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藤木哲也 その13

人物紹介

魔王:魔王としてはいい仕事しています。

魔栗鼠:地獄天使。素直にいい仕事しています。

受付子:ダンジョンコアの操作に関していい仕事しています。

―藤木哲也 その13―


そして23時59分になる。


ダンジョンの商店街内はお祭りのように騒いでいる。

不安だから騒いでいるのだろうか?

だったらすぐに安心させてあげるっす。


「大天使のみなさんは、派手に空中から登場してくださいっす。残りの人はこっちで転移させますので予定通りにお願いしまっす。」


大天使たちは黙ってうなずき転移で消える。


そして0時になった。


時計の音がボーンとなる。


速攻で城と大神殿をダンジョンで飲み込む。

巨大な石の部屋で空間ごとダンジョンにした。


これで、城と大神殿は自分たちの領土っす。


「突撃っす!」


すぐに魔物たちを城と大神殿の部屋に全部転送させた。

あっという間に膨れ上がる魔物にたいして、大神殿から兵が飛び出してくる。


昨日から「明日に城と大神殿を攻めるっす」と放送していたのだから、スパイが情報を持ち帰って準備をしていても驚かないっす。


それでも向こうは驚いたはず。

まさか地下から空間ごと飲み込むとは思っていなかったのだろう。

街の中に隠れていた兵が、一斉に突然現れた石の壁に向かって駆け寄る。


進軍してくる魔物を迎え撃つ気だったのだろう。

それがあだになったっすね。

今は城と神殿にどうにか入ろうと入り口を探している。


だがこれでいい。

あんた達は運がよかったんっすよ。

だから大人しく諦めた方が良い。

生き残れるんっすから。


ダンジョンの一部に飲み込まれたことで、城と大神殿の中の様子も「ハーレムダンジョン」で確認ができる。


城に王は居ないっす。

どうやら事前に逃げていたようっす。

それどころか兵もほとんどいない。


大神殿には枢機卿や教皇がいた。

ただし聖騎士もいっぱいいる。

20000人の聖騎士がつめている。


教皇も逃げておけばよかったのに。

でも魔王なんて聖騎士のまえでは敵ではないと思っていたようだ。

そんなことを話しているのが、画面で見えた。

聖騎士は平均してレベル25。

かなりレベルが高い。


さて、ではまず自分は王城に向かった。

まずはこの国に玉座を奪うっす。


魔物は魔王軍に襲い掛からないので、自分は悠々と魔物の中を城に向かう。

王城は門が閉じられ、見張り台の上からメイド姿の女性たちが石を投げ落として防衛をしていた。


可哀想に、兵士は居ないんすよね

とはいえ、メイドさんと戦うほど自分は魔王ではないっす。


隣を歩いていた魔栗鼠に声をかける。

「飛べるなら、あのメイドさんたちを殺さずに捕獲してきてほしいっす。兵士はほとんどいないはずっすから。」

「はい、魔王様。がんばって捕獲してきます。」


命令されたことがうれしかったのか、すこし顔を赤く染めて魔栗鼠はそれから城に襲い掛かった。

そして数秒後には、4人ほどのメイドを捕まえて門の前に降りてきた。


メイドたちは突然魔物の中に下されておびえている。

「安心してほしいっす。抵抗しなければ殺さないっすから。聞かせてほしいんすが兵隊は門を守っていないんすか?」


すると震えながら、ベテランそうなメイドさんがすくりと立ち上がる。

「へ、兵士のみなさんは二日前の侵攻でほとんど帰ってきませんでした。残った兵士は城を捨てて陛下とともに脱出されました。」


青い顔をしたメイドがそこまで言うと、自分は当然の疑問を口にする。

「じゃなんでメイドさんたちは戦っていたんすか?」


すごく恨みがましい目で見られた。


「気づいたら兵のみなさんがいなくて困っていたら、魔物が襲ってきたんです。自分たちを守るために城にいるものができる範囲で戦うしかないじゃないですか。」


う、それは悪いことをしたっす。


「受付子、ハーレムダンジョンの画面を操作して、お城ユニットにいる魔物を全部大神殿に回すっす。自分は優雅にここで勝利宣言をするっす。」

『はい、ちょっとというか、少々お待ちを。』


受付子の声がするとすぐに、魔物達が消え始める。

「ハーレムダンジョン」の操作は受付子に任せてあるからまあ安心だ。


自分はその様子にへたりと座り込むメイドさんに手を伸ばす。

「すんません、もう少し協力してほしいっす。門を開けて自分たちを通してほしいっす。そうしたらお城の人はだれも傷つけないと約束するっす。」


自分の手を取って立ち上がったメイドさんが、門の小窓に叫んだ。

「魔王が開門を条件に魔物をどかしてくれました。素直に門を開ければ全員の安全を保障するそうです。開門をしてください。生き残る可能性はこれしかありません。」


そのまま15分待った。

でも退屈はなかったっす。

魔栗鼠は<聞き耳>スキルで中の様子を把握していた。

それを逐一自分に教えてくれていたので、緊迫したやり取りにこっちまで緊張したっす。


中では、まさに命を懸けた議論が白熱していたから。

結局は門を開けなくても全滅は確実だからという意見が勝ち、門を開けてくれた。

自分と魔栗鼠が門を通ると、非力そうな貴族風の男が頭を下げてくる。


「門をすぐに開けなかったのは反抗ではありません。もしもお怒りでしたら私一人の命でお許しください。」


そういうのは、やめるっす。

自分の命を差し出して誰かを守ろうとするとか、どんだけ勇者っすか。

「気にしないで良いっす。悩むのは当然っす。それと他の人達に伝えてほしいっす。城の中が一番安全すから、戦いが終わるまでむやみに逃げないようにと。」


そのことばに、ひ弱そうな貴族は明らかにほっとした顔をした。

怖いのに命を差し出す。

自分にはできないことっす。


こんな立派な人がいるなら、いうほど悪い国ではなかったんではないだろうか?


その貴族の案内で玉座に着いた。

ゆったりそこに座ると、声を張り上げる。


「この城を占領をした証を残すっす。」


すると、「ハーレムダンジョン」の機能で城の装飾がすべて自分好みな姿に変わる。

本当に、風が吹き抜けるような速度で内装のすべてが変わった。

玉座の後ろにあった真理由華国の国旗も、ダンジョンのマークに変わる。


それを確認し自分は再度叫ぶ。


「王城ユニットから外壁を排除!防衛用の魔物を配置!」


王城を囲むようにあった巨大な壁は一瞬で消えた。


そうして現れた城の外見は大きく変わっており、ダンジョンの旗がひらめく。

城の周りに、大量の魔物があらわれた。

城を背にするように。


受付子、いい仕事しているな。


玉座の間から見ると、200メートルほど離れた場所に巨大な石の壁が見える。

大神殿を囲んでいる壁だ。


城の周りの壁がなくなると同時に、壁の前にいた兵たちが突撃して来ようとしたので王の間のベランダから外に出た。

「兵たちよ!戦いをやめるっす。王はこの城を捨てて逃げた。ここで無駄に死なずに次を考えるっす。王を追って助けるか、新しい王に仕えるかを!」


すると空に巨大な炎が現れた。

その炎の中から、豪華な天使があらわれる。

大炎姫さんだ。


巨大な竜巻も現れた。

その竜巻がはじけて消えると、中から大空姫さんが現れる。


地面から急に巨木が育ち、それが急に枯れて消えると中から大豊姫さんが現れた。


巨大な水の塊が空中で渦を巻、その水の塊が砕けると大海姫さんが現れる。


その姿に、兵たちが歓喜した。

「天使様が助けに来てくれたぞ!」

「邪悪な魔王なぞ、これで終わりだ!」

「マリユカ様に厚い信仰を!」


口々に叫ぶが、その熱狂を無視するように自分は大炎姫さんに大きな声で声をかける。

「大炎姫様!これから大神殿も攻め落としてくるっす。真理由華国に味方しないでおいてくださいっす。」


すると四人の大天使から、威厳に満ちた返事が返ってきた。


「あいわかった。われらは見守ろう。」

「マリユカ様への信仰を持つものは魔王であろうと差別はせぬでござる。」

「あなたにも、平等に我らの祝福を。」

「魔王君、アホどもと君の喧嘩、楽しませてもらうよ。」


大天使たちの声は不思議なほどよく響いた。


どうやら、200メートルほど離れた大神殿を囲む兵たちにも聞こえたようで、明らかに動きが止まっている。

大天使たちは移動して、そのまま空中を飛んで大神殿を四方から囲む。


それを下から見上げる聖騎士たちは混乱していた。

大天使に跪き、口々に疑問を叫ぶ。

「なぜですか!なぜ信者たる我らにお味方してくださらないのでしょうか。」


その連中を楽しそうに空から大海姫さんが見下ろす。

「簡単さ、マリユカ様は真理由華国の嘘ばっかりの布教がお気に召さないそうだ。あんたらも真理由華軍としてがんばって戦ってもいいけど、この戦いで死んだ真理由華国の兵士は私の地獄に連れて行くから気をつけな。嘘の教義を布教した罪は重いよ。あははははは。」


大海姫さんのツインテールは捻じれて天に向かっていてまるで立派な角のようだ。


その言葉で聖騎士たちは跪きながら混乱している。

もう大丈夫だろう。


「受付子、大神殿の壁も消去してくれ。歩いて堂々とし侵入したい。」

『はいのはいのはーい。今ぱっぱとやりますよ。はいどうぞ。』


目の前で大神殿を囲む壁が消えた。

なかではギュウギュウ詰めになった魔物を、必死に押し返す聖騎士たちがいる。


壁の中にいた聖騎士たちにもさっきの声は聞こえていたみたいで、空に浮かぶ大天使を見ても歓喜の姿を見せない。


それどころか、おびえた目で剣を振っていた。

魔物が来るから逃げられない。

だが、殺されれば地獄に行く。


信仰心が深いからこそ、連中はおびえていたっす。

死んでも天国の門は開いていないのだから。

死んだ先に神がいないのなら、死ぬのは本当に恐ろしい。


だから自分は大声で受付子に叫ぶ。

「大神殿の魔物を待機モードに変更!」


すると魔物たちがぴたりと動きを止める。

自分は城から飛び降りると、優雅に歩いて大神殿に向かう。


途中に聖騎士もいたけど、だれも手を出してこなかった。

よく考えたら、ここはダンジョンの外だから死んだらヤバイっす。

でもいまさら引き返せない。


優雅に歩いて進む。

途中、一般の人と思われる人も隠れてみていた。


だからこそ、余計堂々と神殿の敷地に入ってみる。

やっと安心できた。

魔物をどけながら大神殿の入り口に向かう。


入り口の聖騎士の前に立った。

「で、あんた達はどうするっすか?自分的には今は生き残ってチャンスを待つことをお勧めするっす。」


全員、バラバラ剣を捨てた。


むごい…そう思ったす。

彼らは信仰に生きた。なのにその信仰が間違っていたなんていまさら言われても困るだろうに。

目が混乱で揺れている。


自分はそんな無気力な聖騎士達を無視するように建物に入った。

建物の中にもたくさん人がいる。


でもみな迷っているよう。

大天使の口からでた言葉は、それほど重いのだろう。


大神殿は塔のような高い場所に教皇の部屋がある。

らせん階段をゆっくり上り一番上の部屋に着く。


まったく無抵抗に教皇の部屋まで来た。

ドアを開ける。


すると白髪が似合うおじいちゃんが一人でこっちをにらんでいた。

教皇だ、服でわかる。


「魔王よ、大天使様の幻影で我らをだますか。」


さすが教皇、まだ耐えている。

でもそれもそう長くはないっすが。


「真理由華国は、危機になると天使が助けにくるそうっすね。」

「そうだ。かならず助けに来る。」


自分は傍にあった椅子に座った。

「それは誰が言ったんすか?原点書には書いてないっすよ。大天使さんたちも知らないっていってたっすよ。」


「嘘だ!」


「嘘を言ったのは、天使が助けに来るって言い出した人っすよ。あとマリユカ様は根の食べ物も好きらしいっすよ。」


「嘘だ!惑わすな魔王!」


「嘘じゃないっすよ。夜の商売の女性も頑張ってるから好きだそうっすよ。」


「嘘だああああああああ!」


手に小刀をもって自分に向かってきた。

でもスっとよけて小刀を奪う。

「冷静になるっす。外に大天使さんがいるんだから聞いてみればいいじゃないっすか。」


教皇さんは走り出した。

階段にではない。

窓に向かって。


「マリユカ様の愛を我らに!」


叫びながら飛び出す。

するとマリーちゃんみたいな声がどこからともかく聞こえた。


『貴方達は気持ち悪いからいやでーす』


グシャリ


教皇は落下して頭が砕けて死んだ。

死の瞬間に、信仰した神からの拒絶の声を聞く。

本当に恐ろしいことだと思った。


この様子を見ていた聖騎士たちは心底恐怖した。

死を恐れぬ狂信者だからこそ、信仰に拒否されることを心の底から恐怖した。

お読みくださりありがとうございます。

次回、魔王、マグナムを使って大人になる。

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