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佐山里美 その13

―佐山里美 その13―


なんで急にこんな理不尽が私に降りかかるの・・・・

でも私は冷静だった。


急に理不尽が降りかかるのは初めてじゃない。

そう、日本でも急に家族を失っている。

だから脳がすぐにコノ状況を受け入れてくれた。


少し遅れて駆け寄ってきたセイン君と目があう。

「お父様とお母様をお願い。私は扇子乱舞で時間を稼ぐから。」


混乱するセイン君を背に私は立ち上がる。

家族は私が守る。


一斉に五人の魔族が襲い掛かってきた。

2人は魔法で、3人は剣で。


どりゃああああ

武技<扇子乱舞>よ、私を守って!


柔らかな動きで、まずは魔法の火の玉を左右にずらす。

軌道をずらされた火の玉が、斜め後ろの床を焦がした。


すぐに、3人の剣が私を襲う。

舞うように剣を柔らかくずらす。


次々に振るわれる剣を扇子で交わし続ける。

意外と私ってすごいじゃん。

そう思ったときに、わき腹に火の玉が当たった。

火の玉は弾丸のように私のわき腹を貫通する。


ぐは!これ無理。


いっしゅん気力が抜けた。

でもその瞬間、後ろで倒れているお父様とお母様の事を思い出す。

ぐらついた体を、寸前のところで踏みとどまらせる。

この少しの時間の私の隙を魔族は見逃さなかった。


肩口から剣で切り下ろされた。

お腹に別の魔族の剣が突き刺さる。

思わず突き出した左手の親指が切り落とされた。


気が遠くなりそうだった。

死ぬかも・・・・


離れたところで、魔族が魔法を撃とうとしている。

避けられない。


魔族の手から魔法が放たれた。

その瞬間、誰かが私の前に立ちふさがり魔法の火の玉を止めてくれる。

スマ子だった。


「お嬢様、逃げて!」

いうなり、スマ子は右手で魔族の首をつかむ。

魔族を掴んだ腕は、スポっとスマ子から離れた。

スマ子は魔族を蹴って遠くに飛ばす。


そこでスマ子の腕は爆発して魔族の首を吹き飛ばした。


そこに武器を手にしたカイル君とデルリカさんが横から現れた。

上級魔族をガシガシ攻めて追い込んでいる。

さすが勇者、強いね。


よくみると、魔法を使っていた魔族の1人は、フェンリルと戦っている。

血を出しながら気が遠くなりそうな私を、スマ子は片手で止血し始めた。

「ほんとお嬢様は、すこし目を離すと血だらけなんだから。勘弁してって言っているっしょ。」

そういいながら、ずるりとスマ子の力が抜けた。


「え?どうしたのスマ子!」


スマ子を抱き起こすと、スマ子の胸から割れたスマホが見えた。

「スマ子!あなたもしかして本体に攻撃を受けたの?スマ子!」


スマ子はまるで、出来の悪いロボットみたいな動きでノロノロ起き上がる。

「ウチはもうだめみたい。ウチは自爆でアイツを倒すからお嬢様は逃げてよ。ウチのためにも絶対逃げて・・・。」


カクカクとした動きでスマ子は立ち上がった。

そうは言っても、私は倒れたお父様を置いて逃げることは出来ない。


でも、前を見ると魔族とイライザさんが私に近づいて来ている。

スマ子だって置いていけない。


カイン君はお母様を引きずって出口に向っているけど、元がひ弱な子だから全然進んでない。

パニックになりそうだった。


でも、すぐに決意は固まった。

出血でふらふらする体に鞭打って、痛みをこらえて、歯を食いしばって私は立ち上がる。


「くそおおお、二度も家族を失ってたまるか!もう絶対奪わせないんだ!」


ふざけるな!

家族は私が守るんだ。


スマ子に肩を貸して扇子を構えた。

「お嬢様・・・ほんと勘弁してよ。ウチに里美ちゃんを守らせてよ・・・。」

「弱音吐かない!スマ子も家族なんだから生き残ってよね。」

「里美ちゃん・・・。」


なんか絶望的な場面なのに、怒り過ぎて逆に笑えてきた。

見るとスマ子も私に釣られるように苦笑いを返してくる。


私の怒りを見せてやる。

奇跡を気合で呼び込んでやる。


魔族が剣を抜いた。

やるか!


そう思ったとき、魔族に飛び掛る人影が。

「サトミーさん出遅れてスイマセンでした。準備に手間取ってしまって。」

ナガミーチさんだった。


言うと同時に、ナガミーチさんは腰に構えたショットガンを魔族に撃ち込む。

なるほど、ショットガンなら魔法禁止は関係ないね。


衝撃で魔族は、2メートルほど向こうに吹っ飛んだ。

死んでいないようで、立ち上がろうとする魔族。

そこに走りこんだナガミーチさんは、魔族の口にショットガンの銃口を突っ込んだ。


「アイドルと握手したいなら、握手会にきてくださいね。」

そういって引き金く。

魔族の頭は粉々にふきとんだ。


そして、振り返りざまイライザさんの首根っこを捕まえて、スタンガンで気絶させてしまう。

「ま、悪人とはいえ女の子ですからね。殺すことは僕には出来ないので。」

そういってお茶目に微笑んだ。


キュンときた。

まあ、吊橋効果だろうけど。


あわててナガミーチさんから目をそらすと、他の魔族もみんな殺されているのが見えた。

上級魔族って凄い強いはずなのに、なんか私の周りの人ってすごいな。


そこにセイン君が走ってコッチに来る。

「お姉様・・・出口が・・・開かない。魔法で外から固定されている・・・。どうしよう。」

一応、出口付近までお父様もナガミーチさんに運んでもらう。

目の前に、お父様、お母様、スマ子が寝かされていた。


回復魔法が無いんじゃ、どうしたらいいんだろう。

私は、無意識にナガミーチさんを見ていた。

「ナガミーチP、どうにかできないでしょうか?お父様とお母様とスマ子を助けたいのですが。」


するとナガミーチさんは苦笑いをした。


「もう、みんな僕をドラゴンボ○ルか何かと勘違いしているんじゃないんですかね。そうですね・・・。たとえば、マリユカ様の禁忌を逆利用すれば可能性はあるかもしれません。」


「方法があるんですか!」

すると、ナガミーチさんはデルリカさんを連れてきて、円陣を組んで小声で話し出す。


「つまり、ヤスコーさんが世界から弾き飛ばされた状況を真似るんです。マリユカ様の望む運命に逆らえば世界からはじき出されます。もしかすると、はじき出された先の世界に転送される過程で怪我は無くなるかもしれない。一か八かの賭けですがこのまま死ぬよりは可能性はあると思うんです。」


私は悩むことは無かった。

「どんな方法でも、少しでも可能性があるならばそれに賭けたいです。」


デルリカさんも優しく微笑んだ。

「わかりましたわ。ワタクシ達の経験がサトミー様を助けるのに役立つならばヤスコーも喜んでくれるでしょう。」


そこで私は、アイドルとしてストレートにしていた髪を、<縦ロール>で縦巻きロールにする。

そう、デルリカさんに最初に言われたことを実行すればいいのだと思ったから。


みなに聞こえるように、大声で私は宣誓する。

「デルリカ様、わたくし悪役令嬢はデルリカ様と手を取り合って親友として学園生活を過ごすと誓いますわ。」

「はい、ワタクシも悪役令嬢サトミー様を生涯の親友として過ごすと誓います。」


場がザワっとした。

私達2人は手を握り合う。


すると、ざわついた世界が急に静かになった。

おやっと思い、周りを見ようとしたら首しか動かなかった。

周りを見て気づいた。

時間が止まっていると。


そのなかを、テコテコと歩いてくる人が居る。

水色の長い髪の毛をなびかせて歩く女性。

マリユカ様だった。


マリユカ様の後ろには大天使の大豊姫様が付き従っている。

「サトミー、私の定めた運命に逆らうという事の意味はわかっていますよねー。」

「はい。」

「よろしい、では貴女を異世界追放の刑にします。何か持って行きたい荷物なんかがあれば言ってくださいね。それくらいは一緒に送ってあげますから。」

私はその言葉にすがった。


「では家族を!怪我で死にそうなんです。異世界に転送されれば助かるかもしれないという話ですから、一緒に異世界に連れて行きたいです。」


マリユカ様は静かに頷く。

「あなたのライブは楽しませてもらいました。あれを神楽として考えるのであれば、家族を送るくらいの望みは聞きましょう。」


そういうとマリユカ様は両手を空に上げる。

「アマテラスさん、こちらの人間も何人かつけますが受け取ってもらえますか?」

『全部まとめて、おっけーね』


マリユカ様に女性の声の返事が聞こえた直後、私は一気に眩暈を起こすように意識を失う。



そして気がつくと、妙な浮遊感があった。

そして気づく。

ここは夕方の校舎の上!

異世界に行く直前、私は飛び降りる途中だったのを思い出した。


「帰ってきてすぐ死ぬとか嫌あああ!」


その私の腕を誰かがガシリと掴んだ。

見ると、策から身を乗り出したスマ子だった。

「やっと助けられた。ほんとお嬢様は少し目を離すとすぐ危険になるんだから、勘弁して欲しいっしょ。」


スマ子は私を引き寄せると、軽々私を抱いて策を越える。

思わず抱きついた。

「スマ子・・・もう大丈夫なの?。」

「こっちの世界に来る瞬間に、パパがウチをバージョンアップしてくれたから安心してして。人工精霊として違う素体に乗り移れるようになったから、機種変しても大丈夫だよ。」


そういって胸を広げて見せてくれたスマホは新しくなっていた。

私の知らない間に機種変したらしい。

「そういえばお父様とお母様は?どうなったか分かる?」


「それはその目で確認した方が良いっしょ。ついてきて。」

スマ子に手を引かれて私は歩き出した。

電車に乗り、結構移動している。


ギャルっぽいメイドと手を繋いで移動しているのだから、他の人がジロジロみるけど気にならない。

今は、この絆を放すのが怖かった。


スマ子に連れられて都内の駅でおり、少し歩いて住宅の前に来た。

立地はかなりいいな。

スマ子は遠慮なくドアを開けて中に入る。

私も後に続く。


廊下を抜けてリビングに入ったとき目を疑った。


そこにはお父様が居た。

お母様も居た。

セイン君とフェンリルも。


そのばに力なく膝を突いてしまった。

慌ててお父様とお母様が駆け寄ってくる。

「サトミー・・・いや里美よ。里美のお陰でワシらは助かった。こころから礼を言わせてもらうぞ。」

「里美、あなたには無茶をさせてしまいましたね。ほんとうに感謝しています。」

フェンリルも尻尾を振って私の顔を舐めてくる。


夢?

これは夢なのだろうか?


セイン君も寄ってきた。

「お帰りなさい・・・お姉様。」


涙がボロボロ出てきた。

「なんで、なんで・・・・夢みたい。どうして・・・・。」

私は家族に抱きしめられながら涙が止まらない。


そんな私の頭を撫でながらお父様は優しく言った。

「こっちの世界でも娘になってほしいのじゃが、どうじゃろうか。」


その一言に、私の涙腺はさらに崩壊した。

夢なら覚めないで欲しいと願いながら。

お読みくださりありがとうございます。


里美「わたし、しぶりんに似てるって言われるんですよ。」

長道「懐かしいな。あれにはうちの会社も関っていたから。」

里美「ちょ、まじ?裏技知らない?ガチャで超レア引けるようなやつとか。」

長道「知ってますよ。イッパイお金を使うことです。それがガチャ道です。」


次回 佐山里美編のエピローグ

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