大豊姫 その1
いつから日本人が主役だと思っていた?
そんな感じで大福編の主人公は大天使です。
―大豊姫 その1―
ここはフレンツ公国。
グルニエール王国と隣接する大国で、一昔前までは国境争いでよく小競り合いをしていた国なのね。
でも8年前の魔王登場で、フレンツ公国は主力をゴッソリ失っちゃったの。
それなのにグルニエール王国は勇者による魔王討伐に成功してしまったからフレンツ公国のメンツ丸つぶれ。
それにより、フレンツ公国はグルニエール王国からみて格下と扱われるようになってしまったわけなの。
それに対抗しようとした勢力が、ビグニー公爵家を利用して魔族をけしかけたけど返り討ちにされてしまう。
この事件でサトミーさんが日本に帰ることになったので、激怒した長道さんに報復されて国境を大きく後退したの。
さすが長道さん。
長道さんの報復の仕方が凄かったのよね。
なんと地下水脈をとめてフレンツ公国全体の井戸を干上がらせて、なおかかつ魔法で主要な山を噴火させて国力を分散させる。
その弱った所を野生の魔物や動物の角に松明を結びつけて暴走させてつっこませるしで、長道さん凄い無双したのですよ。
グルニエール王国軍は、暴走する魔物や動物の後ろから軍を進めるだけで、軽々フレンツ公国軍を破り、三日でフレンツ公国を降伏させちゃったのです。
この功績により、大魔導師ナガミーチは賢者という称号を手に入れたわ。ないす長道さん。
そのあと、こりないフレンツ公国は、すでに潜り込ませていた工作員で反撃しようとしたらしいけどビグニー公爵領に忍ばしていた工作員は、すべて大海姫ちゃんとデルリカちゃんに皆殺しにされてしまい反撃の足がかりを失う。
そのあと、馬鹿な貴族や利益しか見ていない商人や、学のない無知な農民をたきつけて内乱を企てるも、やっぱり大海姫ちゃんにより粛清されてしまい失敗。
この時、失敗してることに気づかずに混乱が生じてるはずのビグニー公爵領に侵攻し、国境争いを再開しようとしたら、ビレーヌちゃん率いる公爵軍とベルセック候爵軍により、あっという間に殲滅されてしまい、また国が弱体化してしまったのよ。
バカよねー、フレンツ公国。
長道さんとデルリカちゃんがいるグルニエール王国は、いま世界最強国家よ。
しかも圧倒的な最強。
グルニエール王国の強さを100としたら、次に強い砂漠の騎馬帝国デスシールの強さはせいぜい10程度。
その尺度で言えばフレンツ公国なんて贔屓目に見ても3~4くらいね。
攻めれば滅ぶしかないのに。
ほんとバカよねー。
で、大福とかいう男はこのフレンツ公国に召喚される事になりました。
それだけで、もう大福君には不幸な未来しか見えないってものよ。
そして今回の一番の被害者は、大福君について一緒にこの国に来なければいけなかった私、大豊姫ちゃんです。
ううう、私も長道さん側に行きたかったよー。
大天使の中で、私だけまだ一回も長道さんの味方の役をやってないんですよ?
不幸だわ。
私も長道さんやデルリカさんと一緒に、マリー様の手下になりたいのに。
悪役なら大炎姫さんがやるべきよ。あのひと、悪役顔なんだから。
なんで癒し系ゆるふわ垂れ目顔巨乳大天使の私だけ、いつも悪役側なの?
おかしいですよ、もう。
で、
私は今、王城の地下で異世界人を召喚をするサモナーとして、なぜか毒々しい服を着ているの。
もう諦めて、さっさと仕事終わらせちゃいますか。
顔を隠した大公夫人が合図を出したので、私は召喚の義を行った。
「いでよ、異界より呼ばれし異能のものよ。マリユカ様の名において命じる。ココに現れよ!」
薄暗い地下室の中で大きな魔方陣が光る。
そして大福が現れた。
ひょろりとした姿に、ダサいメガネをかけた男。
年齢は30くらいかしら。細長い猿みたいな顔をしている。
うん、好みじゃない。
せめて美少年だったら少しはヤル気もでたのにな。
猿顔ひょろひょろオッサンとか最悪。
もう帰っていいかな。
早く帰りたいから、いそいで大公夫人に説明する。
「大公夫人、彼は九十九神を具現化させる能力を持っています。使い古された道具の魂を人工精霊にできるでしょう。古い道具に材料となる資源を混ぜて精製すればインテリジェンス・アーツの戦闘ゴーレムになるはずです。細かい事は後ほど書面にまとめてお渡します。」
嬉しそうに大公夫人は立ち上がった。
「おお、練成術士とな。人工精霊を使ったインテリジェンス・アーツの開発は、敵国賢者のナガミーチしか成功していない秘術。これは我が国の反撃の時を感じるぞ。」
喜んでいるね。
でも真実は残酷なんだ。
実は大福君が出来るのは、資源を代金に転送魔法で「ランダム」に長道さんの旧式の試作品ゴーレムを呼び出して、付喪神にあたえるだけなんだよね。
つまり、長道さんを超えることはできないんだな、これが。
でも、まあ知らない人から見たら、人口精霊のゴーレムを練成しているようにしか見えない。
廃品のリサイクルを兼ねてこんな方法を考えるとは、我らの長道さんの頭脳には戦慄しますね。
大福君は、向こうで大公夫人に声を掛けれて「うん、まあかなり強いはずだけどね。」とか、細かい事を知らないくせに偉そうに言い出してる。
しかも言葉遣いがなっていないと、大公夫人の付き人に文句言われている。
うわあ恥ずかしい。
30歳過ぎてるみたいだけど、返事に「うん」とか言ってる。
目上の人にはちゃんと「ハイ」って返事しなさい。
うわーうわー、なんかハズレの予感。
アレの面倒見るの嫌だな。
さっさとデルリカちゃんに殺されて終わってくれないかな。
嫌だなー、この仕事。
そう思っていると向こうで大福君が私を呼んでいる。
「そこの素敵なボインさん、大公夫人がよんでますよ。」
殴りたい、あの猿顔。
仲良くもないのに「ボインさん」とか呼ばれると嫌悪感しかないね。
私は、ふてくされた感じで大公夫人に近づくと、彼女はそっと私に耳うちしてきた。
「チェンジは出来ぬのかえ?こやつ、馬鹿過ぎるぞ。」
私は小声で返す。
「すいません、マリユカ様の采配ですので。」
すると、彼女は不承不承という雰囲気で再度大福君を見る。
「お国の大事、あきらめるしかないな。」
そう小声でつぶやいた。
そして気を取り直したように、次は普通に私に話しかけてくる。
「では、さっそく練成を行って欲しい。必要なものを申してみよ。」
「ハッ、古いもの以外には、鉄、貴金属、動物、魔力石です。それらが高価なものを用意するほど、高性能なゴーレムが生まれる可能性が高くなるはずです。」
すると疑うような目をされた。
「魔道師ダイホーよ、それは確かか?」
「はい、大魔道師ナガミーチ殿が人工精霊を作る時はそのようなモノを用意していますので、間違いないかと。」
そこで大公夫人は頷き、傍のものに指示をとばす。
その間も、大福君は「まあ、そうでしょうな」と私の言葉に相槌をうっていた。
おい!だからアナタは知らないでしょ!なんでいかにも知ってる風に会話に入ってくるの!
あああああ、長道さーん、こいつ嫌だよー。
こいつ、凄く本能的に嫌ー。
早く私を助けに来てよー、長道さーん。
しかも、虚空を見つめる振りして、視線は私の胸を凝視している。
もう、ホントに嫌。
すると、大公夫人の手下が材料を用意してきた。
銀のインゴット3本、大きなルビーを10粒ほど、食堂から持ってきたのか内臓が抜かれたブタ、そして魔石が5つ。
それを私が書いた魔法陣の上に集めて置く。
そこで、なぜか大公夫人の御付の女性がパンツを脱いでその上に置いた。
え?パンツの精霊を作りたいの?
さすがに大公夫人も気まずいのか慌てて言い訳を始める。
「まずは試しゆえな、この場にあるモノで適当にやってみるだけじゃ。さあ、その力を披露するとよい。」
大福君はパンツを凝視してから私を見た。
「これ、どうすれば良いの?教えてもらわないとわからないでしょ。準備悪いよね。」
おい、さっきいかにも知ってる風に会話に入って来ただろ。
そしてなんでコッチが悪いみたいに言う!
イラつくなあ。
嘘おしえちゃお。
「その鉄のインゴットで左手を潰して『いでよ九十九神』って叫べばいけるはずです。」
「ちょっとー。ご冗談でしょ。またまたー。」
わらって誤魔化そうとしやがった。
でも大公夫人が軽くアゴでクイっと兵士に指示を出すと、兵士は大福君を押さえつけて、有無を言わさずその左手を潰した。
「うぎゃあああ。」
血が飛び散り絶叫したので、左手を魔法で回復してあげた。
「ほらほら大福君、悲鳴上げても意味ないでしょ。『いでよ九十九神』て叫ばなくちゃ。」
すると兵士は、また有無を言わさず回復した大福君の左手を再び潰す。
「うぎゃア、いでよ九十九神!!!!」
こんどは言えました。
本当は九十九神にしたいモノにさわり『いでよ九十九神』って言えば良いだけだけど、それは内緒にしヨット。
すると魔方陣は光だし、その上にあった資材が消える。
しばらくして光る魔法陣から少女が生えてきた。
セーラー服を着たポニーテールの少女で、腕に複雑な模様の刺青が彫られている。
可愛らしい中学生くらいの少女にしか見えない。
でも少女は目を開くと、活発な声で大福君に挨拶をする。
「司令官、私はパンツのゴーレム、パンツ子です。特技は腕からの魔力砲とパンツ脱皮。頑張りますのでヨロシクお願いします。」
そこで、その場に居た人たちからどよめきが上がる。
これでゴーレム?少女にしか見えないよ。
さすが長道さん、ゴーレムへのこだわりが違うね。
しかもコレで旧式の試作品とか過ごすぎる。
長道さん、凄過ぎだよ。
パンツ子は大福君と大公夫人に挨拶すると、元気よくガッツポーズをとって、ヤル気アピールをしている。
私は一応念を押す事にした。
「大福さん、一応注意しておきますよ。もしもゴーレムにエッチな事をしたら、二度と魔法陣を書きませんからね。」
「ええー、でもゴーレムだから良いじゃん。」
私は彼の返事を無視して目をつぶる。
これからは最低限の接点で過ごすように努力しよっと。
この人と喋ると、なぜかストレスが溜まる。
その日は、大福君とパンツ子は大公夫人の用意した部屋に向った。
今日はもう休むことにしたっぽい。
私も大公夫人に挨拶をすると、自室に戻った。
そして通信用の魔法陣を右手に開く。
「長道さん、こちらは大豊姫です。無事に済みました。」
すると通信魔方陣の向こうから長道さんの声がする。
『ご苦労様です。ではあとは戦力の増強に努めてください。かなり蓄えないとキツイですから。』
「わかりました。頑張って戦力増強しますね。それより長道さんにお願いがあるのですが…」
転送魔法で合流して、夕飯くらいはご一緒にいかがでしょうかと聞きたかった。
でも、現実は厳しい。
通信魔法の向こうから、マリー様のキャイキャイいう声が聞こえてくる。
『あ、すいません。いまマリーちゃんが可愛過ぎるのでもう通信切りますね。ひさしぶりにビレーヌさんも一緒なんでマリーちゃんがストーカーって叫んでテンションあがってるんです。うおーマリーちゃん可愛過ぎ。夕飯に連れ出さないといけないので。ではー。』
ブチッ
あ、通信きられちゃったわ。
ええー、そのお仲間に私もいれて欲しいのに。
ぐすん、良いもん。1人寂しくモソモソ食事とるから。
私は部屋に用意してあったサンドイッチをモソモソ食べながら、妄想の中で長道さんやマリー様と楽しくお食事をしたのでした。
大豊姫「長道さん、私も一緒に…」
長道「すいません、今マリーちゃんを愛でるのに忙しいので。」
大豊姫「あの…私も…あの……。いえ何でもないです。うわーーーーん。」
長道「泣きながら走って行っちゃった。ま、いっか。大豊姫さんだし。」
(そして2秒後、きれいに大豊姫の事を忘れる)




