空の旅
スノードロップの森の母熊のことを知った寒風は、王都に戻ろうとしますが・・・
熊達に挨拶し、寒風と東風はその場を離れようとしました。
すると、母熊に寄り添っていた子熊が立ち上がりました。
「あの、一緒に行っても良いですか?」
その声は、少し震えています。
二人は、子熊の方を見ました。
「チビ・・・」と雄熊は呟きました。
「僕も、冬の女王様に会いたいです。
お願いします!」
寒風は子熊を見ました。
彼の眼差しから、強い意志を感じました。
「そうだな。
君もいた方が、説得しやすいだろう。
一緒に来てくれ」
寒風が言うと、子熊の顔がパッと明るくなりました。
◇◆◇
三人は洞窟を出ました。
森は雪まみれでしたが、洞窟よりも暖かく感じました。
「中は、相当冷えていたんだな」
寒風は言いました。
「それじゃあ、君を僕達の風に乗せて運ぶよ。
乗り心地の保証は無いけどね」
寒風はスッと手を上げました。
子熊に風が集まり、身体が地面から浮き上がりました。
「出発するよ」
三人は、森の木々を抜け、上昇しました。
あっという間に、スノードロップの森も村も小さくなりました。
「怖くない?」
東風が子熊に尋ねました。
「平気だよ!
こんな景色、初めて見た!」
子熊は楽しそうにしています。
「王都まで一気に行くぞ」
寒風が更に風を集めます。
三人は冷たい空の中を、ぐんぐん進みました。
◇◆◇
幾つかの街や山を過ぎ、王都まで残り半分位まで進んだ頃。
三羽の鳩がペチャクチャ会話しながら飛んできました。
彼らの進む方向は、寒風達と真逆。
王都の方から来ているようです。
「人間達も凄いことするよねぇ」
「どんなことになるか楽しみだよ」
「炎風が張り切っているらしいからな」
寒風はピタッと止まりました。
すれ違い様に鳩達に話しかけました。
「やぁ、君達は王都から?」
「おや、寒風さんと東風さん。
こんなところで何やってるんだい?」
白い鳩が言いました。
「ちょっとね。
王都で、何かあったのか?」
「ほら、冬の女王を塔から出す為に人間達が色々やってるだろ。
そんで、でっかい丸太を用意して、扉をぶち破るらしいんだ!」
一番大きな鳩が元気よく言いました。
「何だって!?」
「そんな乱暴なことを・・・」
寒風と東風は、驚きを隠せませんでした。
「いつ、行われるんだ!?」
「日没後だそうだ」
大きな鳩が言いました。
寒風は太陽の方を見ました。
気付けば、かなり西に傾いています。
「すぐに戻らないと・・・」
寒風は眉間に皺を寄せました。
東風は、去ろうとする鳩達に礼を言いました。
「このままじゃ、間に合わないね」
東風も不安そうな表情をしています。
「僕一人なら、日没までに到着するだろう。
二人は、後から来てくれないか?
王都に着いたら、応援を来させるから」
「分かった。頑張ってみる。
女王を助けてあげて」
東風は微笑みました。
しかし、顔色は良くなさそうです。
「すまない、行ってくる」
寒風は、全身に冷たい空気を集めました。
そしてそれを一気に噴射するかのように、加速しました。
寒風はあっという間に見えなくなりました。
「さぁ、僕達も行こう」
東風は子熊に言いました。
「うん!
でも、東風さん、無理しないでね」
子熊が言いました。
「大丈夫だよ、ありがとう」
東風と子熊はゆるゆると空を進み始めました。
大変なことになりました。寒風は無事に冬を終わらせることができるのでしょうか? ※挿絵アップしていますが、それぞれの画像の大きさがバラバラで申し訳ありません(涙)