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佐藤毅 その2

―佐藤毅 その2―


デルリカさんと一緒に居たかったのでしばらく滞在したいと言ったが、一緒に旅にいくなら滞在する意味は無い。

だが一応、剣士の先生には会っておこうと思う。

そこでデルリカさんに案内されて大空さんという剣士を見て愕然としてしまった。

この人、天界で案内してくれた大天使の大空姫様では?


あのガラスのような羽はないが、黒髪ポニーテールで美しい女性だ。忘れるわけもない。

身長は170以上ありそうだが、スレンダーな体がモデルのようだ。

デルリカさんの女神のような美しさとは違う、凛とした美しさの女性である。

まあ、長道さんがコッチに居たんだから不思議ではないか。


おそらく剣士を名乗っているという事は、大天使であることは隠しているだろうから、そこは触れないほうがいいと判断する。


それを差し引いても、大空さんの周りが凄かった。

10人以上のメイドさんが剣を振っていた。

これがファンタジーか・・・ファンタジーを舐めていたかもしれない。


するとデルリカさんが慌てて走りよる。

「あなた達、何をしているのですか、まさかあなた達も戦うつもりではありませんよね。」

すると、一番年齢が高そうなメイドさんが地面に剣を置き礼をする。

「デルリカお嬢様、私たち使用人にとりましても、ヤスコーお嬢様は掛けがえのない存在でございました。この命でお役に立てるのであれば、是非協力をさせてくださいませ。」

すると、その場に居た10人以上のメイドが、同じように剣を地面に置き「是非私をお供に」「私にもヤスコーお嬢様のために何かさせてください」と口々に叫ぶ。


デルリカさんは目に涙を浮かべながらメイドたちに駆け寄り、手当たり次第に抱きついた。

「みんなありがとう、ありがとう。本当にありがとう。ヤスコーをそこまで想ってくれていて、ワタクシも心の底から嬉しく思います。どうかその想いを胸に、ワタクシ達が帰ってくるこのお屋敷を守っていてください。」


なんだこの光景は。

メイドが、仕えるお屋敷のお嬢様のために命を懸けるのか。

すごい胸が熱くなる光景だ。


「この世界のメイドはこんなに忠誠心が厚いのか・・・。」

すると隣にいたカイル君が首を横に振る。

「そんなメイド、このお屋敷くらいにしか居ませんよ。それだけヤスコーお姉様がみんなに愛されていたんです。優しくて、強くて、賢くて、大きな人だったんです。」


・・・美しいは無いのか?


すると今度は、えらく艶っぽい女性がやってきた。

「デルリカお嬢様、ここにいたんだね。ヤスコーお嬢様を探す手がかりを得るために魔王討伐に行くそうじゃないの。だったら私も連れて行ってくださいな。ヤスコーお嬢様のためなら、この命もおしくはないさ。」


「ジャーニーさん、あなたまで・・・。う、う、う、ヤスコーは本当に幸せモノですね。」

デルリカさんは泣き出してしまった。

すると横から長道さんが説明してくれる。

「ジャーニーさんは旦那様の愛人で、カイル君のお母さんです。お屋敷に来たばっかりの時にヤスコーさんに優しくしてもらったことを未だに恩に感じているんです。」


さらに一際綺麗な淑女が大きな箱を背負ってやってきた。

「わたくしの方は準備できました。いつでも出発できますわ。」

また長道さんがそっと耳打ちしてくる。

「あちらがこのお屋敷の奥様でマリア奥様です。ヤスコーさんも愛人の子なのですが、我が子のように可愛がって育てた人です。」


きけば聞くほどヤスコーさんを助けに行く筋合いのない人たちが、ヤル気満々だ。

そっと長道さんに聞き返す。


「ヤスコーさんて、どんな人だったんですか?」

「天界で会ってますよ。佐藤さんの前に地上に降りた大田康子さんです。あの柔道選手の。」

「あ、あの・・・・。きっと素晴らしい人柄だったんですね。」

「はい、でも決してヤスコーさんの容姿に関しては触れてはダメですよ、デルリカさんが斧振り回してブチ切れますから。デルリカさんにとっては世界で一番可愛い最愛の妹なので。」


おおお斧?・・・先に聞けてよかった。


「重要情報感謝します。」

私は心の底から長道さんに感謝しつつ事の成り行きを眺めた。


結局、ジャーニーさんは来ることになったが、メイドさんたちはここに残るようだ。

でもあのジャーニーさんて強いのか?

ぼーっとジャーニーさんを見ながら考えていたら、淑女を絵に書いたような美人、マリア奥様が私に挨拶をしてきた。

「初めまして、勇者の卵様。わたくしは当家の女主人でマリアと申します。我が娘のために異世界よりお越しいただいてのご助力、まことに感謝申しあげます。」


綺麗な礼だった。

貴族は素晴らしいな。全てが美しい。

せっかく異世界に来たんだ、私もこの美しい所作を身につけたいものだ。

「初めまして、私はタケシーと申します。貴族の方の礼儀などを知らない粗忽者ですが、よろしくお願いいたします。」

ぴしっとお辞儀で返した。

こちらの礼は知らないから日本式にしたけど、きっと無礼とは取られないだろう。


するとマリア奥様は微笑んで喜んでくれた。

「まあなんと礼儀正しいおかたでしょう。実はわたくし、勇者の卵と言うくらいですから暴力的な野蛮な御方が現れるのも覚悟しておりましたの。タケシー様のような紳士な方で安心いたしましたわ。一緒に旅をするのですもの、本当に安心いたしました。」


あ、この綺麗な淑女も旅に行くのか。

緊張してしまうな。

「こちらこそ、よろしくお願いいたします。」

再度頭を下げた。


なんかテンション上がってきた。

もう、すぐに出発でいいのではないだろうか?


そう思っているのは私だけではなかった。

マリア奥様はソワソワしながら私に寄り添う。

「ところでタケシー様。わたくしの我がままで申し訳ありませんが、じつは早く出発をしたく思います。他のものに魔王が討ち取られては元も子もありませんので。なにとぞ、なにとぞすぐにご出発をお願いいたします。」


耳元でささやくマリア奥様に顔が赤くなりそうだ。

慌てず静かにうなずいてみた。


「分かりました、私はこちらに詳しくないため出発のタイミングは皆様にお任せいたします。」

「まあ、なんと決断がお早い。感謝いたしますわ。すぐにナガミーチに準備してもらいましょう。」


奥様は早歩きでナガミーチさんへ歩み寄った。

お綺麗だけど、マリア奥様はおいくつくらいなのだろう?

30歳くらいに見えたけど、デルリカさんのお母さんなのだから40才は越えてるはず。でも、そんなこと関係ないくらいお綺麗だな。


仲間は美人ばっかりで、悪くない旅になりそうだ。

しかし、あまり人妻を目で追っては悪い。

私は目をつぶり腕を組んで、考え事をしているフリをした。

だが内心は、けっこうワクワクしているので落ち着きたいだけだが。


数分目をつぶっていたら、花のような香りがして美しい声が聞こえた。

「タケシー様、さっそく出発していただけると聞きました。感謝いたします。さあ、ナガミーチが乗り物を用意してくれましたので参りましょう。」


目を開くとデルリカさんだった。

デルリカさんと旅か。素晴らしい。


手を引かれてお屋敷の門まで行くと、乗り物が有った。

乗り物・・・だけど、これって反則ではないだろうか?

いきなりドラゴンだった。

デカイ。象並にデカイ。

そのドラゴンが2匹。それぞれがキャンピングカーのような荷車をひいて歩いてきた。


でもなんで、羽根が生えたドラゴンを地上で走らせるのに使うのだ?

飛ばせないのは勿体ない気がするが、大きな荷車を持って飛べないだろうから、これで正解か。


ナガミーチさんが荷台から降りて私を手招きする。

「こっちが男性用の車です。向こうは女性用。男性用のこっちには多めに荷が入っていますから後で移動しながら装備とか見てくださいね。」


すごいな。

だがドラゴンに近づいてさらに驚く。

本物ではない。人形だった。


ドラゴンに驚く私に、ドラゴンに乗っていた女の子が声をかけてくる。

「これ凄いでしょー。ナガミーチが作ったんですよー。ナガミーチの最新型ゴーレムです。私もお気に入りでーす。」


黒髪の可愛い少女だった。

「はい、すごいですね!でもなんでナガミーチさんはこんなすごいゴーレムを作れるんですか?だって彼は・・・・。」

するとドラゴンの上に居た少女はニパーと笑い、飛び降りてきて小声で言った。

「とうぜんです。長道は天界の奥義だろうと簡単に教えてもらえる立ち場なんですから。プログラマーだったことも手伝って、魔法理論の理解も早かったんですよ。」


「あ、君もナガミーチさんの正体を知っているの?」

すると少女は人差し指を口元に当てて「しー」と言う。

「私はマリーです。天界でも地上でもナガミーチの相棒なのです。」


そういうと、笑いながらまたドラゴンゴーレムに乗ってしまった。


しかし、天界の奥義も教えてもらえるのか。

長道さんが一番チートだな。知識チートと言って良いんじゃないだろうか。


マリーちゃんがドラゴンの上に戻ってしまったので、私は居住用の車に乗る。

そこは立派に家だった。

すごいな、貴族は凄い。


すると、ドラゴンのほうからマリーちゃんの声がした。

「みんな乗りましたねー。行きますよー。発進!」


掛け声と共に二台の馬車ならぬ竜車は進みだす。

結局パーティーは8人になっていた。

私、長道さん、カイル君。

さらに大空さんとういう女剣士、マリア奥様、ジャーニーさん。

そしてマリーちゃんという少女と、


デルリカさん。

そう

デルリカさん。


いい旅になりそうだ。

心地よい車の振動を感じていると、隣の竜車からマリア奥様が竜に乗っているマリーちゃんに叫ぶ。

「マリー、最初は陛下に出発の挨拶をいたしますから、お城へ向ってくださいね。」

「はーい、お城にいきまーす。」


ガタゴトと竜車は揺れる。

そう、私たちの旅はこれからだ。

読んでいただきありがとうございます。


長道「マリユカ様、ドラゴンの御者は僕がやりますから、こっちの居住空間に戻ってください。」

マリユカ「シャー!」

長道「な、なんで威嚇するんですか?」

マリユカ「このオモチャは渡しません!私が操縦して遊ぶんです。」

長道「・・・・さいですか」

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