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玉置誠二 その5

登場人物紹介

セイジー:キモイ顔だが熱い煩悩を心に秘めたナイスガイ。

ヒッチコック伯爵:イケメンだが、残念な煩悩を抱えたナイスガイ。

ワンド子:大人しい系ゴーレム。

ナガミーチ:メイドとゴーレムをこよなく愛する男。

―玉置誠二 その5―


学園での授業を教室の後ろで見ていたお陰で、この世界の最先端の魔法の授業も見ることが出来た。


ナガミーチさんは「正しい知識と努力があれば、100人中99人は魔道師になれますよ。もちろん一流か三流かの差は生まれますが、三流程度でよければ誰でもなれると思います。」と言っていた。

ちなみに、ナガミーチさんがいう三流はこの世界の一流並なのだが。


でも授業では100人に1人の才能あるものが、数十年かけて一人前になるという説明をしていた。

授業のあとにその事をナガミーチさんに話したら笑われた。


「ね、他の魔道師の話はダメだったでしょ。第一、僕が大魔道師と呼ばれたのは魔法の研究を始めてから4~5年めですよ。正解を知るという事がどれほどのアドバンテージか分かりやすい話ですよね。」


無意識に『ナガミチート』という言葉が浮かんだ。





その後も授業を見学していたらお昼になった。


いまはみんなが食堂でランチを食べている。

ナガミーチさんもテーブルに座り、篠さんと龍さんをメイドにして食事を始めた。

良く見ると、まわりの貴族達も使用人にかしずかれながら食事中。


貴族の学園は世界が違うな。

庶民の俺は自分の事は自分でしなくちゃ。

そう思っていたら、俺の座っている席に食事が置かれた。

「セイジー君、お茶は熱いのと冷たいの、どっちがいいですか?」


見るとエプロンをつけたワンド子だった。

うそ、俺の面倒を見てくれる女子がいるなんて…

魔道師、最高!


涙をこらえながら、なんとか声を出す。

「じゃあ…冷たいので。」

すると、ワンド子はコップを口元に持っていくと、ジャラジャラと氷を吐き出す。


え?


氷が入ると、さらに紅茶を「ぷー」と言いながらコップに吐き出した。

「はい、アイスティーです。」


そのアイスティを、癒し系の微笑を浮かべながら俺のテーブルに置く。

えっとこれは・・・どう理解しよう。


そうだ、こう考えよう。

ワンド子はゴーレム → 氷製造機と水筒機能が内蔵されている → 機械からアイスティーが出てきただけ。


それだけの事だ。

そう理解しないといけないんだと必死に自分を説得した。

そうしないと、またいけない扉が開きそうだから。


しかも、まったく自分の行動に疑問を持っていない無邪気な笑顔のワンド子に、この動揺を悟られてはいけない。

俺は、興奮と背徳感を隠しつつ、震えるてでアイスティーを一口飲んだ。

今日何度目かの涙がまた流れる。


「美味い!美味過ぎる!ワンド子のアイスティはまさにご褒美や!」

なぜ自分がこんなに幸福感に浸っているのか分からない。


もう認めよう。

タブン俺は変態なんだ。

いままた新たな扉が開いたんだと思う。

しかしそれがどうした!

扉が開くたびに幸せが増えるならいいじゃないか!

ビバ、変態!


そこにヒッチコック伯爵が現れた!

「セイジー!われは見たぞ、麗しい乙女より生み出されるアイスティーを。そのアイスティを我にも一口よこすのだ!」


奪われそうになったので、あわてて一気に飲んだ。

「ぷはー、それだけは出来ません。」

「何故だ友よ!」


俺は一息ついて静かに答える。

「逆に考えてください。ヒッチコック伯爵がゴーレムを手に入れた後、自分のゴーレムから生み出されたアイスティーを他の男に与えられますか?」


物凄い衝撃を受けた表情をされた。

そして伯爵はがっくりと膝を突く。

「すまぬ友よ、われは思い違いをしていたやもしれぬ。そうだな、その喜びはゴーレムを手に入れてから存分に楽しむこととしよう。」


「伯爵!俺はそんな弱気な伯爵を見たくありません。いまからナガミーチさんに交渉に行きましょう。すぐにゴーレムを作ってもらえるように!」

「セイジー…、紹介をしてくれるというのか。礼を言うぞ。われは良い友を持った。」


そのやり取りを遠くから見ていたナガミーチさんが苦笑いしているのが見える。

ちなみに篠さんは、普通に空間収納から氷とポットを出してコップにいれていた。


口から吐き出す仕様はワンド子特有のものかもしれない。

あれ?そうするとホットのティーはどこから出てくるんだろう?まさか聖水仕様?


俺はきょとんとしているワンド子に、恐る恐る注文を出した。

「ワンド子ちゃん、アイスティを飲み干したから、ホットティーをお願い。」

その言葉に、なぜか周りの男達からも緊張が走る。


俺と同じことを考えた奴らがいるようだ。

当然伯爵も「ごくり」と唾を飲んで見つめている。


すると、ワンド子は顔を赤くして照れだした。

「あの、その、そんなに皆さんに見つめられては、恥ずかしいです。」


そう言いながら、さっきと同じように普通に口から「ぷー」っと湯気のたった紅茶が出てきた。

……、ま、普通そうだよね。


「はい、セイジー君。ホットティーです。」


後ろで沢山の男性がガッカリする気配を感じた。

まあ、さすがにナガミーチさんでもそこまでぶっ飛んだ機能はつけなかったか。


でもそのホットティーは美味しかった。

俺がお茶を飲む姿を伯爵はじっと見ている。


あ、いけね忘れてた。

食事の途中だけど、さきにナガミーチさんに話しに行くか。

俺は席を立って、ビレーヌ様やサビアン様という貴族令嬢と一緒に食事を摂るナガミーチさんのところに向う。


すると、龍さんとよばれるゴーレムさんが二枚の紙を突きつけてくる。

「セイジーさん、それにヒッチコック伯爵閣下。こちらの誓約書にサインを頂き、一週間以内に代金をお支払いいただけるのでしたら、今すぐゴーレムを用意しても良いとお父上が申しております。」


俺が驚くよりも早く、その紙をヒッチコック伯爵は奪い取りサインをした。

そして一枚を控えとして自分が持ち、もう一枚をナガミーチさんに渡す。


するとナガミーチさんは立ち上がり、ヒッチコック伯爵が身につけていた懐中時計をスっと手にする。

「これなら人工精霊にできそうですね。これをコアに使っていいですか?あと外見や機能のご希望も承りますよ。」


伯爵は迷わず叫ぶ。

「口から飲み物を出す仕様は必須だ。さらに軍隊級の力と便利機能が沢山有るタイプで頼む。年齢設定はワンド子くらいで。性格はちょっと固いけど健気で一途な感じで頼む。髪型は銀髪ショートだ。」


うわー、俺でも顔が引き攣る要求をした。

でも、ナガミーチさんは真面目な顔で頷き、そして感嘆した。


「ゴーレムはいくつも作れるほど安いものではありません。ですがつい見栄を張って煩悩を抑えて注文をする人は多いです。だから伯爵の一時の恥よりもこれからの幸福を優先するその姿勢、嫌いじゃないですよ。胸の大きさはどうします?」


「大きめで、88くらい。」


「お話から想像しますと、顔はキツイつくりなのに、表情が柔らかいので印象が相殺されるタイプとかがお好きではないですか?」


「それ!それがストライクである!」


「最近新開発した機能なんですけど、特殊技能にドジっ娘はつけますか?ドジレベルは調整可能です。」


「おお!ナガミーチさん、分かっておるではないか!」


「では、まずは外見はこちらで宜しいでしょうか。この段階でしたら変更可能ですから、イメージが違いましたら遠慮なく言ってくださいね。」


そう言うと、地面に魔方陣が光り、半分透けたセーラー服の女の子の姿が投影された。

150cmくらいのセーラー服を着た少女の姿。

耳の下で切りそろえたような銀髪のショートカットで、目はややツリ目気味。

でも、少し困った表情をしていて、柔らかい印象を受ける。


ヒッチコック伯爵は興奮気味に拳を握る。

「これだ!これこそ我が理想の姿だ。頼み申すナガミーチ殿。」


すると、ナガミーチさんはブツブツ何かを唱えだす。

すると魔方陣が現れたので、そこに伯爵の懐中時計を置いた。

懐中時計は、魔方陣に吸いこまれて消えたが、数秒後ゆっくりセーラー服を着たゴーレムが魔方陣から現れる。


ゴーレムは目を開くと敬礼をした。

「私は時計型ゴーレム・懐中子です。戦闘も身の回りのお世話もお任せください。ご主人様のためでしたら、敵の殲滅からお菓子作りまで何でも頑張ります。ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。」


伯爵は懐中子に飛びついた。

「懐中子よ、我が主だ。以後はメイドとして我が傍にいつもいるとよい!」

「あ、そのように急に抱き疲れては危のうございます。お気をつけになって・・・キャッ。」


懐中子は転んでしまった。

しかしスグに立ち上がると申し訳なさそうな顔をする。

「も、申し訳ありませんでした。素粗をお許しください。」


その懐中子を見る伯爵様は、本当に幸せそうな表情をしていた。

でもスグに真面目な表情になりコップを突き出す。

「では懐中子よ、いきなりで悪いがアイスティーをもらえるか?」


懐中子は微笑んでコップを受け取ると、髪の毛を掻き揚げるような仕草をしながらジャヤラジャラ口から氷を出した。

そして氷にキスをするように「ぷー」と紅茶を出す。


素朴な吐き方をするワンド子とは全く印象が違うな。


恭しくコップを伯爵に差し出した。

「ご所望のアイスティーにございます。」


伯爵は感慨深そうにコップを手にすると、アイスティーを一気に飲む。

「うまい…、美味過ぎる。懐中子のアイスティーはまさにご褒美である!」


伯爵は、俺を見てから空のコップをまた懐中子に渡す。

俺は頷き、俺のコップをワンド子に渡した。

「「アイスティーを頼む」」


ジャラジャラジャラ

ぷー


俺と伯爵は乾杯をすると、腕をクロスさせてそのアイスティを飲み干す。

これが男の友情だ!


俺は身分の差を気にしないで右手を差し出した。

「お待ちしておりました、ヒッチコック伯爵!」


その手をがっしり握ってきた伯爵は清々しい顔をしていた。

「やっと同じ世界に立てたぞ、友よ!」


男の友情に地位も名誉も関係ない。

あるのは同じ煩悩を語り合えるかどうかだけだ。


ワンド子と懐中子は何故か感極まって泣きながら拍手をしていた。

お読みくださりありがとうございます。

セイジー「まさかと思うけど、カレーはどこから出てくるの?」

ワンド子「お尻ですよ。」

セイジー「(ごくり)その、カレーを貰おうかな。」

ワンド子「(口から)ゲろげろげろ。はいカレーです。お尻から出るといいましたね、あれは嘘です。」

セイジー「ちくしょー!純真な俺をもてあそびやがってー、ちくしょー。」

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