第5話 今日は何の日?
パシリの日。
前回の依頼から二週間後、今日は久々に依頼人が来るということで、部室には4人全員が集まっていた。
ソファに行儀悪く座っていた稲葉先輩が、ぽつりとつぶやいた。
「秋菜、パン買ってこい」
突然何を言い出すんでしょうか、この人は。
「俺は腹がへった。部長命令だ。今からお前を食料調達班に任命する!」
いわゆるパシリ班ですね。
そう言って稲葉先輩は、釣りはいらんと言って10円玉を渡してきた。私は無言でそれを受け取る。
これはもう明らかですね。いじめですね。
「理奈先輩〜〜〜〜!!」
私はソファに行儀良く座って本を読んでいる理奈先輩にすがった。しかし、そんな理奈先輩の口からは思っても無い返事が返ってきた。
「あら、私もいいのかしら。じゃあメロンパンをお願い」
そういってにっこりと微笑んだ。ああ、その笑顔が眩しいです……。
「健吾先輩〜〜〜〜〜!!」
飛びつくように駆け寄ったが、先輩は眉一つ動かさずに、
「俺はカツサンドだ。これだけは譲れん」
と、断言した。
いやいや、譲る以前の問題が発生しているんですが……。
そして私は再び稲葉先輩を見た。先輩はいつの間にか立ち上がっていて、腰に両手を当てていた。
優越感にひたったような、満足げな顔がそこにあった。
「残念だったな」
「っ〜〜〜〜〜〜!!」
私は声にならない叫びを発し、泣く泣く教室を飛び出した。
十円玉を握り締め、ろうかをつっぱしった。
そして誓った。
必ず、復讐してやると!
―――パン購入後。
見てろよ先輩共!私だけ百円高いパンを買ってやりましたよ!
私が食べているパンを見て、よだれを垂らしながら拳を握り締め、悔しがる先輩方の顔が浮かびます……
フフフフッ……
……………………………はぁ
そんなことを考えながら、私は部室の前まで来た。中からは物音一つ聞こえなかった。
まさか帰っていないですよね?
泣きそうなほどの不安が渦巻く胸を落ち着けながら、私はゆっくりと扉を開けた。
と。
同時に。
「「お誕生日おめでとう〜〜〜〜!」」
いっせいにクラッカーの音がパーーーンッと鳴り響いた。色とりどりのテープが私に降りかかる。
私はあっけにとられて固まってしまった。
室内には至るところに折り紙で作ったリングが飾ってあって、先輩三人が私にクラッカーを向けて笑っていた。
そしてテーブルの真ん中には大きなケーキが置かれていた。
もしかして。これは私のために?
「ほら、秋菜ちゃん、こっちに来て」
私は理奈先輩に連れられてケーキの前に立たされた。
そのケーキにはろうそくが立ってきて、中央に置かれたチョコには happy barthday Akina と書かれている。
思わず目頭が熱くなってしまった。
「………ありがとう、ございます」
私は呟いた。
それからお馴染みの歌を歌ってもらい、プレゼントをもらい、みんなでケーキを食べた。今日依頼人が来ることも嘘だったらしい。
それでも、今日はとても楽しくて思い出に残る日になった。
今日は何の日かって?
私の誕生日ですよ♪




