季節の使い達
長い冬を終わらせる為、国王はお触れを出しました。それにより、国民達が動き始めました・・・
寒風は王都に到着しました。
季節の塔の周りには、大勢の国民が集まっていました。
寒風は、近くを飛んでいた朔風に声をかけました。
朔風は、国王のお触れについて話しました。
「強引な方法で、女王を外に出してはいけない。
そのせいで、女王が塔に入らなくなれば、この国の冬がなくなってしまう。
何とかしないと・・・。
春の女王は控えのお城にいるのか?」
「とっくの前に来ているさ!
だけど、冬の女王は出て来ないんだ」
寒風は季節の塔の傍にある小さなお城を見ました。
雪が積もり、ひっそりとしています。
「それから国王は、夏と秋の女王に頼んで、炎風と金風を呼んだらしい」
「何だって!?」
「国民を少しでも暖めないとって思ったんだろう。
俺は炎風が苦手だから、離れるよ。
お前も頑張れよ、寒風」
朔風は王都を去りました。
◇◆◇
寒風は塔の裏に回りました。
呼び出しがなくとも、使いは自由に出入りできます。
女王は一番上の部屋にいます。
室内は白と青で統一されていました。
床、壁、天井には氷が張り、つららが光っています。
部屋の奥にあるカーテンの向こうに、女王がいます。
寒風はカーテン越しに話しかけました。
「女王様。
冬の期間がかなり長くなっております。
そろそろ交替してはいかがでしょうか?
女王様もお疲れでしょう」
カーテンの向こうから、反応はありません。
代わりに、外の国民達の声が聞こえてきました。
「国民達も苦しんでおります。
このままでは食べ物が尽き、飢えてしまいます。
彼らは、女王様を外に出そうとしています。
決まりを破り、塔に入ってくるかもしれません」
寒風は言いました。
すると、カーテンの方から沢山の雪が飛んできました。
外の雪も強くなり、悲鳴が聞こえます。
「落ち着いてください!
どうして、こんなに長くお務めなさるのですか?」
その問いに、女王の返事はありません。
寒風が困っていると、窓から誰かに呼ばれました。
春の女王の使い、東風でした。
寒風は一礼し、塔を出ました。
異なる季節の使いは塔に入れません。
「控えのお城に来て。
春の女王様が君に話があるんだって」
東風が言いました。
サラサラと流れる髪、身体には桃色の布を纏っています。
冬が長い為か、顔色は悪く、弱っているようでした。
◇◆◇
控えのお城に入ると、暖かい空気に包まれました。
寒風は少し辛そうな顔をしました。
「寒風、来てくれてありがとう」
春の女王は、ゆったりしたソファに腰掛けていました。
天井から壁まで、花柄模様が覆い、家具も明るい木目調です。
「この度はご迷惑をおかけして申し訳ありません」
寒風は頭を下げました。
「顔を上げて。
あなたにお願いしたいことがあります。
冬の女王が塔から出ないのは、理由があるからでしょう。
彼女はとても心優しい人。
国民を苦しめる為に冬を続けているとは思えません。
どうか東風と一緒に、その理由を探してもらえませんか?
もう国民には、そんな余裕はありません。
次の冬も廻れるようにと言われていますが、難しいでしょう」
春の女王は、悲しそうな表情を浮かべました。
「かしこまりました。
必ずや、見つけてきます」
寒風は言いました。
「頼りにしていますよ、寒風。
東風も無理はしないように」
女王に挨拶し、二人はお城を出ました。
外はまだ、吹雪が続いていました。
寒風と東風は、冬が終わらない原因を探し出すことができるのでしょうか・・・