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玉置誠二 その1

玉置誠二 魔法チート編

登場人物紹介


玉置誠二:売れないお笑い芸人。つまらないのだから売れなくて当然。

ナガミーチ:石田長道。最高神マリユカの元で魔法を研究したので人類で一番魔法に詳しい。

ビレーヌ・ビグニー:ビグニー家に養女としてきたらスグに義父が死んだため、現在公爵。

大空姫:空気の大天使。大天使で一番存在が薄いが、目立たないように動くのは得意。

―玉置誠二 その1―


俺の名は玉置誠二。お笑い芸人。

だけど売れなかった。

ヒョロ長い体に気持ち悪い顔のせいだろうか?

いや、この容姿は武器のはずなんだけどな。


芸人としての活動よりもバイトにあけくれる毎日。

そろそろ32歳になるのにこれでいいのだろうか。


人生に不安になる。


なんか売れるための切っ掛けがほしかった。

このままじゃいけない。


小さいライブハウスで行われるようなお笑いライブに、積極的に参加してみた。

だが、全くファンがつかない。


そんな生活に疲れてきているのは分かった。

その日も絶望していた。

絶望しながらトボトボ歩いていると、妙に露出が多いエロ可愛い女性が声をかけてきたのだ。

「何度もみたけど、あなた本当に面白くないのね。お笑い以外の道を目指したら?」


その女性は露出が多い巫女服みたいな服を着ているが16~17才に見えた。

ポニーテルで目元に歌舞伎みたいな妙な隈のような化粧をしている。

しかし、それが一層美しさを引き立ていた。


面白くないといわれてしまった。

だが少し嬉しくもある。

俺と言う芸人を識別していた人がいたのだから。


「才能無いですかね?」

「ないねー。」


むしろスッキリできた。

諦めがつきそうだ。


するとその女性はさらに言葉を続ける。

「じつは女神様の暇つぶしを手伝う人間を探しているんだけど、あんたやってみる?きっと良い体験になると思うよ。」


なんか頭がおかしな事を言い出した。

こういうのは適当にあしらっておくか。

「俺をご指名してくれるならどこでも行きますよ。代価は貰いますけどね。」


するとその少女はニヤリとして空に向って叫びだした。

「アマテラス様、ウズメです。1人交渉終わりました。OKだそうですよ。」


そらから、頭に響く声で返事が返ってきた。

『おっけーね。』


次の瞬間光りに包まれ意識を失う。

そしてマリユカ宇宙に来た。


そこで願いを聞かれたので、しばらく考えて答えを出す。

「折角ファンタジー世界なら、魔法でしょ。魔法チートしたいです。」


ーーーーーー


今俺は馬車が行きかう大通りに座っている。

何が起きた?


中世ヨーロッパ風の町並みで、行きかう人たちは様々な国籍の人が入り混じっているようにも見える。

あまりいきなりの事だったので頭がついていかない。


そのまま数分座っていると、道の向こうから誰かがコッチに向けて走ってきた。


「玉置さん、はぐれてしまってスイマセン。僕の名前は石田長道。コッチの世界ではナガミーチと名乗っています。今回はよろしく願いします。」


そこで頭が現実を大体把握して、正常に動き出した。

俺はファンタジー世界に来たんだ。


俺は急いで立ち上がり頭を下げる。

「こちらこそよろしく願いします。俺は玉置誠二。魔法チートをお願いします。」

するとナガミーチ(長道)さんは落ち着いた笑顔で頷く。


「はいお任せください。ではそのための相談もしないといけませんので場所を移動しましょう。こちらへどうぞ。」


後をついていくと、大きな屋敷に着く。

大きなお屋敷だ。

ナガミーチさんは「ご苦労様です」と門番の人に挨拶するとそのまま入っていってしまう。

俺も急いで後を追って中に入った。


庭を抜け、平然と建物の中に入る。

そこで執事風の人がナガミーチさんを見ると驚いて頭を下げた。

それに対してナガミーチさんは軽く片手を挙げてズンズン進んでいってしまう。

ついていくと、ソファーが置いてある部屋に着く。

そこでは赤い髪の美しい女性が待っていた。

長い赤髪をサイドでまとめて前に垂らしているので、余計に赤い髪が印象に残る女性だ。


「ナガミーチ様、お待ちしておりました。ようこそ当家に来てくださいました。」


するとナガミーチさんは照れた感じに頭をポリポリかいた。

「すいません、お世話になります。プチ家出に協力していただき感謝しております。」


赤髪の女性は頬を染めながらナガミーチさんに駆け寄る。

はじめてみたけどスグに分かった。この女性はメロメロにナガミーチさんに入れ込んでいる。


「なにをおっしゃるんですか。わたくしは大歓迎ですわ。いえ、むしろ夢のようです。いつまでも当家にご逗留ください。」


そこでナガミーチさんは俺を向いた。

「ビレーヌさん。こちらは先の手紙で書いた僕の弟子のセイジーさんです。今はまったく魔法が使えませんが、すぐに一流になると思います。彼も一緒にお願いできますか?」


俺は慌てて一礼する。

ビレーヌさんはチラッとコッチを見ると、すぐに夢見る乙女のような顔でナガミーチさんを向く。

「もちろん構いまわせんわ。できるなら私もお弟子にしてほしいくらいです。彼が羨ましいですわ。」


するとナガミーチさんは黙って少し考えてから口を開く。

「でしたらビレーヌさんも一緒にいかがですか?ご厄介なるお代のかわりに、なんでも教えて差し上げますよ。」


ビレーヌさんの顔が茹でタコみたいに赤くなる。かなり興奮しているようだ。

「ほ、ほ、ほ、本当にございますか!もう是非お願いいたします!わたくしも初級魔法使いくらいにはなりたいと思っておりましたの。」


ナガミーチさんは物凄い興奮をしているビレーヌさんに頷くと、冷静にコッチをみる。

「セイジーさん、こちらはお若いですがビグニー領の公爵であらせられるビレーヌさんです。いつもハイテンションですけど適当に受け流してくださいね。」


ナガミーチさん、その表現は可哀想なのでは…

そう思ったけど、とうのビレーヌ様は「はい、テンション高いです!」と嬉しそうに言っているので問題ないようだ。


しばらく話をしたあと、俺達は屋敷の奥のスペースを貸し出される。

部屋数にして4部屋ほど。

しかも各部屋がかなり広い。


目の前には裏庭に出られる出入り口があり、そこから外に出ると小屋が一つ立っていた。

案内に来ていたビレーヌ様が小屋を指差す。


「ではお弟子さんはあちらをお使いください。」


それを聞いて愕然とした。

「え?俺は外の小屋なんですか?」


するとナガミーさんが申し訳なさそうな顔をする。

「すいません、貴族のお屋敷にご厄介になる庶民ですから今はそれで我慢をお願いします。魔道師として名が売れれば扱いも変わりますから。貴族と庶民の常識みたいなものは追々説明しますので。」


するとビレーヌ様は楽しそうに話を引き取る。

「そうですわ。あなたのような庶民が大公家の敷地内で暮らせること自体が奇跡ですのよ。国一番の大魔道師であるナガミーチ様とは扱いが違うの当然でしてよ。」


ナガミーチさんが国一番の大魔道師?

なるほど、魔法チートの第一段階だからトップの魔道師の弟子なのか。

すっごく納得がいった。


前向きに考える事にした。家賃タダだ、文句は言えない。

小屋の扉を開けてみた。


8畳くらいの生活スペースに、たくさんの収納スペースもある。

ベッドや調理道具やトイレなどはすでに設置されている。

小屋だから、少しくらいうるさくしても、隣の人が怒って壁をドンドンしたりしてくる事も無い。

良く考えたら日本で暮らしていた部屋よりもいいかも。


すると耳元で女性の声がした

『ビレーヌうじに部屋を用意してもらった礼を言うでござる。だが長道氏はビレーヌと名で呼んでいるが、セイジー氏は親しくないゆえビグニー公爵閣下とお呼びするでござる。』

驚いて振り返る。

だれもいなかった。


しかし、今の言葉は的を得ている気がしたので、素直に従うことにした。

「ビグニー公爵閣下、お部屋を用意していただきありがとうございます。」


その言葉に満足げに頷くと、またビレーヌ様は目を輝かせてナガミーチさんとの会話を始める。


しかし今の声はどこからしたのだろう?

すると、また耳元で声がした。

『拙者でござるか?拙者は大空姫。今回セイジー氏を見守る大天使でござる。』


おもいきってテレパシーを送るように返事をして見る。

『もしかして俺を守護してくれているんですか?』

『いかにも。少々事情があり、姿を表すことが出来ぬ。ゆえに声だけの手伝にはなるがよろしく頼むでござる。』


あ、テレパシー通じた。

『よろしく願いします』


『あと、それがしの事は長道氏には気づかれぬようにお願いしたい。くれぐれも気をつけられよ。』

『はい、、、、わかりました。』


なんだろう、大天使さんとナガミーチさんは仲が悪いのだろうか?

それにさっき、プチ家出って言っていたな。


『それはプチ家出と関係あるんでしょうか?』


すると大空姫さんの声は明らかに歯切れが悪くなった。


『いかにも。皆が長道氏に生暖かい対応をしたのが悪かったようだ。我慢できなくなった長道氏は「だったら休暇をもらいます。探さないでください!」といって飛び出してしまったのでござる。ゆえに表立って姿を出さぬほうがよいと思い、セイジー氏にのみ聞こえるように助けることにしたのでござる。』


『生暖かい対応をされて家出ですか?』


『うむ、じつは長道氏はすでに不満が溜まっていたようで、今回は我慢の限界の引き金でしかなかったのでは考えているでござる。何年も夫の無神経な行動を我慢していた妻が、些細な切っ掛けで長年の鬱憤が爆発し、実家に帰ったようなイメージでござるよ。』


なにやってるんだ、神様達は。

『って事は、そのあたりの事はデリケートな話なんですね。』

『うむ、ゆえに、そのあたりの話は意図的に避けてくれと助かるでござる。』

『わかりました。気をつけます。』


なんだかなー。

ちょっと呆れながらナガミーチさんの元に近づくと、ちょうど空間から、どっさりと研究室に研究道具をばんばん出しているところだった。


おお!アイテムボックスってやつか?

異世界ならあれはほしいよね。


おもわず傍に駆け寄り、次々に出てくるものを眺めた。

生で見ると興奮するな。

「ナガミーチさん、俺もコレできるようになりますか?」


するとニッコリ微笑まれた。

「低レベルのでよければ今すぐにでも可能ですよ。空間収納は便利ですから必須ですよね。」

「今すぐにできるんですか?スゴイ!」


すると作業の手を止めて、僕の向って手をかざした。


「では術式を起動します。

精霊魔法ハッキングちゃん起動。

勇者システムにログイン開始。

コード・ナガミーチ、ログイン。

生体認証開始。

勇者システムにログイン確認。

まずはセイジーさんにコード発行。

コード名はセイジー。

登録確認。

システムのライブラリー203をコピー。

コード・セイジーのライブラリーにペースト。

インストール。

インストール結果確認。

コード・セイジーに召喚者用基本魔法セットのインストール確認完了。

コード・ナガミーチ、ログアウト。」


光りが魔法陣を形作り、俺の手に張り付く。

一瞬熱かったが、すぐに熱は消えた。



そしてナガミーチさんは僕の肩をポンと叩いた。

「はい終了、右目をつぶって右手を見てください。ステータスが見えると思いますから。」


言われるたとおりにしたら、たしかにステータスが出てきた。


名前:セイジー

称号:魔道師見習い


スキル:<空間収納><鑑定><探査><言語翻訳><健康維持><携帯念話>

魔法:<微風>



「おおお!これが噂のステータスウィンドウか!感動だ。」


これで早くも俺は魔法使いなんですね!

すぐに質問してみた。


「ナガミーチさん、このスキルと魔法は何が違うんですか?」

すると何故か自慢げに答えてくれた。


「それは最近整理しなおしたんですよ。意識しないでも常時発動可能で生命維持の延長の栄養で使えるのがスキルです。

使うときに魔力を術式に送り込んでトリガーにするのが魔法です。」


おお、すごい。

すご過ぎる。


するとビレーヌ様も興奮気味でナガミーチさんの腕に抱きついて揺する。

「ナガミーチ様!わたくしにも!わたくしにも!」

「はいはい、では家賃代わりにビレーヌさんにも基本セットを上げますね。そうそう、本名とは別に魔法名を持つと便利ですよ。なにか希望の魔法名とかあります?魔法にアクセスする用の名前は本名だけだと困ることありますから。」


「魔法名ですか…希望はありませんが、もしもあるほうが便利という事でしたらお任せいたしますわ。」

「わかりました、では使いやすそうなの付けておきますね。」


そう言いながらビレーヌ様に手を向ける。

「術式起動。

精霊魔法ハッキングちゃん、よろしくー。

勇者システムにログイン開始。

コード・、ログイン。

生体認証開始。

勇者システムにログイン確認。

まずはビレーヌ・ビグニーさんにコード発行。

コード名は紅石&ビレーヌ。

登録確認。

システムのライブラリー203をコピー。

コード・紅石のライブラリーにペースト。

インストール。

インストール結果確認。

コード・紅石に召喚者用基本魔法セットのインストール確認完了。

コード・ナガミーチ、ログアウト。」


すると右目を閉じて待っていたビレーヌさんがスグに歓喜した。


「キャアアア、わたくしの右手にステータスウィンドウが現れましたわ!素晴らしいです。素晴らし過ぎますわ。一個だけある魔法は<ライトボール>ですのね。素敵ですわ。そして魔法名が『紅石べにいし』ですのね。」


どうやら、貰った魔法は俺と違うモノだったらしい。

ナガミーチさんの呪文は大して違わないように聞こえたから、もらえる魔法はランダムなんだろうか?


興奮するビレーヌ様に、優しくナガミーチさんが説明をする。

「スキルは頭でイメージするだけで使えますが、イメージの使い方次第で効果かも変わります。魔法も同じですが、より確実に使いたいときは魔法名の『紅石べにいし』の名の元に命じてください。自動で生体認証が発動して、魔法が発動します。」


それを聞いて顔を紅潮させたままビレーヌさんは遠慮がちに不思議そうな表情をする。

上品だ。すごく貴族って感じ。


「お聞きしても宜しいでしょうか。『紅石』の『紅』はわたくしの髪の色から取ったのではと思いますが『石』には何か意味があるのでしょうか?」

「『石』ですか?僕の故郷での本名から一字取ったんです、咄嗟に思いつかなかったもので。変更も出来ますから、もっといいのが思いついたら言ってくださいね。」


するとビレーヌさんは、また顔を真っ赤にして『いえ、この魔法名は最高です!これがいいです!』と手をブンブンさせながら喜んでいた。


耳元でまた大空姫さんの声がする。

『ビレーヌ氏は可哀想でござる。ナガミーチ氏はロマンチックな事をビックリするほど考えない御仁でござるゆえ、「紅」の字は髪の色ではなく、きっと顔をすぐに真っ赤にさせるから思いついたのでござろう。赤髪ではなく紅潮から思いついたから「紅」であろうと思うでござる。「石」の字も絶対全く何も考えずにつけてるでござるよ。』


『それだと何でビレーヌ様がかわいそうなんですか?』


『貴族はロマンチックゆえ、ビレーヌ氏は、”いつか赤髪のあなたを私の家族にします”というメッセージとでも受け取っている可能性があるでござる。まったく哀れでござる。』


ちらりとビレーヌ様を見る。

鼻血がでそうなほど真っ赤な顔で喜んでいる。


『確かに…』


なんかトホホなスタートになったな。

でもワクワクもする。


少なくても、俺は魔法使いになった。

それは間違いない。

新しい世界で、新しい何かを体験できそうだ。


お読みくださり、下さりありがとうございます。

次回、マリユカ宇宙の魔法原理が明らかに。

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