吉田保 その10
微調整しました。本文の内容には影響ありません(汗)
次回は6月10日に更新予定。そこからまた更新頻度は2~3日に一回に戻る予定です。
―吉田保 その10―
半日ほどで反乱の本拠地についた。
反乱軍は同時に数箇所で奮起していたが、ここが本部であることは情報部が調べている。
私達は騎馬100騎とゴーレム30機。
平民が1万人で抵抗してきても蹂躙できる戦力だ。
私とビレーヌは先頭に立って敵の砦に近づく。
本来ならば危険な行為だが、今回は大海姫がディフェンスをしてくれているので心配はしていない。
馬に乗って砦の前まで行くが、まったく抵抗の様子がない。
どういうことだ?
「私はビグニー領の領主、タモツ・ビグニー公爵である。反乱者は速やかに投降せよ。」
すると、正面の門がユックリと開く。
砦の中から出てきたのは、若い貴族達だった。
それを見て、ビレーヌが叫ぶ。
「サビアン様!ジリアン様!スパル様! 何故皆さんが!」
すると女性の貴族が一歩前に出る。
「何故ですって?それはこちらのセリフですわ。サトミー様の大切なご家族を奪い、サトミー様の消滅を招いたビグニー家になぜビレーヌ様は加担いたしますの? わたくし達の怒りをビグニー公爵にぶつける事は当然の事ですわ。」
そこまで聞いてスグに理解できた。
私がこの世界に召喚された理由は、罪を犯して殺されたビグニー一族の代わりに公爵となることだったのだから。
マシリト公爵家を滅ぼした罪、それがビグニー公爵家の罪。
つまりサトミー嬢を殺した罪という事か。
なるほど、納得である。
私は声を張り上げる。
「なればその罪は私にぶつけるのが筋であろう。領民を巻き込むのではない。領民は我らが保護すべき存在で、私怨に利用する道具ではないぞ。」
すると、1人の若者が剣を抜き近づいて来た。
「ではお相手願いましょう。僕の名はジリアン・ハルベリー。剣の腕は最底辺ですが、サトミー嬢を奪われた怒りは3年たった今でも消えてはおりません。」
サビアンという女貴族も剣を抜き、ビレーヌの前に立つ。
この状況で、不思議と落ち着いてる自分に驚く。
こう見えて私は剣道3段、多少は出来るはずだ。
「コレも貴族のさだめか。ジリアン殿、お相手いたそう。」
剣を抜き身構える。
そこで踏み込んできたジリアンが剣を振るった。
だが…おや、遅い?
軽く弾いて正眼に構えなおす。
彼は私に剣を弾かれたことでバランスを崩し転がる。
気合が入っているのだろう、ジリアンは急いで立ち上がり私に構えなおす。
…ジリアン、めちゃくちゃ弱いな。
こんな弱いのに剣を振るうとは、よほどサトミー嬢を奪われたことに怒りを持っているのだろう。
幸い私の剣は日本刀と同じ形だ。
カチャッ
剣を逆にする。
峰打ちで打ち据えるか。
再度踏み込んできたジリアン君の剣を巻き込んで跳ね上げる。
面白いように体勢を崩したジリアン君の腕に峰打ちで打ち据えた。
「ぐあああ。」
腕を抱えて転がるジリアン君
右の手首を折った。
これで退いてくれると良いのだが。
横を見ると、ビレーヌとサビアン嬢が戦っている。
見事な戦いだ。彼女達の方が明らかにジリアン君より強そうだ。
激しく刃がぶつかり合う。
鍔迫り合いになったとき、サビアンが叫んだ。
「ビレーヌ様!今からでも退いいてはいただけませんか。」
「それは出来ません。この反乱の鎮圧はナガミーチ様からのご指示です。」
その言葉を聞いて、腕を押さえてノロノロと起き上がったジリアン君が慌てる。
「なんでナガミーチ殿が!あの人もサトミー様へ愛情を持っていたはず。なんで…。」
私はジリアン君に近づく。
すぐにスパルと呼ばれた若者が私とジリアン君の間に立ってジリアン君を庇う。
しかし、気にせず私は刀を鞘に納めた。
それを見てスパル君とジリアン君の表情が困惑する。
「ジリアン殿、貴殿の知るサトミー嬢は関係のない平民を復讐に利用して喜ぶ人なのか?」
「あの人は家族を大事にしていた。復讐のためなら何だってやるはずだ。」
一度スパル君を見たあと、再度ジリアン君に目をやった。
「そうだろうか。わたしがナガミーチ殿から聞いたサトミー嬢ならこう言うと思うぞ。『悪役令嬢は堂々と戦ってこそカッコイイ』と。平民を扇動するような方法はきっと選ばないであろうよ。」
その言葉に、二人はハッとした顔になる。
もう一押しか。
さらに言葉で説得しようとしたとき、砦の上から1人の男が現れた。
「貴族の皆さん、いつまで手こずっているんですか?それでは仇は取れませんよ。」
その男には見覚えがある。
私を見限って出て行った執事長、セバサだった。
おもわず大声が出る。
「セバサ!お前は何をしているのだ。馬鹿な事はやめろ!」
するとセバサは目を血走らせる。
「馬鹿な事?アナタ様のような人に言われたくはございません。大天使に逆らい兵士を死なせたり、さらに使用人や兵士をこき使うのが当たり前だと思っている横暴なアナタに言われたくはございません。」
「話はユックリ聞いてやろう。まずは砦を開放するのだ。」
「はっ、ふざけないでくださいませ。どうして大海姫様をおそれて逃げた私達が路頭に迷い、その後アナタは名君のように扱われているのでございますか?納得いたしかねます。アナタには暗愚として死んでいただかなければ、私たちの未来はございません。」
過去が現れたと思った。
過去は恐ろしい。
過去の自分のおろかさと言う恐怖を見せられた思いだ。
あの時の私は確かに愚かだった。
もう、忘れてしまいたかった。
それが再び私の前に現れたのだ。
これほど恐ろしい事はない。
そこで後ろから笑い声が響いた。
「あはははは、復讐で善悪を忘れたか。よかろう、なれば私の裁きをくれてやる。喜べ、いまから砦の中の者達は全員私の領民となるのだ。冥府の領民にな。」
振り向いて声の主を見る。
大海姫だった。
水のように透き通った羽はまるでこうもりのような形状。
簡単な鎧を装着しているだけなので、女性的なフォルムはしているが、体が1メートルほど宙に浮き上がっているので威圧感が凄い。
さらにツインテールは反重力の影響で上を向き、まるで角のようだ。
愛用の鞭を背に持っているので、細長い尻尾が生えているようにも見える。
羽を大きく広げ笑う姿は悪魔そのものだった。
私は大海姫に駆け寄る。
「まってくれ、砦の中の領民は助けてくれ。」
「だめだね、テンションが上がっちゃったから殺さないと気がすまないよ。」
慌てて空中の足にしがみつく。
「ならば私を殺せ。領民の代わりに私を・・・。」
大海姫は私を見下ろし少し考えるとニヤリとした。
「だったら、急いであのセバサってやつを殺してくるんだな。今から300数える。300数えた後にアレが生きていたら、この一体に嵐を呼んで水没させる。数分で水没するから誰も助からないよ。あはははは。」
「ふざけるな、そんな事・・・。」
「1、2、3、4・・・」
有無を言わさず大海姫はカウントを始めてしまった。
くそ、やるしかないのか。
「若い貴族達よ、お前達は急いで逃げろ。ビレーヌ、兵を連れてこの辺から人を避難させるのだ。」
そう叫んで私は砦に飛び込む。
飛び込んだ瞬間、入り口の脇に隠れた領民から槍で刺された。
「ぐあ。」
わき腹を刺された。
だが気にしているときではない。
「馬鹿なことしていないで貴様も早く逃げろ!」
そいつを無視して私は階段を駆け上がる。
すると斧や鎌をもった連中が待ち構えていた。
「お前達、なんでそこまで私を…領主を憎くむのだ!」
その言葉に待ち構えていた領民達は少しひるんだ。
どうやら領主自らいきなり来るとは思っていなかったようだ。
「選挙とかいう事をして、金持ちに権力を持たせて俺達を苦しめるっていうから。」
選挙を理解していないのか。
くそ、学校での教育を強化しなくては。
「選挙は平民の声を領主に届ける制度だ。お前達だって出馬していいんだ。それよりも今は私を通すのだ。300秒以内に急いでセバサを倒さないと大海姫がこの一帯を滅ぼすぞ。」
その言葉に領民達は慌てて武器を捨てて通路を開けてくれた。
選挙よりも大天使の方が分かりやすいのか。
笑えるな。
私は連中が作ってくれた隙間を走りぬけ3階に上がる。
三階に上がると重装備の鎧を着た黒い騎士が立っていた。
黒い騎士はそっと剣を抜く。
黒騎士の後ろには外の見張り台に出るドアがある、
その扉を開ければセバスが居るのに。
マズイ、時間はかけられない。
しかしこれは絶対に勝てないぞ。
…いや、諦めている暇はない。抜けなければ。
私は剣を抜き、正眼に構える。
恐らく敵は鎧を着用する前提の剣術だ。動きは大雑把なはず。
私の剣道は、隙も小さく速度も速い。
それに間合いも広い。
いっきに踏み込み突きを狙うか。
いや、左手の盾が邪魔だ。
攻めるなら敵の右手側からだ。
迷ってはいられない。
私は一気に踏み込み、まずは敵の剣に小手を打つ。
剣道の小手はフェンシングよりも早いんだ。初見では避けられまい。
カン!
敵の右親指に深く切り込んだ。
鎧がいくら金属でも、稼動するための隙間が多い指の部分は弱かったようだ。
相手がひるんだ隙に、相手のヘルメットめがけて渾身の突きを放つ。
そこはスキマがあるんだから、全力で突きこめばどうにかできるはず。
だが流石は黒騎士。
私の剣の突きを頭突きのような動作で跳ね返すと、勢い良く私を盾でふき飛ばした。
ズドオオ
吹っ飛ばされて倒れた私に、黒騎士は剣を振り下ろす。
ヤバイと思った。
だが黒騎士は剣を振り下ろそうとした瞬間、、、、、その首が飛んだのだ。
膝を突きユックリ倒れる黒騎士。
何が起きた?
慌てて立ち上がると、そこにはスパルと呼ばれた若い騎士が居た。
「助けて・・・くれたのか?」
「まあね、あんたがサトミー嬢を殺したわけじゃないし。それに領民を巻き込んじまったのも悪いと思っているんだ。俺はどっちかっていうと復讐よりも友を守りに来ただけだ。だからアンタには恨みはないよ。さっさとあの執事を殺してココを守ろうぜ。」
「すまない、助かる。」
私は扉を開いた。
その瞬間。開きかけた扉の隙間から、セバサが剣で私の腹部を突いた。
待ち伏せか?当然か。
私は腹に刺さった剣を掴みドアを勢い良く開く。
スパル君を見る。
「頼む、今のうちに!」
「そういうの好きだぜ!」
後ろからスパル君が剣を突き出しセバサの胸を突いた。
胸を突かれたセバサはヨロヨロと後退して膝を突く。
「ぐはっ、なんで私ばかりこんな不幸に・・・」
「スマンとしか言えないが、あきらめてくれ。」
私は剣を振り上げた。
許せセバサ。
すると宙を飛んでいる大海姫が大声で叫んだ。
「300!間に合わなかったな。じゃあ覚悟しな。」
しまった。
「スパル君、逃げろ!」
おもわず彼を砦の外に突き飛ばす。
その瞬間、砦の上に天から大量の水がおちてきた。
まるで巨大な水道だった。
直径10メートルほどの水の束が轟々と落ちてくる。
冗談みたいな水量だ。
その水が私の上に落ちてきたのだ。
上空から押しかかってきた重量が、私の背骨をへし折る音を聞いた。
お読みくださり、ありがとうございます。
ナガミーチ「はっ!タモツさんの気が消えた。」
マリー「はっ!ナガミーチのサトミー写真が消えた。」
ナガミーチ「ちょ、おま、え?嘘でしょ・・・。」
マリー「うそですぴょーん」
ナガミーチ「もう、驚きましたよお。こーいつー。」
マリー「あははははは。」
タモツ「あの、、、、いちゃついてないで、、、、助けて・・・・。」




