秋葉原ヲタク白書69 聖地の48時間革命
主人公はSF作家を夢見るサラリーマン。
相棒はメイドカフェの美しきメイド長。
この2人が秋葉原で起こる事件を次々と解決するオトナの、オトナによる、オトナの為のラノベ第69話です。
今回は、最新型ドローンのスタートアップCEOが防衛機密をダウンロード、ダークウェブで競売にかけます。
一方、背後には新型コロナ世界的流行の"第2ステージ"をめぐる国際テロリストの陰謀の存在が浮上して…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 政権からの依頼
空が盗まれる。
新型コロナでパンドミック宣言が出て、スッカリ人影が絶えた秋葉原のパーツ通り。
僕は、雑居ビルの凹凸で縁取られた東京の青空を見上げる。吸い込まれそうな蒼空。
しかし、空は何処へ消えたのか?
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「スカイが消えたの!テリィたん、助けて!」
"焼芋会議"にサリィさんが飛び入り参戦w
ココは昌平橋交差点に架かる松住町架道橋の橋脚にあるキャットウォーク。
人類絶滅に備え"ゆるカル▼"JKトリオがサバイバル訓練でキャンプ中だ。
学校がコロナ休校中だけの"臨時キャンプ"のモグモグタイムにお邪魔してる。
コロナでアキバから人影が消え、萌え系店舗も営業自粛で他に逝き場所がナイ。
で、サリィさんは国益優先の特殊部隊なんだが、何処で聞きつけたか突然の乱入だ。
僕達は隣のビルで"休園中"の"私立アキバよーち園"の窓から出入りするのだが…
サリィさんは橋脚の点検手摺を登って登場w
さすが特殊部隊は鍛え方が違うょ恐れ入り。
ミニスカートなのにさ笑
「テリィたん。スカイさんを覚えてる?例の"空から産業革命を起こす"と息巻いてるバスカ社のCEO」
「え?前回参戦の、このコロナ禍に違法薬物をドローンで宅配しては大儲けしてる人だょね。スキニーな割にヤタラと印象が鮮烈な…」
「姿を消したの。誘拐だと思う。国家の危機ょ。探して」
ちょ、ちょっち待て!
焼芋を食べながら国家の危機を語るのは勘弁してくれ。
M字開脚なのはマァ仕方ナイが…ミニスカートだから←
「昨夜、彼女は自分のオフィスのPCで重要データをダウンロードした。この意味わかるかしら?」
「サッパリわからない」
「単に、自社の内規のみならず、実は"特定秘密の漏洩"に該当し、秘密保護法にも抵触する。捕まれば懲役と罰金ょ」
「確か罰金の上限は1千万でしょ?彼女自身が軽く払っちゃうし、どーせ彼女のスポンサーが…何処の国か知らないけど軽々と払っちゃうょ。そもそも、その"特定秘密"に該当スル防衛機密って何?確か前回、コロナの世界的蔓延にはドローンが絡んでる、とか逝ってたょね?サリィさんも、ソレでバスカ社を張ってたンでしょ?」
「え?そんなコトまで話したっけ?うーん。テリィたんに会うと、ナンだか自然と心のガードが下がっちゃうのょね。今日だってミニスカートなんて何年ぶり?アラサーなのに大胆過ぎ。うふっ」←
「人は、ソレを恋と呼ぶょ」
久しぶりにセリフが決まって、観客席?のJKトリオからキャーと悲鳴が上がる。
あ、こらっナデシ!待て!誰に電話してルンだ?!そのスマホを切れ!今すぐ!
「と、とにかく!"第2ステージ"の話はアッチに置いといて…とりあえず、産業スパイの世界でお願い。だって、今朝、ダークウェブに流出しちゃったの!」
「リベンジポルノが?」
「誰のょ?高性能ドローンの心臓部である波動モーターと自律飛行プログラム。最高値をつけた者に売るって。世界中の軍需産業や産軍複合体、ソレに一部の政府が色めき立ってる」
「ソレって、既に産業スパイの域を超えてるでしょ。仮に超えてなくても、何で僕に頼むンだょ?」
すると、サリィさんはナンでソンな当たり前のコトを貴方は聞くの、って逝う顔をスル。
「だって、アキバ絡みでしょ?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
僕は、ミユリさんと中央通りを駅へと歩く。
人通りが絶えたビルの谷間は人類滅亡後だ。
「…ソレで、どうせ"メイド長と作家のコンビにお任せね?"とかミニスカでウィンクされちゃったワケですか?」
「ええっ?!よ、よくウィンクまで…あ、ナデシの電話かwじゃこの際だし、僕達のキャッチコピーなんだけど"作家とメイド長のコンビ"に統一しようょ。ホラ、どうせなら、正しい順番の方がみんなも呼びやすいと思うンだょな」←
「さらにJKトリオからもウィンク連発されて、もう顔中が妄想キスマークでデレデレだったと聞きましたが」
実は、例の橋脚キャンプはサリィさんが国交省に話を通したお陰で撤去を免れてるとかでJKトリオは全員、サリィさんの味方なのだ。
結局、橋脚キャンプで四面楚歌となった僕は人探しを押し付けられたワケだが…
ナデシの電話のせいで何故かミユリさんまでミニスカートで現れたじゃないかw
今回も色々面倒くさい展開だ。
「スカイCEOの家は…何処だか知らないけど逝っても無駄だ。恐らくスパイが縦割組織で調べ尽くしてる。NSC、内調、公安、別班…もう侵入し放題だろうね」
「かと逝って、バスカ社のオフィスもセキュリティは完璧なのでは?お風呂の湯気にでもなって女湯から侵入しましょうか?」
「おおっ!ナイスアイデア…だけど、もう着いちゃったょw"アキバスカイ"か…社名が出てる。略称バスカ社」
地下アイドル通りの再開発タワー34Fだ。
海外ドラマに出てきそうな受付だけど…
肝心?の金髪受付嬢は不在。
ついでに、来客も皆無だょ。
まぁコロナだしね。
「こんにちは。スカイCEOのお客様…にしてはお珍しい風体ですね。普通の方?」
「CEOの客って、みんな角とか生えてルンですか?」
「悪魔のシッポも生えてます」
またもスキニーガールの登場だ。
会社を挙げてダイエット中かょ?
「てっきり、またいつもの"金で何でも押し通す恐ろしい連中"かと思いました。当スタートアップは、積極果敢な地下ビジネスパーソンの最良のパートナーですので」
「良い受け流しだけど、躁と鬱がゴッチャになった話ブリだけど、君こそ大丈夫か?僕達は…何と逝えば良いのかな?ホワイトハッカーならぬホワイト産業スパイみたいな…」
「貴方はスパイなの?意味不だけど…」
「スカイCEOさ。彼女と彼女が盗んだデータを僕なら無事に取り戻せる…カモしれナイ」
「警備員を呼びます」
「ロクに受付嬢もいないのに、警備員なんかいるハズ無いだろ?まあ待てって。僕達を追い出す前に、君の健康が心配だ」
「私の健康?」
「手が震えてる。呼気には市販の下痢止め薬の臭い。この症状はバルプロエートの副作用だ。統合失調症とは思えないから、双極性障害だょね?腕の良い精神科…あ、今は心療内科だっけ?中身は同じwを知ってるから電話しとくょ。少し安くなる。ホラ、薬が合わないと辛い病気だから」
ココで彼女は、細いカラダが1本線になって消えるのではと心配になるほどの長い溜息w
「私は、最高技術責任者で主任プログラマーのヘヴンと申します。バスカ社の実質的No.2と思って頂ければ…誰かがスカイCEOに警告すべきだったのカモしれません。結果的に犯罪組織に飲み込まれる形で、私達は国を売ってしまった…」
「国を売った?しかし、スカイCEOは、君達社員の給料を払うためにやったコトなンだろ?」
「ただの社員じゃない。バスカ社は家族なのです。奴等は最初は小さな要求から始めた。ワインの密輸とか就労ビザとか」
「だが徐々に大きくなった?資金洗浄とか違法薬物とか?ソレって常套手段だょ。ダメ絶対」
「でも、そう気づいた時にはもう遅かった。私達は、奴等のアキバ進出の足がかりとなってしまった。いっそ会社を畳めば良かった。私自身は、白血病にでもなって腐って死ねば良かったンだわ!時々そう思うの」
「ソレで…奴等と取引を?」
すると、ヘヴンはヤタラ勢いよくオフィスに姿を消すや同じくスゴい勢いで戻って来るw
「さぁ!秘密保持契約にサインを!そして、今夜"病院空軍"と会って!だから、サインを!さぁ!さぁ!」
第2章 聖地の"潜り酒場"
モチロン、僕もミユリさんもサインしないw
その日の深夜。ソレでなくても夜が早いアキバの、ましてや深夜となれば、人影は絶無。
中央通り10車線を跨ぐ御成街道架道橋の下でヘヴンと待合せたが周囲に人の気配はナイ。
「でも、驚きました。テリィ様が精神科を語るとはwヘヴン氏も尊敬の眼差しで、一挙に素直になってしまって。…確か経済学部でしたょね?」
「あ、アレは寝ズに暗記したセールストークだ。1回唱えて患者を紹介すると"アキバ医院"のトバミ先生からボーナスが出る」←
「あぁ。いつもの病気でしたかw今度は女医病?ナースじゃなくて安心しました」←
御成街道架道橋下の10車線を横切る広大な横断歩道に、今は渡る人も待つ車も見えない。
ただ1人駅から走って来たヘヴンと合流し神田川方向へ少し歩くと"電力工事"の現場。
工事照明に照らされ、歩道の鉄製の地下通気口が開けられ黄ヘルの工事の人が囲んでる。
そのヘルからツインテがはみ出してたりするが"彼女"に挨拶したらヘヴンは驚いた顔。
「ココ、来たコトあるの?もしかして、常連?」
「え?あ、常連と逝うホドでは…ってか、昔、メイドカフェ対抗のランジェリーフットボールを見に来たコトがあるンだけど…君も出るの?」
「ハイ?私が?何でランジェリーでフットボールやらなきゃいけないの?あのね。今や、ココは世界的なハッカーの聖地…なんだけど、貴方達は何で顔パスなの?」
え?ハッカーの聖地?確かココはスポーツバーで毎夜メイドがランジェリーで…
作業用のハシゴで立坑を降りると、地下へと下る大人2人が通れる階段がある。
その先が萬世橋駅(廃駅)で当時の2両編成の銀座線が前提の短いホームがある。
今は、コンクリート剥き出しの内壁と太い柱に囲まれるが直下の線路は現役。
で、ホームに面した客扱室や駅詰所がスポーツバーや"闇のゲーセン"に…なってナイw
今は、ブチ抜きの大箱クラブに代わり正面に巨大スクリーン、フロアにPC画面がズラリ。
まるで照明の落ちたNASAのコントロールルームのよう…え?突如、ドッと歓声が沸く!
同時に正面の巨大スクリーンにPC画面が映り箱全体へ熱狂が伝播、歓声と口笛の嵐にw
スゴい喧騒だwミュートボタン押してくれ!
「あら。テリィたん?御無沙汰じゃない。地上はコロナで大変なんでしょ?元気にしてた?」
「あぁ!ミスト。ランジェリーフットボールって、もうやってないの?せっかく、ミユリさんが新しい花柄の"見せブラ"を買って準備してたのに」
「アレはテリィ様専用です!ミストさん、お久しぶり。コロナの最中は、ハッカー専門の"潜り酒場"にしたって聞いたけど、大当りね。このコロナ騒ぎって、飲食業にとっては禁酒法みたいなモノだから」
スポーツバー"ウーターズ"オーナーのミストさんが僕達に話しかけて来る。
ヘヴンが、目を丸くして、僕達とミストさんを代わる代わる見ては後ずさる。
CTF(capture the flag)。
"旗を奪い合う"と逝う意味でセキュリティ技術を競い合うハッカー用語だ。
で、コロナ騒ぎの最中に世界のハッカーチームがCTF世界大会を開催してるw
コロナで世界経済は失速し、市場が収縮スル中、何と世界の腕自慢が互いのプライドを潰し合う"ハッカーのオリンピック"開催中。
今宵は予選の最終ラウンドで、国の枠を超えた多国籍なハッカー集団が互いの脆弱性を攻撃し合った結果、アキバチームは辛勝スルw
回りの連中は、全員総立ちになり抱き合い大喜びで、まるでカウントダウンパーティだ。
僕も突如背後から抱きつかれ、女子を期待し振り向いたら"闇のゲーセン"のキングで。
クイーンか、せめてプリンセスを…笑
「おおっ!テリィたん!御無沙汰だけど、応援に来てくれてたのか!何とか勝てたょ!半島の連中は、ゲームの経過内容をセーブ出来るようにしてたが、実は経過の更新はデータを反映するだけナンで、ソコが奴等の脆弱性だと閃いたンだ!」
「なるほど!送るデータに細工したんだな?
でも、サーバーキーがないと普通は弾かれるょね…ってか、キングは確かに天才だけど"天才ゲーマー"であって…ハッカーではナイょね?」
「まぁそぉカタいコト逝うな。ソレに、サーバーキーなんて排除すれば良いのサ。誰より先に解析して全ボードを把握し、キーを解明した。すると、セーブの割り込みハンドラに脆弱性が見つかった。バックドアには、タイレルのマシンに因んだコードが設定されてたが、ネームサーバーの設定を変えに接続し、ドメインを乗っ取れば気づかれる前にアクセスを防ぐのは簡単さ。途中何度か接続中断があったけど、アンインストールして…」
キングの逝ってるコトが段々とわからなくなって来たトコロで、カットが入る。
大陸系のアジアン男子3名だけど、特に勝利を祝うワケでもなくキングを囲む。
「君のおかげであっという間にチームが勝利した。世界人民を代表して、少し話したい」
「ん?誰だ、君達は?触るな。俺はただ…」
「電源オフにしろ。立って一緒に来い」
何かヤバい連中に目をつけられたようだが、キングは落ち着き"気にするな。狙いは俺だ"と僕達を制して、彼等と何処かへ消える。
ワケ知り顔でヘヴンが解説スルw
「彼等は反資本主義者の"病院空軍"です。"再分配派"のハッカーグループ。テリィたんのお友達は"病院空軍"に目をつけられたンだわ。コレは、ハッカーとしてトテモ名誉なことコトです」
「"再分配派"?何を再分配するの?」
「富ですょ。富を再分配スルのです。ねぇ。テリィたんは知ってますか?僅か1%の富裕層が、世界の富の半分を所有している、と逝う事実を!」
突然、ヘヴンが熱く語り出す。
さすが、双極性障害だょ全く。
「富の再分配を行うためには、いったん全ての経済行為をなかったコトにスル必要がありマス。だから、我々は、コロナの力を借りて世界経済を強制リセットする必要があったのデス」
「え?今回のコロナ騒ぎは、反資本主義者の経済攻撃だ、と逝うのか?おいおい。何か、みんな中華な人達に騙されてルンじゃ無いかな?大丈夫?」
「ああぁ。テリィたんは、私達の革命が人々に自滅と幻滅を与えた、と逝うのですね?アダム・スミスの"見えない手"で急所を殴られた気分だわ。ボットネットみたいに、私達の生んだ恐怖が拡散し、ソレに飲み込まれた私達は、排泄物として出されるのみなのね!あぁ何て臭い存在なの!」
大丈夫なのかな?コイツ?
完全に逝っちゃってるょ?
「そして、私達の革命はドラマ化される。人々の思考に"シフト+コントロール"でバックドアを作り、真実を改竄して値段を釣り上げるのよっ!」
「うーん。逝ってるコトが全くワカラなくなったけど、何だかソレこそ資本主義の得意技って気がスルけど?」
「だ・か・ら!真実が未だ伝えられないまま、次の"第2ステージ"が始まろうとしているの。そして、人々は…パワーを奪われる。電気のコトじゃないわ。ゾンビょ!人々はゾンビに変わるの。全てはスカイCEOが私を拒絶したからなのょ。バスカ社なんて、糞食らえ!」
そしてヘヴンは狂気に満ちた目で僕を見る。
「私が…スカイCEOを誘拐したの」
第3章 "第2ステージ"を阻止せよ
「兄弟姉妹の諸君。拳を振り上げる時だ。搾取と屈辱の現実に目を瞑るなら、君の人生は無意味だ。打倒すべき資本主義は、君の鼻と口をコロナウイルスで塞ぎつつ、停滞と閉塞の中でのたうっている。何故か。我々"病院空軍"が真実を解き放ち、悪を暴き、追い詰めているからだ。"病院空軍"は、本日をもって"第2ステージ"への移行を宣言する。我々は、君の味方だ。傷つけられ、失われたプライドを取り戻したいと願う者に、我々は手を差し伸べよう。後は、君が立ち上がるだけだ」
謎のハッカー集団"病院空軍"の犯行声明がネットの海に向け発信される。
しかし、コロナ騒ぎの中、この手の声明は乱発気味で、誰も振り向かない。
でも、目の前でキングを拉致された僕達は、例外だ。
キングを取り返せ!テロリスト"病院空軍"を追え!
最先端ドローン技術のスタートアップ、バスカ社のスカイCEOは売国奴ではない。
では、彼女アカで防衛機密をダウンロードしダークウェブで競売にかけたのは誰?
何者かがヘヴンにスカイを誘拐させ、彼女アカで防衛機密を違法ダウンロードしたのだ。
つまり、スカイが誘拐されたのは、違法ダウンロードが行われる前、と逝うコトになる。
つまり、スカイは誘拐された後で売国奴の汚名を着せられて、ハメられたのだ。
実行犯は、確かにヘヴンだが双極性障害の彼女を操った真犯人が何処かにいる。
ソレが誰かは、ヘヴンに聞くしかないw
彼女をイスに縛り慣れない尋問を開始←
「何するの?私をどうするつもり?貴方達は何処まで知ってるの?」
「全部知ってる。君とココへ来る前からな。君がスカイを誘拐し、防衛機密を盗み競売にかけたんだ」
「何ソレ?証拠は?」
「簡単だ。バスカ社で唯一、スカイのPCを操作出来る立場にいるのは君だけだ」
「ねぇ、ソコのメイドさん!貴女の御主人様は狂ってる!どうかしてるわ!」
「ソレは、御屋敷でも頭痛の種なの。専門家にも相談したケド、結局よくわからずじまい。ゴメンナサイね。諦めて」
「証拠がないわ!さっきの自供なんてウソぴょん。私は双極性障害!」
「あのね。ココは法廷じゃない。僕とメイド長は、君がやったと確信スル。アキバでは、ソレで十分ナンだ」
「お願い!彼を止めて!私、殺される!」
「大丈夫。恐らく殺されはしないわ、多分だけどwだから、テリィ様にお答えして」
「では、今から君の肉体を破壊スルが、僕は血を見るのがダメなんで、君には窒息してもらうコトにスル。手足って、窒息させられルンだケド、知ってた?酸欠にすればいいんだょ。使い物にならなくなる。呆気なく。永遠に。さぁ。左手に別れを告げる時間だ。この紫色は…わあっ!既に細胞が壊死を始めている!大変だっ!大丈夫デスかっ?!」
「…貴方が慌ててどーすンの?でも、もうヤメテ!全ては秋葉原駅のコンコースにあるコインロッカーょ。キーは、私のポーチに…」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
早速、ミユリさんに駅のコインロッカーを開けに逝ってもらう。
僕は、その間に"潜り酒場"オーナーのミントさんに話を聞く。
「前にテリィたんから話を聞いて、ココがアキバ方面へのインターネット幹線に近い好立地と知り"ハッカーバー"をやるコトを思いついたの。お陰で色んな人が集まるようになったわ」
「で、あの"病院空軍"とか逝うアジア人達は、いつ頃から来るようになったワケ?」
「あの人達ね。覚えてる。毎回決まった時間に来ては、誰かを連れ出してたわ…あの人達、ゲートのX線で見たら銃を持ってるのょw」
「危ねぇ。送り狼しなくて良かった」
「あらあら。追わなくて正解ょ。そもそも、
ゲーセンにリアルな銃を持ち込むなっての。中にシューティング(ゲーム)がイクラデモあるンだから」
ココは笑うトコロ…なの?笑
「ところで、ウチの地上の子…あの黄色いヘルメット被った子達なんだけど、その"病院空軍"だっけ?車のナンバーを控えてマスけど。ソレから、その"病院空軍"の車を尾行してたSUVのナンバーも」
「え?もう奴等には尾行が付いてるの?でも、ありがたい。ちょっちココに入力してょ」
「ハイハイ。え?全国犯罪情報センター?何コレ?テリィたん、面白いアプリ入れてるのねぇ」
いや。サリィさんのアプリなンだw
で、ミストさんが教えてくれたナンバーを調べてみたら…盗難車だょ、残念←
でも、その盗難車を追っかけてたSUVの方は…おおぉコレは手に負えないょw
"車両識別番号"と逝うのを書き取って、サリィさんにメールする。
暫くして返信が来たが、結局逃げられちゃったが尾行していたのは…
え?内閣情報調査室?
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ゲーム機でした」
ミントさんのスマホに駅のコインロッカーを見に逝ったミユリさんから連絡が入る。
しかも、起動してみたら1つのゲームソフトしか入ってナイらしくて…専用機かな?
しかも、最近まで延々と50時間以上もプレイしているのに、全く得点した形跡が無い。
一方、ゲームキャラをモチーフにしたアバター同士のチャット機能は頻繁に使ってる。
ゲームのチャット機能で誰かと連絡を?
相手は誰か?そんなコト、一目瞭然だ。彼の元妻だ。
以前"闇のゲーセン"騒ぎの時もそうだったからな。
しかし、再婚もせズせっせとアバター同士の会話に励んでルとは泣ける。良い話だw
あの時は、元妻ラビリーヌの方から辿りソコで僕とキングは初めて出会ったンだが。
あ、ラビリーヌは、僕の出世作?特撮番組"地下鉄戦隊メトロキャプテン"に登場スル悪の女幹部で、元妻に演じてもらっていたが…
「テリィ様!とりあえず、ラビリーヌと連絡をとってみます!」
彼女は、ミユリさんの古馴染みでもアル。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「テリィたん?わあ!久しぶり!コロナで会社お休みでしょ?毎日何やってンの?暇なら"メト(ロ)キャプ(テン)"の続編、早く描いてょ!」
「おおぉ!ラビリーヌ!元気そうだなー。あれ?最終回以来かな?」
「そうよ。私と貴方は、最終回で悪も正義も捨てて"愛の逃避行"に走ったのよ?続編があって当然でしょ?良い子をお待たせしちゃイケナイわ!大人になって数字(視聴率)が逃げちゃう」←
ほどなく、ミユリさんからZUUMが来て、僕はPCの画面一杯のラビリーヌと話す。
生活感が溢れるマンションの1室で、背後にミユリさん、遠くベビーの声もスルw
あれ?シングルマザーだったっけ?
まぁ公称アラサーだしな。しかし…
「ところで!キングとは、未だ仲良くしてルンだな。実は、彼が誘拐されて国家の危機ナンだ」←
「またまたぁ。ゲームコンテか何かで煮詰まってるワケね?ミユリを使ってネタ探し中なの?と逝うコトは…まだ、ミユリと続いてるのね?うーん、ミユリ。貴女みたいな天下一品メイドならIT長者でも何でも選り取り見取りでしょうに。何でテリィたんなんかに引っかかってンの?」
「テリィ様はね、コレでなかなかテクニシャンなのょwで、さっきもキングからチャットが来たンだって?」
おお!ソレを早く逝えょ!
「そーなの。実は…あの人とは定時にチャットしてルンだけど…」
「あのなぁ!ラビリーヌ、お前らこそ何で別れないンだょ!」
「テリィ様!黙って!…続けて?ラビリーヌ」
「いやよっ!テリィたんが"メトキャプ2"で絶対に私を使うって約束しない限りは何も話さないわ!」
「ソ、ソレは僕の一存じゃ…ってか、ラビリーヌが今、ソコで本読みしてる"催眠術師に寝取られ妻が悪役令嬢に転生して仕返しセックスする件"って、ソレって、もしかしてAVだょな?AVに出られちゃうと困るンだょ。一応、"メトキャプ"は子供向け番組だから」
「仕方ナイでしょ?生活がかかってルの!ソレに"メトキャプ"以来、スッカリ悪役キャラの仕事ばかり回って来るのは誰のせい?」
「ソレ、僕のせいか?イメージ固定は"メトキャプ"が悪いのか?ソレに悪役はともかく、問題は"令嬢"の方だろ?アラサーで令嬢はナイょ。(AVを)買う方の迷惑も考えろ!」
「あ、全世界のミユリを含むアラサーを敵に回した?もうキングの近況とか、絶対に教えてアゲない!」
「まぁまぁ。テリィ様は口は悪いけど、貴女の深ーい胸の谷間には全幅の信頼を置いてルの。私、負けたわ。妬けちゃう」
「ツルペタのミユリがソコまで自虐した?と逝うコトは…国家の危機ってホントだったのね?!わかったわ!話します。実は最後のチャットは数秒で切れた。恐らく誰かに遮断されたンだと思う」
「じゃ、一言も話してナイのかょ?」
「YES。でも、あの人が発したメッセージは確かに受け取った」
「そのメッセージとは?」
「チャットルームの背景が変更されてた。その背景は…」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"ホントウダ・メイドッグス"。
地下アイドル通りの再開発ビル1Fにある大箱の路面店だ。
国民的ハンバーガーショップが撤退後に居抜きで営業中。
いや。ホントに営業中ナンだ。
コロナで周りは死の街なのに。
イートインも開いてて、営業自粛で居場所を失くしたアキバ難民が吹き溜まってる。
ドッグとバーガーの見分けも認識しない連中がsocial distance完全無視でひしめく。
アキバの魑魅魍魎が大集合って感じで"潜り酒場"よりコッチの方がよっぽど怪しい。
恐ろしく不味いドッグをお盆に載せてウロつくヤタラと無愛想なメイド達も実に残念。
僕は、泥の味がする珈琲をすすり、一段高いカウンター席から店内を振り返る。
アウェイだが奥のテーブルにいるサラリーマンとJKの援交カップルだけは味方w
ソコへ、同じ色のメイド服に仏頂面(激レア)のミユリさんがフラリと店に入って来る。
僕や援交カップルには目もくれず、入店した歩調のまま店を横切りキッチンへ消える。
「"外神田π"から"パレス"。ホールからキッチンへ潜入」
「ROG。バックアップチーム"外神田6"がホールに展開中。フラミンゴ(僕?)も御一緒ょ。ミユリ、アキバの全ヲタクが見守ってる。最善を尽くして」
「キッチン奥の冷凍室から場違いなサラリーマンが出て来たわ。地下室とかアルのかもしれない。突入する」
耳に仕込んだレシーバーでミユリさんと司令塔役のジュリとのやりとりをモニターする。
今回は、色々と貸しのあるストリートギャングとの協同作戦。アキバの一大事だからね。
しかし…
「えっ?"外神田π"!ミユリ、ダメょ!バックアップチームを待って!今、向かわせるから」
「あ、この冷凍室はエレベーターになってるわ!地下へ降りてくw音声は?音声はモニター出来てる?」
「"外神田π"、安心して。画像、音声共に完全にモニターしてる」
「エレベーターのドアが開くわ…えっ?コ、ココは…ゲームセンター?」
え?ホットドッグ屋の地下に秘密のゲームセンターだと?
とりあえず、冷凍室へと殺到する僕と援交カップルだが…
「動くな!両手を頭の後ろで組んで跪け!」
何と店内の不良メイドが一斉に拳銃(グロック26)を抜いて僕と援交カップルに突きつける!
コイツら、メイドじゃナイ?ヤタラ慣れた動作で僕達を跪かせて縛り上げるw
その頃、地下のゲーセン?では…
「テリィ様!どうしたの…ああっ」
「やれやれ。イキのいいメイドさんだ。誰に雇われたか知らんが寿命を縮めたな。手を上げろ!」
「手を挙げるのは貴方の方!動くな!警視庁公安部外事二課よ!全員逮捕する!」
ココでサリィさんの声。
「ミユリさん、無事?ねぇ。話すコトがたくさんアルわ」
第4章 貧しき者達の48時間革命
その呟きは、ネットの海に埋没しつつある。
「我々"病院空軍"は、ドローンを用いたコロナ革命により世界経済のリセットに成功した。しかし、ソコで我々を待っていたのは、混沌と闇だった」
「マスクを守れ!私達のマスクを守れ!」
「我々は暗黒の未来を招いただけなのか?我々が描いたコロナ革命の未来は色褪せた。いや。コロナ革命は…革命ですらなかったのカモしれない」
「マスクを守れ!私達のマスクを守れ!」
「コロナがリセットした世界経済に、誰かが再び魂を吹き込む時、ソコで始まるのは進化なのか?それとも…退化なのか?」
「マスクを守れ!私達のマスクを守れ!」
「世界中で殉教者がコロナに命を捧げ、初めて世界経済は進化を遂げる。殉教者の屍を踏み越え、やっと手にした神となる運命を、我々は今、自ら捨てようとしている」
「マスクを守れ!私達のマスクを守れ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
さて、世界がコロナに喘いだ"暗黒のGW"の最終日、最後のピースが出揃う。
ジグソーパズルの全体像がボンヤリ見えて来るケド今回は余りに全てが朧げw
先ず、ミユリさんが発見した"ホントウダ・メイドッグス"の地下にあったゲーセンは、テロ集団"病院空軍"の"地下司令部"だ。
ソコには、ズラリと遠隔操作のドローンシステムが並び要員が2人1組で配置されている。
左にドローンを飛ばすパイロット、右に…ウイルス散布のボタンを押すオペレーターだ。
この集中コントロールルームから通信衛星を介し遠隔操作で世界中にドローンを飛ばす。
驚くべきコトに、彼等はシフトに合わせ出勤しゲームオーバーでリアル帰宅する勤め人。
世にも珍しい通勤型のテロリストw
確かに、ドローンは航空機ではなく無人航空システムだから…実戦/飛行経験は必要ない。
しかし、既に国際的な戦闘機市場の10〜15%は無人機で、至近5年で需要倍増とのコト。
熱線追尾ミサイルやジェット機に捕捉される心配が無く、かつローテクなドローンは化学兵器のプラットホームに最適とも逝われる。
まさに"貧者の空軍"だ。
ところで、この"病院空軍"の地下司令部が、今回の新型コロナの世界的流行に果たした役割は、現時点ではあくまで評価不能だ。
スカイ誘拐からアジト急襲までの時間に因み、事件は後に"48時間革命"と呼ばれるが"病院空軍"のスポンサーを含めて謎が多い。
コロナのパンデミックに続く、次の"第2ステージ"が何だったのかもわからず仕舞い。
"地下司令部"に集ったテロリストや、ソコへ誘拐された者の素性もわからないママだ。
例えば、ヘヴン。
可哀想な生立ちが抱かせた社会への復讐心が彼女を"病院空軍"の地下司令部の立ち上げやスカイの誘拐へと走らせた、とのコトだ。
そうした人材を、アキバの底辺から拾い集めて"病院空軍"は、自らの計画を進化させ、或いは道しるべとして来たのかもしれない。
そして"計画実現"の暁にヘヴン達に訪れる運命は、恐らく"消去"だ。
あ、サリィさんからの情報では、スカイは"司令官候補"だったらしい。
やはり、双極性障害のヘヴンに"司令部"を任せるのを誰かが心配したのだろうw
あ、ソレから地下へ突入したメイド部隊?のリーダーは案の定サリィさんらしい。
実は、太平洋を挟んだ両国は早くから"病院空軍"のテロに気づき阻止に動くも、全ての情報はアキバで途絶えて最後の1手を欠き…
まぁソレを僕達に託すコトにw
後で聴くと、僕達の動きは太平洋両岸の各種諜報機関に完全にモニターされ、最後の突入時には日米の諜報員がメイドのコスプレで…
うーん確かに金髪とかいたなw
扉をこじ開け"冷凍室エレベーター"の天井に飛び降りたメイド達は、そのママ"地下司令部"へと殺到し、全員をホールドアップ!
直後に僕達(ミユリさんもw)も店の外へ放り出され…その、実は、ソレっきりナンだ←
あ、しばらくしてからキングと思しきアバターが話しかけて来たょ例の"専用機"で。
"なりすましログイン"してチャットする。
「キング!無事で良かった!でも"貧者の空軍"のエースパイロットになり損ねたね」
「笑えょ。ところで…テリィたんは"病院空軍"がヘヴンを無理に引きずり込んだと思ってるようだけど、どうやら違うようだ」
「えっ?そーなの?」
「実際は、ヘヴンが金に困って"病院空軍"に協力を提案したらしい。所詮は金目当てさ。双極性障害も関係ない。"司令部"のアキバ誘致も彼女の発案だ」
「やれやれ。ヤタラ手数の多い女だったンだな。でも、キング。ナンでソンなコトを教えてくれるの?」
「もうハッカーは懲りた。コレからはゲーマーに徹するつもりさ。だから、また"闇のゲーセン"にコモろうと思って」
「そりゃ良い判断だ。でも、その前にラビリーヌと再婚しとけょ…って、何で教えてくれルンだ?」
「うーん"ゲーセン籠り"の前に、テリィたんにだけは教えておきたかったンだょな。テリィたんは…真実を知るべきだ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
全てのヲタクは、最終的にはアキバと一体となる運命にある。
僕達は、みんな同じ、アキバと逝うエネルギーの一部なんだ。
だから、大切なのは共感。
アキバは、分けるコトの出来ない一体化した有機生命体だ。
決して休むコトなく、永遠に流動し、波動し続けるだろう。
確かに、孤独は創造性を育み、隔絶した環境は偉大な芸術を産む。
だが、僕達ヲタクは、孤高の存在であるより群体である道を選ぶ。
だから、そこから生じる軋轢に目を瞑るコトは、許されない罪となる。
つまり、この街は刑務所。そして僕達は自ら名乗り出た受刑者なんだ。
だから、今日も僕達は罪を償う。
秋葉原と逝う名前の、この街で。
おしまい
今回は海外ドラマでよくモチーフになる"ドローン"をネタに、最新型ドローンで"コロナ革命"を企む国際テロリスト集団、彼等に翻弄される秋葉原のスタートアップCEO&CTO、革命阻止に活躍する諜報部員などが登場しました。
海外ドラマで見かけるNYの都市風景を新型コロナでパンデミック下の秋葉原に当てはめて展開しています。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。