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佐山里美 その4

―佐山里美 その4―


心が折れた。

デルリカ・ベルセック伯爵令嬢。

あれは女神ですよ。なんか光り輝いてみえたもの。


戦意喪失すると同時に、私の縦巻きロールはスルスルと、ただのストレートロングになってしまった。

やばい、スキル<縦ロール>を維持する気力も砕け散ったっぽい。


地面に手を突き放心している私の肩に、誰かがそっと手を置く。

セイン君だった。

「お姉様・・・デルリカ様に勝つなんて・・・無理ですよ。僕達のために・・・無理しないで。僕が魔法でナガミーチさんに勝って魔道研究院の院長を目指すから、、、、お姉様は学校を楽しんでください。」


弟君の目には諦めすら感じる。

ぐぐぐ

ぐあああああ

不甲斐ないよ私!


思いっきり地面を殴りつけた。

セイン君は驚いているけど、いまは自分に気合を入れるほうが先だ。

負けられないんだから。

「どすこい!」


叫びながら私は立ち上がった。

そして大きく深呼吸。

その瞬間、私のストレートロングは一瞬でシャキンと縦巻きロールだ!


さっきまでの失意が嘘のように、私は口元を扇子で隠しつつ優雅に微笑み、セイン君の頭を乱暴に抱き寄せた。

「心配してくれてありがとう。でも私は慰めは嫌いなの。もしも私の事を想ってくれるなら熱い激励をちょうだい。1人でも私を応援してくれるなら、どんな生き恥を晒そうと泥水をすすろうと、お姉ちゃんは何度でも蘇るから。」


パチンと扇子を閉じて、セイン君の頭に頬をつける。

「だからセイン君はお姉ちゃんが弱ったらエールを送って。この世界でまで家族を失うわけにはいかないの。それにアイドルに挫折したときみたいに自分に負けたくない。だから時間切れになる最後の一瞬まで私はあがきたい。そのためにセイン君だけはお姉ちゃんを応援して。それだけで頑張れるから。」


セイン君はこちらを見ないまま口を開く。

「でも苦しいですよ。」

みると少し泣いているようだ。

もう、しょうがないな。

私は抱いた腕をセイン君の目の高さに移動させて涙を隠した。

「気にしなくて良いよ。ただ家族がほしい。そのために頑張るだけだから。気にしないで。」

セイン君は私の腕の中で小さく頷いた。


ーーーーー


さて、教室に向かわなくちゃ。

なんとなくクラスは三つに分かれてるそうだ。

上位貴族、下級貴族、その他の生徒で分けられている。


身分の違いでトラブルが起きないようにと言う配慮なんだろうね。

貴族社会って面倒くさい。


だから私はセイン君とも同じクラス。

2人で教室を探していると、少しはなれたところから言い争う声がした。


『何が勇者だ、シスコンなだけだろう』

『たかが伯爵家の妾腹の分際でいい気になりやがって。』


声のほうにいくと、四人の男子生徒が、1人の少年を囲んで攻めているように見えた。

そっと覗くと、責められている少年は知っている少年だった。

カイル・ベルセック伯爵子息。


長道さんの攻略本に書かれていた、攻略対象のヤンデレ系シスコンだ。


どうしよう。

ふりかえるとセイン君は私を見ている。

うーん


よし逃げよう。

そう思ったとき、カイル君を責めている1人が大声で叫ぶ。

「お前の姉のヤスコーとかいうゴリラ女も妾腹だったんだろう? デルリカ嬢にいいところを全て持っていかれたゴリラ姉の事も好きなのか?」


その言葉を聞いた瞬間、カイル君は目に殺気を満たして剣を抜いた。

素人の私でも殺気が宿った瞬間が分かった事に驚いたけど、それは今は良い。

まずい、とめないとマズイ。


私は思わず発声練習級の大声を出してしまった。

「おやめなさい!」


四人の生徒とカイル君がこちらを見た。

うわ、急に膝が震えてきた。

でもここで逃げたら野望から遠のく。

悪役令嬢になったんだもの、頑張らなくちゃ。出来るだけ優雅に彼らに歩み寄った。

膝が震えているけど、スカート丈が長いので多分バレていないはず。


カッツ、カッツ、カッツ


手が届くところまで近づきカイル君と四人の間に立つ。

落ちつくために優雅に扇子を開き、口を隠した。

「あなたたち、随分恥ずかしい殿方ですのね。この背の低い少年を四人で囲まないとモノもいえませんの?。」


「なに?貴様は何者だ!俺はルッテン侯爵家の次男ヒットンだぞ。ハンパな貴族はしゃしゃり出るな。」

うわ、貴族特有の馬鹿だ。


「あらあら、彼方は最初に親御さんの爵位で相手を威嚇しますの?自分が空っぽの殿方は可哀想ですわね。」

「ふざけるな女、そのシスコン野朗の仲間か? 後悔するぞ。」


私はカイル君の剣にふれてそっと下げさせながら言い返す。

「あら、シスコンとは素敵ですわね。家族の仲が宜しいことは美徳ですわ。それを馬鹿にされるというのは何故でしょう?ああ、貴方のご家族を基準に仰っておりますのね。貴方、本当はかわいそうな境遇でしたの? お可哀想な貴方に気づくことができずに申し訳ありませんでしたわ。」


「くそ、口ばっかり達者な女め。女の癖にふざけるな!」

ヒットン・ルッテンは叫ぶなり剣を抜いた。

私の後ろでカイル君が剣を構えなおす。


私は、ヒットン・ルッテンに背を向けカイル君を向いた。

「おい女!なに背を向けてるんだ。馬鹿にするな!」


でも無視。

カイル君が驚いてるけどそれも無視。

私はカイル君の剣をつまんだ。


「貴方の一番敬愛される方のお名前をお聞きしたいですわ。」

「な、今はそれどころじゃないでしょ。」

「いいえ、今だからこそお聞きします。大事な事です。」

真剣な目でカイル君を見ると、苛立ったように私から目をそらす。


「ヤスコーお姉様だ。コレで満足でしょ、どいて。」

「いええ、ではそのヤスコー様は今のように喧嘩のために剣を抜かれる貴方を見たら、なんとおっしゃるかしら。」


するとカイル君は一瞬目を見開き、そして肩の力をぬいた。

「そうでした・・・ありがとう。ヤスコーお姉様を想って鍛えた剣を穢す所でした。」

そっと剣を鞘に収める。


その時、私の背中に一瞬冷たい感触が走る。

その直後に熱くなり痛みが走りぬけた。


痛----い!


「無視するな女!」

振り返ったら、ヒットン・ルッテンが剣を振り下ろした姿が見えた。

おおおお、おい馬鹿貴族。

おまえ、女の子を後ろから斬ったの?

お尻に、生暖かい血が流れてくるのを感じる。


嘘でしょちょっと!


おおおおお、ちょ、どうしよう。

気を失おうかな。

でも、ここで弱気になったらカッコ悪いしな。


 泣く

 倒れる

→強がる


もう!乗りかかった船だもの、最後まで根性だしてやる。

ゆっくり振り返り、痛みを我慢して蔑んだ目で見た。

斬った馬鹿貴族は、私を怯えた目で見ている。

痛くて声が出ないから、ただ蔑む。


するとヒットンが剣を構えなおそうとした。

おい!まだやるの??嘘でしょ。


もうこっちもやるしかない。

武技<言葉のとげ>だ。


「後ろから斬りつけて女も殺せないとは、『ザコが』。」


その言葉でヒットンは青ざめる。

もう一発<言葉のとげ>発動。


「では次はこちらから行きますわ。わたくしの扇子は魔物も倒しますのよ。これで死になさい『虫けらめ』」


その言葉でヒットンはひっくり返って、ズボンをぬらした。

まあ汚い。いやですわ。


最後に、もう一発だ。

「いい忘れましたが、あなたの大好きな親の爵位付きで名乗らせていただきますと、わたくしはマシリト公爵令嬢サトミーと申します。『五公爵家』の1つですがご存知でしょうか?」


知らない訳ないよね。


私が発したトドメの一言で、ヒットンは白目を向いて倒れた。

どうだ!わたしの武技<言葉のとげ>はメンタルに刺さるのよ、オホホホ。


ヒットンの後ろに居る3人の貴族ボンボンも睨む。

「あなた方もかわいそうですわ。ヒットン様のお仲間なのでしょ。ほんと・・・・お可哀想に。」


「ひいい、僕たちは関係ないです」

すると3人は走って逃げていってしまった。

ふう、これで敵はいなくなった。

もう倒れても良いよね。


そう思ったけど、なんか背中の痛みが感じない。

おや?

振り返って背中を触ると、服は切れているけど傷は無く、背中の肌のツルツルした感触がする。

おや?


カイル君が呆れた顔で私を見ていた。

「無茶しすぎですよ。背中は僕の回復魔法で治しておきましたよ。あなたは何で僕を助けてくれたのですか?」

おお、これが回復魔法か。

すっごーい。


おっと、回復魔法に感動している場合じゃない。

聞かれてるから答えなくちゃ。


「わたくしは、家族を大事にする事を笑う馬鹿が嫌いなだけですわ。シスコン?素晴らしいじゃないですか。お姉ちゃんなら大喜びです。」


そこまでいって、物陰に居るはずのセイン君を見た。

みると号泣してた。

ちょ、泣かないでよ。

思わず駆け寄ってしまった。


「セイン君、怖かった?ごめんね。もう大丈夫だよ。」

「ち、ちがいます。お姉様が斬られたのに・・・僕、僕、怖くて飛び出せなかった・・・・ごめんなさい。」


お姉ちゃんの馬鹿な行動で傷つけちゃってごめんね。

抱きしめた。


「お姉ちゃんこそごめんね。セイン君は気にしないで良いんだよ。お姉ちゃんが馬鹿だったんだから。隠れているセイン君の方が利口だったの。だから気にしちゃ駄目。」

泣きじゃくるセイン君の頭を撫でる。


私は昔から考えなしなんだよね。

それでよく妹にも馬鹿にされた・・・。

そっか、あのとき妹は心配もしていてくれたんだね。

「心配させちゃって、ごめんねセイン君。」


するとカイル君がセイン君の肩に手を置く。

「動いて足手まといになるよりも、動かないことが正解な事も多いよ。今回は君が狙われるよりは隠れていたほうが正解だったと思う。僕は、動いてはいけないタイミングで動いて、誰よりも大事だったお姉様を失ったことがあるんだ。今回の君は僕よりも利口だったと思うよ。」


そういうカイル君の顔がとてもさびしそうだった。

イケメン十四歳の憂いた顔。

すいません、こんな重い空気なのに少しキュンときました。

お恥ずかしい。


しゃがんでセイン君を抱きしめながら反省している、とカイル君が私の前に跪いて目線をあわせてきた。

「いまお姉様に<思念通話>で連絡しましたので、もうすぐメイドが着替えを持ってくると思います。背中が切れた服では出歩けないでしょ。すこし待っていてください。」


あ、そういえばそうですね。


数分後

どういう連絡が回ったのか、私の着替えをスマ子が持ってきてくれた。

でも着替えた直後に、正座をさせられてお説教されてしまったです。

あの、ここの床は大理石なんで痛いんですけど・・・・

地獄のような30分だったけど、スマ子の涙目な必死の説教は、ちょっと心が暖かくなった。



読んでくださり、ありがとうございます。


スマ子「マジ信じらんない。ウチが目を離した隙に斬られるとかありえないっしょ。」

サトミー「はいすいません。」

スマ子「反省が足りないっしょ!お嬢様が死んだらウチも死ぬよ?ウチを殺す気かっちゅうの。」

サトミー「反省しています。私の事大好きなら許して(ハート)。」

スマ子「超大好きだから許せないんだーー。」

サトミー「スマ子、そんな事言われたら惚ちゃうぞ。」

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