初詣(BL風味SS)
「ハッピーニューイヤー!」
街はカウントダウンに湧き、所々で花火が上がり、微かに鐘の音が聞こえてくる。一年で一番、世界が賑わう瞬間。
年越し。
日本では一年で最も神社に人が集まる日でもある。神社では、参拝客の邪魔にならない位置に、出店も並んでいる。
「じゅーんー。あけましておめでとー!」
「泰騎。泥酔者は、神社には立ち入り禁止だ」
「え、そんな酔っとらんって」
潤に指摘された途端、真顔になる泰騎。
「……そうか」
大きな神社では人がごった返しているので、町外れにある小さな神社へやって来た。と言っても、ここは東京の中心部。それなりに人は居る。男女のカップルが多い中、泰騎と潤はふたり並んで、賽銭箱へ小銭を入れた。
そして、人の流れにそって、足早に捌けた。
「でも、潤が初詣に一緒に来てくれるとは思わんかったわー。人混みも寒いんも苦手じゃろ?」
「まぁ、誘われれば……」
潤は自分の吐く白い息を眺めながら、呟いた。
神社の隅で配られている甘酒を貰い、白い湯気を見詰める。微かに甘い香りが、鼻腔をくすぐった。冷えきった顔には、温かい湯気が少し、しみる。
潤は甘酒を一口飲み下し、そういえば、と泰騎へ顔を向けた。
「明けましておめでとう」
泰騎は、息より白い歯を見せて笑った。
「今年もよろしく!」
神社を出ると人は疎らで。「早う帰って、お笑い番組観ようで!」と、泰騎が手を伸ばす。
潤は、泰騎の手は温かいな、と思いながら街灯に照らされた道を歩いた。




