吉田保 その1
―吉田保 その1―
友愛党。それが私の居た政党だ。
国会議員になってからは、どこに行っても『先生』とみなが私に媚びへつらった。
万年野党だったので、私は国会ではヤジを飛ばして議員報酬をもらっていたが、それは私の本当の活躍場ではないと思っていた。
与党にさえなれれば私だって、劇的に日本を変えられるのに。
そうおもって議員生活を26年も過ごした。
だが有る日転機が訪れる。
なんと、うっかり友愛党が与党になってしまったのだ。
私は張り切った。
しかし、与党だった期間は短くて何もできなかった。
何もできなかっただけではない。
マスコミなどに私の資金の不透明さをいきなり叩かれた。
わたしはこのやりかたで26年やってきたのに、与党になったらいきなり攻められるというのは不条理だ。
そもそも、管理していた秘書が悪い。
私のそんな弁明を誰も聞いてはくれなかった。
すると面白がるように、行きつけのスナックのママとの関係まで報道された。
ふざけおって。
何様のつもりだ。
だが、私のイメージが地に落ちたせいで、後援会には誰もこなくなり、私はその後の選挙で落ちた。
馬鹿なマスコミのせいだ。
あいつらは野党だった我らを面白半分で持ち上げて人気を出させ、与党になったら叩いて面白がりおった。
馬鹿共だ。
この国で政治はできない。
天を仰ぎ私は己の不幸を嘆いた。
「神がいるなら、私に本当の政治をさせてくれ」
すると、いきなり女の声が天から聞こえた。
『おっけーね』
そして私は異世界に飛んだ。
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気がつくと、大天使と名乗っていたツインテールの女が私を見てニタニタしながら足を組んで座っている。
若いクセに態度がでかい女だ。
その横には、貫禄がある見事なひげを携えた男性が立っている。
あきらかに地位の高い人物だと一目で分かった。
その横にウェーブのかかった長いブロンドの美しい女が居る。
これは見事な美人だ。銀座に居たらスグにナンバーワンになれそうだな。
そしてもう1人。あの石田長道という男。
さっきは文句言いそびれたから、もういちど怒鳴りつけてやるか。
そう思い声を出そうとしたが声が出なかった。
私の身に何が起きたのだろうか?
体を動かそうとしてみたが動かない。
どうなっておる?
すると大天使の女がニヤニヤしながら私を蹴った。
「ちょっと、意識は入ったの?」
ふざけた女め。
だが、やはり声も出せないし体も動かない。
すると美しい女が石田長道にそっと手をかける。
「ナガミーチ、どうなんでしょうか?」
「瞳孔は動いていますので、魂の入れ替えは完了したと思って良いですよ。
ただ魂と体が馴染むまでは動けないと思います。一日くらい安静にしていれば動けるはずです。」
するとヒゲのはえた偉そうな人物が、ロウソクの日で照らして私をマジマジ見る。
「ナガミーチよ、これで間違いなく魂は別物であるのだな。」
「はい陛下、ビグニー公爵の魂は殺して、新しい魂を入れました。政治をやりたい魂を呼びましたので、ビグニー公爵のように遊んで暮らすことは無いはずです。」
陛下と呼ばれた人物は大きく頷いた。
「わかった。ではしばらく様子を見よう。デルリカよ、しばらくは目付け役を頼むぞ。大海姫様も宜しく願いいたします。」
デルリカと呼ばれた美しい女は恭しく陛下に礼をする。
だが大海姫と呼ばれた大天使は、私をガシガシ蹴りはじめた。
「まあ、細かい事はナガミーチ君やデルリカちゃんにまかせれば良いよ。私はコイツを異世界から呼び込んだ時点でお仕事終了だ。こいつが優秀か無能かまでは分からないから、あとは王が適当にやってよ。」
すると王は困った顔でムカつく大天使にすがる。
「いえ、できましたら最後まで見ていただきたいのですが。」
「えー面倒くさいよ。まあ私はしばらく下界に滞在してナガミーチ君と遊んでいるから、なんかあったら声かけてよ。地獄落しくらいはやってあげるからさ。」
「よろしくおねがいいたします。」
そういいながら、王は大天使に頭を下げた。
そのあと私はベッドに連れて行かれ寝かされる。
体が動かないと、思ったよりもあっけなく眠りに落ちれた。
次の日、目が覚めると寝返りがうてた。
のっそり起き上がると思ったよりも体が軽い。
のそのそドアに向って歩いていると、よこに姿見の鏡が合ったのでそれとなく見て驚いた。
すらりとした、スマートな40代前半くらいの肉体だった。
日本では60代でボロボロのメタボで、頭も髪がかなり減っていた。
しかし今の体は、スマートな姿に口元にささやかの口ひげのあるハンサムだ。
その姿を眺めていると、ドアをノックしてイロっぽい女が入ってくる。
「お目覚めですね。説明が必要だと思いますので下の階に降りてきていただけますか?」
よくわからないので素直に従った。
私を呼びに来た女は、後ろから見ると腰元がやらしい。
ジロジロみながらついていくと、一階の大きなテーブルにすでに何人か座っていた。
いたのは昨日の王以外の連中だった。
歩み寄ると、まず石田長道に詰め寄る。
「おい、説明しろ。いい加減な仕事をしおって!」
すると、金髪のデルリカと呼ばれていた女が私を制した。
「いきなり無礼な方ですわね。当家の魔道師、ナガミーチに文句がおありでしたらワタクシにお伝えください。」
姿勢を正してピシャリといわれた。
「あんたは?」
するとデルリカはそっと立ち上がり優雅に一礼した。
「申し遅れました。ワタクシはベルセック侯爵家のデルリカと申します。そこにおりますのは当家の魔道師ナガミーチ。以後お見知りおきを。まずはお座りください。そして不躾ながら貴方様のお名前をお伺いしても宜しいでしょうか?」
いわれて名乗っていないことに気がついた。
「私は吉田保だ。友愛党の中堅の議員だ。私はどうなってしまったのかね?」
すると、石田長道そっくりの魔道師をツインテールで鞭のように打って遊んでいた大天使が私を見る。
「馬鹿じゃなかったら一回の説明で理解してね。あんたは日本から捨てられたから、このマリユカ宇宙で拾われたんだよ。で、今回はマシリト公爵家が消滅し、ビグニー公爵も反乱の咎で現当主を死刑にしたのさ。だが二つの公爵家が一緒に消滅してしまうと政治的に混乱が起きてしまうだろ。だから、急遽ビグニー公爵の死体に別の魂を呼んだ。それがあんただ。」
微妙に言っている意味がわからない。
すると魔道師がそっと大天使を制した。
「細かい事は追々説明を聞いて下さい。簡単に言いますと、すこし傾きかけているビグニー公爵領を立てなおしていただきたいのです。そのために日本の政治家を僕の秘術でお呼びしたというところです。」
「お前程度の秘術でどうにかなったのか?まあいいい。おい、それはどのくらいの規模なんだ?」
すると大天使が魔道師をヘッドロックで黙らせて、また割って入ってくる。
「アマテラス様の話から判断すると、日本で言う神奈川県知事くらいらしいよ。あんたはそれが出来る程度の能力はあるの?私にはあんたは無能そうに見えるけどねー。」
「ふざけるな!貴様、私に大してその無礼な態度は何だ!小娘の分際でいい加減にしろ!」
すると大天使はスーっと無表情になり魔道師をヘッドロックしながら立ち上がった。
「もうあんたの面倒はみないから、あとは執事長にでも聞いて頑張りな。」
そんな大天使に魔道師は必死に抵抗している。
「ダメですよ大海姫さん、執務が軌道にのるまでは。」
「いいよ、こんな馬鹿は放って置けば良いって。それよりナガミーチ君、王都の出店で買い食いしたいから付き合ってよ。私にも口開けたら食べ物突っ込んでくれるやつやって。」
そういって大天使は魔道師を引きずって外に行ってしまった。
なんなんだ、使えないやつめ。
すると残ったデルリカという女が、無愛想に現状を説明しだす。
どうやらこのビグニー公爵領は過去数代にわたり放蕩した結果、あまり統治が上手く言っていないらしい。
最近王家より新しく下賜されたベルセック侯爵領に隣接しているため、ビグニー侯爵領の政治空白は、あまり他人事ではないので、今はベルセック侯爵家も協力してくれるという話だ。
そして執事長のセバサが来たところで、デルリカは立ち上がり礼をしてきた。
「では協力が必要であれば、貴族の礼を持ってお知らせくださいませ。そのあたりの細かい事はセバサさんに聞けば問題ないと思いますので。」
そいって帰って行ってしまった。
デルリカに着いて、朝のやらしい腰の女も出て行ってしまう。
あれは身分の卑しい女だろうな。あとで調べて呼び出すか。
私は着替えるとセバサに連れられて、食卓に向った。
昼食を口に運ぶ。
上手くもないし不味くもない。
しかしそれは私にとっては不味いと同意語だ。
「セバス、執事なら朝食の味も管理しろ!不味いぞ!」
「・・・もうしわけ御座いません、旦那様。配慮いたします。」
「もういい。執務の説明をしろ。」
すると不思議そうな顔をされた。
「それはデルリカ様が教えてくださるのかと思っておりましたが。」
「そうなのか?あの女め、いい加減なことをしおって。抗議をしておけ。」
「はっ、かしこまりました。」
そういってセバサはすっといなくなった。
だがそうすると、執務室がわからない。
あの執事は馬鹿か?先に執務室に連れて行け。
私は立ち上がり、近くに歩いていたメイドを呼び止めた。
「おいお前。」
「え、ワタクシの事でしょうか?。」
「ほかにいないだろう。執務室を教えろ。」
「は、はあ。それでしたら、こちらの廊下の突き当たりのドアで御座います。」
「説明なぞ聞いていない!私を連れて行け!気が利かんな。」
「も、申し訳御座いません。ご案内いたします。」
歩くメイドを追った。
気が利かないし、にこりともしない。愛想の無いメイドだ。
「こちらで御座います。」
「ここまできたらドアくらい開けるだろ。気を利かせろ。」
「・・・・申し訳御座いません。こちらでございます。」
メイドは無愛想に扉を開けて一礼した。
私が部屋に入ると、もうメイドは歩き去ってしまっている。
気が効かない。ドアぐらい閉めてからいけ!
腹が立つのであけたまま執務机に座った。
まったく先が思いやられる未開の地だ。
お読みくださりありがとうございます。
大海姫「あはは、マリー様の分も串焼きを買おうよ。」
ナガミーチ「はいはい、ちょっと待ってくださいね。」
大海姫「ちょとちょっと、ナガミーチ君。なんかお菓子も売ってるよ。あれ買ってよ。ねえねえ。」
ナガミーチ「どれです?あーあれですね。ちょっとまってください。」
大海姫「ナガミーチ君、次は焼いたモロコシ食べよう。早く、コッチコッチ。」
ナガミーチ「(はしゃいでる・・・。そんなに下界で遊びたかったのかな? そうだよね、前回は一日で終わっちゃったもんな。)」




