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吉田保 その3

―吉田保 その3―


役人どもの仕事が遅いのはどこの世界も変わらないな。

未だに去年の資料が出てこない。


しょうがないので、役人を呼びつけて私のアイディアを実行させた。

目安箱だ。


街中に目安箱を設置し、領民の意見を直に拾い上げるというのが私の作戦だ。

イタズラされないように番兵を設置し、投稿してきた者の顔を覚えるように指示してある。

これでイタズラをする人間はいまい。


さらに近代国家といえば選挙だろう。

当公爵家の議員は衆議院100と参議院100人で選び出そう。

役人に100の選挙区を作り、選挙の告知を行うように指示した。


さらに税を下げて、領民主体の公爵領である事をアピール。

それと医療費の補助を出すことと、軍備の縮小も行おうか。


この貴族による前時代的な世界に、近代国家のありようを見せてやる。


次の日

目安箱を回収させてきた。

不正が無いように、私自ら蓋の鍵を開ける。

なかには早速5枚の意見が入っていた。


『馬鹿公爵死ね

――ダイカイキより』


『お前は自分で思っているよりも馬鹿だよ。

自覚を持てよ。そうじゃないと周りの人たちがかわいそうだ。

――ダイカイキより』


『マナーを覚えろよ。礼儀の出来ないやつは貴族失格だ。

いや平民以下だな。お前は平民以下だ。

――ダイカイキより』


『お前が日本の政治家ならば、日本はクソみたいな国だな。

お前のせいで私の中の日本の評価は最低だ。

――ダイカイキより』


『公爵様はお口が臭いですわ。

もう少しご配慮あそばせ。

――DBより』


なんだこれは!

ふざけた事をしおって。


私はスグに番兵を呼びつけた。

「お呼びでしょうか?」


このふざけた投書を番兵の前に投げ渡す。

「これを見ろ、こんなふざけた投書を許すとは、お前は何をやっていたんだ!」

「そういわれましても、投書の中身までは確認しておりませんので。」


無能なやつめ。

「言い訳はいらん。同じ奴が4回も投書したのだ。顔は覚えているだろう。どんな奴だ!」

「はっ。投函してきたのは全てご婦人でした。四回投函してきたご婦人は、銀髪のツインテールが特徴的な美しい人でした。一度だけ投函してきた女性は、ブロンドの美しすぎるほどのご婦人です。」


銀髪のツインテール?

アイツだ、アイツに違いない。大天使だ。

もう1人の女はわからんが、きっと大天使の仲間であろう。


「よし、その女を両方捕まえて来い。」


すると番兵は慌てる。

「ですが公爵様が領兵を大量解雇されましたので人手が足りません。」

「だったら街で人を雇って使え。そのくらいの知恵も無いのか。」

「でしたら、雇い入れるお金を先に・・・。」


「黙れ!言い訳はいらんと言っているだろうが!良いからさっさと捕まえて来い!」

「はっ!」


番兵はやっと飛び出した。

使えないやつだ。


次の日

屋敷の前に10人分の死体が突き刺さっていた。

なんだ・・・これは。

恐怖で背筋が寒くなった。


その死体の損壊状態も半端ではない。

股が裂かれて殺されていたり、

胸に拳大の穴が空いていたり、

もぎ取られた腕が頭に刺さっていたり。


とてもではないが人間技とは思えない殺され方ばかりだ。

怖くて手が届くところまで近づけなかった。


すると空の上から悲鳴が聞こえた。

かなり高い位置からだ。

驚いて見上げると、人が降ってきた。


「たすけてーーー」

グシャ!


屋敷の庭に落ちてきた人間は、まるで車に潰されたような状態になって内臓を撒き散らして死んだ。


「ひいい」

恐怖で声も出なかった。

見上げると、羽の生えた人間が楽しそうに笑いながら飛び去る。

だが遠くから見ても、その特徴は分かった。

銀髪のツインテールに水のように透き通った羽。


あの大海姫とかいう女は、本当に天使だったのか。

だが、この所業は悪魔としかいえない。

あいつが、この人間を空から落として殺したのか。


今、墜落死した死体をよく見ると、昨日私が大天使捕縛を命じた番兵だった。

なんてことだ。


しかし死体なぞ、気持ち悪くてこれ以上眺めたくない。

庭に出てきて怯えているメイドに死体の片づけを命じて屋敷に入る。

うしろでメイドが「無理です」と泣き叫んでいるが知るか、ご主人様の命令に従え。


私は執事長のセバサを執務室に呼びつけた。

「セバサ、私は気分が悪いので今日は休む。あとの仕事は任せる。」

するとセバサは首を縦に振らず、私を睨み返してきた。


「それよりも、いったいどこの誰を敵に回したのでございますか?どうすればここまで明確な攻撃をうけられるのでしょうか?」


「ああ、私をこっちの世界に呼んだ大海姫とかいう大天使だ。目安箱にふざけた投書を入れてきたので捕まえるために兵を送り込んだのだよ。そうしたら兵を殺してか返してくるとは、信じられない悪魔だ。陛下の兵を出してもらって成敗してもらおう」


すると、セバサは責めるような声で一歩近づいた。

「おまちください、相手が大天使様だと知っていて兵を出されたのですか?」


「ああ、そうだ。私の真面目な取り組みを馬鹿にしおったから、処罰しようと思ってな。急いで王城に支援の要請に向かえ。それ以外のものは私を全力で守れ。」


すると呆れたような顔をしてセバサは告げる。

「旦那様、大天使様に刃を向けるなど、決して行ってはいけないことです。そんな当たり前すぎることさえ分からないお方が公爵とは世も末ですな。」


「何を無礼な奴め。」


文句を言おうとしたら、セバサは執務室からさっさと出て行ってしまった。

まったく、指示もまともに仰げない半端モノめ。


私は呆れながらも、自室に戻り少し休んでいるとつい眠ってしまった。


・・・・・


目が覚めた時は、すでに日が傾きかけていた。

夕飯でもつくらせるか。


そう思い、部屋を出てみると誰も居ない。

使用人どもめ。

全力で私を守れと命じたのに、何故誰も部屋の前で守っていない!

私がテロリストに攻撃されたらどうするつもりなのだ。


エントランスをとおり、サロンを通り、調理室に行く。

この間に人は1人も居なかった。


誰もいないのでは食事が作れないではないか。

全員屋敷の外に警備にでもいったのか?

さらに屋敷内を歩き回って探したが、使用人たちの姿は全く見つけられなかった。


使用人を探して執務室に行くと、置手紙が置かれている。


『公爵様、

大海姫様に逆らうような領で働くことは出来ません。

本日限りでお暇を頂きます。

お給金は勝手に頂いていきます。

――使用人一同』


なんだと!

ふざけおって。これだから未開の地は嫌なのだ。

迷信深い蛮族め。天使が怖いとか信じられぬ。

どいつもコイツも使えない。


こうなったら、身を守るためにも役場に行って対応を命じなければ。

急いで庭に出ると、死体は片付けられていない。

もう、凄い匂いがし始めている。


くそ、死体を片付けるように命じたはずだ、使えないメイドめ。

職務怠慢ではないか。

見つけ出して、公爵権限で牢にでも閉じ込めてやる。


いそいで役所に行くと、、役所は閉まっていた。

なんで閉ているのだ、役立たずめ。

夕方でも、少しくらいは働く気はないのか。


明日一番で、役人に死体の片づけを命令しなくては。


私は自分の屋敷の門と庭を通るのが怖いので、役場の入り口で眠ることを決意した。


日が落ちると、役場の前あたりでは人が誰も通らない。

日本と違い日が傾くとすぐに真っ暗になりう恐ろしさがつのる。

くそ、街の中に夜でも明かりがつくような指示を出さなければな。


すると、暗がりの中を誰かがこちらに歩いてくる足音が聞こえてくる。

誰だ!


こんな状況で、もしも近づいてくるのが不審者だったら身を守れない。

私は、身構える。


真っ暗ななかでは全く相手が見えないので、かなり近くまで足音が来ているが相手の顔が分からない。

恐怖で体が硬直する。


すると、呑気な男の声がした。

「大丈夫ですかタモツさん。執事長のセバサさんと偶然街で会いまして、なにか大変な事になっていると聞きまいたから探していたのですよ。」


ナガミーチだった。

安心で肩の力が抜ける。

「た、助けに来てくれたのか?」


魔法でポンと明かりを出してくれた。

そこにはナガミーチと・・・・宙を浮いた大海姫とデルリカが居た。

「ひっ!」


「あ、すいません。そういえば魔法には不慣れだったのですよね。ただの明かり魔法ですから心配しないでください。」


私は、何かを勘違いしているナガミーチの後ろを指差した。

「そ、その二人は?」


するとナガミーチは振り返った後、またなにか勘違いした返事を返してくる。

「ああ、宙に浮いているのは気にしないでください。この二人は両方とも空中飛翔の魔法が使えますので。たしかにコッチの世界でも珍しい高等魔法ですからみんな驚きますよ。」


「いや、そういうことではなくて・・・。」


「それとお屋敷に死体が沢山有りましたので、そっちは勝手に教会に運びこんでおきました。

もしもお葬式をされるなら明日にでも教会に顔を出してください。

一応陛下から何かあったらお助けするように言われていますので、勝手ながら対応しておきました。

暗くなると道を歩くのも大変ですから、お屋敷までお送りしますよ。」


そう言うと有無を言わさず歩き出してしまった。

少し迷ったが、大天使は大人しくナガミーチの持つ袋から食べ物を貰ってフワフワしているだけなので、今は気にしないことにする。

それよりも、また明かりを失い、ここに1人になるほうが数倍怖かった。


私はナガミーチの後を追う。


屋敷に着くと、使用人がいないという状況を理解したナガミーチが料理を作り始めてくれた。

最初は随分辛く当たったのに、こんなに親切にしてもらって申し訳ない気持ちになる。


サロンで私の傍に大天使とデルリカだけになったとき、急に大天使がニヤニヤしだした。

「タモツ、私に兵を送るとかお前は馬鹿なの?

ちょうどナガミーチ君がクソするために居なかったから皆殺しにしたけど、あんまり時間がなかったからシンプルな殺し方しか出来なくて悪かったね。」


「や、やはりあれはお前か・・・」

私は、恐怖で硬直する。


考えたら、あれだけの人間を軽々殺す相手と向かい合っているのだ。

すこしデルリカのほうに逃げようとすると、デルリカはニッコリ返してくる。


「ワタクシも半分くらいは殺しましたのよ。

死体をご覧になられました?シンプルに穴が空いていたり、頭が砕けていたのはワタクシですの。

大海姫さまのように股を裂いたり千切った腕を頭に刺したりと言う殺しかたはしておりませんが。

ワタクシのお相手は即死させましたので、みなさん苦しまずに死ねたと思いますわ。」


え?

「あんたも殺した・・・・のか?」


「はい、ワタクシはこう見えましても魔王と戦うために勇者様と旅をしていましたの。人間程度でしたら1000人居ても一呼吸で殺せますわ。」


そんな事をニコニコ言ってくる。

「な、なぜ。。。。」


するとデルリカは陰のある表情でニヤリとした。

「決まっておりますわ。タモツ様があまりに腹だたしかったため、部下の方にあたりましたの。

よくわからない抗議文を送りつけてきたり、陛下にワタクシの悪評を流そうとしたり。

ワタクシはとても怒ってしまいましたわ。」


ニコニコしながらも、黒いオーラがにじみ出るデルリカに恐怖した。


ゴクリ。


背筋が寒くなった。

戦いなんて知らない私でも、このデルリカという女に対して恐怖を感じる。

本能だろうか、死ぬかもしれないと気が遠くなりそうになった。


それをユックリ立ち上がりながら、大海姫が笑って見下ろしている。


殺される!


そのとき扉が開いた。

「料理出来ましたよ、ちょっと重いんでデルリカさんも手伝ってもらえますか?ここで一番力持ちなんですから。」


デルリカは急に柔らかく微笑み立ち上がる。

「もう、どう見てもワタクシが一番か弱いではありませんか。変な言いがかりはおやめください。」

そういいながら、ナガミーチが重そうに持ってきた鍋や食器を軽々受け取った。


すると小声で大海姫が言った。

「ナガミーチ君に変な事いったらスグ殺すよ。

彼は人が死ぬのを嫌がるから私達がお前の兵を殺したのは内緒なんだから。

いらないことを言うなよ、長生きしたかったら私達を親切な女性として扱え。

ナガミーチ君の見えないところでお前を殺して消し去るなんて、1秒あれば十分なんだ。

よく覚えて置けよ。」


私はコクコクと頷くことしかできなかった。


食事が始まると、さっきまでの殺伐とした雰囲気が嘘のように団欒になる。

デルリカはナガミーチに無理やりブロッコリーを食べさせれて涙目になり、大天使はアーンして食事を食べさせろとナガミーチに強制している。


間違いない。

いまこの猛獣達をおとなしくさせてくれている、ナガミーチのおかげで私は生き残っているのだ。

私は食事の手を止めて彼に頭を下げた。


「ナガミーチ殿、最初にヒドイ事を言ったのに親切にしてくださりありがとうございます。」


すると彼は人の良さそうな照れた笑いをする。

「やめてくださいよ、別に気にしていませんから。大変でしょうけど少しは手伝いますので頑張りましょう。」


するとデルリカがあからさまに嫌そうな顔をする。

「ナガミーチ、手伝う必要はありませんわ。明日にもベルセック領に帰りましょう。」


するとナガミーチは涼しい顔で言葉を返す。

「あ、じゃあお先にどうぞ。僕は少し残って手伝いますので。」


デルリカは不満そうに口を尖らせる。

恐ろしい女だが、見た目は可愛らしい。

「女1人で街道を移動させる気ですか?ナガミーチも帰りますよ。ここを手伝う理由はありませんわ。」


「デルリカさんなら一国の軍隊が襲ってきても大丈夫じゃないですか。じゃあ『お兄ちゃん、デルリカと一緒に帰って欲しいにゃん。お小遣い一杯あげるにゃん』っていったら考えます。」


「もう!いつも茶化すんですから。ナガミーチは本当にワタクシにだけ優しくありませんわ。」


「なに言ってるんですか。24時間以上のデルリカトークショーに付き合ったりしてるじゃないですか。信じられないくらい僕はデルリカさんに優しいですよ。」


それを横で聞いてる大海姫が腕を組んでウンウン頷いている。

「そうだよデルリカちゃん。普通の男は2度も3度も意識失うような長時間のグチなんて付き合ってくれないよ。

途中からナガミーチ君が生返事しか返さないとしても、それは驚異的なことだよ。」


「イエス!いま大海姫さんが良い事言った!やっぱそうですよね。

デルリカさんはもっと『お兄ちゃん、デルリカいっぱい感謝しているにゃん。二ヶ月くらい休暇あげるにゃん。』くらい言ってもいいですよね。」


するとデルリカはコロコロ笑いながら、ナガミーチをバシバシ叩いて喜んだ。

「ふふふ、なんですのナガミーチ、最近はその『お兄ちゃん、にゃん』がお気に入りですのね。ナガミーチは本当にお馬鹿ですわ。」


完全に私の存在を忘れられているな。

しかし、こういう気楽に笑う食卓は久しぶりで悪い気はしなかった。

お読みくださりありがとうございます。


マリー「ナガミーチ、マリーもお菓子欲しいにゃん」

ナガミーチ「グハッ!だめ、マリーちゃんは『にゃん』禁止です。萌殺されそう。」

大豊姫「お兄ちゃん、大豊姫もお菓子欲しいにゃん」

ナガミーチ「あ、どうぞオッパイさん。(すぐに目をそらす)・・・マリーちゃん可愛すぎるよ。ほんと危険だから『にゃん』禁止だよ。でれでれ。」


大豊姫「ぐすん、ナガミーチさんはオッパイに恨みでもあるんでしょうか・・・。」


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