玉置誠二 その2
今回は小難しい回です。読み飛ばし可です。ドタバタをご希望の方は次回にご期待を!
人物紹介
セイジー:玉置誠二。いま魔道師見習い。ひょろっとしたキモ面。32才。
ナガミーチ:最高神にお願いできるという最高チート持ち。趣味で魔法を研究している。
ビレーヌ公爵:21歳の赤毛美女。得意な楽器はフルート。
篠:長道が自分で篠竹から削りだして作った横笛から作った人口精霊。気の強い戦巫女をイメージして作られている。
―玉置誠二 その2―
ビレーヌ様は、それは甲斐甲斐しくナガミーチさんの面倒を見ていた。
時々、メイドさんが手を出そうとすると歯をむいて威嚇するほどに。
ナガミーチさん、良いなー。異世界で可愛い系美人公爵にモテモテとか羨まし過ぎる。
聞いたらビレーヌ様は21歳だとか。
殺意すら沸きそうだ。
食事が終わった後、研究室に帰ってくると俺はボヤかずには居られなかった。
「ナガミーチさん、羨まし過ぎて殴りたくなりましたよ。」
すると、研究室の椅子に座って優雅にお茶を飲みながらナガミーチさんは困った顔をした。
「タブン、分不相応な名声のせいです。セイジーさんだって大魔道師と呼ばれるほどになればモテモテですよ。魔道師ってだけで貴族だってお世辞を言ってくるほどですから。」
ゴクリと唾を飲み込んでしまった。
俺は大魔道師への道を約束されているから、つまり美女にもみくちゃにされながら『おいおい、一度に一人しか相手に出来ないんだぜ、順番に頼むぜ子猫ちゃんたち』とか言う日が来るってことか?
するとナガミーチさんがパチンと指を鳴らした。
「篠、セイジーさんにもお茶をお願いしていいかな。」
すると、何も無い空間に黒髪で古風な美女がメイド姿で現れた。
「はい父上、そういわれるかと思い、用意してありますよ。」
その美女は俺の前に湯気の昇る紅茶を置いた。
おもわずその美女をマジマジと見てしまった。
その俺を無視してナガミーチさんは話を続ける。
「魔法はイメージの能力と、十分な知識、それと数学的な論理性が要求されます。さらに魔力や集中力も必要ですので、体も鍛えたほうがいいですね。明日から授業をしますよ。たしかに魔法はコピーで覚えられますが、それでは必要な魔法を作れませんから、しっかり基礎から学んでもらいますよ。」
ナガミーチさんの言葉を聞きながら、俺はまだメイドの美女を追っていた。
父上っていってけど、ナガミーチさんの娘?
俺が余りに美女を見ているので、ナガミーチさんは苦笑いをする。
「篠が気になりますか?篠は僕が作ったゴーレムです。」
ええ!
どっからどう見ても人間にしかみえない!
「作ったんですか?この美女を?」
するとナガミーチさんは、身を少し乗り出しニヤリとした。
「僕は日本ではまったくモテませんでした。ですのでコッチで魔法の存在を知ったとき思いました。『彼女が出来ない?だったら作っちゃえばいいじゃん』とね。」
「このレベルのゴーレムを沢山作れるんですか?」
「すでに、隣国のフレンツ公国には800近く売りつけてあります。そして僕の手元には2000以上の生きたゴーレムを作る材料があります。ハーレムがほしいのなら余裕です。」
「好みの美女を作り放題なわけですね。」
「その通りです。僕はただ美人メイドがほしかった。そんな僕の欲望は、僕をこの国一番のゴーレム魔道師にしたんです。セイジーさんも欲しい物を作りたければ、基礎を身につけることです。その先にある未来は、望んだ人生を作れるようになっているでしょう。」
マジマジと篠と呼ばれたゴーレムを見てしまった。
もういちど、ゴクリと喉を鳴らす。
このレベルの美人を作り出せるだと。
しかもそうやって大魔道師として名声を得たら、さらに美人すぎる公爵にモテるのか。
正にリア充スパイラル。
手に持つティーカップがカタカタ震えてしまった。
これは、必死に学ばなければいけない。
「よろしくお願いいたします!」
そこで扉をノックする音がした。
「どーぞー」
ナガミーチさんが答えると、お茶とお菓子を持ったビレーヌさんがニコニコ入ってくる。
「ナガミーチ様、研究のお邪魔でなければお菓子でもいかがですか・・・・」
そこまで言って、ビレーヌさんは篠さんを見て表情をゆがめる。
うわ、こわ!
モテない人生の俺は、女性が同性への警戒心で表情をゆがめる姿をはじめて見た。
ビレーヌさんは、すこし低い声を出す。
「ナガミーチ様、そちらの女性はどなたですの?わたくしにもご紹介いただけまして?」
俺は緊張したけど、ナガミーチさんは全く平然として微笑む。
「これは篠といいます。僕の研究の手伝いをしてくれるゴーレムです。」
すると篠さんは恭しく一礼をする。
「ビグニー公爵様、父上の説明不足に関しまして、平にご容赦くださいませ。父上の秘書のような役目を任されております篠と申します。以後お見知りおきをお願いいたします。」
それを聞いてビレーヌ様の表情が柔らかくなる。
「そうですかインテリジェンス・アーツ・ゴーレムですか。こちらこそ頼ることもあるかも知れません。その時はよろしくお願いいたします。」
「なんなりとお申し付けくださいませ。父上の不利益にならぬ範囲で働かせていただきます。」
ビレーヌ様はニコニコとお菓子を持ってナガミーチ様の横に座った。
ゴーレムなら怒らないんだ。
いや、ゴーレムが「父上」って言ってたのが大きいのかもしれないな。
ライバルではないし、ナガミーチさんの作品だから受け入れたのかもしれない。
とにかくいきなり修羅場が起きなくてよかった。
部屋の隅に立っていた篠さんは、ちょこんと机に座ると、そのまま横笛になって消えてしまう。
おおお、さっき急に現れたと思ったのは、もしかしたら笛から人型に変身したからなのか?
立ち上がり、笛に触ろうとしたら笛から怒った声がした。
『おやめください!父上以外の殿方に触れられるのは不快です!ご控えください!』
びっくりして手を引っ込める。
「す、すいませんでした。」
すごすご引き下がって、また自分の席に座る。
あれを作れる日が来るのだろうか。
魔法すご過ぎる。
雑談をしていると、ビレーヌ様が魔法についての講義をねだりだした。
すると、ナガミーチさんは楽しそうにそれを受け入れる。
「ではついでなので、初歩魔法だけでも習得しますか?1時間ほどでできますので」
いうと、パチンと指を鳴らし「エレギ子」とつぶやく。
するとナガミーチさんの後ろにおいてあったギターがメイドの姿になった。
いかにもヘビメタ風な感じの女性だ。
「講義の準備っすね。3分まってくださいっす。」
見た目はヘビメタなのに、テキパキ動き黒板や、俺達用のノートと筆記用具や、教科書まで用意してくれた。
準備が終わると、ギターに戻った。
まさかと思うけど、ここってメイドゴーレムに変身するものが沢山有る?
ヘタに触ったら怒られそうで怖いな。
そんな俺の考えが表情に出ていたのか、ナガミーチさんが笑い出す。
「あはは、ここにはメイドゴーレムが5体いますよ。ここは機密が多いですからね、警備も兼ねているんです。」
そう言いながら、黒板に人の絵を描く。
「では最初に魔法とは何ぞや?を簡単に説明しましょう。魔法とは意思・魔力・自然現象・世界の理を使って起す現象です。その為に重要になるのが魔力ですね。これは武道では気と言われています。ですから経絡を意識して動かすと効率がいいです。」
なるほど気なのか。メモメモ。
「それと一般の魔法使いと僕の理論は違います。実は一般の魔法使いが間違った理屈で考えているからなんです。
でも一般の魔法使いが間違った理屈で魔法を使っているのは致し方ないことなんですよ。
手探りで研究しながら理屈をまとめているので、一流の魔法使いですら試行錯誤中なんです。
だから僕みたいに大天使やマリユカ様に直に質問できる人間は、スゴイ速さで一流になります。
なぜなら、試行錯誤無く正解をいきなり手に入れられるからです。
ですので僕から習ったことは極秘ですよ。伝授は一子相伝までしか許されません。
それを破るとマリユカさまの呪いがかかりますから気をつけてくださいね。」
そこでビレーヌ様が手を上げる。
「ナガミーチ様は、どのくらいまでの秘術をしっていますの?」
ナガミーチさんは気まずそうな表情をする。
「知っているというだけなら、この世界を崩壊させたり、人間を全滅させて望んだ生き物に知能を与えて、あらたな地上の支配者にするくらいは出来ます。天界のシステムを動かす言語も知っていますので。」
あまりに大きな話に、ビレーヌ様はポカンとしてしまった。
でもスグに顔を紅潮させる。
「流石ナガミーチ様ですわ。そこまでとは思っておりませんでした。さすが賢者様です。」
ナガミーチさんは咳払いをゴホンとして話を戻す。
「で、ですね。魔法には大きく分けて三つあります。
一つはすでにこの世界にプログラミング(設定)された魔法を呼び出すことです。勇者とかがスキルや魔法をレベルアップでぽこぽこ手に入れるのはこのパターンです。
でもこれはスイッチだけを手に入れているので、その魔法を人に教えることは出来ません。
今日2人に魔法を与えたのがこの方法です。この魔法の欠点は改良も上達も出来ないことですね。そして設定した神様の都合で何時消えるか分かりません。」
右目をつぶって、右手を見た。このメニュー画面の魔法の事だよな。
確かに楽だけど、『自分好みのゴーレムを作る』とかは出来そうにない。
「二つ目が、この世界の理を利用して、回路を形成し、エネルギーを流すことによって魔法を発動させる方法です。通常の魔法といわれるモノの殆どがコレです。呪文を唱えて火を放つのも、回路を組み込んでゴーレムを作るのも、基本的には同じ理屈です。回路を作ってエネルギーを流す作業です。
基本的には魔法を創造できる大魔道師になるなら、この学習は必須です。」
なるほど、いつか自分好みのゴーレムを作りたい俺にとっては、これが大事って事か。
「三つ目が、神や霊的な存在に『頼んで』魔法を使う方法です。本当ならこれが一番簡単ですが、正しい作法を知らないとお願いを聞いてくれないので、あるいみ一番難しくもあります。僕が大天使やマリユカ様と話をしたり、ゴーレムや人工精霊を使って何かするのも、この範疇ですね。」
またビレーヌ様が手を上げる。
「ナガミーチ様が開発した人工精霊の作成魔法はどれにあたりますの?」
すると満足げに頷いた。
「僕以外の誰も人口精霊を作れなかったのは、この三つ全ての分野に詳しくないと出来ないからなんですよ。
まず魔法原理で設計図を作りました。それを使って大天使やマリユカ様にお願いして、この世の理に人工精霊の定義を作ってもらったんです。
そしてその理屈を理解し、作成のための材料を用意して準備を充分に行います。
それらをすでに世界に設定された法則に放り込んで人工精霊を生み出すのです。
ですので人工精霊という存在については熟知していますが、どうやってこんな複雑な存在が産まれるかという大事なところはマリユカ様に頼んでいるので、そこはブラックボックスな魔法なんです。」
ビレーヌ様の顔の赤みが増す。
「っということは、世界への定義はすでにナガミーチ様が完了しているという事でよろしいのでしょうか?っとなりますと、あとはその魔法の起動方法さえしれば誰でも人工精霊を作れるという事ではないのでしょうか。」
嬉しそうにナガミーチさんは微笑んだ。
「いかにもそのとおりです!こまめに人工精霊の改良を行っていますので、最新バージョンの作成方法はそう簡単には知られないでしょうが、過去バージョンでよければ作成魔法は誰でも使えます。」
そこで俺もバカじゃ無い事をアピールするために発言してみる。
「その魔法の起動方法を知ってさえ居れば…ですよね。裏を返せばナガミーチさんからその魔法の起動方法を教えてもらわないと、ほぼ不可能って事ですね。」
「そのとおりです。僕くらい魔法理論を知っている人間は1000年に1人くらいだと自負しています。そしてそれを、マリユカ様にお願いして世界に設定してもらえるのは、さらに少ないでしょう。つまり実質的には僕以外にこの魔法を設定できる人間が現れると思わないほうがいいです。だから僕から聞く以外に人工精霊を作る術を学ぶ方法は無いです。」
なんか壮大な話だ。
さすが大魔道師と言うところか。
その後
気を体に流す感覚を外部から強制的に誘導してもらって、簡単に魔力の操作を覚えた。
それを外部に放出して、小さい紙ごみを動かすことが出来た。
おお、すげええ。
俺エスパーじゃん。
ここで、またビレーヌ様は顔を真っ赤にして興奮した。
「すごいですわ!これだけだって数年修行した人の中で100人に1人くらいしかできない事ですのに、こんなに軽々伝授くださるなんて偉大過ぎます。デルリカ様やカイル様はこんな優秀な教師に育てられたなんて反則ですわ。」
どうやら魔法が普通に有る世界でも、この成長速度は異常らしい。
俺も興奮しつつ、紙ごみを動かしながら確かな手ごたえを感じていた。
お読みくださりありがとうございます。
マリユカ「私も構ってほしいのですよー。」
大空姫「我慢でござる。今は長道氏を怒らせてはいけないでござる。」
マリユカ「寂しいから、呪っちゃおうかな・・・」
大天使たち「「「「だめ!」」」」




