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佐山里美 その5

―佐山里美 その5―


なんで教室に行くだけでこんなに疲れているんだろう。

さっきの馬鹿貴族は学校側に突き出しておいたけど、処罰されないんだろうな。

なんせ候爵だもの。

ま、次ぎ見つけたら学校を逃げ出したくなるほど心を砕いてやるとしますか。


そう思いながら歩く私とセイン君の後ろをスマ子がついてくる。

あのあと、トイレに行こうとしても一緒に個室に付いてこようとしたのには参った。


スマ子ったらマジキレして

「ダメだっちゅうの。目を離すとお嬢さまはマジありえないことやりそうっていうか。反省してもらうためにも、ここは譲れないっしょ!」

とかいって無理やり一緒に個室に入ってくるから、泣く泣く同席を許してしまった。

だって限界だったから。ホント心底反省したよ。


あ、いけない。しょんぼりしたら縦ロールがゆるくなってきちゃった。

スキル<縦ロール>発動!

シャキンと髪の毛が縦巻きだ。


教室につくと、そこは優雅なカフェのようなつくりだった。

教室だよね?


動揺を悟られらないように中に入ると、すぐに奥のほうで遠巻きに人に囲まれながらも、誰にも声をかけてもらえないでいる人を見つけた。


デルリカ・ベルセックと弟のカイル・ベルセック。

魔王討伐の功績で候爵位に上がることが決定しているらしい。

うん、だから公爵家としても近づいても良いよね。


もうデルリカ嬢にはビビらない。

なぜなら私は自分の間違いに気づいたから。

やっぱり悪役令嬢は、ヒロインと戦ったら負けるに決まっているのだから、むしろ勝負するフラグをへし折る方向でいかないとね。


バッドエンドを回避する方向で進めばいい。

つまりヒロインちゃんと仲良くなればいいのよ。


よし、その作戦で行こう。


私は扇子で口元を隠しながら歩く。

デルリカ嬢に近づけないチキン共を押しのけて、デルリカ嬢に近づいた。


「わたくしはサトミー・マシリトといいますわ。こちらは弟のセインです。以後おみしりおきを。」

「まあ公爵家のサトミー様ですね。ワタクシはベルセック伯爵家のデルリカといいます。隣にいるのは弟のカイルです。こちらこそお見知りおきを。」


カイル君は「さきほどは、ありがとうございます」と言いながら頭を下げてきた。

素直な美少年にお姉さん、キュンキュンきちゃう。

ぜひセイン君とも仲良くなって、あわよくば我が家に遊びに来て欲しい。


そんな事を妄想していると、教室内がざわついて居ることに気づいた。

『もう公爵令嬢がデルリカ嬢に喧嘩を売りにいったぞ。』

『デルリカ嬢は迎え撃つ気に違いないですわ。堂々と挨拶を受けましたもの。』

みんな、勝手な事をイロイロ言っているな。


心なしか、セイン君が緊張した顔で私の袖をつかむてに力をこめた気がする。

いやいや、大丈夫だよ。お姉ちゃんは戦わないから。


「わたくしのことはサトミーと気軽にお呼びくださいな。図々しいお願いですが、デルリカ様とお呼びして宜しいかしら。」

「ワタクシのことはお好きに呼んでくださいませ。ワタクシもお言葉に甘えてサトミー様とお呼びさせて頂きます。」


ふふふ、やばい、デルリカさん可愛い。

その言葉を聞いて、私はデルリカさんの前の席に座った。

躊躇しているセイン君を無理やり私の隣に座らせると、さらにデルリカさんに体を向ける。


「わたくしはデルリカ様のような素敵な方から、輝き方を学びたいと思っておりますの。よろしければ在学中は、イロイロご教授くださいませね。」


そういって、できるだけ優しく微笑んだ。

けど、何故か不思議そうな顔をされてしまった。


「あの、デルリカ様、なにかわたくしに、変なところでもありましたか?」

「いえ、そのような事はございません。・・・ですが、おかしな事を言っていると思われるかもしれませんが、少々意外でして。その・・・。」


そういうとそっと私の耳に口を近づけてくる。

う、緊張しちゃう。

デルリカさんは小声で私だけに聞こえるように言った。


「私の<鑑定>スキルには、サトミー様の称号が<悪役令嬢>と見えたので、友好的に接してくださり驚いてしまいましたもので。」


ぎょ!いきなりバレてーら。

びっくりして目を見開いてしまった。

さすが魔王を倒した女。スキルも沢山持っているという事ね。


はい試合終了。

もう無理無理。

登校初日で種明かしです。ううう、カッコ悪い。


私は扇子で口元を隠すようにデルリカさんの耳元で小声でつぶやく。


「実はわたくし、異世界人ですの。マリユカさまよりヒロインのデルリカ様と対立することを運命付けられているようですので、戸惑っていましたわ。ですが仲良くさせていただこうと思って声を掛けさせていただきましたのよ。」


今度はデルリカさんがぎょっとした顔をしてバサリと扇子を広げ、私の耳元にまた近づいてくる。

あ、いい匂いする。

「それはいけませんわ。マリユカ様のお決めになった運命には逆らってはいけません。運命に逆らいますと、この世界からはじき出されてしまいますのよ。サトミー様も形だけでも運命に従うことをオススメいたしますわ。」


おお、なんか面白い展開。

私もバサリと扇子を広げてまたデルリカさんの耳元で小声でささやく。

「何か知っていらっしゃるのですね。あとで詳しく教えてくださいませ。念のため今は仲たがいした演技をいたしますね。」


するとデルリカさんが、真面目な顔で無言で頷く。

よし、悪役令嬢しましょうか。


立ち上がり。パチンと扇子を閉じるとデルリカさんに向けてみた。

「あとはあなた次第ですわデルリカ様。私の取り巻きにしてあげましてよ。良いお返事を期待しておりますわ。」


するとデルリカさんも扇子をパチンと閉じて好戦的な笑みを返してきた。

「あら、何度お誘いいただいても、ワタクシはお断りしか出来ませんわ。申し訳御座いませんがお諦めください。」


ギラリとした目つきで微笑んでくる。

凄い演技。デルリカさん女優だわ。

一瞬、マジで謝ろうと思っちゃった。


これ以上はボロが出そうだったから、デルリカさんに背を向けてその場を離れて、別の席にセイン君と一緒に座った。

なんかセイン君がソワソワしているから、あとから説明してあげなくちゃ。


すると、私の周りに何人かの令嬢が寄ってきた。

そしてそばで、ソワソワと私を見ている。

話しかけてくるのかと思ったけど・・・

そこで思い出した。格下の爵位の人から格上の爵位の人に初めて話しかけるのは、『声を掛けられる』か『紹介をされる』かでないといけないという事を。


貴族面倒くさい。


しょうがないので私は私のそばでソワソワしている令嬢達にまとめて挨拶をした。

「みなさま、ワタクシはマシリト公爵家のサトミーと申します。これからよろしくお願いいたしますね。気兼ねなくサトミーとお呼びください。」

すると嬉しそうに、その場に居た令嬢達はワラワラと自己紹介をしてくる。

一通り全員が自己紹介をすますと、我先にと私に詰め寄ってきた。

うん、みんな可愛いな。貴族の血統おそるべし。


「サトミー様、デルリカ様にあんなに堂々と勝負を挑まれるとは驚きましたわ。さすが公爵家ですわね。」


そうなの?

あと、いまのドコが勝負だったんだろう?

貴族の感覚って良く分からないかも・・・。


すると別の令嬢も興奮気味に割ってくる。

「ベルセック家は伯爵位とはいえ、王族と懇意ですし何かと特別なお家柄ですから。ほかの公爵家の方様も遠慮して近づけなかったといいますのに、凄いですわ。」


そうなんだ。

あは、私って空気読めない系女子だね。反省しヨット。


あのあと、フィレース公爵家令嬢のサビアンさんという人が喧嘩腰にデルリカさんに話しかけた。

でも最後は言い負けて涙目で撤退したので、どうやら話しかけるだけでも『どっちが上か』の勝負なんだと理解した。

ま、これは日本の女子にも良くある事だから、理解可能かな。


そうなると、他人から見ると、私とデルリカさんは『引き分け』に見えたということだろうか?

ちょっとちょっと、デルリカさんと引き分けってすごくない?

そりゃあ、私のお株が上がるわけだ。

午前中だけで、20人くらいの上流貴族の子息令嬢にお世辞いわれまくったもの。

納得。


今日は一日目だったので自己紹介とオリエンテーションだけだった。

あとは午後は雑談して交流という流れらしい。


そっと抜け出してデルリカさんと話がしたかったけど、私もデルリカさんも人に囲まれて動けない。

どうしようかと思っていたらスマ子がそっと耳打ちをしてきた。

「お嬢様、<思念通話>で帰りに合流できるように打ち合わせしたから安心して。校内では適当に敵対しましょうだってさ。」


スマ子!<思念通話>なんて使えるの?

凄い子ね。


そして、デルリカさんを見る。

すると、デルリカさんの後ろに長道さんがいた。

あ、そういえば下界ではナガミーチさんでしたっけ?

いいポジションに居るな。デルリカさんに付き従うとか羨ましい。

そう思ってたら目が合った。


そしたらナガミーチさんはデルリカさんの座るテーブルにパサリと大きな布をかける。

それをバサリとどけたら、なんと一瞬でティーセットが出てきた。

うわ、なんだそれ、カッコイイ。

教室からは歓声があがった。


するとスマ子が真面目な顔になる。

「お嬢様、あれくらいウチもマジ出来るし。パパには負けないし。お友達になられたご令嬢方も、よかったらご一緒にお茶してほしいわけよ。」


そういうと私の前のテーブルに大きな布をかける。

それをすぐにバサリとどけると、五人分のティーセットと、三段トレイに乗ったスコーンが現れた。

おお、ティータイムセットとしてはナガミーチさんに勝ってる。


でも私はお昼ご飯が食べたいんだよな。

わざと我がままっぽくスマ子を見る。

「スマ子、悪いけどコレを片付けて下さる?わたくしはランチが良いのですが。」

「おっと、ウチったら気が効かない奴でマジごめん。ちょっと待って。」


ティーセットにまた布をかけてすぐにバサリと布をどける。

すると五人分のランチセットが出てきた。


見ていた人たちから、驚きと感嘆の声が上がる。

さすが公爵家という所を見せることが出来たようだ。


スマ子すごいなー。私の中のスマ子の評価はうなぎ上りで天井知らず。

もう惚れそう。


そして、クラスに見せ付けるように勝ち誇ったような微笑をデルリカさんに送ると、目の前の令嬢達にそっと微笑んだ。

「よろしければご一緒にいかがですか。お口に合うか不安ですが。おほほほほ。」


そして私に話しかけてきていた3人の令嬢と一緒にランチをとった。

令嬢達は口々にスマ子とランチの味を褒めてくれたのです。

ふふふ、うちのスマ子いいでしょ。なんか凄く鼻高々。

私の自慢のメイドです。


令嬢に質問されてスマ子が答えているのを聞いて驚いたけど、『布かけてバサッ』は空間魔法の一種らしい。

スマ子、実は魔道師だったのか・・・・


そこで、ふと疑問に思ったので、ちょっと聞いてみた。

「そういえばスマ子、時々ナガミーチさんをパパと言うけどそれはどう意味なの?」


一緒にランチをしている令嬢方も興味深そうにスマ子を見る。

「え?そのまんまの意味っていうかー。私のパパ。それで、ウチにスキルや魔法をくれたのもパパ。ウチをメイドにしたのもパパ。トリマそのまんまの意味っしょ。」


これは、ナガミーチさんを後で問い詰めなくてはいけないね。

およみくださりありがとうございます。


せっかくご感想をいただいたのに、ビビッてまだ読めなくて申しわけないです・・・。すいません。


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