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藤木哲也 その15

人物紹介

魔栗鼠:地獄の天使。

受付子:実は必殺技を持ているが、とうとう使わなかった。

―藤木哲也 その15―



魔栗鼠も、このテンションに乗っかってきた。さすが天使、タイミングがいいっす。

「東西南北の勇者は敗れているぞ。絶対勇者といえども一人でどうにかできると思わぬことだな。無駄死にしたければ掛かってこい!」


魔栗鼠さん、いい仕事してるっす。

惚れそうっす。


ベルセックファミリーが前に出てきてくれたおかげで、聖騎士達にも余裕ができたっぽい、

枢機卿の死体をそのままに、真理由華の聖騎士たちは後方にさがる。

枢機卿がいなくなれば、戦う理由はないっすからね。


かわりに150人のベルセック聖騎士と、ベルセックファミリーが前に出てきた。


最初に撃って出てきたのは意外にもマリア奥様だった。

「ではお相手いたします。踊れ、我が人形たちよ!」


すると空間から次々にメイド型人形が飛び出し、魔物に襲い掛かる。

騎士たちが苦戦していた魔物を、軽々砕くメイド人形。


ああ、納得っす。

このひとはデルリカさんのお母さんだ。納得っす。


しかも、少しでも強い魔物にはメイド人形は抱き着いて自爆する。

なんか、マリア奥様って戦い方はワイルドだな。


受付子が必死な顔で足りなくなった魔物を次々に補充している姿が目に浮かぶ。

凄い速さで魔物がやられているけど、すごい速さで魔物も補給されている。


ヤバイっすね。

ここは一旦退くっす。

「わははは、せいぜい頑張るがいいっす。われらは魔王の間で待っているっす。ダンジョンを踏破してくるがいいっす。わっはっはっは。」


すると受付子は空気を呼んで、魔王の間に転移させてくれた。

「魔王様、うっかり魔王様の下半身装備を向こうに残してしまいましたが、本体がここに居るんで良いですよね。」


言われて自分の下半身を見る。

綺麗に下半身が丸出しだった。

魔栗鼠は赤い顔でガン見している。


あわてて前を隠して魔栗鼠に叫ぶ。

「下半身の装備の予備を頼むっす。こんな格好で戦えないっす。いそいで。」

「はい、魔王様。」


走り去る魔栗鼠を眺めたあと、受付子をにらんだ。

このやろう。たまたま3人しかいないからまだよかったけど、商店街への転送とかでこれやられたら自分は泣くっすよ。

スキル<ドジっ娘>って、ほんと使えないっすね。


あわてて着替えて玉座に座る。

みるとベルセック聖騎士はガンガン魔物を倒して、大神殿と城を取り返していた。

強いな。

よく見ると、全員レベル50越え。

トップの30人に至ってはレベル80代。


強いわけっすよ。


そうだ、最後の戦いだから盛り上げないと。

「受付子、城や大神殿の後ろに大きな壁を出せるか?そこに魔王の間での戦いを投影したい。商店街にも投影してくれ。」


「はい、難しいようで簡単そうで、なんかできそうです。お任せください。」


カタカタと受付子が「ハーレムダンジョン」操作している。

するとダンジョンを踏破してきたベルセックファミリーが玉座の間に入ってきた。


「お久しぶりですわね、魔王様。」

デルリカさんが優雅にスカートの裾をつまんで一礼する。


さらにジャーニーさん、マリア奥様、カイル君も来た。


人類の頂点が四人来たんだ。

面白くしなくっちゃ。


「これから、ここの戦いを外に映し出そうと思うっす。城や商店街で表示されますのでそのおつもりで。今はまだ投影していないっす。非公開の状態で言うことがあれば今のうちに。」


するとマリア奥様が深々と頭を下げた。

「こちらの世界のゆがみのために、このような三問芝居にお付き合いくださり、真に感謝申し上げます。」

自分も頭を下げる。

「とても勉強をさせていただきました。こちらこそ感謝してるっす。」


後ろから受付子が声をかけてきた。

「魔王様、準備できたので準備完了です。いつでも投影できますよ。」


マリア様が優しく微笑んだ。

「では、幕開けとまいりましょう。」


「ではいきまーす。3,2,1、0!」

受付子ガカチリとスイッチをいれる。

すると玉座の後ろに、ここの映像が流れだした。

たぶんこれと同じ映像が流れているのだろう。


さて、やりますか。

「よく来たっす、勇者達よ。されど神より見捨てられたお前たちに、何ができるっすか!」


マリア様が毅然と言い返す。

「真理由華国のマリユカ教だけがマリユカ教ではございません。本日よりわたくしもマリユカ教を背負うことといたします。」


「真理由華国と同じように滅ぼされるかもしれないっすよ。」


「そのときは甘んじて受け入れましょう。それでも民衆にはマリユカ様の教えが必要ですわ。なればわたくしが教えを広めましょう。こんどこそ間違えのないように。」


部屋の中に、小悪魔隊が転送されてきた。

「それも勝ったらの話っす。今夜の紅い月に恥じぬよう、本気で殺しあうっす。」


ジャーニーさんが動いた。

沢山のメイドゴーレムが飛び出してくる。

それを上級魔物が防ぐ。


マリア奥様には小悪魔隊が襲い掛かった。


そして意外にもデルリカさんには受付子がとびかかった。

おおおい、無茶するなよ。


そして自分はカイル君の前に立つ。

「最後の勇者か。せいぜい楽しませてもらうっす。」


自分は勢いよく打ち込む。

カイル君は軽々かわして剣を振ってきた。

でもそれは予想済みっす。


カイル君の剣をガントレットで受けてパンチで返す。


カイル君もそれを軽々よけて飛びのいた。

これ完全に手加減してくれている気がする。


受付子は大丈夫だろうか?

横を見たら、デルリカさんが前につんのめるところを受付子の一撃が襲う所だった。

受付子のパンチで、デルリカさんは遠く離れた壁まで飛んで行って激突した。


何が起きた!


すぐに受付子は自分の横にくる。

「いま、スキル<ドジっ娘>を発動しています。あと5分くらいは発動させられるので頑張りましょう。」


「そんなスキル発動させて大丈夫なんすか???」


うっかり気をそらした隙にカイル君が飛びこんでくる。

あわててガントレットで剣を受けたら、剣が運悪く折れて飛んで行ってしまった。

ラッキー


廻し蹴りを放つと、体勢が崩れたカイル君は勢いよく吹っ飛ぶ。

受付子はにやりとした。


「魔王様、<ドジっ娘>というスキルは、普段わざと不運を受け入れ、いざというときに貯めた幸運を使うスキルです。あと5分は強運ですから今のうちに攻めてください。」


マジっすか。<ドジっ娘>なめてたっす。

これをうまく使えば、ギャンブルとかで大儲けっすよ。

まあいいか、いまはカイル君っす。


倒れたカイル君にとびかかると、すぐに魔法で跳ね返された。

なるほど、魔法も一流っすね。


でも確信があった。

自分はカイル君の魔法シールドに向かってパンチを打つ。

そのタイミングで、魔栗鼠が壊したメイドゴーレムの腕が飛んできて、カイル君の頭に『偶然』当たった。

「ぐあ!」


痛みでシールドが消えたので、そのまま殴り飛ばした。


ずごおお


凄い響く音を立てカイル君は吹き飛ぶ。


復帰してきたデルリカさんが斧で飛び込んできたけど、たまたま転んだ受付子に足をひかっけてバランスを失う。


そこに自分が魔法を打ち込んだ。

「カメ○メ波!」


またデルリカさんが壁まで吹っ飛んで埋まる。


すると、メイド人形たちが一斉にこっちに押しかかってくる。

みると、魔栗鼠は倒れて動かなくなっていた。


地獄天使も全員倒れている。

マリア奥様、どんだけ強いんすか!


でもうまく運が続き、この大量の敵をさばきつづける。

幸運すげーっす。


しばらく戦っていたら、胴体にヒヤリとした感触が走る。

一拍おくれて、目の前のメイドゴーレムたちがお腹から切り裂かれて上半身が吹っ飛んだ。

そのメイドゴーレムの背後からデルリカさんが悪魔のような顔で現れる。


そして理解したっす。

デルリカさんはメイドゴーレムごと、自分を横薙ぎに切り捨てたんすね。

でも、なんで運が作用しなかったんだろう?

あふれ出そうになる内臓を押さえながら疑問に思う。


つづいてカイル君が折れた剣を受付子になげつける。

投げた剣は回転しながら受付子の胸に吸い込まれた。

「がは!ばかな、まだ一分近く運のストックがあるのに…」


受付子は倒れて動かなくなる。


自分はお腹から内臓が出そうなのを押さえながら楽しくなった。


「さすが勇者っす。こちらの幸運をこえる運を持っているようっすね。さすが勇者は不条理っす。そうか、これが神に愛されし不条理。勇者が不受理を行えることこそ、その行いが神の意思と合致する証。たしかに君は勇者っす。」


膝をついた。

力が入らない。

内臓が出てきてしまった。

自分は這いずるように魔栗鼠のところに行く。

だれも止めようとしない。


抱き起すと、魔栗鼠は白目をむいて死んだフリをしていた。

笑いそうになったので抱きしめた。


やべ、面白い顔すぎるっす。

笑いで体が小刻みに震える。

しぼりだすように声を出した。


「魔栗鼠、今までよく尽くしてくれた…」

あかん、これ以上いうと笑いだしそう。


ぐっと言葉を詰まらせるように耐えた。

小声で魔栗鼠が「笑っちゃだめですよ」とかいうけどさ、魔栗鼠の顔が面白いのが悪いんすよ。


笑いをこらえるために、顔にめっちゃくちゃ力を入れて振り返る。

魔栗鼠を引きづるように、傍に倒れた受付子にずりよる。


受付子を抱き起すと、あきらかに寄り目で変顔をしていた。

このやろう!笑かす気か!


慌てて首に顔を埋めるように抱きしめた。

やべ、まじ大爆笑しそう。

一生懸命、受付子の肩に口を押さえつけてこらえる。

「う、う、う、うううう。」


へんな、うめきみたいな声が漏れてしまった。

笑いをこらえるために、さっきよりも大きく体が震える。


ほんとどうしよう。はやく投影を消さないと。


二人を抱きしめながら、自分は立ち上がった。

そこで受付子が小声でつぶやく。

「勇者君、剣でおっぱい狙ってきましたよ。エッチですよね。」


もう我慢できなくて爆笑してしまった。


「ふふふ、はっはっはは、ぐわはっはっはっは。」

やべ、誤魔化さなくっちゃ。


ふりかえり勇者を見た。


みんな、すごい悲しそうな目で見ている。

なに?自分の演技が下手だったすか?

まあいいっす、走りきるっす。


「これで勝ったと思うなっす。自分は負けたが、人類が愚かな限り、かならず第二、第三の魔王が現れるっす。魔王は何度でもよみがえるっす!わっはっはっはっはっは。」


よしやりきった。

さてどうやって収めよう。

そう思っていたら、受付子が何か握っている。


もしかして…

「受付子、もしかして任務完了ってやつっすか?」


カチりと受付子がそのボタンを押す。

同時に受付子が大爆発をした。


やっぱりーーーーーー


自分たちは派手に砕け散った。






こぽこぽ音がする。

目を覚ますと、カプセルの中だった。

プシューとカプセルが開いたので外に出てみる。


扉を開けて玉座の間に着くと…

宴会場になっていた。

う、デジャヴ。


ベルセックの四人と、

大天使さんたちと、

魔栗鼠、受付子、

さらにナガミーチ師匠とマリーちゃん。

ついでに西の勇者パーティー。


自分は何も言わずに、魔栗鼠の横に座る。

「あ、魔王様。おからだはもう大丈夫ですか?いま料理をとってきますね。」

元気にお皿をもって、料理をとりわけてくれている。


となりにジャーニーさんが来た。

クンカクンカ


いや、自分は何をしているんだ?寝ぼけているのだろうか。

きにせずジャーニーさんは飲み物を渡してくれた。


「魔王さんお疲れさま。さいごの部下を抱いて咽び泣く姿は見事だったよ。あれには私ももらい泣きしちゃった。あとから演技だって聞いてびっくりさ。」


ああ、あれは笑いをこらえていただけです。

でもそんなことは言わない、空気を読む。

「いやあ忘れて下さいっす。なんか恥ずかしいっす。」


そのあとも、最後のシーンが話題になったっす。

部下を抱きしめながら声を殺して泣き、さいごは豪快に自爆するシーンは大好評で、民衆受けも最高だったらしいっす。

たぶん、スキル<ドジっ娘>の影響下にあった時の出来事だから『運よく』最高の状態に勘違いされたんすね。

スキル<ドジっ娘>、恐ろしい子。



その後も、延々楽しく騒いだ。

たぶん、5時間くらい騒いだと思うっす。

とても楽しかった。


こういう宴会では、騒いだ後に、妙に静かになるタイミングがある。

そういうタイミングが来たとき、ふと目をやるとマリーちゃんに膝枕をされて寝ているナガミーチ師匠が見えた。


気になったので近づいてみる。

するとマリーちゃんは大人びた表情をした。

「ナガミーチはいつも甘えん坊です。」

意外な言葉だった。


「ナガミーチさんが誰かに甘える姿とか見たことないっすよ。」


マリーちゃんが優しくナガミーチ師匠の頭をなでる。

「意地っ張りなんですよー。でもこうやって寝ている時は本性がでます。手を握ると子供みたいに握り返してきますよ。これがナガミーチの本心なんです。だから私はいつも一緒に寝てあげるんです。」


横にいたデルリカさんがナガミーチさんの手を握ると、確かにきゅっと握り返している。


そんなナガミーチさんを優しく見つめて、マリーちゃんはまたナガミーチさんの頭を撫でた。

「ナガミーチは本当は日本に帰りたいんじゃないかと思うんですよお。でも、むこうに帰れば死ぬだけなんで帰れない。だからフジキーのように帰ることができる人が羨ましいのだと思います。そしてここでの経験が日本で役に立つように考えて、フジキーにイロイロやらしていたようです。」


その言葉に、自分は何も答えられなかった。

言われてみれば、ことあるごとに成長を促すような声の掛けかたをしてくれた。


うしろから西の勇者が肩をたたいてきた。

「今が丁度いいタイミングなんじゃないか?帰る場所があるなら帰るのも悪くないぞ。俺も故郷に帰れない口だからな。魔王が羨ましいよ。」

「西の勇者さん…。」


自分は、ゆっくり考えた。

そして決意した。


「そうっすね、帰らないといけないっすよね。」


するとマリーちゃんがニッコリ微笑んだ。

「ナガミーチはすごですね。フジキーはこのタイミングで帰るって言い出すと言ってましたよ。ナガミーチから手向けにプレゼントをあげるように言われていますので、一緒にどーぞ。」


すると唐突に世界が揺れる。


「ではフジキーをお返しします。お土産付きでーす。」


『おっけーね』


なんか懐かしくなりそうになる声がきこえると、そのまま自分は意識を失った。

お読みくださり、ありがとうございます。


次回:藤木哲也編 エピローグ

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