表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウサギ印の暗殺屋~短編集~  作者: 三ツ葉きあ
『ウサギ印の暗殺屋~13日の金曜日~』後
24/34

十一月十一日(BL風味SS)



「今日は“ポッキィとポリッツの日”なんですよー!」


 叫ぶと、紅一点はデスクの上に箱をぶちまけた。菓子の箱だ。

 ポッキィと、ポリッツの。


 “11月11日”は、“1”という数字がその菓子の形状に似ている事から、日本記念日協会から認定を受けて誕生した、記念日だ。

 つまり、菓子会社が作った、菓子の記念日である。


 《P×P》幹部の紅一点である恵未は、目を輝かせながら箱と、その中にある小袋を開け、棒状のチョコレート菓子を頬張り始めた。

 現在は勤務時間中だ。にも関わらず、そんな彼女に「仕事は?」等と訊く者は居ない。

 因みに今、この“所長室”に居るのは、所長と恵未のみだ。


「恵未ちゃーん。ひと箱頂戴(ちょーでー)


 所長は、二十はあるであろう菓子の箱を指差した。

 恵未は「勿論です! 泰騎先輩の分もありますよ!」と、赤が基調となっている箱を、所長である泰騎へ差し出した。


「ありがとー。これでポッキィゲームしよーっと」


 所長は、何やらご機嫌である。


「ポッキィゲームって、何ですか?」

「えっとな、ふたりでポッキィの端と端を咥えて、食べ進めていくんじゃで」

「なるほど! 多く食べた方が勝ちなんですね!」

「あー、ちょい違うけど、まぁ、恵未ちゃんにとってはそうかもなぁ……」


 泰騎が曖昧な返事をしていると、所長室の入り口が開いた。

 入ってきたのは、地味顔黒髪の尚巳と、イケメン白髪の凌だ。

 通常より一時間ほど遅い時間に戻ってきた。


「今日は折り紙の日なんで、施設の子どもたちに折り紙をプレゼントしてきたんですよ」


 ふたりは微妙に揃いきっていない声でそう言うと、各々のデスクへ着いた。

 凌の目が恵未を捉えた時、何でこいつは仕事もせずに菓子を食ってんだ? と言ったように見えたが、言葉には出されなかった。


「ところで、何で泰騎先輩は超ご機嫌なんですか?」


 凌が恵未を睨んでいる横で、尚巳が泰騎に向かって疑問を口にした。


「恵未ちゃんに、ポッキィ(もろ)うたんよ。これで、ポッキィゲームしよ思うてな」


 にこにこ……否、ニヤニヤしている所長に「誰と?」と問う者も、この場には居ない。相手が分かりきっているからだ。


 そうこうしていると、また入り口が開いた。

 入ってきたのは、ひょろ長い体の紫頭。訊いてもいないのに、今まで何をしていたのかを報告してきた。


「今日は、電池と配線器具の日だからさ。ウチの部署の配線を一部新しくしてたんだよねー」


 報告を終えた倖魅は、きょろきょろと辺りを見回して小首を傾げた。電池と各種配線の領収書を持って。


「あれ? 潤ちゃんは?」

「潤先輩なら、何かの書類を持って本社に行ってたわよ」


 もうすぐ帰ってくると思うけど。と恵未が言った時、入り口から、赤い目をした生白い肌の、男か女が分かりにくい顔をした人物が入ってきた。

 それと同時に、倖魅が領収書を押し付ける。


「潤ちゃん! 受け取ってー!」


 潤は、ああ、と領収書を受け取り、自分のデスクへと向かった。

 隣では所長が、ポッキィの箱を、見せ付けるように持っている。何かを訴えるような熱視線を、潤へ向けて。

 だが、潤にはその視線の意味が読み取れない。

 やきもきした泰騎は、痺れを切らして叫んだ。


「ポッキィゲーム、しよー!」

「いや、今は甘いものは要らないから」


 さらっと言い(かわ)され、フリーズする所長。

 そんな彼に向かって、今度は潤が、コンビニで買ってきた、と白い買い物袋を向けた。

 所長はきょとんとして、ビニールの袋を受け取る。中身は、ナッツ類と数種類のチーズ。


「今日はピーナッツとチーズの日だからな。今日の晩酌用」


 自分は酒を飲まないのに、わざわざ買ってきたらしい。

 泰騎はポッキィの箱と袋の中身を交互に見やり、唸った。


「う、あ……。ぁぁあぁ…………。…………、うん。ありがと。今晩、一緒に食べよ」


 潤に向かって白い歯を見せて笑うと、泰騎はポッキィの箱を開けた。



 


11月11日は、色んな記念日だなぁー……と思って書いたお話であります。

記念日、書ききれませんでした(笑)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ