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大田康子 その6

―大田康子 その6―


ピッツ第三王子から夜会のお誘いが本当に来た。

王子は私が11歳だという事は知っていたらしく紹介状には丁寧に

『13歳未満のご婦人を夜会にお誘いしないのが通例では有りますが、保護者の方と一緒に夜会に参加される方も居ます。余が初めて主催する夜会には是非ヤスコー殿にご参加していただきたく、招待状を送らせていただきました。』

という文章が添えられていた。


まだ返事を急ぐ必要もないので、お返事は保留させてもらった。


しかしピッツ王子、少女のように可愛らしかったな・・・。

長道さんからもらった攻略本では、ピッツ王子も攻略対象になっていたので良く覚えている。

あんな可愛らしい王子に愛されるとか、夢みたいだ。

気になって自室に隠してある攻略ノートをチェック!

なになに、最後のフラグ立てのイベントは

『襲い来る政敵の刺客からヒロインが身を挺して王子を庇うことで、王子はヒロインへの恋心を自覚する』

ですと?


うん、今の私なら軽々クリアーできる。

刺客が10人や20人襲ってきても、全部撃退しちゃえる自信あり。

なにこのチョロいイベント。

うひひ、5年後が楽しみだ。


そういえば、このノートを開くのは3歳の時に開いてから8年ぶりだ。

もう一回見直してみよう。

攻略対象は5人


・第三王子のピッツ王子。

 直に合ったことがある人はピッツ王子だけだからかもしれないけど、私一押し。

・ひ弱な文学青年のハルベリー公爵家のジリアン君。

 線の細い美青年で私好みかも。

・王立の魔道研究院の若き天才、セイン・マシリト君。

 寡黙な中に優しさを持つハンサム。根暗じゃないよ、寡黙だよ。

・王立騎士団の若き天才剣士、スパル・サファイア様。

 6歳年上の22歳だけど、強くてキザでワイルドなイケメン。でもワイルドな人って無神経そうで夫にはしたくないかな。

・そして最後は、私よりも二つ年下の弟のカイル・ベルセック。

 プレイボーイで泣かせた女性は数知れず。魔術・武芸・学業に秀でたパーフェクト超人だけどヤンデレ系シスコンというウラ設定あり。


・・・ん?

弟?

そんなの居ないぞ?

二つ年下ならもう居ないとダメだよね。


私は攻略ノートをそっと仕舞い、カツカツと長道さんのところに向ってみた。

大体の秘密は、そこに行けば高確率で解決される。


私が庭を通って、長道さんが使っている小屋の前まで行くと、外でマリア義母様とデルリカお姉様が、ゴーレムを戦わせて遊んでいた。

芝生の上に日傘つきの椅子に座り、白熱した戦いが繰り広げられてる。


良く見ると2人は家庭用ゲームのコントローラーのようなものを持って、ゴーレムを操っていた。

その二人の後ろをウロウロしながら、マリユカ(マリー)様は楽しそうにアドバイスを飛ばしていた。


ゴーレムの片方は、ムキムキの筋肉プロレスラー。

もう片方のゴーレムは、腕が伸びるインド人。


ゴーレム戦の邪魔にならないところに、空手着で鉢巻したゴーレムや、チャイナ服の女性型ゴーレムとか・・・・まあ12体位ならんでいた。


あ、一発でモトネタわかっちゃった。

ストリートの方でファイトする人たちのパクリなわけね。


しかもこのゴーレムを作るにいたる過程がイロイロ予想できる。

きっと、メイドゴーレムしか作らないと言っていた長道さんが男性型ゴーレム作ったのはアレでしょ、マリユカ様が『あの対戦型ゲームをゴーレムでやりたい』とか言い出したから、一瞬で矜持を捨てたんですよね、わかります。


「それぇ、パイルドライバーですわ!」

私がイロイロ考えているとデルリカお姉様が叫ぶ。

その瞬間、インド人型ゴーレムが吸い込まれるようにプロレスラーに捕まり、回転しながら地面にたたきつけられた。

うわ、吸い込み投げまで再現しているとか長道さん、凝ってるなあ。

・・・っていうか、筋肉プロレスラーを使ってるのってデルリカお姉様だったんですか。

ギャップが凄い。


そこで、コントローラーに表示されていたHPがゼロになったらしく勝負がついた。

なんか・・・楽しそうだな。

「お姉様、義母様、おはようございます。楽しそうな遊びですね。」


私が挨拶をすると、輝くばかりの笑顔でデルリカお姉様が振り返った。

「ヤスコー、おはようございます。ヤスコーもいっしょにやりましょう。これは面白すぎます。」

くわあ、お姉様の笑顔で目が潰れそう。


「おはようヤスコー。これでしたら武芸に秀でたアナタにも勝てそうです。あなたも母と戦いましょう。」

義母様は興奮気味で私にコントローラーを渡そうとする。

コントローラーは14個あり、どうやら使うコントローラーによってゴーレムを選ぶらしい。

でも困ったな。

私、このゲームを相当やりこんでいるから、強いんだよな。

できたら義母様には負けてあげたい。

そこで一番苦手だった、電気をビリビリだす緑色の人を選んでみた。

それを見てマリア義母様は、相撲取り型ゴーレムを選ぶ。


マリユカ様は私に椅子を運んできてくれると、マリア義母様の膝に乗りコツを教えだす。

私の横に居るデルリカお姉様も興奮した口調で私にコツを語りだした。

「ヤスコー、このゴーレムはコマンド入力と言うのが出来ると有利なのですよ。そのゴーレムですと下方向に数秒溜めた後に攻撃すると有利ですよ!。」

私と腕を組むように寄りかかりながら説明しているデルリカお姉様、可愛いです。

そして、タブン私のほうが詳しいです。


コントローラーで芝生の中央にゴーレムを移動させてたところで長道さんが叫んぶ。

「ファイト!」


速攻で義母様は、目を爛々とさせて張り手を連発してきた。

うわあ、そうとう興奮している。

デルリカお姉様もキャーキャー言いながら私の腕につかまって私を揺らす。

お姉様、それ応援と言うより妨害です・・・、まあ良いのですが。


そっか、このファンタジーの世界の人にとって格闘ゲームは大興奮する遊びなんだな。

私は、適度に反撃をしたり、コマンドに失敗したフリをして、接戦をして義母様に負けた。

これも親孝行の一環です。


勝った瞬間、マリア義母様は飛び上がってマリユカ様を振り回して喜んでくれた。

淑女の義母様がはしゃぐ姿とか、なんか新鮮。


デルリカお姉様は「ワタクシがヤスコーの仇をとりますわ」といって、プロレスラーのゴーレムを再起動させている。

お姉様、本当は自分がやりたくてしょうがないのですね。

何か楽しい。


幸せだな。


日本では感じたことの無い感情かもしれない。

心から幸せだと思えた。

大好きなお姉様や義母様と過ごす朝。

お姉様と義母様の楽しそうな姿を見て、本当に思った。


私、いま幸せだ。


だが、この幸せな時間が、すぐにあっけなく壊されてしまった。


「みなここに居たのか。揃っているなら丁度良い。」

そういってお父様が現れた。

まるで宝塚のような美しい男性だけど、どこか浮世離れしている。

お父様の後ろには派手な格好をした美人の女性と、男の子がいた。


まさか。

ピンときた。

お父様は何も言ってないけど、もうコレしかないてくらいピンと来た。


お父様が2人を連れて歩いてくるのを待たずに私は口を開いてしまった。

「お父様、私の勘が正しければ、後ろの女性はお父様の愛人さんで、少年は私の弟ですね。」


その私の言葉に、お父様は目を見開いて足を止める。

お姉様も義母様も私をガンみした。

いやいや驚くことではないでしょう。


私は硬直する周囲の人を無視して少年に歩み寄る。

「私はヤスコー。君の名前と年を聞いてもいいかな?」

少年は一歩引いて警戒する眼で私を見た。

ま、こんなゴリラが寄ってきたら警戒するよね、良い判断だぞ弟よ。


「ぼ、僕はカイルです。9歳です。」

はい決定。弟です。


ということは、後ろの女性がカイルのお母さんか。

カイル君、設定では、このお屋敷で肩身の狭い思いをしていたお母さんに虐待され、しかも孤独のため病んで行くって書いてあった。


よし、フラグクラッシュだ。


私はカイルの頭を撫でた。

「私は11歳だからお姉ちゃんだ。よろしくな。」

カイルは孤独じゃないぞ。だから病んで私にバッドエンドを与えるなよ。


次に女性を見て挨拶した。

「私も愛人の子です。ですがマリア義母様にはとても良くして頂いて幸せに暮らしています。お名前をお聞きしても宜しいでしょうか?」

唖然としていた派手な女性は、私の言葉に正気に戻る。

「あ、私はジャーニーです。お嬢様方、奥様、よろしくお願いいたします。」


優雅さは無いけど、色っぽい礼を私達と義母様にしてくれた。


さて、これでフラグへし折れたかな。

振り向いてみた。

そこには、血管が浮き出そうな顔でコントローラーを持つ手を振るわせる義母様と、顔に黒い影が掛かったような、すごい不審なものを見る顔のお姉様が居た。


あれれれー

ヤバイ、フラグクラッシュできていない!

ここで対立しないで。ヤンデレ弟を爆誕させたくないの!


マリア義母様は立ち上がり。

視線だけで人を殺せそうな目でお父様をねめつけると、ジャーニーさんに向く。

「初めましてジャーニーさん。わたくしが妻のマリアです。心の準備が出来なかったため、あまり好意的にお迎えできなくて申し訳ありませんわ。せめて旦那様から相談を受けてからご対面させていただければ冷静にお話もできたと思いますのに、残念ですわ。」


ジャーニーさんは軽く空を見上げてからマリア義母様に向いた。

「ま、そうなりますよね、こんな下賎な女と隠し子が現れては。ですがね、こっちも生きていくためには伯爵のお力を借りないといけないんですよ。毎月ドレス一枚分程度の金額で良いんで面倒見てもらえると嬉しいんですけどね。」


その言い分にデルリカお姉様も立ち上がる。

「ジャーニーさん、ワタクシは当家の長女デルリカと申します。不躾な質問で申し訳ありませんが、そもそもカイルが私の弟だとどのように証明されるおつもりでしょうか?」


はじめてみる威圧的なデルリカお姉様に、ちょっとビクとしてしまった。

やだ、こんなデルリカお姉様見たくない。

ヤバイ、空気が重い。

だれかこの空気を壊して・・・

思わず神に祈った。

神様助けて。

神に・・・・あ、神はここに居るんだった。


そう思った瞬間、マリーちゃん(マリユカ様)が無邪気にゴーレムをマリア義母様とジャーニーさんの間に動かしてきた。

「そんなことより、お腹減りました。朝ごはんを食べたらまたゴーレムで遊びましょう!」

そしていつもの究極癒し系の笑顔をニパーと輝かせる。


うわあ、可愛い。


その笑顔で、全員の顔から険が消えて眉が下がった。

おお、祈りが神に届いた。

さすが最高神の聖なる微笑、黒い感情を浄化してしまったぞ。

ありがとうマリユカ様。

ありがたや、ありがたや。


ホーリースマイルによって少し冷静になった大人達は、まずは朝食をとる。

お腹がいっぱいになり、お茶を飲んだところでマリア義母様が口を開いた。

「ジャーニーさん、先ほどは失礼いたしました。子供達の前であのような態度を取ってしまいましたこと、恥ずかしく思いますわ。」


その言葉にジャーニーさんも申し訳なさそうに返す。

「いや、奥様は悪くないさ。私もつい口調が強くなってしまってたよ。女一人で子供を育てるのは結構大変でね、今までもギリギリだったから、少し必死になりすぎていたかもしれないよ。スイマセンでした。」


そこでまたしばらく沈黙が訪れる。

しばらく黙っていたマリア義母様は、肩の力を抜いて微笑んだ。

「これも何かの縁です。ジャーニーさんの生活に関しては、わたくしたちも考えましょう。ですがカイルが本当に旦那様の子かどうかは大きな問題です。旦那様の子でなくても生活は保障するつもりですが・・・、さてどうしたものやら。」


そして大人たちはカイルを見つめ、また沈黙する。

そこに、相撲型ゴーレムの乗ったマリユカ様があらわれた。


「まだですかー?私はダイエーンが作ってくれたご飯を食べ終わりましたよー。」

コレ幸いと、重い空気から逃げるようにデルリカお姉様はマリユカ様に近づき、ゴーレムから抱き下ろす。

「ごめんなさいねマリー(マリユカ様)、今カイルがお父様の子かどうかで難しいお話をしているの、もう少し待ってね。」


するとマリユカ様は小首をかしげてお姉様の手をとる。

「難しいお話なんですか?でしたら難しいことはナガミーチ(長道)に頼むと良いですよ。ナガミーチは大体なんでも解決してくれますから。」


そこでみな表情が明るくなった。当家のお抱え魔道師様がいるじゃやない。

そうだ、こまったらドラ○もんに頼めばいいんだ。

助けてよ、ナガミーチ!

お読みくださりありがとうございました。


ヤスコー「たすけてよ、ナガえもん」

長道「え?無理無理。みんな僕に期待しすぎ。」

マリア「たすけてよー」

長道「いや無理でしょ。普通に考えて。」

マリユカ「助けて長道ー」

長道「おまかせあれ。」

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