際は政略結婚が嫌で家出して、たまたま森で出会った高位魔族に一目惚れして追いかけまわしていたら、私を捜索していた兵士に速攻で見つかって城に連れ戻されたけど、何故か聖女の力が覚醒して、再び魔族を追いかけるために家出した……………だけなのよね……………
ボーッと昔を思い出しながら絵本を眺める……………
……………………!!
そうだ、『彼』に会いに行こう!!
彼はかなり力の強い魔族だったし、まだきっと生きているはずだ。
私は絵本の挿絵に描かれた『魔王』をキラキラとした瞳で見つめた。




