第三話 試験
「「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」」」」
開始の瞬間、地面が揺れるかと思うほどの方向と共に多くの奴らが突っ込んでいく。
人数に差が出ている状態での力押しは有効な手だ。だが、試験のからくりに気づいた俺らのような少数は武器は構えても敢えて行かない。
「……甘ぇな」
剣を構えがらグレイは不敵な笑みを向け、一閃する。
「「「「グアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!?」」」」
次の瞬間、最前にいた奴らは吹き飛ばされ、全員の勢いが止まる。
やはり、グレイと言う試験官は……普通に強い。聖剣学園の教師には何かしらの要因で退役した騎士がなりやすいと聞いたことがある。グレイはその類いだろう。
「甘すぎるぜ、テメェら!!」
その後は、予想通りの蹂躙だった。
怖じ気ずいた奴らに間髪入れずに重量のある剣が振るわれ、次々と吹き飛ばされていく。
刃を潰してはいるだろうがその重量は鈍器にも匹敵するため、頭や顔から血を流したり手足を骨折している者もちらほらといる。
その上、様子見を決めていた連中の中にもあまりの惨状に怖じ気武器を手放し恐怖で涙を流す者もいる。グレイはそんな連中も吹き飛ばしていく。
「と……後は二人か」
起きている奴が俺とロベルトしか居なくなったところでグレイは肩にその剛剣を乗せ左足を半歩後ろに下げる。
他の連中のように勢いで潰すつもりはなく、本来の構えで潰すつもりか。
(防御を頼む)
(そう言うことか。分かったぜ)
アイコンタクトだけで意志疎通をこなしロベルトを前方に立てる。
ロベルトの武器はグレイの武器とよく似ている。それなら防御をロベルトに任せて俺は攻撃に集中する。
「なるほど……な!!」
「ッ!!くう……!」
ロベルトが地面を蹴った瞬間グレイも地面を蹴り一気に肉薄し剣を振り下ろし、何とかロベルトは防ぐ。
膂力も速度、技量も相手が勝っているだろう。だが、それでも……!
「ぬああああああああ!!」
「ぬっ!?」
ロベルトが咆哮しグレイの剣を力押しで弾く。
その隙に俺のロングソードによる逆袈裟斬りがグレイの胸を切り裂く。
ちっ……相手も元騎士、咄嗟の判断で後ろに飛んで傷を浅くしやがった。筋肉達磨かと思ったがかなり機転が効く闘いをするもんだ。
「はっはっはっ!やるじゃねぇか小僧ども!俺もまだまだ甘いじゃねぇか」
「そいつはどーも」
「野郎に褒められても嬉しくねぇよ。美少女を連れてこい」
豪快に笑いながら褒めるグレイに俺とロベルト軽口を言いながら剣を構え、脂汗を垂らす。
胸を焼くヒリヒリとした、それでいて心臓を掴まれるような緊迫感のある感覚……間違いなく、グレイから伝わってくる。
「そんじゃ……こっから甘さ抜きだぜ!!」
剛剣を放り捨てると狂暴な笑みをしながら手を合わせる。
……そう言えば、この試験。あくまで俺らの心剣の使用を禁止しているだけで試験官の心剣の使用は禁止されて無かったよな。
「来やがれ、【奉天】!!」
合わせた手から光が漏れだし手を離し右手を上に向けると光が収束し新たに現れた剛剣を握りしめる。
剛剣は捨てた剣とよく似た形状をしているが腹の部分に六個の円を無理矢理くっつけたような奇妙な物体を付けられている。
(心剣……!)
心剣と言うのは世界が人間の魂そのものに保管させた武器たちである。基本的に一人一本保有しており、その人の精神、心の本質によって形が変わってくる。
一つずつ全く違う特性や力を保有しており、聖剣たちも元は使用者たちの心剣だったと言う見方が強い。
これらのことも合間って心剣は普通の武器では比較にならない程の危険性を保有している。
それを取り出す。それも、受験生に。どういう神経してんだよ!?
「そんじゃ行くぜぇ!!」
「まずは初擊を防ぐ!!」
際ほどよりも速く接近し振り下ろす攻撃をロベルトは剣の腹で防ぐ。
よし、これで……うん?剣のところに何かスイッチのようなものある……まさか!?
「ロベルト、下がれ!!」
「えっ?」
「もう遅ぇ!!」
グレイの思惑に気がついた俺が疑問を浮かべるロベルトの服を掴んだ瞬間グレイがスイッチを引く。
引いた瞬間、剣が爆発し俺は爆風で吹き飛ばされロベルトは熱を諸に受けてしまう。
やはり……!あれがグレイの心剣の特性か……!
「がっ……あ……」
全身を焦がし煙を上げるロベルトは倒れグレイは再び剣を構え、奇妙な物体が回転する。
あの爆発はあの物体によって引き出されてるなか。つまり、あの爆発は残り五回しか打てないと見て間違いない。
「俺の剣の特性【爆発】を見抜くとは、やっぱりただもんじゃねぇな」
「……ロベルトはどうなる」
「こいつか?無論合格ラインに達してるよ」
そうか……ロベルトは合格出来たか。なら、それに続かないといけないな。
「そんじゃ……始めるか」
「ちっ……!」
俺も剣を構え地面を蹴りグレイに肉薄する。
「ふん!」
「ッ!!」
グレイの剛剣をギリギリのところで後ろに下がることで避け腹に一閃加えるが、再び後ろに飛ばれて軽減させられる。
ちっ……筋肉が邪魔で上手く切る事が出来ない。その上、グレイの膂力と心剣の特性のせいで鍔ぜりあいすらする事も出来ない。
「なら……!」
「ぬっ!?」
軽快なステップで連続の切りを避けロングソードを回転した物体に突き刺す。
これで回転を止めた。こいつの武器はただの剛剣になった。心剣は壊れても修復される特性があるから剣を外すことは出来ない。だが……!
「こいつ……!」
「せりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
あまりの無謀さに驚き後ろに下がるグレイの顔面に俺の拳がめり込み吹き飛ばされる。
生憎と、俺は剣に拘りはない。剣を捨てることにも躊躇いはない。
「さて……気絶したしこれで試験終了では?」
「……はっ!!し、試験終了!!」
試験官に顔から血を流し気絶したグレイを試験官に見せると試験官はブザーを鳴らし試験を終わらせる。
やれやれ……心剣が使えればこいつを一瞬で終わらせれたんだがな……まあ、別に良いか。