戦闘開始
注意
今回から残酷な描写があります。
「よーし!狩るぞー!」
「にゃ〜」
現在、わたしは街の外にいます!武器屋を出たあと、とりあえず一番近い門から街の外に出てみたら、クロちゃんがようやく目を覚ましたよ。街の外は草原になってて、遠くには森が見えるね。門からは草の生えてない道もあって、そこには行商人みたいな人とかが馬車で移動してる。門にいた兵士さんから、道はまだ安全だけど、道から外れると安全が保証できないからなって警告されたけど、今回の目的は狩りだから外れます!モンスター、ばっちこーい!
「ふんふふーん♪ふんふんふふーん♪」
「にゃ〜」
鼻歌を歌いながら適当に草原を歩いてみる。クロちゃんもさっきまでは起きたばっかりで眠そうにしてたけど、今はわたしの鼻歌に合わせて楽しそうに鳴いてるね。かわいい!
「むっ!少し先の草が動いたね!何かいる!」
うーん。どうしようかな。今やらなきゃいけないのは、クロちゃんがどれくらい戦えるかの確認なんだけど……正直無理そうなんだよね………。まあ、いつかはやらなきゃいけないし………うーん、しょうがないね。そこのモンスターが弱そうな感じだったらクロちゃんに頑張ってもらおうかな。でも、もしクロちゃんが怪我したら…………あわわわわ………。
そんなことを考えてると、草の間からモンスターが姿を現した。現した…ん……だけど………。
「か、かわいい………」
あわわわわ………。小さいウサギさんだ。真っ白で超かわいい。額にこれまた小さい角があるね。たぶんこの子がホーンラビットなのかな。くっ、従魔の数が上限になってなければテイムするのに………。従魔法のレベルが上がれば上限も増えるよって天使のおねえさんは言ってたけど、これは急いで上げなくちゃね!
とりあえず、この子が相手ならクロちゃんでも大丈夫そう。無理そうならすぐ変われば平気だよね!
「よーし!クロちゃん!ごー!」
「にゃ〜!」
おお、クロちゃん気合入ってる!実は強かったりするのかな。そして、クロちゃんがもう一度鳴くと、ウサギさんが黒い靄に包まれた。魔法だ!すごい!靄の中で、ウサギさんは周りが見えないみたいだね。しゃがんで靄のすぐ近くまで顔を寄せてみるけど何も反応しない。むしろ不安げにあたりをキョロキョロと探ろうとしてるね。こっちからは見えてるのに不思議。
クロちゃんは、ウサギさんが靄に包まれたあとは何もせずに、こっちをじっと見てる。あれ?追い打ちは?わたしがやるの?やっぱりクロちゃん攻撃手段がないんじゃ………うーむ。
そんなことを考えてると、いつの間にか靄が晴れてたみたいで、目の前にウサギさんの顔があった。あわわわわ………。
「うへへへへ、かわいみゅっ」
ウザギさんがわたしを見つけた途端に、体当たりをしてきた。体が小さいからぴょこぴょことした動きになってる。あんまり可愛くて見惚れてたら、思いっきり顔にあたってしまった。おおおぉぉ………角が、小さな角が印堂(眼と眼の間にある急所)にぃ………。
そのままわたしが地面をゴロゴロ転がりながら悶絶してると、ウサギさんはいつの間にかいなくなってた。くっ、次見つけたらただじゃ置かないもんね。あのウサギさんの顔は覚えたもんね。そんな事を考えてると、クロちゃんがトコトコとわたしの顔の近くまでやってきてた。うんうん。やっぱりクロちゃんが一番かわいい。
「えへへへへ、クロちゃあいたーっ!」
猫パンチが来た。なんで?ウサギさん相手にはクロちゃん攻撃しなかったのに…………なんでわたしにはいきなりパンチ?しかも印堂に。地味に痛い…………。
「もうっ!ひとのかおたたいたら、めっ!なんだよ」
「にゃー!」
「あいたっ!またやったなー!うがー!」
「にゃーー!!」
もう怒ったもんね。自分が誰に喧嘩を売ったのかきっちりわからせてやるもんねー!
………しばらくお待ち下さい。
「ぐわー!やーらーれーたー!」
「にゃあー!」
あれから10分後、うつ伏せに地面に倒れるわたしの上で、クロちゃんが勝利の雄叫びを上げてるね。かわいい。まあでも仕方ないよね。あのあと大人気なく立ち上がって、仁王立ちでクロちゃんの攻撃なんて効かないもんアピールをしてみたら、足にパンチするクロちゃんの元気がみるみるなくなっていったからね。あれには勝てないよね。
それにしてもなんでパンチされたんだろうね?まあいいや。クロちゃんの機嫌も治ったことだし、狩りを再開しますかな!
クロちゃんは、服の胸ポッケにイン!頭の上だと空から襲われたときが怖いしね。それに、戦ってるときに振り落としたらまたパンチされそうだし。
さてと、依頼を受けたからには一度ウルフを狩っておきたいんだけどなー。パッと見じゃあこのあたりにはいなさそうなんだよね。草原の草は背が低いから、さっきのウサギさんくらいじゃないと身を隠すなんてできなさそうだし、やっぱり向こうの森のほうじゃないといないのかな。さっきのクロちゃんとの対決中もなんにも襲われなかったし。
「よし!じゃあ向こうの森で狩りをしよう!」
「にゃ〜」
特にクロちゃんの反対もなかったし、決まりだね。さっそく、いってみよー!
森の中は、木が日光を遮ってだいぶ暗いね。まあ、もう日が沈む時間だからっていうのもあると思うけど。たぶん真っ昼間でもそこまで明るくはならないんじゃないかな。下生えも茂ってないし。剣は闇雲に振ると木に当たりそう。気をつけないとね。
「にゃ!」
そんなことを考えてると、クロちゃんが警戒するように鋭く鳴いた。わたしは何も感じないけど、なにか近づいてきてるみたいだね。鳴いた方向からすると左斜め前方からかな。
集中して感覚を研ぎ澄ますと、近づいてくるものの足音が聞こえてくるね。あれ、これ犬?いや、狼!ウルフだね。でもこの足音だと1体じゃないよね。何体かいるよね。えー、群れかあ。ちょっとめんどくさそう。チュートリアルで1体だけとは戦って、特に苦戦しなかったけど、あれが群れかあ………4体までならいいんだけど。
杖を装備して魔法の準備をしながら、どうか4体まででありますようにと祈ってみたけど、残念ながら相手は5体いるね。しかもわたしの周りを囲んで、襲うタイミングを計ってる感じ。
うーむ、5体で囲まれてるのかー。こっちから先手取らないと、向こうに先手取られたらそのままズルズルとジリ貧になりそうだね。剣も使おうかな。………よし!準備OK!じゃあ、最初の1発はクロちゃんに任せようかな。
「にゃー!」
小声でお願いしたら、元気よく鳴いて魔法を使ってくれた。使ったのは、さっきも見た相手を黒い靄で包んであたりを見えなくする魔法だね。周りのウルフ全員にかけられたら良かったんだけど、流石にそう上手くはいかないみたい。とりあえず前方の1体、立ち回りから見ておそらくこの5体のリーダーだけが、あたりが見えなくなってる………うーんきれいな体だなー。最悪。さて、ここからだね。
「にゃあ〜!」
雄叫びを上げるクロちゃんといっしょに、魔法を食らったウルフの方に一歩踏み出した途端、辺りから一斉に4体のウルフが飛びかかってきた。やっぱりね。そうしてくると思ってたよ。
「【ファイヤーボール】!」
4体の内の、わたしの左前方から飛びかかってきたウルフに魔法が直撃!実戦では初魔法!文字通り炎の玉を食らってもがくウルフは放置して、わたしは持ってた杖を、魔法を撃った瞬間には右前方のウルフに投げつけていた。たぶん一瞬で弾かれるけど、その一瞬が欲しいんだよね。
杖を投げたウルフから視線を外さないまま、わたしは左右の地面に浅く刺していた2振りの剣をそれぞれ逆手で抜くと、振り返らずに後方より迫っていたウルフ2体に突き刺した。連携がいい分、どこにいるかが見なくてもわかるね。
そして剣から手を放すと、杖を弾いたウルフの左眼球に貫手をねじ込んだ。眼球を潰す感触が右手に伝わるけど、気にせず更に奥へとねじ込む。眼窩を押し込み、頭蓋の最奥まで侵入し、そこに保管されている脳を破壊した。ふう。コレで一息つけるね。たぶん。
あたりを見渡すと、生きているウルフは1体もいなかった。げっ……最悪。
ファイヤーボールを文字通り食らったウルフは体の中から焼かれて絶命。こんがりとした匂いがする。剣を突き刺した2体は、どちらも肺に剣が刺さったみたい。正確にはまだ生きてるけど、もう虫の息だね。そして、最初にクロちゃんが魔法をかけたウルフのリーダーは、もう影も形もなかったよ。逃げたかー。
あのリーダーは、他のウルフと比べてもそこまで力の差はなかったように見えたんだよね。なのに体に傷が少なかったから、たぶんこの子たち、もっと大きい群れの狩り部隊その1とかだよね。この子たちが群れの全員だとしたら、あのリーダーは群れのボスを決めるときにもっと怪我をしてないとおかしいからね。ウルフの頭蓋の中身ですら再現してるこのゲームで、そこに手を抜くとは思えないんだよね。
狩り部隊がこの1チームだけのわけがないから、かなり大きい群れだよね。そして、その狩り部隊が接敵から10秒かからずに負けた、と。あーあ。コレは逃げないとヤバそうなやつだね。わたしはそういうことには敏感だからね。
うーん、でもなー。まだウルフを4体しか狩れてないんだよね。もともとウルフを5体狩れっていう依頼を達成するために来てるんだし。
《只今の戦闘でプレイヤーのレベルが上がりました》
《これまでの行動により、『体術』スキルが開放されました》
《只今の戦闘で従魔のレベルが上がりました》
狩りを続けるかどうかを考えてたら、いきなりアナウンスが流れて、ステータス画面が出てきたね。どうやら剣が刺さってたウルフが息絶えて、ようやく戦闘終了扱いになったみたい。戦闘が終わるまでは経験値も手に入らないって、チュートリアルで言われたけど、別に相手が逃げてもいいみたいだね。今度相手が逃げたら、追いかけてみようかな。どれくらい逃げたら戦闘終了なのか気になるね。さてと、ステータスはどうなってるかな。
プレイヤーネーム:アヤ 種族:ヒューマーLv3(1UP) ジョブ:見習い従魔士Lv3(1UP)
HP:22/22 MP:20/22
STR:7(1UP) VIT:7(1UP) INT:6 MND:6 DEX:6 AGI:6 LUK:11
スキルポイント:4(2UP)
スキル:従魔法Lv3 使役Lv2 杖Lv2 料理Lv1 錬金Lv1 調合Lv1 剣Lv2(1UP) 火魔法Lv1 水魔法Lv1 土魔法Lv1 風魔法Lv1 光魔法Lv1 闇魔法Lv1 幸運Lv2(1UP)体術Lv1(New)
おお、剣で敵を倒したからかスキルがレベルアップしてる。レベルアップしたらどうなるのかは知らないけど。それにアナウンスが流れたとおりに、体術ってスキルが出てる。貫手でウルフを倒したからかな。MPが減ってるのは魔法使ったからだね。うむうむ。さてと、クロちゃんはどうかな〜
ネーム:クローディア 種族:リトルキャット☆Lv6(1UP) 親:アヤ
HP:12/14(1UP) MP:21/24
STR:2 VIT:2 INT:7(1UP) MND:4 DEX:6 AGI:6 LUK:17(1UP)
スキル:解体 採取 気配察知 闇魔法 気配遮断 夜目 少食 幸運EX
あれ、わたしより伸びが良いね。3つも上がってる。うーむ、それにしてもLUKが高いね。高いとどうなるのか知らないけど、きっといいことありそう。MPが3減ってるけど、魔法は2回使ってるのになんでだろう?まあ考えても仕方ないから放っとこうっと。
よし!確認完了!これからどうするかについても、もう決めました!群れごと潰すことにしたよ!現実の狼の群れは、大きくても50頭いかないくらいだから、きっとこのゲームでもそれくらいのはず。わたしとクロちゃんの消耗具合を見れば、たぶんなんとか群れごと潰せるはず!倒せば倒すほどレベルも上がるしね!ヤバそうな気がしたのは、きっと気のせいだね!だって今なんか楽しい気分だし!
そうと決まれば、さっそく狩ろう!根切りの時間じゃー!
補足
猫パンチ:せっかく魔法を使ったのに相手を倒さなかったことにお怒りの模様。
アヤの精神年齢:もともと幼いが、相手に応じてさらに幼くなる。