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大田康子 その7

ターニングポイント

―大田康子 その7―


カイルをナガミーチ(長道)さんの所につれていったら、速攻で『え?僕に何を期待しているの?』と言われてしまった。

だが義母様は、さも当然のように『待ちますからどうにかしてください』と言って、ゴーレムファイターを始めてしまう。


これは信頼と言って良いと思うけど、無茶振りすぎですマリア義母様。

信頼されすぎた長道さん、ちょっと目が泳いでいる。


すると、しばらく悩んだ長道さんはマリー(マリユカ様)を連れて研究室に行ってしまった。

どんなトンチで切り抜けるつもりなんだろう?

私も正直言えば、これは難しいかもとは思った。

日本のチート知識で、DNA鑑定とかも考えたけど、プログラマーだった長道さんにDNA鑑定ができるわけない。

でも何とかしてくれる・・・そんな期待をしてしまうのだ。


長道さんが悩んだ時間は1~2分。

それだけで、名案が出るものなのだろうか?

ちょっと楽しみだ。


マリア義母様が、相撲取りのゴーレムで生身のお父様をボコボコにしていると長道さんがマントを被ったマリー(マリユカ様)を連れて戻ってきた。


「お待たせいたしました。これから世界中で最も貴重な魔術で答えを出します。ですからこれから起きることは、絶対誰にも言わないようにお願いします。秘密がばれたら僕らはココを去らないといけなくなりますので。」


神妙な面持ちで語る長道さんの雰囲気に、みな真面目に頷く。

お父様をボコる手を止めてマリア義母様は長道さんに歩み寄った。

「やはり秘儀を隠していましたのね。王族ですら手に入らない禁書を何冊も持っているナガミーチなら、手段を持っていると思いましたわ。」


いつもの長道さんならココで微笑むだろうけど、今日は真面目な顔が崩れない。

「はい、ですが本当にコレは秘儀中の秘儀で、王家にすら語れない秘術です。そのつもりで、秘密を漏らさないでください。たとえ僕が許しても、巨大な存在に消し去られるかもしれません。ですのでそれだけは生涯忘れないでください。」


隣から、ゴクリと唾を飲み込む音が聞こえた。

マリア義母様は今の言葉を信じたようだ。ナガミーチさんへの評価高いな。

少し震える声でマリア義母様は聞き返した。

「ぐ、具体的には、どのくらい大きな存在にでしょうか?」


すると返事をする代わりに、長道さんはマリー(マリユカ様)の頭に掛かったマントをめくる。

その瞬間、私以外の全員から「ひぃ」という悲鳴のような声が漏れ、顔が青くなった。

でも私はその意味が分からない。

マントをめくられて現れたのは、マリユカ様の水色の髪の毛だった。

黒髪パッツンのズラを外したんだー。

水色の髪の毛も可愛いな・・・・などと和んでいるのは私一人。

私以外は全員ひざまずき祈りだした。


あれ?もしかして私だけ何が起きているか分かっていない?


そこで長道さんが口を開く。

「気づいていたかもしれませんが、僕とマリーちゃんは実は伯父と姪ではありません。僕の正体は大天使さんを召喚する魔術を引き継ぐ者。そしてマリーちゃんはマリユカ様のお言葉をお伝えする事ができる巫女なのです。今マリーちゃんはマリユカ様と同一の存在です。マリーちゃんの言葉はマリユカ様の言葉だと思ってください。もう理解したかと思いますが、この秘密を漏らせば、大天使さんやマリユカ様を敵にまわすかもしれません。」


みな必死に頭を地面につけて肯定をの意を示す。

なんか、長道さん、、、、あんまり嘘は言ってないね。

そっか、私はこの世界に来て最初にマリユカ様にお会いしたから気づかなかったけど、この世界の人にとってマリユカ様に出会うってことは奇跡なんだな。


なんか空気を読んで私も土下座してみた。

柔道の座礼と同じなので、特に抵抗はない。


すると長道さんは良く通る声で叫ぶ。

「マリユカ様!我が質問にお答えください。そこの少年カイルの父親を教えてください!」

「あの人。」


マリユカ様はお父様を指差した。

その姿を見てマリア義母様はお礼の言葉を言いながらまた地面にオデコをつける。

それを見届けて長道さんはマリユカ様を部屋の中に入れた。

「ではこれからマリユカ様にご帰還いただく秘儀を行います。儀式の最中は決して中を覗いたらだめですからね。」


そう言い残し長道さんも研究室に入る。

2人が入って研究室の入り口がバタリとしまると、あたりは静まり返った。

もう土下座終わっていいんだよね。


わたしは立ち上がる。

緊張したまま土下座状態のマリア義母様を支えてそっと起してあげた。

震えていた。

「ま、まさか水色の髪を見る事ができるとは。身に余る光栄。感激で魂が抜け出てしまいそうです。」

そう言いながら、ポロポロ泣き出した。

ああ、アイドルのライブで泣きながら叫ぶ人みたいな表情している。


泣きながら腰が抜けた義母様を抱きかかえて椅子に降ろす。

すぐにデルリカお姉様も抱き起こすと、壊れた人みたいな変な笑い方をしながら泣いていた。

「マリユカ様がご光臨された・・・、マリユカ様がご光臨された・・・。ワタクシの目の前にマリユカ様が・・・。」


お姉様は喜びのあまり壊れかけてた。

私はお姉様を椅子に座らせると、となりで抱きしめて正気に戻るのを待った。


他の土下座している人達は放って置いてもいいだろう。

喜びで土下座しているんだから。


ナガミーチさんがマリーちゃんを連れて戻ってくる頃には、みな放心気味ではあっても正気に戻っていた。

戻ってきたマリーちゃんは明らかに背が伸びている。

今まで見た目年齢は5歳くらいだったのに、12歳くらいまで伸びた。


そこで私はぴんと来た。

ははーん、長道さん、策士ですな。

つまり、頻繁には出来ないというけん制で、こんな小さい演出をぶち込んできたのですね。

マリユカ様を一回呼ぶと、マリーちゃんが数年分老ける。

いい演出ですよ!さすがゲーム屋、いいシナリオです。


そして長道さんはやはり、その場に居た人たちに私の推理と同じ説明をして場をおさめたのだ。

DNA鑑定なんかできなくても、最高神の御神託なら完璧。

素晴らしいトンチです、長道さん。


こうして、血筋騒動は解決を見た。


そしてこの後、

マリユカ様ご光臨の奇跡で幸せの絶頂になった義母様にとって嫁・愛人問題はどうでもいい問題になったご様子。

その日のうちにジャーニーさんとマリア義母様は、ゴーレムファイトのライバルとして急速に仲良くなっていった。


フラグクラッシュ完了。




数日後

我が家のゴーレムファイトの噂を聞きつけ、ミラーズ第一王子とピッツ第三王子が遊びに来た。


今は弟のカイルとミラーズ第一王子が対戦しているが、カイルは遠慮なく王子をボコってる。

私が教えた小キック連打→波○拳→昇○拳コンボで、王子を瞬殺。

カイル。初心者をコンボにハメて倒すのはやめような。


腕を組んで生温かい目で弟の戦いを見ていると、ピッツ王子が私の隣に座ってきた。

「ヤスコー、ベルセック伯爵家の魔道師はすごいですね。ここまでスピーディで自在に動かせるゴーレムは王立魔道研究所にもありません。それに屋敷内で動くメイドゴーレムも凄い。あんな人そっくりの形で人のように掃除をするゴーレムなど、見たことありませんよ。」


王子はゴーレムがお気に召したようだ。

まあどこの世界の男の子も、ロボット大好きってことかな。

「すごいんですか?私は小さい頃からナガミーチさんのゴーレムと戦って鍛えてきたので、コレが普通なのかと思っていました。気に入られたのでしたら、いつでも遊びに来てください。」


王子は輝きそうに喜びの顔を向けてくる。

う、まぶしい!

「また来てもいいのですか?それは嬉しいです。三日とあけずに通いたいです。」

可愛いな王子。

思わず頭を撫でてしまった。


後ろで、執事のハック・バレが「お嬢様・・・」と悲痛な叫びを上げたのが聞こえた。

そして私も気づいて慌てて手を引っ込める。

あわわわ、王子様の頭を撫でるとか、無礼すぎた。

「も、申し訳ありません殿下。無礼のほど、ひらにご容赦を。」


私が慌てててを引っ込めるが、当の王子自身は私の手を名残惜しそうに眺める。

「いや、ヤスコーに撫でられるのは心地よかったですよ。そんな慌てないでください。」

そう言うと、輝く王子スマイルを放ってきた。

う、キュンときちゃう。


ぐふふ、なんですかこの状況。

もう乙女ゲーが始まってるんじゃないの?


少し浮かれてしまった私は王子しか見ていなかった。

もしもこの時、少しだけ周りを見る余裕があれば、この後のあんな悲劇は起きなかったでしょうに。


そう、

私達を病んだ顔で、目を見開らくように見つめるデルリカお姉様に気づいてさえ居れば。

読んで下さりありがとうございました。


デルリカ「ヤスコーどいて、そいつ殺せない」

ヤスコー「どこのヤンデレヒロインですか!」

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