第3話 冒険が始まってもニートがいい
圭吾とサナは家へと帰ってきた。家の前にでかい誰かが立っている。その者とは、前戦ったゴブリンに似ていた。しかしでかい。
「誰かいるな?」
(はぁ…また厄介事か…やめてくれ…今で、もう俺の気分はガタ落ちなんだから…)
圭吾はサナの方を見る。見てみるとサナは青ざめた顔をしていた。そう、こいつはやばいやつだと確信した。
「あの者は…ゴブリン王…ゴブリンの中で1番階級が高いんです…」
「要するにめちゃくちゃ強いって事だよね?」
ゴブリンの王となれば相当強いのだろう。ニートの圭吾は休む時間を与えられずイライラし始めていた。
「今の俺は手を抜かないぞ!!サナ…こいつLvはどのくらいだ?」
サナの顔はまだ青ざめている。圭吾が心配な事も1つある。それはカナの無事である。
「えっと…Lv.80です…本当に強いですよ…いくら圭吾さんでも…」
ゴブリン王は3mくらいの高さで、体がゴツゴツしている。でかい槍を持ち、体は鎧で覆われていた。いかにも強そうだ。しかしゴブリン王は家の目の前で槍を地面に突き立てて、立っていた。
(こいつは倒すのに時間がかかりそうだな…面倒くさそうだ…くっそ!!最悪だ!!異世界なんて!!)
圭吾はゴブリン王へと近づいていく。
「おい!!何のようだゴブリン王!!」
ゴブリン王は圭吾の方へと振り返る。
「あぁん?誰だ?」
ゴブリン王は圭吾を睨む。
「ここは私の家です…何かする気なら帰ってください!!」
サナは圭吾の後ろで怯えながらもゴブリン王を追い返そうとする。まぁ、本当に効果は無いと思うが。
「ここはお前らの家なのか?」
とても低い、怖い感じの声で圭吾とサナに話しかける。
「まぁ俺は住ませてもらってるが、そうだ!!」
(あぁ…早く帰れー邪魔をするなー帰れー帰れー)
ゴブリン王は下を向いて、「そうか」とその言葉を発する。そしてその瞬間。
「ごめんなさァァァァァァァァい!!!!」
ゴブリン王は圭吾とサナに向けて土下座をしたのだ。圭吾とサナは変な声が漏れる。こんなこと予想していなかったからだ。
そしてゴブリン王は続けて土下座をしながら頭を何回も地面にぶつけて謝る。
「ごめんなさい!!ごめんなさい!!うちの子がごめんなさい!!許して下さい!!あんな子供達に育てたつもりはないんです!!本当にごめんなさい!!」
「えっと…前来たゴブリン達の親御さんか何か?」
予想外の事で圭吾とサナは口をポッカリと開けている。こんな強面のモンスターが一生懸命に謝っていのを見ていたら笑ってしまう。
「はい!!ごめんなさい!!本当に申し訳ございません!!どうか!!どうか!!このお詫びの品で許してはくれませんか!?」
(おい!!おい!!おい!!なんなんだよこの展開!!おかしいだろ!!意味わかんねェーよ!!)
「はい…まぁ謝っていただけるのであるなら私達は全然大丈夫です…」
サナはニッコリ笑って、土下座しているゴブリン王を起こす。ゴブリン王は涙を流していた。お詫びの品とはお菓子類だったそうだ。
「せっかくだから家に上がっていってください!」
サナが変なことを言い出した。流石にお人好しな気がしてならない。普通だったら絶対に家には入れないだろう。
「そんな!!そんな!!滅相もない!!私なんかダメですよ!!私は私を許してないんです!!」
なんだこいつは、本当にゴブリンの中の王なのか不安になる。というか、こいつがゴブリン王の事に驚いている。そしてサナはゴブリン王を中へと入れる。カナにも事情を説明すると軽く受け入れた。なんなんだよこの家は、全員お人好しがすぎる。ゴブリン王にはハーブーティーという物(現代でいうハーブティー)を用意する。ゴブリン王は1杯口に入れて、一息つく。
「本当にお2人には迷惑をおかけしました…すみませんでした…」
「いやいや!!大丈夫ですよ!大丈夫です!!もう許してますから…心配しないでください…」
こんなに謝られたら、怒ることが逆に恥ずかしい事の様に思えてきてしまう。
「ちょ、ちょ!ちょちょちょ!!ちょといいかな?」
(おいおい!!1つ忘れてることがあるぞ!!)
晃孝が戸惑いながら、話に割り込む。
「ん?どうしたの圭吾?」
サナは圭吾の方を見て、頭を傾ける。
「ゴブリン王は俺たちの敵側だよ…確実に信じは出来ないだろ!!」
(目の前にいるゴブリンは魔王の手下なんだよ?どういうこと?俺もうニート生活戻りたいんだけど!!さっさと魔王倒して終わりたいんだけど!!)
「でも悪い人には見えないわ!!」
「あ、大丈夫…心配は要らない…私、魔王嫌いだから…滅べって毎日思ってる…」
ゴブリン王はポツリと声を漏らす。凄い衝撃的な事を言っている。
「さらっと仲間のことディスりまくってる!!」
「私はね…世界平和がいいんだ!」
「じゃあお前が勇者であれよォォォォォォ!!!!!」
そしてゴブリン王はハーブティーを10杯飲んだ後、帰って行った。そして家に3人だけになったその時、
「ねー!!お母さん!!」
サナが元気よくカナに話しかけた。
「なんだい?」
「今日圭吾さんの権利を確かめに行ったら!!圭吾さんは勇者だったの!!」
この事実を聞かせたあと、カナは2、3秒程止まっていた。しかも口を開けたままだ。
「えっ…うそでしょ?」
「いや…本当だよお母さん…」
「絶対にうそ…」
「いや有り得ない…」
「うん…うそ…」
否定のオンパレードだ。圭吾に何の恨みがあるというのだ。
「凄い…否定された…」
(本当は行きたくないからこう言われるのは嬉しい反面心に来るなぁ…というかこんなに信用ないの?おれ)
「じゃあちょっと見せてみて!」
カナは圭吾の後ろへと回る。圭吾は何をするか分からなかったが、しょうがないので従うことにした。
「ま、まさか…」
カナが驚いた声を漏らす。
「どうしたの?カナさん」
「やっぱりあなたは勇者だわ…勇者は代々受け継がれてきた物があるの…」
受け継がれてきた物なんて話は全く聞いたことが無いけど、なんか役に立つ物なら嬉しいと思った。
「それは何?俺には何か分かんないんだけど…」
「背中にあるシミよ」
「なんだそれェェェェェエエエ!!!」
(何?シミ!?意味わかんねェよ!!何を言ってるんだこの人は!!というか…俺背中にシミなんて無かった筈だけど…あれ…あったのか?まぁどっちでもいいや)
シミ。それが代々受け継がれてきた物なんて信じることが出来ない。だってただのシミだ。
「いや!!でもちょっと待って!!確かめに行った時はそんな事1つも言われなかった!」
「だって今決めたから」
圭吾は真顔でカナを見つめていた。カナは圭吾見てにっこりと笑った。
「おいィィィィィィィィイイイ!!!」
一瞬、沈黙が3秒ぐらい続いた。変な空気になってしまった。しかしサナが話を切り出す。
「お母さん!!私は圭吾さんの魔王退治ついて行っていい!?」
カナは驚いた顔でサナのことを見ていた。
(いやいや…普通にこれはダメだろうな…自分の子供を魔王退治なんて…これで俺はニートに戻れる!!役職ニートへと!!)
「いいよ」
「へっ?」
あっさりと承諾した。一切の躊躇いもなく。普通だったら躊躇はするだろう。
「えっと…カナさん?本当に大丈夫…」
「うん、大丈夫よ。光栄なことね」
(たった今、僕のニート生活が終わりを迎えました。)
サナが仲間に入った。そしてそれの代償として圭吾のニート生活は終わった。しかし圭吾は完全に諦めはしなかった。
「圭吾さん!!じゃあ明日は5時に家を出ます!!」
「起きれるかなぁ?」
(アホか!!お年寄りか!!ニート生活にそんな早起き必要ない!!というか二度寝させろ!!)
そして次の日、サナが圭吾を起こし、圭吾は朝起きの辛さを初めて思い知った。圭吾はいつもだったら必ず10時より後に起きるのだ。こんなに寝なかったのは初めてなのだ。そしてご飯を食べて、魔王倒しの冒険へと旅立った。
「まず何処にいくの?」
圭吾は全く場所が分からなかった。縁もゆかりも無い土地で分かるはずもない。
「スライムの森を抜けてボールドタウンに行きます!」
「OK!」
そうして圭吾達はスライムの森の入口へと着いた。
「いや…もうなんか…森の名前が完全にスライム出ますよって感じじゃん…」
(面倒くさそうだ…あぁー帰りたい)
「そうですね…スライム…これは過酷な旅になりそうです」
スライム如きでこの人は何を言ってるのだろうと思った。そして圭吾達は森の中に足を踏み入れていく。そうすると草陰から1匹の丸い緑のスライムが飛び出してきた。
「あ、スライムだ」
そう言いながら、スライムの前を通り過ぎた。鳥男の時の必殺無視攻撃だ。スライムは驚いた顔で圭吾を見た。
「ポヨ!!ポヨポヨ!!ポヨ!!ポヨポヨポヨ!!ポヨ!ポヨポヨ!」
「こいつ何言ってる!?分かんないんだけど!!俺たちに分かるように喋れよ!!」
まぁこの喋り方がスライムらしいとも思い始めていた。
「何で!!私を!!無視!!するんだよ!!ちょっと!!お前ら待てよ!!」
「初めからそれで喋れよお前ェェェェ!!」
圭吾はスライムを斬り捨てた。スライムは一撃で撃沈した。ドロップしたアイテムは<ジェル>と<10トレッド>だった。完全に雑魚中の雑魚だ。そうしてまた圭吾とサナは前へと歩き出した。そうすると奥から物凄いでかい男が歩いてくる。姿はドロドロな紫色の液体を身にまとっていて気持ち悪い。そしてその男は圭吾達の目の前で止まる。
「あ…」
サナが圭吾の後ろに隠れる。ということはこいつは相当強いのだろう。
「こいつ…何?なんレベ?」
「スライム王…Lv.80です…」
Lv.80。何故冒険の始まりからこんな敵に戦わなければ行けないのか、ゲームだったら完全のクソゲーだ。
「お前ら!!うちのやつをよくもやってくれたな!!」
スライム王は怒っているようだ。さっき斬ったスライムはこいつの子供だった様だ。
「俺の名前はスライム王ぷにぷにだ!」
「名前可愛いィィィ!!!!!!!!」
流石に吹き出した。可愛すぎる、笑わない訳が無い。
「それに魔王の幹部の1人だ」
圭吾はまた吹き出した。今度は笑いでは無く驚きだ。
「えっと…幹部ってどのくらいいるの?」
(幹部が少なかったらすぐに魔王倒して終わりだ!!)
「数えきれないほどいる」
「えぇ…」
(ふざけんな!!!!!!!!)
スライム王は戦闘態勢に入る。圭吾もまたブレイブソードを鞘から抜く。
「ぷにぷにがお前を打つ!!」
「名前名乗るの反則だァァァァァ!!!!」
笑って戦闘所では無くなってしまう。
「笑ってられるのも今のうちだ!!行くぞ!!」
そうしてスライム王は手に紫の液体を溜め始めた。そして圭吾へと飛ばす。
「おいおい!!なんだこれ!!」
「毒とかじゃ無いですか!?圭吾さん一応当たらないで下さい!!」
サナが圭吾に忠告を入れる。紫ということは毒の可能性が十分にある。
「いや…ただの液体だ…」
「ただただうざいだけかよ!!!!」
紫といってもただのスライムの様だ。
「行くぞ!!スライムラッシュ!!」
スライム王は両手に紫の液体を溜めて、何度も圭吾へと投げる。圭吾はその液体が飛んで来るのが良く見えた。というか遅すぎる。ブレイブソードで液体を全て斬っていく。
「ふぅー!!よし!!どんどん来い!!」
やっと戦うやる気が出てきた。勝負は始まったばかりだ。
「参りました…」
「へっ?…」
決着が着いた。勝者は圭吾の様だ。
「はぁ!?なんだよ!!こっからだろ!?」
「もう技がありません…技はこれしか考えていません…というか技って覚えられないんですよねぇ…作者もよく考えないし」
「作者って言うな!!!物語なの!!てめぇで考えろよ!!」
スライム王はLv.80のくせに、技を覚えるのが得意では無く、このLv.になっても弱小だった。
「でもこれだけの出番じゃ嫌なので…仲間にしてください…」
「ふざけんな!!仲間にするか!!アホか!!技覚えられないやつなんて居ても意味ねぇだろ!!」
スライム王のぷにぷにが仲間になった。
「おい作者ァァァァァァァァ!!!勝手に決めるなァァァァァァァァ!!!てか作者って誰だよ!!」
いや…しょうがないから…仲間に男ほしいじゃん?そうでしょ?女だけだったらハーレムの話になっちゃうじゃん
「どこからか声が聞こえる!!!!!うるせェェェェ!!」
そうしてスライム王を仲間に入れて、スライムの森を抜けた。ボールドタウンと書かれた看板を見つけた。遂に入口まで来たようだ。
「着いたァァァァァァァァ!!」
圭吾達は中へと入って行く。
「どういう人がいるんでしょうね?」
「そうだね…」
(魔王いて!!そうすれば倒してニート生活に戻る!!完璧だ!!魔王!!いてくれ!!)
前に1人の男が通り過ぎた。禿げている。
もう1人女が通り過ぎた。禿げている。
子供が前を通り過ぎた。禿げている。
老人が前を通り過ぎた。やっぱり禿げている。
「みんな禿げてんじゃねェーかァァァァァァァァ!!!」
ボールドタウン=禿げの街のようだ。
「まず宿屋を探して寝床を確保しよう…」
圭吾達は宿屋を探した。宿屋は見つかったが、やっぱり宿屋の人も禿げていた。しかし宿屋の奥の椅子に座っている女性に目がいった。
「禿げてない…」
その女性は禿げていなかった。




