佐藤毅 その5
―佐藤毅 その5―
レベルがアップしたので、スキルや呪文を把握する作業をしていた。
スキルと呪文は予想していたが、武技というものも思った以上に便利だ。
相手の動きに合わせて次に動くべき動作が頭に浮かんでくる。
私の隣で、ジャーニーさんが何故か中国拳法みたいな動きを見せていた。
蛇拳にみえる。
「ジャーニーさん、その武術は元から身につけていたんですか?」
・・・・・
話しかけたが返事が無い。
無視された?それとも練習に集中していて返事したくない?
肩を叩きながらもう一度声を掛けてみる。
「あの、ジャーニーさん・・」
「うわっ!あ、タケシー様、いつのまにこんな近くに来たんだい?」
「いえ、ずっと隣で剣の練習をしていましたよ。」
「え、本当かい?全然気づかなかったよ。静かっだたからさ。はははは。」
「まあ、良く気配が薄いって言われます。それより今練習していたのって蛇拳ではないですか?」
するとジャーニーさんは嬉しそうに私に腕を組んできた。
うわ、当たってる。ありがとうございます。
「そうなのさ、戦いが終わったらいきなり『ぴろりろりーん』って音が鳴って『魔道戦士ジャーニーのレベルが1になった。』って感じの声がして、レベル11とかになったんだよ。そしたらこの動きが頭に浮かんできたのさ。これってやっぱり勇者様パーティーに入ったことによる祝福だよね。」
どうやらジャーニーさんもレベルアップしたようだ。
「あ、でしたら目をつぶって自分の手を見ください。目をつぶることで自分のステータスが見えるので。右手が自分のステータスで、左手が説明です。」
ジャーニーさんは私の腕に抱きついたまま目をつぶり手を顔の前に移動させた。
「ああ、ほんとうだ。すごいね。さっきのあたしの武術は蛇拳っていうんだね。へー。」
そこでもしかしてと思い、私は鑑定の呪文を使ってみた。
ジャーニー 女 27歳
魔道戦士
スキル:<聞き耳><挑発><尋問><人形遣い>
呪文:<爆裂><電撃><スリップ><金縛り>
武技:<蛇拳1><蛇剣1><鞭術1><針技1>
なんか私より強そう。
いきなり戦士の上位職の魔道戦士なのか。
「ところでタケシー様はどんな能力を得たんだい。」
上目遣いに擦り寄るジャーニーさん、エロすぎる。
なんでも言う事聞きたくなりそう。
ふう、デルリカさんに会った事がなければ、即落ちだったな。
「私は凄く普通ですよ。武技は<剣術1><居合い1><弓1><手裏剣1>と、普通です。呪文も<回復><カマイタチ><影分身><幻聴>と特色ないですし。」
「スキルは?」
素直に言おうと思ったが、<勇者爆弾>は秘密にした方がいいかもしれないと思い、そこは内緒にすることにした。
「スキルは<モブ><探索><鑑定>と、特色ありません。」
「そうかな、万能そうだけどねえ。ところで<モブ>ってスキルはなんなんですか?」
言われて気になったので目をつぶって左手を見る。
右手でスマホをいじる要領で左手のヘルプを操作して調べた。
『スキル<モブ>。漫画のモブのような扱いを受けるスキル。』
「・・・・目立たなくなるようなものだろうか?使えるのかなこれ。っていうか特徴がなくて気配の薄い私への嫌がらせにしか思えないな。」
ジャーニーさんも良く分からないという表情をしていた。
「言っちゃ悪いけど、勇者様のスキルとしては役に立ちそうにないねー。」
微妙な空気が流れた。
すると私の<探索>が、遠くから人力車が二台近づいてくるのを察知する。
うわ、このスキル便利だな。
そして慌ててジャーニーさんに離れてもらった。
デルリカさんに見られて誤解されたら困る。
しばらく待つとデルリカさんたちが竜車に現れた。
「ただ今もどりました。」
「みなさん、おかえりなさい。お城のほうはどうでしたか?。」
「そのことなのですが・・・少し厄介な事になりました。」
何があったのだろう?
その後、女性車両の方の竜車にみんな呼ばれた。
ジャーニーさんがお茶を入れてくれると、マリア奥様が困った雰囲気で話し出す。
「じつは、究極淑女とよばれる社交界の華を、魔王討伐に行かせるわけにはいかないと、猛反発をうけてしまいました。
それでもデルリカが止める者を全員倒してでも行くといって譲らなかったため、重鎮のハルベリー公爵より代案が出されまして、明日わたくし達の護衛の選抜をするとおっしゃられたのです。
現在わたくしたちのパーティーは8人ですが、マリーやジャーニーは足手まといになるだろうから追い出して、選抜された四人をパーティーに入れるという話になりました。」
とうぜんジャーニーさんは怒った。
「冗談じゃないですよ奥様!ヤスコー様への思い入れのない奴と交代させられるなんて冗談じゃないねー。」
するとデルリカさんが微笑んでジャーニーさんの手をとる。
「もちろんですわ。ワタクシもヤスコーへの想いを持たない者と仲間になる気はありません。ワタクシ達はこのメンバーで行きます。ですから・・・・・。」
マリア奥様とデルリカさんはナガミーチさんを見た。
「「ナガミーチ、どうにかしてください。」」
みごとにハモった。
苦虫を噛み潰したような顔のナガミーチさんは、ユックリお茶を飲んでお2人を見る。
「もう、僕を何だと思っているんですか。過大評価で頼られてもこまるんですけど。
でもあえて考えるなら、明日は選抜の場に乗り込んで、みんなで参加者をブチのめすとかどうでしょうか?
このパーティーの強さを思い知らせれば、みなグーの音も出なくなると思いますよ。」
デルリカさんが急に怖い顔で微笑み、そばにあった斧を握る。
「それは名案ですわ。まずナガミーチが大魔法で奴らを吹き飛ばし、それでも生きていたものをワタクシ達が個別に始末いたしましょう。」
するとナガミーチさんがデルリカさんから、自然な動作で斧を取り上げた。
なんかナガミーチさん、慣れてるな。
「まあ落ち着いてください。。一応、勇者システムをパーティー全体に適用するように手を打っておいたんで、戦えば皆さんもすぐにレベルアップできると思います。
ちょうど良いんで、連中を倒してみんなでレベルアップしましょう。さっき盗賊が襲ってきたんですが、それを撃退したんで、タケシーさんとジャーニーさんはレベル11になったんですよ。」
ジャーニーさんは嬉しそうに私に金縛りをかける。
ちょ、なんで私。
「見てください、あたしも充分戦力さ。魔道戦士っていう称号も頂いたんだ。レベルが上がると女性の声で『レベルが上がりました』って聞こえるから、すぐ分かりますよ。」
その言葉に一番反応したのはマリア奥様だった。
「ナガミーチ、わたくしたちもレベルというのが上がるのでしたら、明日までに上げておきたいのですが、手はありますか?。」
「そうですねー。タケシーさんが<探索>のスキルを持っていますから、それで強い魔物か盗賊を探して、みんなで倒すとかでもいいと思います。とにかくパーティーとして参加していれば経験値は手に入りますから。頑張れば明日までに充分な戦闘力が手に入ると思いますよ。」
「では、食事をしてすぐに参りましょう。」
みな大急ぎで食事をすますと、装備を整えて出発した。
竜車に留守番は必要ないのか?と思ったがドラゴンゴーレムを警備モードにしておくので問題ないそうだ。
私は<探索>に全神経を集中させる。
すると脳内にマップが表示された。
マップに表示されている赤い点が敵らしい、30分ほど歩けばたどり着けそうな所に大きな魔物を発見。
そこからさらに15分くらい離れた森の中に、赤い点で表示される人が集まっている場所がある。
そのことを伝えると、ナガミーチさんはまず人の集団を先に襲うことを提案してくる。
弱い固体を倒してレベルを上げてから、大物と戦うほうがいいという判断のようだ。
さすがナガミーチさん、良い判断だ。
あまり徒歩に慣れていない、マリア奥様とデルリカさんは、すぐにバテたようだが、休憩を提案しても断ってきた。
気合が凄い。
せめて気休めに回復呪文でお2人の体力を回復させると、シャキンと元気になった。
凄い効果。魔法ってすごい。
盗賊の集落と思われる場所に着くと、まずは私が隠れて鑑定で確認する。
全員のジョブが<盗賊>だった。
問題ないようだ。
そこでナガミーチさんが手榴弾のようなものを出した。
閃光弾らしい。
凄い光と、滅茶苦茶大きな音が出るらしく、これを放り込んでから戦闘に入るように指示された。
万が一味方に誤爆しても、これなら命は落とさないという事かな。
私達は盗賊が居ると思われる建物に近づく。
閃光弾を放り込む役目は、カイル君に任された。
女性に物を投げさせると、ちゃんと飛ばないで危ないからという配慮だ。
静かに入り口近くにみんな配置すると、カイル君が閃光弾を窓から建物に投げ込んだ。
私達は耳を押さえて目をつぶる。
数秒後。
ぴいいいいいいいい。
耳を押さえているのに頭が痛くなりそうな大きな音が鳴り響き、目をつぶってるのに、瞼の裏の光景が真っ白になるほどの閃光が光る。
光が消えると共に音も消えた。
「突撃!」
ナガミーチさんが号令を出したが、まだ少し上手く聞き取れない。
だが全員勢い良く飛び込んだ。
建物に入ると、盗賊たちは目や耳を押さえて転げまわっている。
その倒れた相手にデルリカさんは容赦なく斧を振り下ろしていく。
だが殺さない。殺さずに、全員の足を斬り落とす。
次にカイル君が飛びつき腹を刺す。
だがまだ殺さない。
マリア奥様も剣を振り下ろして肩口を刺す。
ジャーニーさんも一突きしたところで、私がトドメを刺す。
まったく残酷な流れ作業だが、これで全員に高い経験値が得られるはずだ。
建物の中には40人ほどいたが、あっという間にケリがついた。
閃光弾の影響を受けない場所に居た連中は、ナガミーチさんと大空さんが倒したようだ。
全員倒すと、またあの音がきこえた。
ぴろりろりーん
全員レベルが上がったようだ。
私は勇者レベル15
ジャーニーさんは魔道戦士レベル15
マリア奥様は聖導師レベル11
カイル君は勇者候補レベル11
デルリカさんは聖狂戦士レベル11
ナガミーチさんはマリユカ様の遊び相手レベル11
大空さんは大天使レベル11
マリーちゃんがマリユカもどきレベル11
カイル君の勇者候補レベル11も驚いたけど・・・・
ナガミーチさんや大空さんは、もっとジョブに捻りを入れましょうよ。
なによりマリーちゃん、マリユカもどきって何?
もう天界組みは意味が分からないな。
しかし、誰もそこに疑問を持たないのがこのパーティーの恐ろしいところだ。
すんなり受け入れられた。
そして嬉々としてデルリカさんが叫ぶ。
「さあ、次は大型の魔物を倒しに行きましょう。」
だれも疲れていないようだ。
どうやらレベルが上がると、体力が全回復するらしい。
魔物に向けて歩く道のりは、盗賊の根城に行くとき以上に過酷だった。
だが今は誰も疲れた素振りを見せてこない。
レベルが上がって体力があがったためだろう。
魔物の巣まで来て、私は後悔した。
そっと魔物を鑑定したら
下級地龍・レベル21相当
無理無理。
体長も15メートルくらいあるし。
あれ無理でしょ。
これはやめようと説得しようと振り返ると、デルリカさんはナガミーチさんから閃光弾を受け取っていた。
「さ、タケシー様準備は宜しくて?ワタクシが最初に突撃しますので、ついていらしてくださいね。」
ニコやかに微笑むデルリカさん。
あ、、これ絶対ヤル気だ。
デルリカさんは迷いなく閃光弾のピンを抜いた。
「みなさん、いきますわよ。目と耳をふさいでください。」
デルリカさんが閃光弾を投げると同時に、みんな慌てて目をそらして耳をふさぐ。
数秒後、また大音量の音と光があたりを包んだ。
音と光がなくなると同時に、デルリカサンが飛ぶ。
飛び出すというのではなく、本当に飛んだのだ。
宙を飛ぶ姿は、まるで天使のようだった。
デルリカさんがおりる場所では地龍がひっくり返って苦しんでいる。
その地龍にデルリカさんの斧が振り下ろされた。
大きく切り裂かれた地龍の腹から吹き出す血でデルリカさんは真っ赤になる。
そのまま、また飛び上がり地龍の尻尾を切り落とした。
「さあ、みなさんも急いでください。」
言われて私も慌てて飛び出し、呪文<カマイタチ>を打ち込んで前足を1本切り落とした。
それに習うように、みんな自分が持つ攻撃呪文をぶち込む。
あっというまに地龍がボロボロになった。
トドメはデルリカさんの斧の一振りだった。
その斧の一撃は地龍の眉間を撃ち抜き、生命活動を停止させる。
ぴろりろりーん
私とジャーニーさんはレベル17に。
他の人たちはレベル15になった。
実質、地龍はデルリカさんだけいれば倒せた気がする。
デルリカさんさえいれば、勇者は要らないんじゃないだろうか?
まあ、そこは考えたら負けだ。気にしないようにしよう。
ナガミーチさんがこのくらいレベルが上がれば十分でしょうと言ってくれたので、今日のレベルアップはこれで終了。
そのとき、『レベルがあがった。』ていうのはマリユカ様の声だとナガミーチさんが教えてくれたら、マリア奥様が、もういっかい聞きたいからもっとレベルアップしたいと駄々こねてきたのは参った。
でも、『明日、相手を沢山倒せばまた聞けますから』とナガミーチさんがなだめて、事なきを得た。
デルリカさんの話では、あすは貴族の子息が沢山来るだろうという話だった。
私はその子息達に同情してしまう。
あの恐ろしい表情のデルリカさんと、やるき満々のマリア奥様が敵なのだから。
そうだ、鑑定でみんなのステータスを調べてみるか。
見てみると、バランスの良いパーティーに見える。
・・・あれ、やっぱり私が一番しょぼい。
少し悲しくなった。
タケシー 勇者 男 22歳
スキル <勇者爆弾><超モブ><探索鑑定><幸運>
呪文 <超回復><カマイタチ><物理分身><幻聴><思念通信>
武技 <剣術2><居合い2><弓1><手裏剣2><気合5>
ジャーニー 女 27歳
魔道戦士
スキル:<聞き耳><挑発><尋問><複数人形遣い>
呪文:<爆裂><電撃><スリップ><金縛り><閃光>
武技:<蛇拳2><蛇剣2><鞭術1><針技1>
マリア・ベルセック 女 42歳
聖導師
スキル:<マリユカの贔屓><スキル攻撃抵抗><攻撃呪文抵抗><複数人形遣い>
呪文:<超回復><範囲回復><浄化><光の飛剣><防御壁>
武技:<薙刀1><弓1><ヤスコー1>
カイル・ベルセック 男 9歳
勇者候補
スキル:<索敵><鑑定><威圧><空間収納>
呪文:<回復><電撃><飛翔><転移>
武技:<ヤスコー1><剣10><槍10><気合10>
デルリカ・ベルセック 女 25歳
聖狂戦士
スキル:<マリユカの贔屓><狂気><威圧><魅了><剛力><ブースト><尋問><探索><鑑定><挑発><人形遣い><攻撃スキル抵抗><攻撃呪文抵抗><幸運><超加速><空間収納><記憶>
呪文:<超回復><範囲回復><浄化><飛翔><落とし穴><スリップ><植物操作><金縛り><時間操作><閃光><衝撃波><身体強化><防御壁><解毒><呪文相殺><大爆裂><麻痺><眠り><魔道鎧><転移>
武技:<斧100><ヤスコー10><魔道斬り5><気合100>
お読みくださりありがとうございます。
ナガミーチ「マリユカ様、僕のジョブがひどいことに・・・。」
大空「マリユカ様、それがしのジョブもちょっと・・・。」
マリー「ふっふっふ、カッコイイネーミングでしょ。さすが私です。」
大空・ナガミーチ『いえない、センスがなかったとは言えない。』




