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ウサギ印の暗殺屋~短編集~  作者: 三ツ葉きあ
『ウサギ印の暗殺屋~13日の金曜日~』辺り
18/34

友達いるかな(凌の休日SS)




「付き合ってください」


 半月ほど前、オレに向かってそう言った女性が、目の前に現れた。


 彼女は、営業先で世話になっているアパレル店員だ。年齢は二十代前半。詳しくは知らない。

 キャラメル色の髪に、目には付けまつげ。真っ赤な唇は、ラメ入りのグロスが塗られて、テラテラしている。


 スケジュール帳の補充をしようと街へ出たら、ばったり遭遇してしまった。


芹沢(せりさわ)くーん! 偶然だね!」


 こんな感じで。


 咄嗟に、頭と表情を営業モードに切り替える。


「小林さん、こんにちは。今日はお休みなんですね」


 精一杯笑うと、相手はすがるような上目使いで近付いてきた。


「芹沢君のお友達でぇー、よさ気な人がいたらぁー、今度紹介して下さいねぇー!」


 間延びした喋り方で、そんな要求をされた。

 この前、オレに告って来たよな? まぁ、丁重に断ったけど。しかし、自分をフッた相手に、よくこんな事が言えるな。

 っつーか、オレの事が好きだから告って来たんじゃねーのか?

 移り気、早っっ!


 これだから、女は苦手だ。


「小林さんに見合う奴がいたら、紹介しますね」


 テキトーにあしらって、テキトーにその場から立ち去った。


 数十歩進んだ辺りで、ふと、足を止める。


 あれ?

 オレって、友達いるっけ?

 尚巳とはよく一緒に居るけど、友達ってのとは違うし。

 会社関係以外で……友達……?


 思い付かない。

 いや、待てよ。……と頭に浮かんだ、薄栗色の頭と赤目の男を、頭から追い出す。


 まさか、オレって、友達いないのか?


 何だか胸元がざわつく思いでいると、スマホが震えて、電話の着信を知らせた。

 相手の名前を見ると、一気に気持ちが穏やかになるのを感じた。

 蜂蜜色の髪をした、兄貴肌の友人が脳裏に蘇る。

  

 よかった。いたぜ、友達。


 何かに勝利した気分に浸っていると、電話口で声がした。


『あ、凌。久し振りだな。もうすぐ景が日本(そっち)に帰るっつーからさ。土産もあるし、また都合の良い日を第三希望まで教えてくれ』


 やっぱこの声、落ち着くな。

 潤先輩の次くらいに。


 少し話して、空いてる日は後日改めて連絡する旨を伝えてから、電話を切った。




 オレは、聞いて貰いたい愚痴の内容を考えながら、文房具屋へ向かった。

 

 



『世界の平和より自分の平和』のキャラが出ていますが……。

凌って、知り合いは多くても友達は少ないよな……という話でした。



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