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大豊姫 その9

過去3話を微調整。


―大豊姫 その9―


「そうか。ナガミーチは逝ったか」

「まだ健在です!」


ダギル大公が空を見上げながら不吉な事を言うので、思わず怒鳴っちゃいましたよ。

セルバー大公は死亡フラグを立てて、見事に回収(死亡)したけどナガミーチさんは大丈夫。

だってナガミーチさんだもの。フラグなんてクラッシュするに決まってる。


それにフラグも立てなかった娘達が沢山死んだし、死亡フラグなんて意味無いよ。


私達の横では、大公夫人がパンツ子ちゃんを娘でも抱くように優しく抱きしめていて、そこにすがるようにリボンパン子ちゃんとシルクレースちゃんが泣いていた。


ここは大福が隠れていた場所。

私はそこに合流している。


ゴーレムが機能停止して、その死を悼む大公夫人。

あの人にとっては、物であるゴーレムも人と変わらなかったのでしょう。


姉妹が死んで泣くゴーレム達。

あの娘たちは人と何が違うんだろう


私達の周りを500体のゴーレムが囲んで警戒してくれている。

せめて、姉妹の死を悼む時間を作るために。

そんな優しいゴーレム達は人と何が違うんだろう。


それを言ったら私も同じだ。

悠久の時を生きているのに、パンツ型姉妹の姿に涙が流れる。

私だって、本当は人と何も違わないんじゃないだろうか。


その証拠が長道さんだ。

人の身でマリユカ様の隣で、役職神以上の活躍をしている。

人と天使の差など何も無いと突きつけられている気分だ。


デルリカちゃんだってそう。

あれが人の身でたどり着ける境地なの?

むしろ、天使なんて古臭い存在は人に勝てないのではとすら思えた。


マリユカ様が日本人を召喚してから、この世界は大きく変化してきている。

私達大天使ですら置いてきぼりになるような何かが。


物も、人も、神も、大天使も同じラインに立っている異常事態。

それが今のマリユカ宇宙なのです。


足元を見ると、大公夫人にアキレス腱と舌を切られた大福が転がっている。

死なないように口には布が詰め込まれているが、それ以上の処置はしていない。

多分コイツは、普通に人の世界で生きているだけなら、他より馬鹿で無神経なだけの男だったのでしょう。

でも、こいつは自分可愛さに、500以上のゴーレム達を道連れにしようとした。

窮地で本性が出たというところだろう。


哀れではあるよ。

でも運が無かったね。ここで死んでもらう。

巻き込まれて殺されるんだから、ひどいとは思うけどゴーレム500体の命には代えられない。


そんな事を考えていたら、ゴーレムの1人が叫ぶ。

「高速で飛来する物体あり!こちらに真っ直ぐ来ます。これは…人です!人が飛んできます!」


一斉にゴーレム達が対空迎撃体制に入る。


だが、すぐにリボンパン子ちゃんが叫んだ。

「みんな撃っちゃだめ!飛んでくるのは、ナガミーチパパですよ!」


すると、ロケットアーム持ちのゴーレム達がいっせにアームを飛ばしてナガミーチさんを空中で受け止めた。


ユックリ地上に降りたナガミーチさんはゼィハァ言いながら両手を地に着く。

「ふう、危なく死亡フラグを回収するところでした。奥技『やばくなったらギャグパートで誤魔化す』を発動させて正解でしたよ。ギャグでなかったらこんなに蹴り飛ばされたら死にますからね」


さすがに私もあきれたよ。

「蹴られてこんなに飛んだんだ…。粉々に成らなかったのは流石ナガミーチさんですね。」

「こんな事もあろうかと、密かに開発しておいた『精霊バリア』を展開していて正解でした。」


そこに必死の形相のシルクレースちゃんがナガミーチさんに掴みかかる。

「ナガミーチパパ。パンツ子姉さんを助けられるのか?頼む、少しでも可能性があるなら助けて。」


優しい顔でシルクレースちゃんの頭を撫でる。

「まかせろ、そのためにデルリカさんに蹴り飛ばされたんだ。このパンツに誓って助けるさ。」


そう言いながら左手に掴んだパンツを私達に見せた。

え?

いまカッコイイ事言ったのに、パンツ掴んでガッツポーズとか引くわー。


シルクレースちゃんは不思議そうに尋ねる。

「コレは…パンツですよね。」

「そう。デルリカさんのパンツだ。これを奪い取るとき思いっきり蹴られてしまったのさ。わっはっはっは。」


「「「「「えー」」」」」

ゴーレムちゃんたちが、「えー」の大合唱。

私だって「えー」って言っちゃったよ。


なにやってるのこの人。

でも私達の白い目を気にせず、ナガミーチさんはマズは空間収納にパンツ子ちゃんのボディーを仕舞った。


そして両手を組んで目をつぶる。

「空間ファクトリー起動。パンツ子修理開始。不足資材補給。骨格補強。衣服交換。OS再インストール、機能最適化、オーバーホール!」


そうつぶやいて、空間収納からパンツ子ちゃんを取り出した。

すると、出てきたパンツ子ちゃんは驚くほどみごとに修理されている。

服まで新品だ。


おおお、さすがゴーレムの第一人者。

ゴーレム修理用のシステムを、空間収納に隠し持っていたんですね。


そして、まるで眠るように横たわっているパンツ子ちゃんのスカートをそっとめくった。


おい!

ばちん!

素早く大公夫人がナガミーチさんの手を叩き落す。

「ナガミーチ!眠るパンツ子になにをするか!」


さすがに今の一撃は痛かったのか、手の甲をさすりながら恨めしそうに大公夫人を見るナガミーチさん。

「これも修理の一環ですよ。こればっかりは信じてくれないと困ります。パンツ子の本体はパンツですよ。スカートめくらないと最後の工程が進められないのは当然じゃないですか。」


「しかし、、、、」

納得の行かない顔をした大公夫人に、ダギル大公がそっと手を添える。


「信じるのだ。今はそれしか我らの娘を助ける手段は無い。信じるのだ。」


そこでやっと大公夫人は頷いた。

「わかりました。今は藁にもすがるとき。信じましょう、ナガミーチを。」


そこまで聞くとナガミーチさんは微笑んだ。

「では続けますね。」


スカートをめくり、破れたパンツを脱がす。

うーん、犯罪にしか見えない。


そして、なんとデルリカちゃんから奪ってきたというパンツをそっと履かせたのだ。

そしてパンツに手を当てて、詠唱を始める。


「パンツ子と呼ばれし精霊よ、そのよりどころをココに用意した。もしもこの世に未練があるのならば、この体に宿りて生を受けよ。物より生まれし魂よ、我より生まれし体に宿り、ゴーレムとして産まれよ。」


するとナガミーチさんの顔の前にユックリ光が集まりだし、野球ボールくらいの大きさの球になる。

その光りの球はパンツに落ちていくと消えた。


同時に、パンツ子ちゃんの体が赤く光る。

そして少しずつ赤い光りが緑色にパタパタ変わっていく。


3分ほどかけて全身が緑色になると、パンツ子ちゃんが機械のような声を上げた。

『システムオールグリーン。ゴーレムOSをVer10.2にアップデート完了。OSを完全は把握。パンツ型1番ゴーレム。パンツ子、再起動。』


そう言うとバチっと目を開いた。

そして何事も無かったようにムクリと起き上がり、女の子っぽい内股のガッツポーズをとる。

「パンツ型一番ゴーレム、パンツ子です。特技は魔道砲、近接特化、パンツ脱皮、パンツ基地。パンツアックス。司令官、私、頑張ります!パンツ、パンツです!」


もしかして、あの自己紹介って、起動したときに必ず言う仕様なのかしら?

「パンツ子姉さん!」

「姉さん!」


パンツ型の妹二人はパンツ子ちゃんに飛びついて号泣した。

さらに抱き合う3人の頭を大公夫人がまとめて抱きしめる。

「パンツ子、よくぞ戻ってきた。よくぞ戻ってきたぞ。」

泣きながらパンツ子ちゃんを抱きしめる3人を見て、ほかのゴーレムちゃんたちも貰い泣きしていた。


私はこんなのじゃ泣かないけどね。

ちがうよ、これは目から汗が出てきただけだから。泣いてないから。


嘘つきました、本当は感動で泣いています。

よかったよー。こんな良い子が死ななくてよかったよー。


みんな喜んでる。よかった。


「あらあら、もしかしてワタクシはタイミング悪い登場でしたかしら。」


驚いてその声の方を見る。

その声は空中からだった。


見上げると斧を持ったデルリカちゃんが浮いていた。

うぎゃああ、ヤバイ!


ゴーレムちゃん達は悪い意味で人間だった。

だからうれし泣きして、デルリカちゃんの接近を見逃してしまったのだ。


ふわりと地面に降りる、ブロンドの天使。

でもその顔に浮かぶ微笑は、悪魔にしか見えなかった。

「あらあら、ワタクシ嫌われているのでしょうか?悲しいですわ。悲し過ぎますので、ナガミーチ以外は皆殺しにしてしまいそう。ふふふ。」


斧の刃をぺロリと舐めた。

ぞくっとする美しさがあった。


だが、ナガミーチさんは腕を組んで微笑んでデルリカちゃんを見つめ返す。

「じゃあ賭けをしましょう。もしも一騎打ちでデルリカさんから出血か骨折をさせるゴーレムが居たら攻撃を諦めてください。もしもデルリカさんが出血も骨折もしないで一騎打ちで勝ったら、僕ももう諦めます。どうです?」


すると、デルリカちゃんの顔がクワっと闇に染まる。

「おもしろいですわ。ナガミーチが邪魔しなければ国一つだって皆殺しにして見せましょう。」


私はナガミーチさんの腕に抱きついて揺する。

「ちょっと、誰が一騎打ちするんですか?ナガミーチさんですか?それとも長道さん?」


乱れた私の髪の毛を、優しく手で整えながらナガミーチさんはニヤリとする。

「いいえ、ここには現状で僕の最高傑作のゴーレムが居ます。僕の計算が正しければ彼女ならデルリカさんに一矢報えるはず。だから大丈夫ですよ。」


「そんな凄いゴーレムがここに居るんですか?」

すると、すっとパンツ子ちゃんを指差す。


「そのためにパンツを奪ったんです。デルリカさんが履き続けたパンツをコアに持つゴーレム、パンツ子は、躯体もOSも最新式だ。お前に負ける要素は無い。さあ、勝って皆を助けるんだ、パンツ子よ!」


みなの視線がパンツ子ちゃんに集中する。

パンツ子ちゃんはキリっとした表情になり、得意の内股ガッツポーズを取った。

「まかせてください、みなを守ります!私、頑張ります。」


おおお、中二でなくてもこれは王道展開!

破壊されたはずの主人公機が、ピンチの中ヴァージョンアップして復活!

王道ですよ!


「がんばれ!パンツ子ちゃん!」

「はい!頑張ります!」


パンツ子ちゃんはパンツを連続脱皮して大量に背中に張り付かせる。

「いきます!パンツ基地発動!」


背中のパンツが次々に紙飛行機のような形で高速で射出される。


「面白いですわ、この一騎打ち、乗って差し上げましょう。」

デルリカさんは無詠唱で大量の火炎弾を打ち出し、空飛ぶパンツを次々に撃ち落す。

その状態のまま、斧を振り上げてパンツ子ちゃんに飛び込んだ。


「パンツアックス!」

パンツ子ちゃんのパンツは斧の形になり、デルリカちゃんの斧を受ける。

一瞬、私を守ってパンツ子ちゃんが斬られたシーンを思い出す。

でも


ガキン!


パンツのアックスはデルリカちゃんの斧を受け止めた。

さらにパンツ子ちゃんの背中に何本もパンツの斧が映えてきて、デルリカちゃんに連続攻撃を掛ける。


「なんですの、このゴーレム。まるでワタクシの技をコピーしているようですわ。」

「私のコアは貴女のパンツですもの。当然です!」


そう叫びながら、渾身の一撃をデルリカちゃんに打ち込む。

パンツ子ちゃんの攻撃で、初めてデルリカちゃんは5メートルほど吹き飛ばされた。


おおおおお!

なんか互角じゃん!

さすが主人公補正、復活後はパワーが何倍も上がってるぞ。


さらに下がったデルリカちゃんに腕の魔力砲を打ち込む。

たまらずデルリカちゃんは空に飛び上がった。


するとパンツ子ちゃんは大量のパンツ脱皮を行い、背中に羽を生やす。

「パンツウィング!」


飛び上がり、斧を振り下ろす。

それを慌ててデルリカちゃんは躱した。

「あなたのパンツ、万能過ぎますわ。」


必死に斧を振って身を守るデルリカちゃんの顔には、もう余裕の表情は無い。

そこで飛びながらパンツ子ちゃんはまた叫んだ。

「パンツ基地発動!」

「ちょっと、それ飛びながらも使えますの?いい加減にしてほしいですわ。」


パンツ子ちゃんの背中から、また大量の紙飛行機みたいな形になったパンツが飛び出していく。


それを高速飛行で必死に処理するデルリカちゃん。

パンツ飛行機を一箇所に誘導し、衝撃波でパンツ飛行機を吹き飛ばす。


その一瞬の隙を逃さなかった。


「パンツキック!」

なんとパンツが足の方向に増殖したことで長い棒のように伸びて、デルリカちゃんの腹にめり込んだ。


「ぐふぅ、やってくれましたわね。」

デルリカちゃんは伸びたパンツの棒を叩いて払いのける。

その時


パリン


パンツがガラスのように割れたのだ。

なんて芸達者なの!


すると、割れたパンツの破片が渦巻くようにデルリカちゃんの周りを飛び回る。

今までのパンツ飛行機の動きにより、空気が渦を巻くように動いていたようだ。


そのため割れたガラス状のパンツの破片がデルリカちゃんに襲いかかった。

「はっ!」


デルリカちゃんは全身から衝撃波を発する「ボディーソニック」と言う技でガラス状パンツ片を吹き飛ばした。


でもそこでナガミーチさんが叫んだ。

「そこまで!デルリカさんの出血により、パンツ子の勝利とする!」


みるとデルリカちゃんの頬が確かに少し切れて出血していた。

頬を触って、自分で出血を確認したデルリカちゃんは、思ったよりも冷静に地面に降りてくる。

パンツ天使のパンツ子ちゃんも、パンツの羽を崩壊させながら地に下りた。


そして、デルリカちゃんは斧を空間収納に仕舞い微笑んだ。

「まったく忌々しいですわ。ワタクシ、まだナガミーチには勝てませんのね。」


そういうと、さっと私達に背を向けて、ビシュッっという音とともに高速飛行で飛び去ってしまった。


みな状況がつかめず暫し呆然として空を見上げる。

その状況で、パンツ子ちゃんの元気の良い喜びの声が響いた。

「やりました!私、デルリカさんに勝てました!やったー、頑張りましたー。」


勝った?生き残った?


急に嬉しさがこみ上げてきた。

他のみんなも同じだった見たいで、やっと「やったー」と叫びだした。

私は凄い場面に立ち会った。


人が天使を超え、

物が人を超えた。


そして、物は人になったんだ。

500体のゴーレムちゃんたちは抱き合って泣きながら喜んでいる。

あれが人でなくてなんであろうか。


私はこの光景を見ながら確信した。

この光景を作ったナガミーチさんは、いずれ人の範疇を超える。



そして、このマリユカ世界にとんでもない事を起すと。

お読みくださり、ありがとうございます。

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