玉置誠二 その3
登場人物紹介
セイジー:可哀想な学生生活を送った、売れないお笑い芸人。
ビレーヌ:若き公爵。肌が白すぎるので興奮するとスグ真っ赤になる。
ナガミーチ:日本人達のサポートをしているうちに、知らないうちに社会的地位を得てしまった人。
ワンド子:魔法杖のインテリジェンス・アーツ(意思を持った道具)。実はロリ巨乳。
ドルマン:ナガミーチの手配でビグニー家の執事になった。父はビグニー領の代官。優秀。
―玉置誠二 その3―
いま、ビレーヌ様と朝食を摂っている。
ナガミーチさんの説明だと、俺は本来ビレーヌ様と同じ食卓に座る事は許されないらしいのだけど、ビレーヌ様の方が朝食を持って研究室に来てしまったのだからしょうがない・・・って事らしい。
相変わらず、ビレーヌ様にはナガミーチさんしか見えて居ないようだ。
あれ?じゃあ昨日の夕飯はなんで同じ食卓を囲んだんだろう?
一生懸命ナガミーチさんと会話しながら食事するビレーヌ様を、咎める様な目で立っている執事さんに小声で聞いてみた。
「あの、執事さん。昨晩は俺もビレーヌ様と一緒に食事を摂ったんですが、あれって大丈夫だったのでしょうか?なんか流されてしまったのですが。」
すると嘆かわしいという表情をして執事さんは溜息をつく。
「ビレーヌ様は普段は我がままを言われないのですが、ナガミーチ様の事になりますと我を失われてしまいます。昨晩は全力でナガミーチ様を受け入れるアピールの為にセイジー殿にも同じ食卓に座っていただきたいと仰せられました。わたくしもナガミーチ様に関しましては強く言えぬ身ですので、我がままをお聞きしてしまいました。」
「それは、、、スイマセンでした。」
「いえ、こちらの事情にございます。それにセイジー殿がそこに疑問を持ってくださる良識をお持ちで助かりました。お気遣いありがとうございます。」
ついでなのでもう一つ聞くか。
「すいません、あとナガミーチさんは貴族ではないと思うのですが、公爵様に『さん』づけですけど大丈夫なのでしょうか?」
するとコレにはニッコリ答えてくれた。
「ナガミーチ様は、家を持たぬ身ではありますが庶民とはいえません。この大陸一の魔道師であらせらますし、魔王討伐パーティーのお1人です。なおかつ隣国を七日で攻め落とした功績も持ておられます。それにより国より『賢者』の称号を受けておりますので、貴族といえど恐ろしくて怒らせられないお方です。王位に次ぐ力を持っておいでだと思っていただければ宜しいかと。」
執事さんはどこか誇らしそうに一気に話してくれた。
俺は、恐る恐る口を開く。
「まさかと思いますが、その人に弟子と認められるのはすごいことですか?」
すると執事さんは目を見開く。
「当然でございます!このドルマンもお弟子にしていただけるのであれば、全てをなげ打ってでも構わないと思うほどにございます。間違いなく大陸一の魔道師で、しかもあのお人柄です。憧れぬ者などおりますまい。セイジー殿の事は、心底羨ましく思います。」
大魔道師という肩書きは、想像以上の重みがありそうだ。
っていうか、ナガミーチさん凄いな。
魔王倒したり、隣国を七日で降伏させたりって、そりゃ名声はうなぎ上りでしょう。
本人は『分不相応な名声』とか言っていたけど、いやいやいや、実績もすごいって。
そして、みんな憧れの大魔道師の弟子な俺。
なんか怖くなってくるな。
すると、むこうでビレーヌ様が紅い顔でナガミーチさんの手をとっている。
「是非わたくしのお供で、学園についてきてくださいませ。わたくしに見栄を張らせて頂きたいのです。」
するとナガミーチさんは軽く頷く。
「いいですよ、でしたらセイジーさんも連れて行きましょう。学園で教える魔法理論は間違っているけど、僕の理論との差を知っておいてほしいですし。」
「分かりましたわ。ではセイジーよ、供を命じます。」
「はい!」
なんか、いかにも貴族っぽく命令されたけど、、、、
なんだろう、クセになりそう。
美人公爵様に命令されるのって、気持ちが高揚するな。
あー、今まで気づいていなかったけど、俺、Mかも。
そう思っていたら、ビレーヌ様は用意の為に自室に戻っていった。
すぐにメイドゴーレムが五人ほど出てきて、テキパキと俺達の出発準備をはじめてくれる。
準備が出来たころ、ナガミーチさんは6体目のゴーレムをつれてきた。
中高生くらいの見た目に、普通のセミロングの黒髪。セーラー服を着ている。
「セイジーさん、この子は『ワンド子』です。魔法使いに必須の魔法の杖を人工精霊化したゴーレムですよ。あげますので、困ったことがあったら頼ってくださいね。」
その一言に体が硬直した。
しばらく目を見開いてワンド子を凝視してしまう。
150cmくらいの小柄な体に、大きい目をした美少女だ。
照れくさそうに俺の視線に耐えている。
そして俺が何も言わないので、ワンド子が口を開く。
「あの、魔法杖型ゴーレム、ワンド子です。あの、その、恥ずかしいのであまり見つめないでください、ご主人様。」
あわてて視線を外す。
うわあ、ヤバイ。日本だったら今の俺の行為は警察一直線だったかもしれない。
深呼吸して、もうしちど冷静にワンド子を見る。
モジモジと上目遣いで俺を見ていた。
普通の小柄な女子高生にしか見えない。
これを『あげる』といわれたんだよな。
ごくり
魔道師、すごい。
するとワンド子はモジモジと歩いて俺の横に立つ。
「あの、呼び方はご主人様でよかったでしょうか?お好きな呼び方を設定してください。」
うおおおおい!ナガミーチさん、これどんなエロゲーのオープニングですか!
ううううう、だが!
ここは恥ずかしがらずに煩悩全開で行くぞ、恥ずかしくない、恥ずかしくない、遠慮は後悔しか生まない!。
「えっと、じゃあセイジー君でお願いします。」
「はい、セイジー君、よろしくお願いします。」
はにかむ様に微笑まれた。
グハッ、心が吐血した。
モテない学生生活だったあの暗黒の青春の無駄を、今取り戻せる。
大人しい系美少女に「誠二君」って呼ばれて、仲良く学園生活を過ごしたいと思った夢が叶った。
あああ、魔道師最高。
するとナガミーチさんの篠さんが用意した荷物をワンド子が受け取り、空間収納にしまう。
それを確認して、ナガミーチさんは自分のゴーレムを見た。
「篠、龍、供を頼む。」
すると、戦巫女みたいな2人のメイドがスッとナガミーチさんの横にきた。
ナガミーチさんがその2人の首を無造作に掴むと、二人は笛の姿になる。
二本の笛を懐にいれたナガミーチさんが僕を見た。
「セイジーさんはゴーレムを人型で連れ歩く派ですか?馬車や狭い場所に行くときは杖にするほうが便利ですよ。首を掴めば丁度いい場所をつかめるので、学園に行く前に練習して置いてくださいね。」
「は、はい。」
いわれてワンド子の首を掴もうとした。
するとワンド子は目をつぶり、両手を組んで、あごを上げて待つ。
なんか、すごい背徳的なんだけど。
でも思い切って、しかし優しく首を掴む。
それと同時に、小柄な少女のワンド子は杖になった。
杖の長さは1メートルくらいで、杖の上部には宝石のようなものがついていた。
人が杖になる。
なんか感動をした。
すると杖から声がする。
『あの、そんなジロジロみられては…恥ずかしいです…。』
「あ、ごめん。ちょっと感動しちゃったので。インテリジェンス・アーツ・ゴーレムってすごいね。」
『褒められれても、恥ずかしいです。』
杖の上部に付いた宝石が、青色から赤色に変化した。
ぐ、杖をこんなに可愛いと思う日が来るとは。
俺は新しい扉が開いてしまったかもしれない。
そこにビレーヌ様が来た。
手にはフルートを持っている。
なんとなくワンド子に聞いてみた。
「ワンド子ちゃん、もしかするとビレーヌ様のフルートもゴーレム?」
『よくわかりましたね、セイジー君は鋭いです。』
またセイジー君っていわれちゃった。
32歳になると、女の子に君付けされるのがこんなに嬉しいとは思わなかった。
魔道師、最高!
うかれてビレーヌ様についていくと、屋敷の玄関の横に有る小屋に行く。
小屋の入り口を開くと、床に直径3メートルくらいの魔方陣が描いてあった。
そこに3人で入ると魔方陣が光る。
ビレーヌ様が良く通る声で詠唱をはじめた。
「転移陣起動!ビレーヌの名において命じる、学園へ転移せよ!」
同時に世界がガラスを割るように砕け、新しい場所に視界が変わる。
見たところ、白い漆喰の壁のある部屋だ。
転移?テレポートか!
感動していたら、ナガミーチさんが魔方陣の外から手招きをする。
「初めての転移は感動しますよねー。でも次の人がこれないんで、今は急いで陣から出てくださいね。」
おっと、我に帰って急いで陣から出た。
歩きながらキョキョロしているとワンド子が遠慮がちに教えてくれた。
『転移装置は伯爵家以上でないと自前のモノは持っていないんですよ。でも下位貴族でも公共の転移陣が使えるので、通学に使う人は多いんです。』
「さすがファンタジー。凄いね。」
『ふふふ、でもこの転移装置を開発して設置しているのはナガミーチお父さんなんですよ。公共のインフラの一つを利益独占しているのですから、国家内での発言力が強いのは当然かもしれませんね。』
またもや大魔道師の偉大さを垣間見てしまった。
なるほど、執事のドルマンさんが憧れるのも分かる気がしてきた。
お読みくださりありがとうございます。




