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佐藤毅 その13 エピローグ

―佐藤毅 その13 エピローグ―


そうか、これから鉄さんと剣子とも一緒に暮らすのか。


だったら最初に言わないといけないな。

「剣子、これから一緒に暮らすにあたり、頼みがある」

『ちょ、マ。もう夜の事考えてるとか、エロすぎウケル。でも、好きにしていいよ。』

「ちがう。その言葉遣いの事だよ。じつは言っている意味が半分くらい分からないから、大人の言葉を使って欲しいんだ。」

『うわ、いきなりウチのアイデンティティーをフルボッコとかテンサゲ。・・・でもわかった。妻としてがんばるし。』

「妻じゃないしー、スマホだしー。」

『泣くぞ!』


あ、そういえばもう1つ確認しなくては。

「そういえば二人とも死んだと思ったけど、大丈夫だったんだな。嬉しかったけど、種明かしをしてくれ。」


すると腕時計の鉄さんが、ブルブル震える。

『よっしゃ、旦那にも分かりやすく教えますぜ。そもそも喋る武器はインテリジェンス・アーツというロストテクノロジーだ。それを長道の親父が独自の方法で再作成しちまったのよ。そこまでは予想つきますよな。』

「そうだな、長道さんが開発したって言うのは見当がついた。だから剣子の言葉を聞いたとき、長道さんの頭を心配したくらいだ。」

『ちょ、おま。まじ傷ついたし。』

『剣子、今は黙れ。話しを続けますぜ旦那。で、長道の親父が考えた方法がゴーレムの性質を持った武器に、スキルや魔法を持った人工精霊を入れてインテリジェンス・アーツにするって方法だったんでさ。親父曰く、ゴーレム武器と言うハードに精霊と言うアプリをインストールするんだそうですよ。』


なるほど。面白い考え方だ。

「さすがプログラマーだな。考え方が今風だ。」

『親父は天才ですからな。で、伝説の剣や鎧と言ったハードを失った俺達は人工精霊として契約を交わしたタケシーの旦那にくっついて来てたんですわ。で、ちょうど近くにゴーレムっぽいものがあったんで、そこに入り込んで今に至るってわけでさ。』


そっか。機械=ゴーレムか。

そう考えると長道さんがゴーレムと相性がいいのも納得が行く。

日本で暮らせば、沢山の便利ゴーレムに触れるわけだし。


そんな事を下を向いてボーっと考えていると。

誰かがコッチを見ている。

ん?


目を上げると、いきなりメイドが2人居た。

「うわ!誰ですかあなた達は?。」

「ちょ、いきなり冷たくなるとかダァ酷すぎね?」

「おうよ旦那、二年半も一緒に戦った仲じゃねーですか。」


うそ。ちょっと長道さん、サプライズにも程がありますよ。


目の前にはギャルっぽいメイドと、体が大きい大人の女性が居る。

話し方から察して、ギャッルっぽいのが剣子で、大人の女性が鉄さんのようだ。

剣子は少し肌が黒く、髪も脱色していていかにもギャル。

鉄さんは、メイド服を着ているけど、物腰は『美人大工棟梁』って感じ。


「ていうか・・・鉄さんは女性だったの?」

「おいおい、今更ですかい。『鉄美』の鉄って最初にいったじゃないですかい。」

「ごめん『鉄身』の鉄さんかと思ってた。」

「ま、女らしくないのは自覚ありやスがね。」


すると剣子が腕に抱きついてくる。

「ダァも長道パパの性格は知ってるっしょ。あの人は特別な理由がない限り、ゴーレムはメイド型しか作らないんよ。だから人工精霊も当然メイド安定っしょ。」


まいったな。

「メイドなら、とりあえずお茶とか入れてくれるの?」

「おうよまかせな。お茶といったら鉄さんってくらいですぜ。」


数分後。

お茶が美味しい。意外に細やかなんだな、鉄さんて。

そう思いながらテレビを見始める。

剣子と鉄さんもテレビが珍しいようで、食い入るように見始めた。

あ、ところでこの2人の姿は、私以外にも見えるのだろうか?

第三者から見たら、スマホはともかく、腕時計と話しているとかだったら嫌だろうな。


現実を怖くて確認できない。


そんな事を考えていたら、テレビで下らないバラエティーが始まった。

最近話題の皇族と結婚した冬洲宮(旧姓:大田)康子さんを、毒舌キャラのマツオデラックスが斬るとかなんとか。

くだらないな。

っていうか、皇族関連の人でもバラエティーにでるのか。時代を感じる。


さらに会場には、

今売れているアイドルの佐山里美さん、

人気マジシャンの玉置誠二、

奇跡の業績回復を行った倉田電機の社長の桐島達也さんがコメント役で出ている。


番組は意外に面白かった。

ニコやかにマツオデラックスの毒舌をいなす冬洲宮康子さん。

その対応にに苛立つように、マツオデラックスさんは口撃を繰り返す。

これはアレか?冬洲宮康子さんの上品さと人徳を浮き彫りにする番組か?


しばらく舌戦が繰り広げられたところで、マツオデラックスがいつものセリフを叫んだ。

『あんたたち女は、拙者の愛した長道さんの足元にも及ばないのよ。』


思わずお茶を噴出した。

「今気づいた!この人が時々う長道ってあの長道さんか?!」

同時に、テレビの向こうで出演者四人が同時に席から立ち上がって叫ぶ。

『『『『長道って!』』』』


次の瞬間、あの温厚な『ブス可愛い』と呼ばれる康子さんがキレてマツオデラックスに怒鳴りつけた。

『おまえ、あの松尾か!デルリカお姉様の無念を思い知れ!』

いうなり、瞬間移動のような速度でマツオデラックスに掴みかかり、一気に背負い投げを放った。

衝撃で、セットの床にマツオデラックスさんが突き刺さる。


そこで急にCMになった。

剣子が、油の切れた機械のようにキリキリとこっちを向く。

「ちょ、今の話に出てきた長道ってパパの可能性が微レア。」

「おちつけ、続きを見よう。」


CMが終わると、まったく普通に対談が再開される。

なんだったんだ、さっきのは。

するとまたマツオデラックスが『拙者の愛した長道さんの方が』というと、全員が『『『『長道って!』』』』と叫び、康子さんがニコやかにマツオデラックスを投げる。

そんなパターンが3回くらい繰り返されてるのをみて、あれはネタだったんだろうかという気になった。


まあいい。

3年前に天界でちょっと見ただけだけど、一目でわかった。

ヤスコーさん見つけた。


そこで剣子が急に私の腕に抱きつき耳にオデコをつけてくる。

「な、なに?どうした?。」

「ダァに、デルリカっちから電話来てウケル。ウチはスマホだから気にしないで話して欲しいわけ。」

すると剣子のオデコからデルリカさんの声が聞こえてきた。


『タケシー様、聞こえますか?』

「は、はいデルリカさん。あの、連絡が早いですね。驚きました。」

『ふふふ、こちらの仲間が全員無事だったことを伝えたかったもので急いで連絡しましたのよ。そちらはご無事でしょうか?。』

「はい、無事に自分の部屋に帰ってきました。あとヤスコーさんの所在もつかめそうですので、2~3日で接触してみます。」

『まあ!さすがタケシー様です。』

「いえ、偶然だったのですが・・・。」


『・・・・・』

「・・・・・」


『タケシー様』

「はい。」

『ワタクシ、タケシー様に謝罪を要求しますわ。』

「え、私は何かしてしまいましたか?!」

『はい、ワタクシを袖にされたではないですか。とても傷つきましてよ。』

「うっ、申し訳ありませんでした。本当に申し訳ありません。」


『せめてもうしばらくコチラにいてから戻っても良かったのではないのですか?』

「あ・・・・・しまった、それもそうでした。ですが、デルリカさんはミラーズ殿下とお似合いでしたので、これでよかったのではないでしょうか。」

『タケシー様の、そういう自信のなさがワタクシを不幸にいたしましたわ。』

「本当にスイマセンでした。」

『しょうがありませんから、ミラーズ殿下で我慢いたします。タケシー様に捨てられてしまったワタクシ、本当にかわいそうです』


「本当にスイマセン。ですが、私のドコがそんなに良かったのですか?。」

『一緒に居て苦痛でなく、一緒に進む事ができ、一緒に同じ事で笑えて、私の醜い部分もやさしく見つめてださいました。しかも3年一緒に暮らしても、自然体で仲良くしていられました。そんなお方が、タケシー様以外にいらっしゃるとは思えません。ですのに袖にされてしまい、ワタクシほんとうに不幸ですわ。』

「スイマセン・・・・・」


『・・・こちらこそ申し訳ありません、我がままを言いました。本当は分かっております。タケシー様がワタクシのために自己犠牲の精神でヤスコーのところに行ってくださった事を。わかっていはいるのです。それでも恨み言が言いたかったのです。浅ましい女でお恥ずかしい限りです。』

「いえ、こんな私にはもったいない恨み言でした。ありがとうございます。」

『ふふ、タケシー様には敵いませんわね。せめて友人として、ワタクシといつまでも友好を持ってくださいませね。』

「はい!是非!」


ここまで話てから、動物でも射殺せそうな目で中継している剣子に気づいて、すぐに電話を切る。

さらに鉄さんが母親のような優しい目で見ていたのにも気づき、恥ずかしかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


次の日。

ヤスコーさんが、山に登るという情報をWEBでゲットした。

驚くことに、その情報を見つけてきたのは剣子だ。

スマホのインテリジェンス・アーツとしてかなり力を発揮している。

スマホと相性がいいのはギャルだからだろうか。


電車で山のふもとまで来ると。<探査鑑定>でヤスコーさんを探す。

山を歩いている人の中に『冬洲宮康子』を簡単に見つけた。


こっちの世界に来たときに、かなりの数のスキルや呪文は失ったが、沢山使ったスキルや呪文は不思議と残っている。

魔法<身体強化>で一気に山を上り、冬洲宮康子さんを追う。


追いつくと、冬洲宮康子さんは、まるで遠い場所を懐かしむような顔で空を見上げていた。


「あの、もしかして昔、ヤスコーさんと呼ばれていませんでしたか?カイル君やマリア奥様というお名前に心当たりはありませんか?」


あえてテレビで叫んでいたデルリカさんの名前は言わなかった。

私の言葉に、凄い勢いでこちらを見る。

しかし、私が何者か判断できないのか、警戒した表情をしていた。

もう少し説明を足すか。


「あ、マリユカ宇宙の天界で少しお話したのですが、やっぱり覚えていませんよね。私は佐藤毅といいます。」

「え!マリユカ宇宙!」

康子さんは驚愕の表情になり、私の肩をつかむ。

「マリユカ宇宙のお仲間ですか?!もしかしたら私の憧れたデルリカお姉様の事をご存知なのですか!。」


よかった、話を聞いてもらえそうだ。

思わず笑みがこぼれてしまった。

「やっぱりあなたがヤスコーさんでしたか、よかった見つけることが出来て。長い話になりますので、細かいお話は頂上の休憩時にでも。」


いまは登山中だから、いつまでも足を止めては不自然だ。

すっと気配を消し、私は頂上に向かった。


しばらくして、山頂に着いたヤスコーさんが休憩で座ったので、木の陰から現れてみた。

「ヤスコーさん、お時間宜しいですか?」

「うわ、びっくりした。私に気配を感じさせないとはすごいですね。・・・あ、いえスイマセン。デルリカお姉様の事をご存知の佐藤さんの登場を心待ちにしておりましたよ。」


そして私は、ヤスコーさんが向こうの世界で消えた後のデルリカさんの話をした。

カイル君やマリア奥様やジャーニーさん達と一緒に魔王討伐に向った事も。

「アグレッシブすぎる、お姉様。でも魔王も、あの病んだお顔のお姉様が本気で向ってきたら怖かったでしょうね・・・・。」

「はい、凄まじかったですよ。」

「でも、お姉様がお元気に過ごされていたと聞いて安心できました。」

ヤスコーさんは、そうつぶやくとぽろりと涙をこぼす。


私はデルリカさん仕込の洗練された動きでハンカチを差し出して微笑んだ。

「私は勇者タケシーと名乗っていたのですが、私よりもカイル君の方が勇者のように扱われるし、デルリカさんは私なんかよりも勇猛でバーサーカーのように凄かったのですよ。最後の魔王の部屋では、どっちが魔王か分からないほどでした。」


「ふふ、お姉様らしい。カイルも成長したんですね。教えてくださり、ありがとうございました。とても安心できました。」

なんかヤスコーさんが満足して立ち上がろうとした。


ここまで話して、私は本題を忘れていたことに気づき、慌てた。

「まってください。ココからが本題です。私がヤスコーさんを探していたのには理由があります。デルリカさんの奮戦をお認めになられたマリユカ様が、デルリカさんにご褒美を与えたんです。ヤスコーさんと会話が出来る魔法をです。」

「え!お姉様とお話が出来るのですか!」

「はい、そのためにヤスコーさんに異世界通信用の魔法を渡す必要があり、私は日本に帰ってきました。これを吸収してください。」


私は日本に帰ったときに手に握っていた、宝石のような魔道具を渡す。

すると、宝石は大量の文字に分解され、ヤスコーさんの手に吸収された。


「あ、私の頭に新しい魔法の知識が突き刺さってくる。これは・・・本能的に分かります。長道印の新型魔法ですね。」


「ヤスコーさん、魔法の発動は大丈夫そうですか?」

「大丈夫です。い、今・・・・通信の術式を理解しました。通信のために人の居ない茂みに移動します。勇者タケシー様、このご恩は一生わすれません。」


ヤスコーさんが人目を避けるように草むらに入っていくの見て、私は、つぶやかずには居られなかった。


「デルリカさん、よかったですね」


離れたところでヤスコーさんの声がする。

<聞き耳>スキルがなければ聞こえないほどの声だ。

「お姉様・・・お姉様。聞こえますか?。勇者タケシー様から通信魔法を受け取りました。ヤスコーです。聞こえますか?」


『嘘・・・現実ですの?本当にヤスコーですか!ヤスコー、嬉しい!ヤスコー!』

「お姉様!聞こえるんですね、お姉様!お姉様!」

『ヤスコー、ワタクシのヤスコー!ごめんなさい、ワタクシのせいで!』


これ以上<聞き耳>するのはヤボだな。

私は、そっと下山をはじめる。


すると誰かが私の肩を抱いた。

「おわりやしたね、旦那。」

「鉄さん・・・。なんかやっと安心できたよ。複雑な気持ちで涙が出てきそうだ。」

「俺の胸で泣いても良いんですぜ。」

「・・・家でお願いします。」


すると、すれ違う人がこちらを見て『メイドと山登り?』と言いながら混乱していた。

どうやら、人工精霊のメイド姿は他人にも見えるらしい。


じゃあ、ここで泣いても大丈夫か。

鉄さんの肩に顔をうずめて少し泣いた。

自分でも何故泣いたのか分からない。

急にこの三年の思い出があふれ出てきて、ポロポロ涙が出る。


これで私の異次元の旅は終わったんだと思った。

お読みくださりありがとうございます。


タケシー「2人ともメイドなのに、私の事を旦那様って呼ばないんだな」

鉄美「はじめから呼んでるじゃねいですか、旦那って。」

剣子「そうだよ。ウチだってはじめからダァ(旦那様)って呼んでるっしょ。」

タケシー「くそ、そこは密かにメイド要素だったのか。って、わかるか!」

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