石田長道 その11
登場人物紹介
長道:死ぬ直前にマリユカに拾われたので恩を返している。容姿は普通な感じの男性。もとゲーム作成会社勤務。
マリユカ:この世界の最高神女神。無邪気なのは最強の証。
大天使:四人居る。大炎姫、大空姫、大豊姫、大海姫。みんな美人。
デルリカ:ヤンデレだけど美人で強い。長道の最初の犠牲者でもある。
―石田長道 その11―
わたくし、ナガミーチこと石田長道は本日、天界のいつもの白くて無駄に広い部屋に来ています。
しかしいつもとイロイロちょっと違う。
まずマリユカ様の横にデルリカ=サンが居る。
もうデルリカさんはここのレギュラーってことで良いのかな?
さらに大天使が4人居る。
どうやら僕が作った「天界用言語」で動く世界監視システムが上手く稼動しているようで、2~3日くらいなら大天使が居なくても世界は安定するようになったようだ。
そして、さらに意外な人が沢山周りを囲んでいる。
戦死扱いになっているフレンツ公国産の人工精霊たちだ。
フレンツ公国の連中は、デルリカさんと戦ったゴーレム達は殺されたと思って諦めていたようだけど、そもそもインテリジェンス・アーツのゴーレムと言うのはゴーレムに人工精霊が入ったもの。
ゴーレムが壊れたら、ただの人工精霊になるだけだ。
だから死んでいない。
なので、開放された人工精霊は僕が密かに回収しておいたのだ。
その数712。
半端なので、追々1000くらいまで増やす予定でっす。
他人の金でこんなに人工精霊をもてたのはラッキーだった。
しかも今回はゴーレムと引き換えに手に入れた資源は大金になる。
笑いが止まりませんな。
まあそれは今はいいか。
えっと…、なぜこの子達がここに?
みんなで僕を囲んで、ただ黙ってジーと見てくる。
こ、怖いんですけど。
「あの、今日は何の集まりですか?僕はまだ用件を聞いていないんですけど?」
すると、デルリカさんがパチンと指を鳴らす。
それと同時に、大量のロケットアームが飛んできて僕を抑えつけた。
「うわああ、何するの!いま君達の主人は僕なんだよ。なんで僕に襲い掛かるんだーー。」
しかし僕の叫びは虚しく、大量のロケットアームは僕を捕まえて、まるで十字架に貼り付けるような姿に僕を固定する。
僕、大混乱。
そんな僕に、マリユカ様とデルリカさんは歩み寄ってくる。
大天使達は腕を組んで、その後ろに控えている。
ヤバイ、もしかして僕は処刑される?
イロイロ考えてしまう。
するとマリユカ様は、にぱあと微笑み、元気良く拳を振り上げた。
「では第2回・長道、異端審問会をはじめまーす。」
まわりからは元気の無い拍手が大量におこる。
みんな困った目をしていた。
なるほど、人工精霊たちはマリユカ様のご意向には逆らえないから、泣く泣く僕を裏切ったってわけか。
だが、即処刑ではないのは救いだ。
少なくても第一回の異端審問会は切り抜けている。
今回もうまくいけば切り抜けられるかもしれない。
そんな事を考えていたら、デルリカさんが斧に手を伸ばす。
アカン、それ一番アカンやつや。
血の気が引いた。
でも希望はある。
デルリカさんが、苦笑いをしているからだ。
デルリカさん自身に殺意が無いなら、まだ助かるかもしれない。
少し冷静になれた。
するとマリユカ様は楽しそうにこちらにステップで近づいてくる。
「では長道。今から私が質問しますよー。嘘をつくたびにデルリカが一歩前に出ます。斧が届く距離まで行ったら振り下ろされますから正直に答えるのですよー。嘘さえつかなければ何をいっても許します。いいですねえ (にぱあ)」
「何を言っても?」
「はい何を言ってもでーす。もしも悪口や酷いことを言っても、嘘でなければ許します。ちょっと怒るかもしれませんがあ、、、、斧で撃ち込まれるよりはマシだと思いますよ?」
確かに。
見ると、デルリカさんは4歩くらいで僕に斧が届きそうな場所に立っている。
嘘は3回までか。4回目で斧が来る。
上手く誤魔化さなくっちゃ。
マリユカ様は楽しそうにビシっとポーズを決める。
「では第一問、私に不満がありますか?」
「ありません」
そう答えたら、いつの間にか僕の横に来ていた人工精霊の篠ちゃんが悲しそうに首を横に振る。
ohノー!嘘発見器つきか!
デルリカさんは困った顔のまま一歩前に出た。
ヤバイよこれ。
こうなったら最後の手段!
AKIRAME
諦めた!
もう諦めたよこれ。無理無理。
くそー、今目から出ているのは涙じゃない。
目か水魔法でクリエイトウォーターしているだけだ!
しかも海の味の水だ、ちきゅしょー。
マリユカ様はニコニコしながら、また変なポーズを取る。
「ビシッ!第二問、私に言いたい隠している文句を言いなさーい。」
あう、言うべきか?言わざるべきか?それが問題だ。
グルグルいろいろ考えがよぎる。
「ぶぶー、私が我慢できなくなったので時間切れでーす。デルリカごー。」
また一歩デルリカさんが進む。
「うおおおおい、時間切れがあるなら先に行ってくださいよ。」
「しーらない。長道が遅せいで今思いついたんですもん。マリユカ悪くないもーん。」
おのれ子供頭脳女神め。
すぐにまた違うへんなポーズをしてドヤ顔をしてくる。
「第三問でーす。なんで答えないんですか、死にたいんですか?じゃあ答えられる質問をしますよー。こんな事をしている私に怒ってるのでしょ?」
なんか、マリユカ様が深いこと考えないでこの異端審問会をしているのだと確信した。
適当だな、第三問。
「勿論怒ってますよ。なんですこれは。」
すると、隣に立つ篠が本当に苦しそうに手をクロスした。
ま、バレるよね。
デルリカさんは心配そうにさらに一歩進む。
あと一歩で攻撃距離だ。
逆に笑えて来た。
これが僕の最後の仕事か。それも悪くないか。
マリユカ様の遊びで死ぬのも一興だろう。
するとマリユカ様は無表情でこちらに歩み寄ってきた。
「長道、なんで本当の事を言わないのですか?文句を言っても良いって言ってるじゃないですか。」
僕は、静かな気持ちになれた。
だが本当の事を言う気はない。
周りからどう見られていたかは分からないけど、僕は全てを掛けてマリユカ様に仕えた。
怒ったフリも、喧嘩するフリも、みなマリユカさまが退屈しないための忠義ゆえだ。
だから、この気持ちは墓場まで持っていかないといけない。
・・・僕の仕事をゴミのように扱ったことへの不満も。
道化にもなると誓った、
だから、どんな扱いをされようと受け入れるつもりだった。
だが、近くで家族のように接しているうちに欲が出てきた。
もっと、僕の仕事を見てほしいと。
でもそれは僕の我がまま。
僕の気持ちはマリユカ様には関係ない。
だから話す必要もないだろう。
溜息が出た。
そしてマリユカ様をみたら、まだ無表情でコッチを見ている。
距離にして1メートルくらいかな。
こんな顔も出来るんだ。
20年一緒に居て、はじめて知ったかも。
あ、いけね。随分長い時間黙っていたな。
また時間切れかもな。
するとマリユカ様はユックリ口を開く。
「長道は気づいていましたか?」
急になんだろう。
「何にですか?」
「私も大天使達も長道の心を読んだのは最初の日だけです。その後は一回も長道の心だけはを読まないできているんですよ。何故だと思いますか?」
言われて見れば、確かの僕以外の人たちは心を読まれている事が多々あったな。
でもすぐに理由はわかった。
「それは勿論、設定したシナリオをネタバレされたくなかったからですよね。」
マリユカ様は困った表情になる。
「そんな風に思っていたんですか?やっぱり読まなくて正解でしたね…。」
僕は混乱した。
「他に理由があるんですか?」
するとマリユカ様は寂しそうにうつむいた。
「もう良いです。長道の異端審問は有罪とします。罰として真実を話すまで何百年でもこの部屋で監禁です。」
「え?懲役刑?嘘でしょ。しかも何百年も?」
意外な結末だけど、これって意味がわからない。
「監禁が嫌でしたら、真実を話すのです。」
後ろから大炎姫さんが心配そうに声をかけてくれた。
「長道殿、マリユカ様は本気だ。はやく答えてしまうんだ。どうせ答えるまで出してもらえないなら、すぐ答えて終わらせたほうが利口だぞ。」
少し考えた。
なんとなく意地を張ると損をするというのは理解できる。
だが、マリユカ様がなんで僕を異端審問しようとしたのかが分からない。
その意図を読みきれないで変な答えをしたら、事態はもっとややこしくなりかねない。
さて困った。
すると、さっきから僕の嘘発見器をしていた篠が手を上げる。
それと同時に、僕を抑えていたロケットアームが一斉に離れていった。
どさりと膝を突いてしまった。
でも楽になった。
自由って良いなあ。
篠は僕の前に正座した。
「父上、そんなに悩んではダメですよ。皆様は父上の表情から心の限界が近いのではと心配されているのです。もっと素直に考えてください。」
言われて周りを見渡す。
最初は困った表情をしていると思っていたけど、そういわれると心配している表情にも見える。
でもだからって、不忠な言葉をマリユカ様に言うわけには行かないしなー。
のんきな事を考えていると、篠はイキナリ立ち上がり僕の腕を逆に捕って押さえつけてきた。
ひいいい、暴力反対。
デルリカさんも、一緒に僕を押さえつける。
なにするの!やめて、飴ちゃんあげるから放して。
僕を押さえつけたまま篠はマリユカ様に口を開く。
「父上に代わり、私が勝手に心を読んでお伝えします。」
おおお、反乱キタコレ。
反抗期か?
心を読んでるなら僕のこの心の声も聞こえるでしょう、篠っちゃん、良い子だからやめなさい。
でも無視するように、篠はマリユカ様に続ける。
「父上は、心の奥底からマリユカ様に献身的にお仕えしています。それなのに呪いを掛けられたことに悲しみ覚えています。」
やーめーろー
「さらに、サトミーさんのシナリオを最後に台無しにされたことや、タモツさんのシナリオに興味も示そうとしなかったことに、とても傷ついています。父上は自分の仕事に不満をもたれたことに、自分で自分が許せないんです。」
止めるために口を開きたいが、あまりに強く地面の押さえつけられていて、地面にアゴが固定されてしまっている。
言葉ではとめられない。
だから篠はさらに言ってほしくないことまで言い出した。
「極めつけは、今回の大福の事です。マリユカ様は『所詮異世界人』と言って彼をゴミのように扱いました。あれを明日のわが身と思っています。しかも今回の提督業用のシナリオは父上の渾身の作品だったのに、マリユカ様はポイっと捨ててしまわれました。それにより、父上はマリユカ様に不審を持ってしまいました。」
みんな黙って聞いていた。
マリユカ様もぎゅっと拳を握り締めて、硬い表情をしている。
なのに篠はさらに言葉を続ける。
やめて、なんかこれ以上はダメだって。
「それと、マリユカ様のために一生懸命やっている父上をイジって遊びたいというだけの理由で、父上の蘇生の術開発が不可能案件だと教えませんでしたよね。あれで父上はせめて道化としての自分を受け入れようと心を閉ざしました。」
もう勘弁してー。
僕の秘密はそのくらいにして。
もっと楽しい話題に変えようよ、ご飯の話とか。
でも篠はまだ止まらなかった。
お願い…もう止まって。
「父上はずっと孤独でした。だれも父上を助けてくれないからです。だれも父上に優しくしてくれなかった。酷いですよ、みんなで父上に好き勝手要求して、甘えて、手伝わせて、こき使って、しかも呪いまでかけて。気持ちが離れないほうが不思議です。父上はマリユカ様から虫けら程度にしか見られていないと思っています。当然です、他の人間達の扱いを見ていれば、所詮人間の自分なんて虫けらだと判断してしまうのはしょうがありません。なのにいつでも使い捨てられる覚悟で頑張っているんです。」
すっと誰かが僕の頭を撫でた。
目だけで見ると、デルリカさんだった。
やめて、こんな所で急にデレないで。目からクリエイトウォーターしちゃうかもしれないから。
そこまで言って、篠は僕を解放してくれた。
いててて。
肩をほぐしながら立ち上がると、マリユカ様が正座していた。
なにやってんだ、この子供頭脳女神は?
すると、半泣きの表情のあざとい上目遣いで見上げてきた。
「長道ごめんなさい。反省します。許してほしいです。」
なにこの可愛い女神。
もう!なんだこの可愛さ!ちくしょう、もう!
「許すも許さないも無いですよ。最初に誓ったことはまだ反故にしていません。僕はあなたの為に生きます。これからもずっと。」
すると、泣いていた顔を急に笑顔に変えて、飛び上がった。
「さすが長道です!じつは許してくれると思っていたんですよー。」
調子いいな、この女神は。
でもスッキリもした。
篠はニッコリ微笑んでいる。
あの子なりに、僕を気遣ってれたのだろう。
愛いいやつよ。
そこで大豊姫さんが僕の腕に抱きついてきた。
「長道さん、あの笛の曲が聞きたいです。あのエロゲーの曲。」
おっぱいが腕に絡みついてくる。
うひー、おっぱいて絡みつくって知らなかったよ。
巨乳、おそるべし。
でも、うっちゃっておくか。
「じゃあ離れてください。」
振り回して、下手投げでふっとばした。
まあ大天使だから乱暴に扱っても問題ないでしょう。
起き上がりながら「デレたと思ったのにー」とか言ってるけど無視。
寝言は寝て言ってほしいものです。
すると興味深そうにマリユカ様が覗き込んできた。
「長道、大豊姫の言っていた曲を聞きたいです。」
なればしょうがない。
僕は篠を掴んだ。
すると篠は一瞬で笛に姿を変える。
篠は僕が愛用していた横笛の人工精霊なのです。
そして僕は名作エロゲー『アトラク=ナクチャ』のオープニング曲を吹くのだった。
笛を吹きながら、次の人のシナリオをまだ作っていないことをどう誤魔化そうか本気で悩んでいた。
前回予告で、長道が純潔を奪われると言ったが、アレは嘘だ。うはははは。
(本当は何も考えていませんでした)
長道魔法辞典:精霊魔法
人口精霊に命令してイロイロやってもらうこと。
これが魔法かと聞かれたら「?」と悩んでしまいそうな魔法。




