第四章 疑惑
それから工藤達三人は剣術の猛練習や、字の読み書きを猛勉強し、その劇的な成長にレアは驚いていた。
〜一週間後〜
「よぅしっ‼︎お前達、強くなったなぁ!これだけやれば充分だ!盾とのコンビネーションや剣の切っ先を必ず相手に向ける事!それを忘れるなよ!」
バルトはまたガハハと笑うと、今までの練習時に使っていた鉄剣では無く、新品の剣を何本か三人に見せた。
「ブロードソード、ツーハンデッドソードのどちらかをお前達にやろう。鍛冶屋卒業祝いってやつだな!」
三人は歓喜したが、鈴木は壁に立て掛けてある一つの細長い剣を見つけた。
「あの剣は何ですか?」
鈴木が聞く。
「ん?そいつか…。そいつはレイピアと言って、対人用の剣だ。体躯のデカい魔物相手にはまず使えんだろう。」
鈴木は納得するが、工藤はふと、この世界の剣が自分達の世界と同じものが多い事に気がついた。
「あの、この剣達ってもしかしてオリジナルじゃなかったりします?」
工藤がバルトに遠回しに聞くと、バルトはしてやられた顔になった。
「ほぉ…そこに気がつくとは…やられたのぅ。ご名答!この数種類の剣は元々王国から入って来たものだ。」
「もしかしてその王国にも僕達みたいに変な名前の人が居たりしませんでしたか!?」
工藤がバルトに身を乗り出して聞くと、三島と鈴木はやっと話が分かったかのように頷き、同じように身を乗り出した。
「んーと、そうだなぁ…。
あっ!そう言えば、当時の王国の兵士長さんの名前が少し変だったと聞いたなぁ!」
「どんな!?」
三人は興奮が最高潮に達していた。
バルトは少し驚きながらも、その名を口にした。
「ユーキ・コバヤカワとか言ってたな。」
「なんだって!?」「なんですって!?」
三人は頭が真っ白になり、バルトは困惑した。
「なんだってんだお前達?当時と言っても60年も前だ。俺がまだ3歳だった頃だぞ?どうしてお前達がその名前に反応するんだ?」
「「「えっ?」」」
三人は更に頭が混乱すると、追い討ちをかけるようにバルトが言った。
「でもその人、剣を輸出して来た5年後に事故かなんかで亡くなったらしくてよ。
…確か同時期だったかな、ホープの野郎が村に来たのは。」
バルトの言葉を聞き、三人は何が何だか分からなくなった。
「…そのユーキ・コバヤカワって人、私たち知ってるわよね?」
三島が工藤と鈴木に恐る恐る聞く。
「知ってるも何も、失踪したアイツじゃないか…。」
工藤は頭を抱えながら呟いた。
すると鈴木は、ある疑惑を口にした。
「ホープさんがこの村に現れたのと同時期に亡くなったんだよね?どちらにせよホープさんは何か知ってるはずだよ。村に現れる前は王国の兵士をやってたってレアさん言ってたじゃない!」
鈴木の話を聞き、新たな疑惑が工藤の頭に浮かんだ。
「あるいは…あのホープさん自身が小早川勇希なのか…?顔を隠す理由も、かつての兵士長だから…とか?」
バルトは小声で喋る三人に剣の話を再開した。
「ほらほら!剣を選べ!剣を!」
結局その日は工藤がツーハンデッドソード、三島と鈴木はブロードソードに決まり、レアの馬車で宿に帰ったが、三人とも小早川勇希の話で頭がいっぱいだった。
三人は宿のリビングに集まり話し合った。
「小早川勇希が失踪した原因は間違いなくこの世界に来たからだ。」
「でもどうして私達と来た時代が丸々違うの?」
三人はまずそこで思考が停止していた。
(そうだ。どうして時代そのものが半世紀もズレてるんだ?長生きしてるホープさんなら確実に知ってる!どうしてここまで知って置きながら、あの人は俺達に何も言ってくれなかったんだ!
…そうだっ!)
工藤はある事を思い出し、二人に提案した。
「指輪だよ!この魔力が込められた指輪を使えば、あのホープさんの場所が分かる!明日は皆でホープさんを捜すんだっ!」
「だけど、森には魔物が大勢居るはずよ!私達じゃ戦えっこ無いわ!」
三島が反論し、鈴木が頷く。
「…そうか。そうだよな。」
工藤も頷き、今日の話し合いは終わった。
寝室で横になった工藤は、まだホープ捜索を諦めてはいなかった。
(確かにあの二人は危険だ。でも男の俺なら何とかやれる筈…。どうしても真相を知りたいんだっ!)
決意を固めた工藤は、夜空に月を探すが、雲で隠れており、燻んでいた。