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石田長道 その7

―石田長道 その7―


またいつもの所ですよ。天界にある、マリユカ様のだだっ広い真っ白な部屋。

マリユカ様は、僕が良い笑顔で落とし穴に落ちるシーンを爆笑しながら鑑賞している。

「いや、もうそこ飛ばしましょうよ。もう10回以上見ていますよ。」

「あはははは、いいじゃないですかー。長道の落ち方最高です。なんで良い笑顔なんですか。」

「もうやめてー。」


拷問だ。

僕は笑うマリユカ様の口に大福を押し込み、マリユカ様が呼吸困難になっている隙に早送りした。


すこし苦しんだマリユカ様は大福を『ペッ』と吐き出すとジタバタ怒る。

「くは、死ぬかと思いました!もう大福嫌!もう大福大嫌い!大福は危険なので禁止です!大福は殺す!大福は最悪なのです!大福には滅びを与えます。マリユカ宇宙の大福は全て砕け散れ!大福好きにも不幸を!」

マリユカ様がそうさけぶと、目の前の大福が全て砕け散った。

きっと、今まさに本当に世界中の大福が砕け散ったんだろうな。


などと大福を眺めていて急に気づいた。

あれ?いま、マリユカ様の怒りが大福に向いたから良かったけど、もしも僕に向いていたら?


・・・うわー、『長道砕けろ』じゃなくって良かったー。

あっぶねー。今僕は消滅の危機だったんではないだろうか?

そして大福を好きじゃなくって良かった。

大福好きの皆様すいませんでした、てへ。


念のためマリユカ様に謝罪の意味で、お茶をフーフーしてから口に運んでみる。

「マリユカ様、これでお鎮まりください。」

「ふー、お茶おいしーですー。では気を取り直して茶饅頭でも楽しみましょう。」

何もない空間から、茶色の饅頭が沢山乗ったお皿が出てきた。

僕はそれを一つ手に取り、二つに割ってからマリユカ様の口に運ぶ。


パク


食いつきモグモグすると、マリユカ様は唇を尖らす。

はいはい、お茶ですね。

またお茶を飲ませてあげた。


マリユカさまは、なぜか他人にお菓子を食べさせてもらうのが好きだ。

まあ、ペットを可愛がるような楽しい仕事なので良いんだけど。


そういえば気になることを聞かなくちゃ。

「そいえば佐藤毅さんはあの後どうなるんですか?」

「タケシーはまず大学で2人のメイドをいつもはべらす男として知れ渡り、脱・地味男をします。そのあと、日本の闇の部分にスカウトされ宮様や警察の忍びとして大活躍。剣子による謎のハッカー技術や、鉄美による鉄壁の防御で他国にも恐れられます。ヤスコーのよき理解者としても重宝されますね。でも人工精霊に邪魔されて一生独身でした。」

「おお、日本でも成功したようで安心しました。」

「一生独身ですけどね。長道の陰謀で。」

「う、違いますよ。一年位前にデルリカさんに『タケシー様が他の女性のものになるのは嫌ですので、ワタクシから離れたら一生独身になる呪いを掛けてくださいな』って言われたから、空気読まないで嫉妬深くてべたつく図々しい性格の人工精霊の剣子を作って、寝ている間にそっと契約させておいたんです。デルリカさんの希望ですからしょうがないんですよ。」

「・・・・うん、デルリカの希望ならしょうがないですね。それに人工精霊でも美人を2人もつけたんですから、タケシーも文句ないでしょう、きっと。」

「そうそう、しょうがないのです。」


そんな話をしていたら、記録映像が、ちょうど最後のキスシーンに来ていた。

「うわ、タケシーが生涯独身になる運命の時ですよ!長道も見てください!。」


マリユカ様は楽しそうにそこを5回ほど繰り返し見て、僕をジト目でみた。


「あーあ、また長道のせいでデルリカが失恋ですよー。長道は本当にデルリカにひどいですよねー。」

「げ、マリユカさまの運命操作のせいじゃないですか。マリユカ様が気をきかせれば佐藤毅さんも帰らなくて済んだんじゃないんですかねー?マジ佐藤さんとデルリカさんはマリユカ様のせいで可哀想。」

「違いますー。長道のせいですー。折角デルリカは今回<スキル耐性>を身につけて、松尾の<魅了>の呪いから開放されたのに、長道のせいでまた失恋ですよ。デルリカ可哀想ー。」

「違いますよ。マリユカ様が悪いんです。デルリカさんの周りにもっと良い男を配置してあげてくださいよ。マリユカ様のせいです。」

「いいえ、長道のせいです!」

「違います、マリユカ様のせいです!」


僕とマリユカ様が、オデコを押し付けあいながらゴリゴリ言い合いをしていると、後ろから遠慮がちに声がした。


「あの、お取り込み中のところ申し訳ありません。お呼びにより試練の神・メビウス、ただいま参上いたしました。」

みると、包帯グルグル巻きの魔王だった。


いや、実は今回魔王役が欲しかったので、何年も前から仕込み都市として試練の神とその配下である試練12天使に魔王役をやってもらったのだけど、ここまでボロボロにやられると思っていなかった。

驚いたのは、あの時は砕けたのに、次の日『痛たたた、けっこうやられましたよ』と現れたこと。

流石神様。ギャグパートか!と突っ込みたくなったのは秘密。


厳つい男性の姿をしたメビウスさんの後ろに12人の天使が並んでいる。

彼らも全員、包帯でグルグル巻きになっている。首飛んだのに死ななくて良かった。


僕は慌ててお詫びの意味でお辞儀をした。

「今回は、思ったよりも大変な事になってしまって申し訳ありませんでした。デルリカさんがあんなに強いとは思わなかったので。」

すると魔王顔のメビウスさんは、人の良さそうな笑顔を返してくれる。

「なにを言うのですか。長道殿のお陰でマリユカ様の娯楽に参加でき、大変光栄に思っております。いつでも我らにお役目を申しつけてください。」

その言葉で、後ろの天使さんたちも一斉に頭を下げる。


怒ってないなら安心だけど、なんか胸が痛い。

するとマリユカ様がぴょこりと近づき、全員の頭を撫でた。

「よしよし、みな良い感じでしたよー。」

その言葉に、メビウスさんと天使たちは涙を流しそうに喜んでいる。

なんだろう、また胸が痛い。


マリユカ様はしばらく下らない話をしていたが、思い出したようにメビウスさんの前にしゃがむ。

「そういえば長道が作った勇者システムの管理は大丈夫そうですか? あれは面白いシステムですから、これからも利用したいのですが。」

「は!試練の神としての力と、ここにいる試練12天使で運用するならば、10億人くらいまでは大丈夫かと思います。それ以上沢山の人間にシステムを適用するとしましても、担当する天使を増やせば問題ありません。勇者システムはこれからも我らで運用いたしましょう。」


それを聞いてマリユカ様はニパーと笑った。

「それを聞いて安心しました。あれは長道が10年かけて考えたシステムですから、バンバン遊びましょう。」

「は!マリユカ様のお心のままに!」


そう、実は魔王を倒す勇者に力を与えていたのは、魔王だったメビウスさん本人だったのです。

皮肉に、自分でもジワる。

マリユカ様のお言葉を貰い、メビウスさんたちは嬉しそうに帰って行った。

やっぱり最高神に喜ばれるのは嬉しいんだな。


なんか感慨深い。

そんな事を思っていると、マリユカ様が僕の手を引っ張り微笑む。

「長道、次のシナリオはもう出来ているんですか?」

「ええ、出来ていますよ。次は悪役令嬢で佐山里美さんですね。」

その言葉に、マリユカ様はきょとんとしていた。

「なんで悪役になりたいんでしょうか?。」

「それは、本来なら悪役である悪役令嬢に生まれ変わった人が、なぜかヒロインよりも良い人になるっていうギャップを楽しむからです。悪役令嬢と言うジャンルは、その本来と違うところがミソですね。」

「ふーん、それは面白いんですか? ちょっとイメージできないです。」

「キャラ次第ですね。僕は悪役令嬢モノって好きでしたから、佐山さんには頑張って欲しいところです。」


そこで大天使の大豊姫さんに連れられて佐山里美さんが現れた。

高校生の制服を着た女性で、長い黒髪の美少女だ。

「佐山里美といいます。よろしくお願いします。」

爽やかかつ元気な挨拶をされた。


う、JKとか直視したら警察に捕まる。

いやココは異世界だからギリOKか。


「よろしくお願いします。僕は石田長道といいます。こっちの馬鹿っぽい女神様がマリユカ様・・・なのは知ってますよね。では説明をしますので、この資料を見てください。」

僕は前にヤスコーさんのために作った乙女ゲー攻略本を渡す。

折角なので流用してみた。


「そのノートはヒロイン用の攻略本です。その知識を生かして悪役令嬢として頑張ってください。」

すると佐山さんは食い入るようにノートを見だした。

そして悪役令嬢の説明ページのところで手が止まる。


あ、イラストが大炎姫さんのままだった。

まいっか。

でも一応補足はして見る。

「あ、そのイラストはイメージ図なので、姿は自由に出来ますよ。希望があれば出来るだけ細かく指示をお願いします。アバウトに説明するとマリユカ様が適当な仕事しますので。」


すると目を輝かせてこちらを見る。

「では、姿は私のままでお願いします。ただ髪の毛は縦ロールがいいです。あと公爵家の娘に変更して欲しいのですが・・・。」


そっか、悪役令嬢は公爵家でないといけないのか。

「分かりました、そこは手をうちましょう。ほかに何かありますか?」


すると不安そうな表情をする。

「あの、下界には誰か助けてくれる人は居るのですか?不安で・・・。」

「それは大丈夫ですよ。僕もナガミーチという名で下界で活動していますし、近くに大豊姫さんも居ます。さらにリタイアしたくなったら神殿か教会でマリユカ様に祈って伝えればいつでも日本に帰れます。ですので安心してください。」


すると佐山さんは安心した顔になり微笑んだ。

うわ、美少女。アイドル級じゃん。

なんでこんな可愛い子が異世界に召喚されたんだろう?

不思議だ。


そう思いながら、今回の運命設定ノートに希望の設定を書き足してマリユカ様に渡した。

あいかわらず、中身も見ないでマリユカ様は運命を設定する。

「では佐山里美は今より、サトミーと名乗り悪役令嬢として暴れてきてください!」


次の瞬間、光に包まれた佐山里美さんが消え去った。

がんばれJK。

こうして、新たな犠牲者がまた1人・・・。

お読みくださりありがとうございます。


ベルセック伯爵「大福大好きである」

マリア奥様「甘いモノばかり食べていますと病気になられますよ。」

ベルセック伯爵「大福のよさが分からぬとは可哀想に・・・うわ、いきなり爆発した。」

マリア奥様「は!わたくしのスキル<マリユカの贔屓>がマリユカ様のお怒りを感じています。」

ベルセック伯爵「うわ、口の中噛んじゃった。いて、足の小指を角にぶつけた。うわ、しゃがんだ瞬間ズボンが破れた。倒れそうになって手をついたら犬のウ○コに!・・・不幸だ・・・。」


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