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大豊姫 その14 エピローグ

登場人物紹介

大豊姫:地の大天使。胸が大ちゃん。Iカップ。

ナガミーチ:長道。普通の男性にしか見えない。死ぬ直前で拾われてマリユカに忠誠を誓う。

マリー:正体は最高神・女神マリユカ。結構気軽に「滅べ」とか口にする。言われた対象は砕け散る。

マリア:デルリカのお母さん。清楚で美しい聖女。趣味はマリーの餌付け。

―大豊姫 その14 エピローグ―


私はナガミーチさんの研究室に来ている。

さっきまで夕飯でマリー様の面倒を見ていたナガミーチさんは、マリー様をマリアちゃんに預けて一人で研究所に戻ってしまっていた。


1人になりたいのだろうか?

だったら、私がお邪魔しちゃ迷惑かな。


そう思いながらドアの前で迷っていたら、部屋の中からギターを弾く音がしてきた。

ドコか悲しげな曲で、この世界には無いタイプの音色だ。

きっと日本の曲なんだろうな。


入り口を開けて、中に入る。

山のように詰まれた、試作品のゴーレムの山を超えると、ナガミーチさんが椅子に座って静かにギターを弾いている姿が見えた。


「ナガミーチさん、お邪魔します。」

恐る恐る顔を出すと、ナガミーチさんは静かに微笑んだ。


「どうぞ。飲み物はそこの棚にあるんで好きに飲んでください。」

そういうとまたギターを弾き出す。


「綺麗な曲ですね、日本の曲ですか?」

「ええ、この曲がすごく好きなんです。エロゲーの曲なんですけどね。」


驚いた。だって凄く綺麗な曲なのに。

「エロゲーですか?いやらしいゲームの事ですよね。それがこんな綺麗な曲を使うんですか!意外です。」


すると思い出すように優しく微笑んでくれた。

「これはアトラク=ナチャという蜘蛛の妖怪が主人公のゲームの曲なんです。そのゲームはとてもシナリオが良くって、ものすごい衝撃を受けました。エロゲーなのに感動と悲しさと希望で涙が出るような作品だったんですよ。」

「それ本当にエロゲーですか?なんか信じられないです。そんな素晴らしいエロゲーはエロゲーではないですよ。」


すると本当に愉快そうに声を出して笑い出す。

「あはは、僕も信じられませんでした。しかもそのゲームにはゲーム製作のツールもついていたんです。ゲームに感動した僕は、そのツールで自分もあんなゲームが作りたくて必死に稚拙なゲームを作りました。稚拙だったけど、自分の作品はどんな作品よりも気に入りました。それが僕の人生の分岐点です。」


私はギターを弾くナガミーチさんの隣に座る。

「急に優しい人になったり自分語りするのは死亡フラグですよ。」

「そうかもしれません。でもそれで僕が死んだらマリユカ様も喜びそうだ。」


その言葉に私はハッとした。

「何言っているんですか。ナガミーチさんが死んだらマリユカ様は嘆き悲しみますよ。馬鹿な事言わないでください。」


すると寂しそうな顔をしてこっちを見る。

「たかが人間が1人どうなろうとマリユカ様が何か思うとは思えません。しかも僕は異世界の人間。なおのこと虫けらでしょ。」

「そんな事ありません!マリユカ様にとって長道さんは特別な存在です。それは私が保証します!」


するとナガミーチさんはジャラランとギターを弾き終わった。

「じゃあ僕が大福と改名したらどうなると思います?」


うっ。

答えられなかった。

悪い予想があるわけじゃない。ただ、本当に予想がつかなかったから。

それでも長道さんを大事にするような気もするし、いきなり怒って砕く可能性も否定できない。

思わず黙ってしまったのが、ナガミーチさんへの答えになってしまった。


でもナガミーチさんは気にしていない表情で、次の曲を弾き出す。

次の曲は何とも神秘的な曲だった。これもアトラク=ナチャとかいうゲームの曲なんだろうか。


「大豊姫さん、マリユカ様が僕をペットの虫程度に思っていたとしても気にはしません。僕は神様に仕えているんですもの。その程度は気にしません。ただ…。」


「ただ?」


そこまで言いかけて、ナガミーチさんは溜息を一つつき、また普通の表情になった。


「そういえば大福さんはどうなりました?日本に帰った後の事が知りたいんですが知りませんか?」


あからさまに話題を変えてきた。

もうこれ以上は話したくないという意思表示かな?

私は素直にナガミーチさんの話題変更に従うことにした。


「ふふふ、わたしは日本を見るのは得意なんですよ。一緒に見ますか?」

「見れるんですか?だったら是非。」


おお、ナガミーチさんが私の言葉に食いついてくるなんて珍しい。

よーし、がんばっちゃうぞ。


私は目の前に1メートルくらいの大きな画面を出現させる。

その画面が見やすいように、ナガミーチさんの肩にグイグイ身を寄せた。

でも・・・

ナガミーチさんが今日は逃げない!

おいマジかよ、なんなの今日は?

私死ぬの?死亡フラグは実は私?

でも良いや。


わたしは身を寄せるようにナガミーチさんに画面を向けた。

「では大福が日本に帰った直後から映しますね。」


ぱっと画面に汚い部屋が映る。

そこに、30過ぎの男が死んでいた。

人間の大福だ。


その口から、黒い猫がモゾモゾと現れた。

おもわずナガミーチさんが私の腕を抱いて興奮する。

「ちょっと、死んだ人間がもどるとこうなるの?なにこれどういう理屈なんですか?」


ガックンガックンしながらわたしはニヤついた。

ふふふふ、ナイス大福。

「私も知りません。こんなケース自体がレアでしょうから私も驚きましたよお。」


猫は部屋の中を動き回ると、冷蔵庫を開けて食べ物をあさり、PCの電源を入れてWEB巡回を始めた。

猫といえど、知能は人ってことですね。


そして大量の掲示板に「黒い子猫が捨てられています。だれか拾ってあげてー」と書き込み始めた。

それをあきれた顔で眺めてしまった。

すこしはがんばれよ。


思ったけど、大福は部屋を飛び出し、家の前でナーナー泣き出す。

拾ってもらう気満々ね。


しばらくすると、目が覚めるような美少女がメイドさんを連れて大福に走り寄る。

『ほら車田、書き込みにあった捨て猫いたよ。拾ってあげようよ。約束どおり連れて帰ろうよ。』

『かしこまりました、お嬢様。』


なに!金持ち美少女に拾われただと!大福のクセに!


それを見ているナガミーチさんが妬んでいる顔をしていた。

「金持ちの美少女のペットって、人間様より良いご身分じゃないですか!ゴロゴロしながら気ままに美少女に構ってもらって、食事は良い物もらうんでしょ。しかも、いま明らかに美少女のパンツを見上げてニヤニヤしていますよ。くそー、捨てられろ!拾われるな!」


黒いナガミーチさんが居る。

いつでも私が拾ってあげるから嫉妬しちゃダメよ。


そう思っていたら、次の場面で顔が凍りついてしまった。

そこは恐らく動物病院。


手術台に固定された大福猫に向けてキュイイイインと唸る丸ノコが襲い掛かっていた。

『ギャニュアァァァァァァ!』


丸ノコで去勢されて、大福は大絶叫を上げていた。


ひきつりながらナガミーチさんは、怯えてギュッと私の手をつかむ。

おほおお。大福、ナイスアシスト。


「大豊姫さん、これって猫の去勢シーンですよね。なんで麻酔なしで電動ノコ使ってるんですか?動物病院ってこういうものなんですか?」

「ちょっと待ってくださいね、いま調べます…、どうやらこれはココの獣医の趣味らしいです。動物は喋りませんからこうやっていたぶって楽しむのが趣味のようです。」

「うわああ、ドン引きしちゃいましたよ。」


わたしはアゲアゲです。


次は、拾われた家に戻っているシーンになった。

少女に大事にされながら、悠々自適なペットライフを満喫しているようだ。

ときどきメイドさんの胸を押してスケベ顔しているけど、猫は許されている。


そこで思い出した。

「あ、そういえば彼はマリユカ様から『生涯童貞の呪い』も受けていましたけど、どうなったんでしょうか?」


ナガミーチさんの顔が見る見る青くなる。

「だ、だ、だから速攻で去勢されたんですね、しかも麻酔なしの丸ノコで。どうしよう、僕もその呪いを受けているんですよ。」


ヤバイ、コレ本気で怯えている。

「大丈夫ですよ。ほら去勢された後は大福も幸せそうに飼い猫ライフを楽しんでるじゃないですか。生涯童貞でも、それいじょうのモノが手に入りますよ、ナガミーチさんも。」


そのフォローにさらに顔を沈ませた。

「童貞で長く生きるよりも、太く短く淫魔のように生きたいです。」

「そういわずに…」


だめだ何を言っても薮蛇になりそう。

話題を変えよう。

「このあと大福は、末永くダラダラ生きて、ご主人に看取られて猫生を終えるそうです。彼は人としては駄目な人だったようですから、猫になれてきっとラッキーだったと思いますよ。」


するとナガミーチさんは静かに「それなら良かった、ありがとうございます。」と言って、こんどは横笛に手を伸ばす。


さっきギターで弾いていた落ち着いた曲を、こんどは笛で演奏し始めた。

とても心に染み渡るような音色だった。

同じ曲の筈なのに、笛だと脳が思考できないくらい酔いしれてしまう。

きっと笛だと歌っているように聞こえてくるからなんだろうな。


ただ、音色に悲しみや虚しさが含まれているのが気になった。

その感情が、笛の音をさらに美しくしているのだから性質が悪いとも思うの。


曲を吹き終わったナガミーチさんは、とっても憂いに満ちた表情をしている。

うーん、素敵過ぎてものすごく見つめてしまった。


そこでナガミーチさんは悲しそうな表情のまま独り言のように呟く。

「どんな作品でも自分の作品は可愛いものです。なのにそれを遊びもせずに捨てられてしまうのは耐え難い。気に入らなくて文句を言われるなら諦めもつきます。でもシナリオを作らせておいて、見もしないで捨てられたら…」


私は、優しく手を握る。

「ナガミーチさん、それってどういう意味ですか?」


でもそれ以上は、どんなに聞いても答えてくれなかった。


読んでくださり、ありがとうございます。


次回、ナガミーチの貞操が散る。

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