森へ
森に冬の女王の友達がいるかもしれないと知った寒風と東風は、スノードロップの森に向かいます・・・
村のすぐ傍に、スノードロップの森があります。
森の入口には雪が積もり、スノードロップの花が愛らしい姿を覗かせていました。
まるで雪から沢山の白い芽が出たようでした。
「起きている動物がいないか探そう」
寒風は言いました。
東風は頷き、寒風の後ろを飛びました。
地面も草も木々達も、雪で真っ白です。
その隙間から見えるのは焦げ茶色で、春の芽吹きは見当たりません。
動物や虫の気配を感じない森の中を、二人は通り抜けました。
「なぁ、東風。
冬って、本当はいらないのかもな」
寒風はポツリと言いました。
「国民の声を聞いて思ったよ。
皆、凍えて、食糧に困ってさ。
北の果てに行けば、一年中冬の場所がある。
そこにいる動物達は、冬でも寒くないように身体が出来ている。
でも、この国の動物も人もそうじゃない。
わざわざ冬にされても迷惑なだけじゃないか。
女王はそんな国民の本音を知って、腹いせにわざと塔を出ないのかもしれないな」
東風は驚いた顔をし、止まりました。
寒風も止まりました。
「寒風、何てこと言うんだ!?
そんなことはない。
春の女王が言っているよ。
冬は必要だって。
理由は、僕も正直知らないけど。
春の女王は交替する時、冬の女王に言っているんだ。
『今年もありがとう、お疲れ様』って」
「それは、冬の女王を気遣っているんだよ。
春の女王は誰よりも優しく、温かい人柄だからな。
国民も皆、春が大好きだ」
「分かってないのは、きっと君の方だよ。
いいから、早く動物を探そう」
東風は少し怒ったような顔をし、進み始めました。
◇◆◇
しばらくすると、広場が見えました。
原っぱでしょうが、今は雪で蓋しています。
その真ん中辺りで、狐が一匹ピョンピョンと跳ねています。
「こんにちは、狐君」
東風が話しかけました。
「あんたは、春の使いかい?
ようやく春が始まるのか?」
「いいや。まだ冬は終わらないんだ。
僕達は人を探しているんだ。
君は、ねずみ色のワンピースの女性を、森で見たことがあるかい?」
「ねずみ色のワンピース?
ああ、冬の女王のことかい」
狐はけろりと答えました。
「知っているのか?!」
寒風が言いました。
ピュンッと冷たい風が狐に刺さります。
「ふええ、寒い!
この森に棲む雌熊が、女王と会っているんだ。
森の話を女王にしているらしい」
「その雌熊はどこにいるんだ!?」
寒風は興奮しながら尋ねました。
そうなると、どんどん空気は冷たくなります。
東風は彼の前に腕を出し、落ち着かせました。
「あっちの方に進むと、洞窟がある。
そこが熊母子の家だよ。
でも、寝てるかもしれないぜ」
「分かった。
話してくれてありがとう、狐君」
東風は笑顔でお礼を言いました。
「早く皆を起こしてくれよ。
どいつもこいつも、寝坊し過ぎだ」
狐は再び雪の上で寝転ぶなどして遊び始めました。
寒風と東風は、洞窟に向かいました。
遂に、冬の女王を知る動物が現れました。さて、二人は理由を見つけることができるのでしょうか・・・