佐藤毅 その11
前回分、間違えて修正前のものを張っていました。
もうしわけありません。微調整ですが張り替えました。2016/4/11 19:07
―佐藤毅 その11―
大空さんを置いて少し走ると、ナガミーチさんが急に叫んだ。
「みんな止まって!この廊下は怪しい。僕が先導しますから慌てないでついてきて下さい。」
ナガミーチさんは壁や床を調べながらユックリ進み、なにかスイッチを見つけたのかそれを解除する。
すると、少し先で壁から槍が突き出してきた。
「まだまだありそうです、僕の後ろをついてきて下さい。」
ギロチン、毒矢、釣り天井、襲ってくる巨大な丸い石など、次々に罠を解除していく。
そして、廊下の端まで来てナガミーチさんは、汗をたらして振り返る。
「多分、この先にもう1つくらい罠があると思うんですが、どうにもわからない。ですから僕が走り抜けますので、僕の足を着いた場所を良く見ていてください。」
さすがにそれは危ない。
「ナガミーチさん、大丈夫ですよね。これもナガミーチさんの予定通りなんですよね。」
すると、汗をたらしたまま微笑んだ。
「僕、これが終わったら、マリーちゃんにプロポーズするんだ。」
「まあ素敵」
デルリカさん!いまはそこスルーしてください。
「ナガミーチさん、なんでここで死亡フラグ突っ込んでくるんですか!大丈夫ですよね。」
私の質問に答えずナガミーチさんは微笑むと、前に向って走り出した。
しかし、その瞬間床がいきなり消失する。
「しまった!落とし穴か!!!」
叫びながらナガミーチさんが落下する。
私は飛び込むように急いで手を伸ばしたが、ナガミーチさんは・・・
サムズアップしながら良い笑顔で落ちていった。
あああ、これ大丈夫なパターンだ。
でもデルリカさんやカイル君は、半狂乱にナガミーチさんの名を叫ぶ。
あんなチートさんのために悲しまないでください。
「大丈夫ですよ、ナガミチートさんを信じましょう。今は先に進む事が大事です。」
そういって手を伸ばしたら、デルリカさんが泣いていた。
えええ、ナガミーチさんに泣くとか、ど、ど、どういうこと?
「あ、あの・・・・ナガミーチさんの事、好きだったんですか?」
すると、一瞬驚いた顔をしたデルリカさんは、涙をこぼしながら無理やり微笑んでくれた。
「14年も頼ってきましたから家族同然です。ヤスコーやワタクシにとっては兄のような人ですし。そうですね、ナガミーチは何でも解決してくれる人ですもの。落とし穴に落ちた程度の問題は自分で解決できますよね。どうせマリーが呼べばひょっこり現れます。今は信じて進みましょう。」
そういって涙を拭きながら立ち上がった。
これは信頼だ。
私が最も欲しくて手に入れられなかった物を見た。
羨ましい。
この戦いが終わったら、私もデルリカさんに信頼されるだろうか。
落とし穴をジャンプで越えて先に進むと、そこは玉座の魔の入り口があるはず。
私は慎重に進んだ。
すると・・・
玉座の間の前には、いかにも強そうな人型の魔族が大量に待っていた。
「ここまで来るとは人間にしては大したモノよ。しかし、ここがお前達の墓場だ。300人の上位魔族を相手に、たった3人でどこまで戦えるかな。」
いわれてデルリカさんは周りをキョロキョロする。
魔族は僕らを見て3人と言った。
でもココに着いたパーティー仲間は4人。
デルリカさんの横にはカイル君とミラーズ王子がいる。
では私は?
いまデルリカさんを迎え撃つために集まった魔族300人の中にいます。
私はこの3年で、私に合った戦い方を身につけた。
敵の中にまぎれて後ろから殺す。
卑怯といいたければ言えばいい。
デルリカさんが勝てばいいのだよ。
先頭の魔族が演説している間に、私は短剣でコツコツ魔族を刺し殺している。
延々先頭の魔族の演説が続いたため、私は100人近い魔族を殺せた。
どうよ、これが<モブ>の力だ。
そのあたりで流石に戦闘が始まってしまった。
「この人間どもを挽肉に変えてやれ!」
くそ、もうちょっとお話してろよ。
私も急いで大剣に持ち替えて、魔族たちを後ろから倒す。
今私は魔賊軍側に居るので、デルリカさんのお顔が良く見える。
魔族側の視点で見るから分かるが、デルリカさんはやっぱり怖い。
すごい病んだ笑顔で、魔族の返り血を受けながら斧を振り回す。
相手が攻撃魔法を唱えても手で軽く弾きかえすし、防御魔法で防御されても魔法障壁を理不尽に斧で叩き壊す。
「死ね!死ね!死ね!ヤスコーのために死ね!」
上位魔族の首が、野に生えたタンポポのように軽々刈り取られていく。その様は異常としか言いようがない。
上位魔族一体で、国の精鋭1000人を葬ると噂されている。
でも今は、デルリカさんに蹂躙されているので、噂は信用できないかもしれない。
ミラーズ王子ですら一対一なら戦えているし、やっぱり噂の方が嘘だな。
あっというまに、演説をしていた魔族以外は全滅してしまった。
「ば、ばかな。人間にこんな力があるわけがない・・・。」
呆然としているところを、私が後ろから真っ二つに切り裂いた。
あたり一面の死体から流れる血の匂いで、吐きそうだ。
でももう一頑張り。
デルリカさんに駆け寄ろうとした。
そのとき、血の海にデルリカさんがベチャリと倒れた。
「デルリカさん!」
慌てて駆け寄って抱き起こすと、デルリカさんの胸やお腹には大きな傷があった。
返り血かと思っていたデルリカさんの顔の血も、頭から流れている。
あわてて<回復>の魔法をかけようとした。
しかし発動しない。
グッタリしたデルリカさんが私の腕の中で眉を下げる。
「気づかれましたか?このエリアは魔法が使えないようです。最後にこんなトラップがあるとは思いませんでした。」
そういうと、斧を杖にしてブルブル震えながら立ち上がろうとする。
「立ちあがらないでください!後退して回復しましょう。」
でもデルリカさんは気力で立ち上がった。
血だらけで立ち上がり、仁王立ちで魔王の玉座への扉を睨む。
「行きましょう。扉の向こうならエリアが変わるので魔法が使えるはずです。この扉の先には強敵が居て、回復をするヒマもないかもしれません。ですが、退くことだけはできません。」
デルリカさんは疲れてしゃがんでいるカイル君を見た。
「カイル、ワタクシが死んだらマリユカ様への殉職として扱ってください。それで必ずヤスコーの安否を確かめてください。」
「はいお姉様。ですがお姉様が死んではヤスコーお姉様が悲しみます。無理はしないでください。」
「ふふ、そうですね。一言ヤスコーに謝るまでは死ねませんものね。」
そして斧を杖にブルブルしながら、病んだ笑顔で玉座の間をにらんだ。
美しい。
この世にコレほど美しい姿があるだろうか。
たしかにボロボロかもしれない。
血みどろで、髪も返り血でブロンドが台無しだ。
良く見ると、顔も痣ができていて青くなっている。
でも美しい。
その立ち姿を見て、そうとしか思えなかった。
社交界の華のデルリカさんも美しいが、この人の本当の美しさはこの病むほど真っ直ぐ誰かを見つめる強さではないだろうか。
この人の希望をかなえてあげたい。
私は、覚悟を決めた。
「デルリカさん、まず私が入り盾になります。その隙にこの部屋の中に入り回復してから戦ってください。」
「ですが・・・。」
なにか言おうとしたデルリカさんを無視するように私は扉を開けた。
今デルリカさんの言葉を聞いたら決意が鈍る。
待っていてください、この部屋にいる魔王以外を全滅させますから。
そう、私には究極奥義がある。
おそらく、今こそ使うときなのだ
「勇者爆弾」を。
お読みくださりありがとう御座います。
ナガミーチ「説明しよう。勇者爆弾とは自らの命とひきかえに敵を殺す必殺技だ」
タケシー「あの、これ痛いですか?。」
ナガミーチ「さあ、使った人はみんな死んでるから分からないです。」




