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佐山里美 その8

―佐山里美 その8―


さて、ハイキングも後半戦。

つまり帰路。


来た時と同じ道をトボトボ歩いて帰るのだけれど、なんか隣をデルリカさんが歩いている。

なんとも違和感しかない。

私の取り巻きさん達も微妙な顔をしているし、20メートルほど後ろをデルリカさんの追っかけ貴族が歩いている。


そんな私にナガミーチさんが笑顔で話しかけてきた。

「ほら、午前中は馬鹿貴族が邪魔だって文句言ってきたのはそっちでしょ。だから協力してくださいね。サトミーさんご一行を掻き分けてくるような根性ある奴はいないから、これで解決でしょ。」


何故私の隣にデルリカさんがいるかというと、マリーちゃんが右手で私の手を握り、左手でデルリカさんの手を握って楽しそうにしているから。


取り巻きのみなさんも本当は文句を言いたいかもしれないけど、手を握って楽しそうに歩いているマリーちゃんを引き剥がせる人は居ない。

このマリーちゃんの無邪気スマイルは最強ですね。


この状況はこまったけど、一応私も代表して決断をしないといけない。

「デルリカ様、マリーちゃんの前で争うのもどうかと思いますので、本日は休戦といたしませんこと?」

「はいサトミー様。マリーには逆らえませんものね。今日だけは仲良くいたしましょうか。」


そういって、演技でお互い苦笑いをした。

でも本当は・・・・

デルリカさんと遠足イベントの思いで欲しかったの!

やったー!密かに神様に祈った甲斐があったー!


もういちど心の中で神様に感謝したら、なぜかマリーちゃんが私の顔を見てニパーと微笑んだ。

うわ、ヤバイ可愛いさ。

12歳くらいの外見だけど、表情はもっと幼く見える美少女。

この娘もデルリカさんの傍に居るだけあって、トップアイドルの素質があるね。


するとデルリカさんが思い出したようにナガミーチさんを見る。

「そういえばナガミーチ。魔王の部屋の直前で『俺、この戦いが終わったらマリーちゃんにプロポースするんだ』と言っていましたが、あれはどうなったのですか?」


それを聞いて、まわりの人たちが色めき立つ。

その中で、ナガミーチさんが滅茶苦茶に動揺していた。

「な、なに急に言うんですか!アレですよアレ。ちょっと死亡フラグを演出したかっただけでして、それはその・・・。」


そんなナガミーチさんをマリーちゃんが意地の悪い笑顔で見る。

「ナガミーチは私の事が大好きだから、しょうがないのですよー。でもプロポーズはされてないですよー。いつするのかなー?」



マリーちゃん、無邪気さの無いニヤニヤもするんだ。

自然とみなの注目がナガミーチさんに集まる。


「ちょ、なんですかこの空気。あんまり追い詰めると実家にかえりますよ。」


そこで今度はマリーちゃんが慌てた。

「だめだめ、ナガミーチは帰っちゃダメ。もうこの話はしないから!みんなもナガミーチに注目しちゃダメ!。」


そのやり取りを見て、2人を見るみんなの視線が生暖かくなった。

ケッ、両想いかよ。ペッ!


なんか、彼氏居ない歴=年齢の私の心が一気に荒んだわー。

よく誤解されるけど、私って可愛いのに彼氏いないんですよ。

おかしいですよね。

振り返ると、後ろでビレーヌさんが人を射殺せそうな目で見てるの見えて、少し心が和んだ。

なかーま。


そんな、投げやりな気持ちの私に、ナガミーチさんは必死に「みなさんの思っているような好きではないですよ。」とか「もっと忠誠心的な好きですよ、ホントですよ。」とか言っている。

はいはい、そーですか。それは、よーござんした。爆ぜろ!


そんな私に余裕の笑顔でマリーちゃんは微笑んできた。

「サトミーも、がんばれぇ。」


頑張ってます(泣。


なにかグチでも言ってみようかと思った瞬間、後ろから急に魔法の気配がした。


その方向を見ると、そこにはヒットンと魔道師ダイホー(大豊姫)さんが居た。

うわ、ダイホーさん懐かしい。最近見ていなかったけどどこにいたんだろう。


ダイホーさんは涙目で私をビシっと指差す。

「マシリト公爵家!なんでいつも私をおいて家族で魔物討伐に行くんですか!」


あ、なんか怒ってる。

「あら、気づかず申し訳ありませんでしたわ。次はお部屋に呼びに行きますので。」

「うきー、しかも私が怒って二ヶ月前に出て行ったことに気づいてなかったのですか! もう許しません。復讐としてこのルッテン侯爵家ヒットン様を私の魔法で復活させました。さあ、後悔してもらいます。」


うわ、ヤバイ雰囲気。

私は慌てて扇子を広げて身構える。

すると剣を抜いたヒットンは、凄まじいスピードで私に突っ込んで来た。

魔法で身体強化しているのだろう。


でもその程度のスピードなんて、魔物退治に比べれば大したことない。


武技<扇子乱舞>発動。

開いた扇で、舞うように柔らかくヒットンの剣の軌道をずらす。

それと同時に足をかけた。


ヒットンは勢い良く転がる。

そのまま道の脇に立っていた木にぶつかり気絶した。

雑魚過ぎて哀れになるなあ。


あ、気絶したヒットンをサビアンさんとビレーヌさんがガシガシ蹴っている。

10代淑女の生キックなんて、業界によってはご褒美ですよ。

いっぱいご褒美をあげてくださいね。


さて、私はダイホーさんに向き直る。

するとダイホーさんはすでに空中に魔法陣を展開していた。

「あら、同志ヒットン様を一瞬で倒すとはなかなかやりますね。ではこちらではどうでしょうか?天狼召喚!」


空中の魔方陣から巨大な獣が飛び出した。

それは、高さは3メートルはありそうな狼だった。


ガォォォォン


大型獣の雄たけびは、内臓が震えて恐怖が走る。

それでも、私の取り巻きさんたちは、私の前に立ちふさがってくれた。

うわ、みんなカッコイイ。


さらにナガミーチさんが私の横に来た。

「みなさんは狼の足を止めてください。ダイホーさんは僕が相手をしましょう。サトミーさんは皆が狼の動きを止めてくれている間に調教テイムをしてください。サトミーさんならできるから頑張って。やり方は・・・」


ナガミーチさんの話が終わる前に、狼がこちらに駆け出した。

その突進をサファイア候爵子息スパルさんが狼の突進をとめてくれる。

「よし、みんな命がけでサトミー嬢を守るぞ。サトミー嬢は早く調教を頼む!」

みんな狼に向っていくけど、漫画みたいに次々吹き飛ばされる。


調教の説明を聞こうとナガミーチさんを見たら、指輪の入っていそうな小箱を手にしていた。

「僕、ダイホーさんに勝ったら、この指輪をマリーちゃんに贈ろうと思うんです。必ず生きて帰ってくるから!」


そういうなり、いい笑顔で走り出してしまった。

ちょ、なんで死亡フラグを立てていくの?

っていうか、調教の方法を先に教えて!


私が止める間もなく、ナガミーチさんはダイホーさんのところに行ってしまった。

そう言っている間にも、私の取り巻きさんたちは次々に吹き飛ばされて、狼は徐々に私に近づいてくる。


助けを求めようと周りを見たら、デルリカさんと目が合った。

デルリカさんは、周りの必死さを無視するように静かに微笑んだ。

「サトミー様、ワタクシの<上級鑑定>で見たサトミー様の能力でしたら、獣の調教は簡単だと思いますわ。ご自分の能力を信じるのです。」


う、これは助けてくれる気はないですね。

仕方ない・・・頑張るか。


スパルさんは天才剣士と言われているだけあって、巨大狼の牙をガシガシ防いでいる。

でも、ジリジリさがって来ているのは辛い。

みんな頑張ってくれて居るのに、私がアワアワしていちゃダメだよね。


よし!女は度胸だ。

「スマ子、10秒だけ狼の頭を固定して。調教をしてみる。」

「お嬢様、超イケメン。」


スマ子は狼の耳と喉の皮を掴んで、グキっと固定した。

おおお、スマ子すごい力。

おっと、スマ子に感心している場合じゃないな。

私は、狼の鼻先まで進むと目をあわせる。


スキル<微笑み>発動。

にこっ


我ながら、人の心を溶かすような、見事な微笑が出来たと思う。

そこで、狼は怒った顔から力がぬけて私を見つめた。


人間の微笑が通用した?

自分でやっておいて驚いたけど、すかさず魔法の連続攻撃だ。

魔法<なんか心地いい>と魔法<なんか忠誠したい>を連続攻撃。

どんどん狼の目がトロンとしてくる。


よし、いける!

怖いから、魔法<なんか心地いい>と魔法<なんか忠誠したい>を50回くらい連続かけしてやった。

さらに、手に持ったカバンからお弁当の残りを出して、狼の口に放り込む。


動物には餌付けは基本だからね。

私が、喉の所のフサフサをガシガシ掻いて上げたら、嬉しそうな表情をしたのでもう大丈夫だろう。


狼を押さえてくれている皆に声をかけた。

「みなさま、本当にありがとうございました。もう大丈夫そうです。お怪我をしている方は急いで治療を。皆様の友情に、わたくしは心から感動いたしましたわ。本当にありがとうございます。」


すると、頑張ってくれていた人たちは力なくその場に座り込む。

みると、サビアンさんやビレーヌさんまで狼にしがみついて、動きを止めてくれていたようだ。


なんか感謝の気持ちと同時に、本当に申し訳ない気持ちになった。

そういえばナガミーチさんの方はどうなったんだろう。


見ると・・・・

ダイホーさんの大きな胸に抱きしめられて、パニック状態でバタバタしていた。

あ、これ助ける必要ないね。


疲れてグッタリしている取り巻きさんたちも、なんか微妙な表情で、ナガミーチさんvsダイホーさんの戦いを見ているし。

どうしようかな?助けたほうがいいのかな?

ビレーヌさんだけは目を血走らせながら立ち上がったけど。

ほんと、ほっておいていいか。


そう思っていたら、マリーちゃんがスタスタと2人に近づいていく。

マリーちゃんにしては驚くほど低音の声で「いいに加減しなさい」言いいつつ、ダイホーさんのボディーにパンチを入れた。


うわ、なんか怖。


ダイホーさんは慌ててペコペコ謝ったあと、なぜか号泣しながら逃げていってしまった。

こっちからはマリーちゃんの顔は見えなかったけど、よっぽど恐ろしい顔していたのかな。


無表情なマリーちゃんに手を引かれてナガミーチさんが戻ってくると、なぜかデルリカさんがナガミーチさんにチョップする。

「ナガミーチ!なんですか今の不甲斐ない姿は。マリーの前で胸の大きな女性にデレデレと・・・恥を知りなさい。」

「デルリカさん、そうは言いますけど僕は普段マリーちゃんやデルリカさんばっかり見ているから、オッパイが大きな女性とかに動揺してしまうんですよ。」


その瞬間、デルリカさんとマリーちゃんの顔がヒロインとして、してはいけない顔になっていた。

「ナガミーチ、ちょっと人目のないところに行きましょうか?マリーも一緒に来ますよね。」

「うんデルリカ。それとナガミーチ、私の胸に文句あるんですか?そうそう、ナガミーチがあんまり馬鹿なこと言うと、ナガミーチのせいで世界中の大きな胸が砕け散るかもしれませんねー。」


ふたりに襟をつかまれて、ナガミーチさんは茂みに引きずられていく。

「まって、すいません。ちがうんじゃよ。アレですよ、僕はマリーちゃんの胸好きだなー。デルリカさんもベストバランスの美ですよ。だから許して・・・助けて・・・・誰か助けてーーー!」


そして茂みに消えると、ナガミーチさんの声は聞こえなくなった。

死亡フラグ立てるからですよ。

お読みくださりありがとうございます。


長道「実は大天使の中で、大豊姫さんが一番苦手。」

マリユカ「なんでですかー?」

長道「なんかグイグイくるし、胸から迫ってくるし、なんか笑い方が怖いし・・・。」

マリユカ「ふーん、じゃあ一番気の合う大天使は?」

長道「うーん、大海姫さんと大炎姫さんと大空姫さんでしょうか。」

マリユカ「・・・四人組みって1人だけかわいそうなポジションになりますよね・・・。」

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