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石田長道 その8

―石田長道 その8―


ボーっとしています。

正確には頭が働かない状態です。


天界の白い部屋恒例の、マリユカ様ビデオ大会中なのだけれど、マリユカさまは本当に同じところを何度も見て楽しむ。

飽きないのかな。

僕は飽きました。しかも3時間以上も前に。


どこを延々見ているかと言うと、

僕が大豊姫さんにハグ攻撃されてジタバタしているところに、マリーちゃんが「いい加減にしなさい」といって大豊姫さんにボディーブローを入れるところ。


サトミーさん、関係ないじゃん。

もう延々エンドレスに見ていて辛い。

しかも横に居る大豊姫さんにいたっては、精神力がゴリゴリ削られているらしく、オッパイもしょぼんとしているようだ。

この世界の人にとって、最高神に怒られるというのは凄いダメージらしい。

大天使なのに、大豊姫さんなんて号泣しながら謝っていたし。


そのシーンを延々見せるとか、拷問なんだろうか。

でもマリユカ様はいたって楽しそう。

「長道、あんなにバタバタして面白い。大豊姫もワンワン泣いて面白いですねー。」


そうだ、そういえば。

「そういえば、あの時思い付きで僕が言い出したことですが。マリユカ様の運命に逆らったら世界から弾き飛ばすなんてルールはないですよね。まして傷ついた家族を治療してから異世界に送るとかない気がします。あれはサービスですか?」


マリユカ様は無邪気に微笑む。

「空気読むってやつですねー。面白いストーリーだと思ったので乗ってみましたー。」

「そうですか。ハッピーエンドになったみたいですから良かったです。ありがとうございます。」


よかったよかった。

さて話をそらしたので、本題にうつりますか。


「ところでマリユカ様、そろそろビデオの別の場所見ませんか?」

「ん?どこみたいですか?。」


お、意外に素直に聞いてくれるみたい。

少し考える。

「えっと、里美さんがスマ子の正体に気づくところとか。」


マリユカ様はキョトンとした顔になる。

「あのお風呂シーンですか?」


あえて僕は力強く叫んだ。

「ハッキリ言いましょう。サトミーさんのお風呂シーンが見たいです!」


僕をジーット見るマリユカ様。

その視線に耐える僕。


さらに見つめ合う。

無言の時間が辛い・・・。


しばらく見つめ合うと、マリユカ様はリモコンを操作して早送りを始めた。

お!僕の願いが通じたのか?


ぴたりとあのお風呂のシーンで止まった。

そして再生。

よし!これが見たかった!

美少女里美さんのお風呂シーンを見れるとか、すごい役得。


全神経を集中させてかぶりつきで見た。

これコピーしてもらえないかな。

そうおもっていたら、マリユカ様が口を開ける。


おっと、お菓子を突っ込まなくちゃ。

手元にある桜餅を突っ込んだ。

もきゅもきゅ食べるマリユカ様可愛い。


そして急いで、お風呂シーンに集中しなおす。

その瞬間、こんどはマリユカ様が口を突き出す気配がした。

おっとお茶ですね。

熱くないように、すこしフーフーしてからマリユカ様にお茶を飲ませた。


よしこれでお風呂に集中できる。

・・って思ったら、マリユカ様が口をあけちゃったよ。

桜餅を突っ込む。


もきゅもきゅ


どうせすぐお茶をほしがると思ってみていたら、ニタニタしながら僕を見ている。

ち、無駄な時間を使ってしまった。

お風呂シーンを見なくては。

画面に顔を向けた瞬間、マリユカ様が口を突き出した。


ぬおおおお

しかし、しょうがない。

僕はマリユカ様にお茶を飲ませる。

お茶を飲んでから、ニタニタしているマリユカ様と目が合った。


「マリユカ様、妨害する気満々ですね。」

「えー?マリユカわかんなーい。」


そう言いながらニタニタするマリユカ様は、完全に妨害する気満々だ。


僕は、そのときハラリと涙を流した。

いいじゃん、モテない僕がこのくらいの役得があっても良いじゃん。

その僕に、大豊姫さんが優しく声をかけてくる。


「そんなにお風呂シーンが見たいなら、私がお風呂に入っているところを見ますか?」

「いいえ、里美さんのお風呂がいいです。」


大豊姫さんもハラリと涙を流した。

しかし、いまはオッパイさんに構っている時ではない。

美少女のお風呂が見たいんじゃい!


そのあたりで、さすがにマリユカ様のほうが根負けした。

「わかりましたー。あとで好きなところをコピーしてください。それでいいですね。」

「ありがとうございます!マリユカ様に一生ついていきます!」


でもすぐに、マリユカ様はまたニタニタしだす。

「そういえば、里美は彼氏にするなら長道に似た人がいいって言っていたらしいですよ。」

「マジっすか!でもだったら僕に似た人を彼氏にするんじゃなくて、僕を彼氏にすればいいのに。」


すると、可哀想な人を見る目でマリユカ様が、僕の肩を叩いた。

「長道は、モテる一歩手前の人ですよね。好感をもたれるけど決してモテない人です。」

「ううう、言ってはいけないことを軽々と・・・。」

「過酷な現実も受け入れないといけませんねー。長道はモテる事はあきらめて私の従者として永遠に付き従えばいいと思いますよー。」

「ぐぬぬぬ。悪魔マリユカめ。」


言葉に詰まる僕の横から大豊姫さんが優しく肩に手を乗せる。

「なんでしたら私が彼女の役をしましょうか?」

「いえ結構。」


ぐぬぬぬ、マリユカ様め!言ってはいけないことを言いおって!

あとでブロッコリーと大福のダブル攻撃をしてやる。


「僕にだって彼女くらい出来ますよ。」

「出来ませんね。お兄ちゃんとか言われるのが限界です。」

「少しくらいはモテます!」

「モテませんよ。良い人で終わりです。」


ゴチンとマリユカ様と僕のオデコがぶつかった。

しかしこれは引けぬ。


「僕だって彼女くらいできます!」

「出来ませんね、私の未来視では童貞のまま死んでいく長道が見えます!」

「うぎゃああ、そんな恐ろしい運命なんて変えてやる。」

「すぐに私が運命を戻します!」

「この悪魔!」

「いいえ良い神様です!」

ゴリゴリおでこを押し付けあって言い合う。


すると横から呆れたような声が聞こえてきた。

「マリユカ様も長道君もその辺にしてよ。次の人を連れてきたからさ。」


みると、銀髪ツインテールの大天使・大海姫さんが呆れ顔で立っていた。

僕はちょっと恥ずかしさで顔を赤くしながら姿勢を正す。


「すいません、バカユカ様の見苦しい所をお見せしてしまいました。」

すぐにマリユカ様が僕の前に回りこむ。

「大海姫、馬鹿道が馬鹿でごめんねー。次のお仕事に入りましょうか。」


プチン。

許さん


「誰が馬鹿道ですか!怒りますよ!」

「先にバカユカっていったのはそっちでしょ! これ以上私を怒らすとコピーを上げませんからね!」


なに!

秘技DOGEZA発動!


「この長道、マリユカ様へ働いた愚かな所業を心より反省しております。無礼の数々、平にご容赦ください。」

「ふっふーん。わかれば良いのですよ。頭を上げなさい長道。仕事に入りますよ。」

「はっ!マリユカ様の御心のままに。」


僕が立ち上がると、大海姫さんはお腹を抱えて笑っていた。

「あははは、なんでいつも漫才しているのさ。長道君はホント面白いね。」

「いえ、これが僕のギリギリの戦いです。基本負けますけど。」


「ひー、はー、ひー、はー」

「大海姫さん、呼吸困難になるほど笑いますか・・・。」

「いやゴメンゴメン。なんか長道君って私のツボなんだよね。」


すると、大海姫さんの後ろで、何とも言えない顔で待っている男性が一歩でてきた。

「あの、私の話はどうなるのでしょうか・・・。」

その男性は60代前半くらいの、いかにも会社の頑固部長と言う感じの人だった。


僕は軽く頭を下げる。

「すいませんでした。吉田保さんですよね。ご希望は内政チートで宜しいでしょうか。」

「はい、現代社会の政治などには詳しいので、それを生かしてのし上がってみたいと思います。」


僕は運命の分岐を設定したノートを取り出す。

「注意としましては、約20%の確立でバッドエンドになります。よほどヒドイことをしなければバッドエンドにならないようにしていますが、そういうモノがあるという事は覚えて置いてください。」


すると偉そうに僕を睨む。

「バッドエンドなんて設定しないで貰いたいのだが。どうにかならないのかね。」

「いえ、幸運と不運のバランスみたいなものだと思ってください。80%幸運と考えれば破格です。これ以上はコントロールできないとお考えください。」


そんな理由はないけど、適当な理由をでっちあげてみた。

この人は絶対マリユカ様と話をさせちゃ駄目なタイプっぽいから、さっさと地上に送っちゃいたいな。


「では、地上ではすぐにやるべき事がわかるようになっていますので、あとは内政チートで思う存分暴れてください。」


するとなんか怒った感じで僕を見る。

「そんな説明では分からん。もっと丁寧な説明もできんのか。」


めんどうだな。

僕はマリユカ様にノートを渡す。

するとマリユカ様はニッコリ微笑んだ。

「では吉田保よ。内政の腕を存分に振るうと良い。」


「おい、まだ話は・・・・・」

言いかけて、吉田さんは光となって消えた。


「今度の人は面倒そうですね。あの人の面倒見ないで里美さんのお風呂シーンをずっと見ていたいな。」

するとマリユカ様もニコニコ近寄ってくる。

「それでも良いですよー。今回は休憩って事でも。」


そうしようかな。

すると大海姫さんが思い出したようにポンと手を打つ。

「そうえば、いま大豊姫が『わたしのお風呂だって良いじゃん』とか言いながら、しょんぼりしながら出て行ったけど何かあったの?」


「さあ、マリユカ様と僕の会話に入って来ようとしていたみたいですけど、あんまり気にしてませんでした。なんか悪い事でも言っちゃったかな。」


大海姫さんは困った顔で僕を眺めた。

まあ大豊姫さんの事はどうでも良いや。


次の内政チートも頑張るかな。

面倒くさいけど。

お読みくださりありがとうございます。


大海姫「長道君、大豊姫は長道君の事をけっこう気にいってるみたいだからさ、優しくしてあげてよ。」

長道「でも苦手なんですよね。」

大海姫「でもさ、大豊姫はいいやつだよ。」

長道「ふーん。・・・そういえば昨日マリユカ様が・・・」

大海姫「(大豊姫のはなしをスルーしすぎだよ長道君。がんばれ、大豊姫)」

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