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佐藤毅 その12

―佐藤毅 その12―


おそらく、魔王の間には最強クラスの魔族が居るはずだ。

さっき見た限りでは12人居る。

それをどうにかしなくては。


私はそっと入り口を開けた。

すぐに、魔王はハッキリと私を見ている。

なるほど、さすがに魔王クラスが意識すれば、<モブ>は効かないか。

部屋の中を見渡す。


やはり12人の魔族が並んで待っていた。

すると魔王は足を組みながら見下すような笑みを浮かべる。

「そんなところで止まっていないで入ってきたらどうかね。この部屋では魔法も使えるぞ。まずは回復魔法の使用をオススメするな。」

いわれて、デルリカさん、カイル君、ミラーズ王子も部屋に入って来て、すぐに回復魔法を使う。

私は三人を守るように魔王との間に立つ。


多分、今がスキル<勇者爆弾>を使うチャンスだ。

舌を噛み切ろうとしたとき、回復がすんだデルリカさんが私の肩を叩く。

「タケシー様、もしかして<勇者爆弾>を使おうとされていませんか?」


驚いて振り返ってしまった。

「<勇者爆弾>の存在は秘密にしていたのに、何故それを・・・。」

「ワタクシのスキル<高等鑑定>の目は誤魔化せませんわ。今、タケシー様の<勇者爆弾>が赤く光りましたので、もしやと思いましたの。お願いですから私が生きている間は御使用を控えてくださいませ。タケシー様の死ぬ姿は見たくありませんの。」

「デルリカさん・・・」

「ですがワタクシが死んだら、後を追って<勇者爆弾>の使用をよろしくお願いいたしますね。」


そういって微笑むデルリカさんを見て、やっと実感が持てた。

私も、この人にとって仲間であったのだと。


すると魔王が手をたたく。

「はっはっは、良い茶番だ。招いた甲斐があるというものだ。では死に別れる悲しみのシーンも見せてもらいたいものだな。」

いうなり魔王の手に閃光がまとわりついた。

電気だ。多分アレは雷を使う魔法。

その雷の閃光はバチバチと大きくなり、光も増す。

かなりのエネルギーが圧縮されているのが分かる。

流石魔王の使う魔法は、今までとは桁が違う。


ヤバイな。あれは桁違いに強力だ。


私達は魔法障壁を展開した。

これで耐えられるとは思えない。

だが即死さえしなければ<勇者爆弾>もある。


「では死ね、人間どもよ」

魔王がその閃光をこちらに投げるように振りかぶった。

その時、

唐突に、冗談のような事が起きた。


どがあーーんという爆音と共に、魔王が爆発と共に上空に吹っ飛んだのだ。


え?


魔王の玉座が粉々になり、魔王が間抜けな姿でロケットのように飛び上がった姿は、ギャグ漫画クラスのシュールさだ。


魔王の部下もびっくりして上を見上げている。

吹っ飛んだ魔王は天井に突き刺さり、プラプラしていた。

ここで誰も事態を把握できない。

しかし、私は急激に思い出した。


そういえばナガミーチさんから預かったTNT火薬をどっかに置いてきたと。

どこだっけ?

うん、伝説の剣を見つけたときに、魔王の玉座の後ろにおいてきたままだった。

魔王が電気をバリバリ放電させたから、それで爆発したって事か。


うそー。


見上げていたら、よこで悲鳴が聞こえた。

見ると、私と同じようにポカーンと上を見ていた幹部が、デルリカさんとカイル君に斬り捨てられている。

周りを見ると、すでに2人で殆ど倒してしまっていた。

私は慌てて戦闘に参加して、一人斬れたがそれで敵の幹部は全滅であった。


あっけない。


なんか、最後の茶番からあっけなさすぎる。

魔王もまさか椅子の後ろに強力な爆弾があるとは思っていなかったよな、すいません。


「デルリカさん、よくあの意外な状況ですぐに動けましたね。」

「ええ、あれはタケシー様の攻撃だったのでしょ。ワタクシすぐにピンときましたの。ですからすぐに攻撃に入りました。さすがですわタケシー様。」

みるとカイル君も頷いている。


そうか、この2人はこの布石があったから、私が強気だったと思っているのか。

誤解をとかなきゃ。

「いえ、あれはナガミーチさんの用意した爆弾です。私は置いただけですので。」

その言葉に、カイル君もデルリカさんもニコニコに微笑む。

ちょっと恥ずかしい。


そこでミラーズ王子が叫んだ。

「タケシー危ない!」


え?

思ったときは遅かった。

天井の魔王から、あの凄い圧縮されたイカヅチの一撃が私に放たれたのだ。

油断した!

魔王にトドメを刺さないとか、馬鹿か私!

避けられなかった。


思考が加速する。

自分は死ぬんだと理解できた。

せめて最後に見たのが、デルリカさんとカイル君の笑顔でよかった。


そう思っていると、頭が割れるほどの大声が脳内に響く。

『諦めるな旦那!あんたは俺が守る!。鎧は主を守ってナンボだ。俺が砕けても旦那を守るぜ。旦那は情けないお人でしたが、そんな勇者様も結構好きでしたぜ。』


私の体が光に包まれ、ビキビキと鎧にひびが入る。

「鉄さん!無理するな。私はいいからカイル君の力になってくれ。彼は本物の勇者だ。」

『アホぬかさんでください。俺の勇者はタケシーの旦那だけでさあ。俺はここまでのようですが、どうにか命だけは繋いでくだあさい。旦那の事が、ほんと・・・好きだったぜ・・・・』


バリン


鎧が砕けた。

「鉄さーーーん」

だがそれでも魔王の一撃は止まらない。

今の防御でかなり弱まってきているが、それでも私にとっては耐えがたい攻撃だ。

すぐに魔法障壁を出したがあっという間にバリバリ砕ける。


「くそ、鉄さんが無駄死にになってしまう。。」

『ダァは、ウチが守るっしょ。』

ヤバイと思った時、左手から伝説の剣の剣子が飛び出してきた。

その柄を強く握る。


「剣子、大丈夫そうか?」

しかし、剣子の刀身にも見る見るヒビが入っていく。

『マ、最悪にテンサゲ。でもウチらラブラブじゃん。ラブでテンアゲしてダァにフォーリンラブの力見せてやるっしょ。』

「でもヒビが・・・。」

『いいの。だからウチのために叫んで欲しいわけよ。ウチらの愛の共同作業の合言葉シクヨロ。』


ビキ

 ビキ


どんどん剣子にひびが入る。

これ以上魔王の攻撃に耐えられないか。


情けない主ですまない。そしてありがとう、剣子。

ならせめて、叫ぼう。

「ターと剣子のラブラブビーム!!!!!」


ピンクの閃光が魔王の閃光を弾いた。

『超だいちゅき・・・』

しかしその衝撃で剣子は砕けてしまった。


「剣子ーーーーー!」

刀身が砕けた剣子の柄は手の中で、まるで砂のようにサラサラと落ちる。


くそおお。

拳を握った。

まだ天井にぶら下がっている魔王に、飛び上がる。

怒り

この怒りをどう表現して良いか分からない。

だから拳で表現するしかない。


「魔王!」

渾身の力で殴りつけた。

魔法とかスキルとか関係ない。

ただの怒りを。


魔王は吹き飛び、壁に跳ね返って床に向って落下する。


落下先には、病んだ顔のデルリカさんが待ち構えていた。

「ヤスコーのために死ね!!!」


落ちてきた魔王に向けて、デルリカさんは斧をフルスイングで振りぬく。

その一撃で、魔王は一瞬で爆発したように砕け散った。







そして場に静寂が訪れる。

終わったのか。

その場に立つ三人を見て、どこか虚しくなった。


「終わりましたわね。これで本当に。」

力が抜けた、虚しそうな顔のデルリカさんに、みなで頷く。


鉄さんと剣子は犠牲になったが、だからこそデルリカさんには微笑んで欲しい。

そんな、虚しそうな顔をしないでほしい。



すると、急に周りが水色に輝きだす。

今度は何だ?

ほんと魔王城に来てから展開が速すぎる。


魔法陣が床に現れ、そこに光の柱が立つ。

その柱が徐々に光を失うと、その中に女性が立っていた。

見事なプロポーションを白い服で包み、水色の髪の毛を持つ女性。

少し遅れてマリユカ様の後ろに、大天使・大空姫様と黒いローブを頭から被って顔を隠している男性が現れる。


その場に居た人間は、全員マリユカ様に平伏した。

「みな顔を上げなさい。究極聖狂デルリカよ、よくぞ私との契約を果たしました。ゆえにデルリカの願いをかなえましょう。」


すると後ろに控えていた黒いローブを着た男性がデルリカさんの手に宝石のようなものを押し込む。

するとその宝石は大量の文字のようになり、デルリカさんの手に吸い込まれて消えた。


「デルリカよ、それは他の世界の人間と話す事ができる魔法です。それと同じ魔法をヤスコーに渡せれば、通信が出来るでしょう。」

「本当で御座いますか!ではすぐにヤスコーと話しをしても宜しいでしょうか。」

嬉しそうに顔を上げるデルリカさん。


しかしマリユカ様は顔を横に振った。

「できません。」

「な、なぜでございましょうか。」

そう、なんでですか。


するとマリユカ様の隣の男性が口を開く。

「この魔法をヤスコーさんも持って居ないといけないからです。いちおうヤスコーさんが居る世界の神であるアマテラス様にお願いしますが、ヤスコーさんの手に渡るのがいつになるかは分かりません。神様は気が長いので、何年も待つことになると思います。運が悪いと忘れられて渡してもらえないこともあります。」


そういわれてデルリカさんは落ち込むかと思った。

でも嬉しそうにしていた。


「ヤスコーは生きているのですね。そして待てば声が聞けるかもしれないと?素晴らしいです。よかった・・・ヤスコーに謝る事ができる可能性がある。その希望を胸に持てばワタクシは生きていけます。」


カイル君も嬉しそうにデルリカさんと手を取り合っている。

そしてデルリカさんは私を見た。

「タケシー様、本当にありがとう御座いました。タケシー様が来てくださったお陰で、やっと夢が叶います。本当に、本当にありがとうございます。ワタクシ、タケシー様がワタクシにどんなお願いをしてきても必ずそのお願いをかなえて差し上げますわ。なんでもワタクシにおっしゃってくださいね。」


それを聞いて、向こうでミラーズ王子がぎょっとしていた。

結婚を申し込んだら、受けてくれそうな勢いだものな。


だが、私は彼女を幸せにする自信がない。

もう、これ以上の幸せの想像ができない私に、デルリカさんを幸せに出来るわけがないのだ。

だから、私は私に相応な願いをしてみた。

「では、その通信仲間に私も入れてください。」

デルリカさんはきょとんとしていた。


そして私はマリユカ様にお願いをする。

「マリユカ様、私が願いをリタイアすれば元の世界に帰ることが出来ると聞いております。ヤスコーさんに通信の魔法を届けるために、私を元の世界に返してください。」


すると、必死な形相のデルリカさんが私の腕を掴んだ。

「タケシー様、ワタクシの思い上がりでなければ、ワタクシに結婚を申し出てくださるものと思っておりました。元の世界に帰られてしまうのですか?どうして?」


ああ、デルリカさんにそのつもりがあったのか。

惜しい事をしたな。

「私が行けばヤスコーさんに確実に通信魔法を渡せます。一ヶ月以内に必ず見つけ出して渡してきましょう。私は最後まで貴女の勇者で居たいのです。」

「タケシー様・・・。」


その様子を見ていたマリユカ様がニパーと笑う。

「ではタケシーを元の世界に返しましょう。みなに祝福を!」


その声と共に私の体が光りだす。

3年間、幸せだった。

元の世界に帰ったら、なんでも出来る気がする。

このデルリカサンとの思い出さえあれば。


するとデルリカさんは私に抱きついてきた。

「ありがとうございます、ワタクシの勇者様。きっとワタクシは一生あなたを忘れません。」

そういうと、私に唇を重ねてきた。


え?キス?

K・I・S・S

キス?


うおおおお。デルリカさんとキス!!!

くああああああああああああああ

くあああああああああああああああああああ

ぐああああああああああああああああああああああ


『おおお、ヒューヒュー。この色男め。では帰っておいで。おっけーね。』


最後に不思議な女性の声が聞こえた後、一瞬意識が飛んだ。

気がつくと、私は自分の部屋でテレビを見ていた。

そうだ、私は向こうに行く直前は、卒業間際の大学生だったんだ。

もしかして、今のは夢だったんだろうか。

そうだよね、

勇者になって、魔王を倒して、美女にキスしてもらうなんて。

夢以外で何だって言うんだ。


そう思っていると、自分が右手に何かを掴んでいるのに気がついた。

開いてみると、宝石のようなものだった。

これは・・・まさか・・・・


すると、腕時計から声がした。

『旦那、デルリカ姐さんを諦めるとか、男だねー。』

スマホからも声がする。

『やっぱダァがウチを選ぶのはトリマ安定っしょ。浮気はマジありえねーっし。』


「鉄さん、剣子・・・一緒にコッチに来たのか・・・。」


窓の外の空を見上げた。

人生は思ったよりも素晴らしいかもしれない。

お読みくださりありがとうございます。

次回、佐藤タケシー勇者編・エピローグ。

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