藤木哲也 その12
人物紹介
大天使:天界の偉い人。長道とかと気軽に接してるので忘れがちだが、かなり偉い。
地獄天使:エロい。とにかくエロい。そして強い。地獄の亡者にとってご褒美と紙一重なのがマリユカ様のご慈悲。
―藤木哲也 その12―
まずは全館放送で警告を流したっす。
『アテンションプリーズっす。このダンジョンは明日、真理由華国の中枢を奪う行動をすることになったす。急で悪いんすが、戦闘が始まったら何が起こる変わらないので明日いっぱいで急いで退去をお願いするっす。0時を過ぎて明後日になったらダンジョンは戦場になるかもっす。』
この放送を一時間に一回は流した。
これでみんな逃げてくれるはず。
さてこっちは急ピッチで魔物や罠のストックを増やし、行動の予定を綿密に始めた。
壁を作って隔離した状態で少しずつダンジョンを伸ばす。
壁さえつなげれば、すぐに活動できるように事前に途中までダンジョンを伸ばしたり罠を設置したりしておくのは大事っす。
とくに魔物は倉庫から全部出して大雑把に設置しておけば、後から素早く再配置できるので伸ばしたダンジョンに魔物を全配置。
次の日
寝ていたら、朝からまた美少女の魔栗鼠に叩き起こされた。
「魔王様!今日は決戦ですよ!さあ起きてください!」
だから布団をひきはがさないで!
男のマグナムは朝にマグナムなんすから。
「いまさら恥ずかしがりすぎですよ。」
パンパンとマグナムを叩いて魔栗鼠は寝室を出て行った。
そこまでするなら、もっとこう一歩進んだことをしてくれてもいいと思うす。
でも今の行動で、魔栗鼠への好感度が30%上昇した秘密。
着替えて朝食の席に行くと、いつもよりも人が多い。
知らないお姉さんたちが沢山居た。
いや、よく見ると思いだした。天界であったことがある。
自分を見つけると、悪炎姫さんが彼女たちを紹介してくれる。
「おはようございます、魔王殿。今日は決戦ですのでナガミーチ殿の指示で味方を呼んでおきました。」
「おはようございます。えっと、大天使のみなさんっすよね。よろしくお願いします。」
すると、朝食の席に座っていたお姉さんたちがニコやかにこちらをみた。
大天使の、大空姫さん、大豊姫さん、大海姫さん。
もしかして、四大天使が勢ぞろい?
そこにナガミーチ師匠とデルリカさ、マリーちゃんが転移でやってきた。
なぜか大豊姫さんだけがビクっとおっぱいを揺らしてビビってる。
ナガミーチ師匠は平然と大海姫さんの隣に座り、大天使さんたちと歓談をはじめた。
「みなさん、もう来ていたんですか?戦力的には十分なはずですからシンボル的に活躍してもらえると嬉しいです。」
大海姫さんが楽しそうにナガミーチ師匠の肩を抱く。
「そりゃ来るよ。国を亡ぼすなら『冥府と混沌』の大天使である私は欠かせないからね。待ちきれなくて朝からきちゃったよ。ナガミーチ君の指示に従うから好きに使ってよね。」
天界でも思ったけど、この二人は仲がいいっすよね。
友達っぽい気安さがあるっす。
大豊姫さんは席を立ってナガミーチ師匠の隣に座ろうとして、マリーちゃんのパンチですっ転んだ。
バインバインとおっぱいが揺れるさまは圧巻っす。
そして涼しい顔でマリーちゃんがナガミーチ師匠の隣に座る。
マリーちゃん、そのおっぱいさんは大天使っすから無茶しちゃだめっすよ。
魔栗鼠はさっきから直立不動でテーブルのそばに立ってい居る。
そこで大空姫さんが口を開いた。
「魔栗鼠、そなたは確か大海姫の率いる地獄天使でござったよな。なぜここに居るでござる?今回は大炎姫の担当であったはずでござるが。」
「はい!ダンジョンといえば悪魔というナガミーチ殿のご指示により、私が地獄からスカウトされました!」
自分は驚いてガタっと立ち上がる。
「え!魔栗鼠って天使だったんすか?てっきり悪魔かと思っていたっす。」
大海姫さんがツインテールを揺らしながら楽しそうに自分を見た。
「地獄の天使の見た目は大体こんな感じだよ。この娘はできが悪くてね、悪人を血祭りにあげる訓練としてダンジョンにおくったんだけど、すこしは腕を上げたかな。」
直立不動のまま魔栗鼠は叫ぶ。
「はい!毎日探索者を倒して腕を上げました。最強操演のジャーニーさんと絶対勇者のカイルさんには遅れを取りましたが、それ以外では頑張って殺しまくりです。」
「そうかあ、じゃあどれくらい腕を上げたか楽しみしているよ。」
「はい!」
魔栗鼠の額には汗が光っている。
「もしかして、天使の上下関係って厳しいんすか?大炎姫さんにはそこまで緊張して接してなかったように思うんすが?」
魔栗鼠に聞くと魔栗鼠は、緊張した顔のままこっちを見た。
「穏やかで優しい大炎姫様と違い、大海姫様は特別怖いですから。まして私の上司の上司の上司の上司です。ものすごく緊張するのは当然ですよ。」
そうなんだー
自分には、フランクなツインテールアイドルにしか見えないっす。
ツインテールアイドルの大海姫さんが、ナガミーチ師匠をガッシリ捕まえながらヒッヒッヒと笑っている。
「今回は地獄天使も200ほど連れてきたよ。人間どもには悪魔にしか見えないと思うから、適当に使ってよ。ダンジョンで待たせてあるから気が向いたらチェックしてね。」
自分は少し好奇心がうずいた。
すぐに魔王の間の扉まで走っていき、ダンジョンに出てみる。
そこには200人のコケティッシュな小悪魔たちがくつろいでした。
地獄の天使?
いや、ここが天国っす。
見た目が凄くエロいんすが。
まさに小悪魔。
自分に気づいた地獄天使の一人が近づいてきた。
しなだれるように体を密着させて来る。
「あら、あなたが魔王君かしら?今日はよろしくね。」
そして、色っぽい手つきで自分の顎を人差し指で優しくなでてくる。
ううう、マグナムが変形準備にはいったす。
ペロリと舌なめずりをして、こっちのことをジロジロ見ないでほしいっす。
ど、どうしよう。
その様子に気づいたほかの地獄天使も小悪魔な表情でワラワラ近づいてくる。
「うふふ、独り占めはだめよ。こっちにも魔王君の味見をさせてよ。」
そういいながら、我がマグナムをさすってきた。
うおお、わがマグナムが敏感に反応!
そして味見と言った?
なにを味見するんすか?
ヤバイ、いま自分はエロ系ピンチの予感っす。
ワクワクしてくるっす。
クッ、殺せ(性的な意味で)
覚悟完了しそうになった。
そこで魔栗鼠が飛び出してきた。
「ちょっとみんな、今はエロいことしている時じゃないよ。魔王様の帰りが遅いから大海姫様がイラっとした顔しているよ。」
すると、自分の周りにいた小悪魔たちが青い顔をして飛びのいた。
…よっぽど怖いんだな。
慌てた魔栗鼠に手を引かれてテーブルに戻っる。
するとニヤニヤした大海姫さんと目が合った。
「だめだよ魔王君。ナガミーチ君は童貞の呪いにかかってるのに、その彼のすぐそばで凌辱されるとか可哀想でしょ。」
そっか、大海姫さんは友達思いな大天使さんなんすね。
体育会の先輩ではよく居タイプなんで理解できる。
下には厳しいけど、上には忠誠。同格にはどこまでも友情に熱い。そういうタイプと見たっす。
そんな大海姫さんの言葉で、ナガミーチ師匠は思い出したように隣に座るマリーちゃんの肩をガッシリつかむ。
「忘れてた!前にその呪いは解いてくれるって言いましたよね。解いてください。」
にっこり微笑みマリーちゃんはナガミーチ師匠の頭をなでる。
「これが終わったら解けるようにしました。真理由華国が滅ぶと同時に呪いが解けますよ。」
「よっしゃ、滅ぼしてやります!」
ナガミーチ師匠に気合が入る。
あーあ、真理由華国は絶対に滅んだな。
だって、いつも気の抜けたナガミーチ師匠に気合っすよ?
もう絶対滅ぶしかないでしょ。
すると自分を見る。
「フジキーさん、今回はダンジョンから魔物っを噴出させて、城と大神殿を占拠します。そのとき大天使のみなさんは空中から『めだつように』ことの成り行きを見守ってもらいます。ですので今回は大炎姫さんを戦力として使えませんが頑張ってください」
その言葉で悪炎姫さんが、シュウウと天使姿に変わる。
大天使の筆頭にふさわしい、豪華な天使姿だ。
さすが我が心のマドンナ。
神々しいっす。
そのあと、ナガミーチ師匠に今回の戦いの作戦の説明を受ける。
その結果、一番大事なのは自分がいかに目立つかであるということを強調されたす。
魔王に滅ぼされるのに、天使に見殺される真理由華国というシナリオが必須なせいらしいっす。
そのため、明らかに人間なマリーちゃんとデルリカさんはお留守番っす。
人間が魔王軍にいては不都合があるらしいっす。
デルリカさんはプリプリ怒った。
「納得できませんわ。ナガミーチ、わたくしは行きますわ。」
そのデルリカさんの腕をつかんだナガミーチ師匠。珍しくイケメン風の落ち着いた声を出した。
「こっから先は我侭は許しません。僕の仕事を邪魔するのでしたら相応の覚悟をしてくださいね。」
そこで怯んだ目をしたデルリカさんは、スネてナガミーチ師匠の背中をバチンと叩く。
「もう!お兄ちゃんのバカ!」
叫んでどこかに転移してしまった。
ナガミーチ師匠は大げさに痛がるふりをして、優しくマリーちゃんをみる。
「困ったものですね。いっしょに慰めに行きましょう。」
「はーい、お菓子くれるなら良いですよー(にぱあ)」
そしてこっちを見た。
「では、こっから先は僕も退場します。政権の奪取と宗教的な権威の破壊をお願いしますね。」
自分は強い言葉で返事を返す。
「まかせてくださいっす。0時を過ぎたら一気にケリをつけるっす。」
その言葉にうなずき、ナガミーチ師匠はマリーちゃんと一緒に転移で消えていた。
そして気づいた。
あれ
いつものメンバーで残ったのは魔栗鼠と受付子だけだと。
なんか決戦なのに急に心細い。
だけど、今回は魔栗鼠クラスの強さを持つ地獄天使が200人もいるし、魔物も出し惜しみなしで送り出す。
もしかすると、いつもよりも楽かもしれないくらいかも。
よし、弱気にならないぞ。
最後の準備をしようと「ハーレムダンジョン」を開くと、なんか違和感を感じた。
あれ?商店街に人が多すぎるのでは?
よくみると、デルリカさんがナガミーチさんに『たこ焼き風』をせがんでいる。
でもこの光景はおかしい。
だって、商店街が機能している。
なんでみんな逃げていなんすか!
あわてて自分は商店街に、転移した。
転移してみると、商店街は全く普段通り。
普通ににぎわっている。
あわてた。
「ちょっとみなさん、なんで普通に商売をしているっすか!早く退避の準備をするっす。」
すると近くにいた八百屋のおじさんが落ちつた口調で答えてくれた。
「お、魔王の旦那じゃないかい。俺たちは逃げないぜ。だってここは魔王の旦那が用意してくれた俺たちの街だ。逃げるわけにはいかないぜ。」
「でも、戦争が始まれば何があるかわからないっすよ。」
「それでも逃げられないのさ。もうここが俺たちの街だからだ。追い出されるならともかく逃げるなんてできないさ。大事な心の居場所なんだ。みんな旦那と運命を共にする気さ。旦那は負けないだろ、だったら心配いらないぜ。」
自分はさらに説得しようとした。
すると周りに人だかりができていることに気づいた。
周りから明るい声をかけてくる。
「そうだよ、どうせ私達はここが無きゃ首つるしかなかったんだ。ここと一緒に死んだって怖くないさ。」
「魔王のクセに心配するなよ。こっちは勝手に一緒に残るんだ。気にするなよ。」
「アンタはアンタの使命を果たしな。こっちも勝手にやるからさ。」
そして今川焼屋の露店を手伝っている、小さい女の子が駆け寄ってきた。
「魔王様、ココを守ってください。」
焼きたての今川焼を差し出してきた。
受け取って一口食べる。
甘くておいしい。
そして、吐きそうになるほど重かった。
軽い気持ちで決戦を選んだけど、それはこの商店街の人たちを放り出す事になりかねなかった。
今更ながら、自分の浅はかさが憎くなる。
でも、大天使まで応援に来てくれているのに退くことはできない。
一気に今川焼を食べると、無理やり微笑んだ。
「わかったっす。みんなの居場所は自分が保証するっす。1~2日で終わらせるから待っててほしいっす。」
「はい。」
女の子の頭を軽くなでると、すこし離れたところにいる人の傍に歩く。
そこでは熱い『たこ焼き風』をデルリカさんに無理やり食べさせられて苦しんでいるナガミーチ師匠が居た。
「ナガミーチ師匠、自分は軽はずみだったっすか?」
デルリカさんの手を一旦横によけると、真面目な顔で向ってくれた。
「若さとは思慮の浅さを招くものです。でもそれがいつも間違っているというわけでもありません。あとは結果次第ですよ。」
「自分は、ここの人たちのことを軽く思っていたっす。」
「あんなに愛されているのに、それに気づかなかったんですものね。悔やむのはわかります。でも、だからこそ、情けない姿は見せてはダメです。すこしでも迷ったら知ったような顔でほほ笑んでください。弱気になったら些細なことで豪快に笑ってください。そういう事で周りの人を安心させるのも魔王さんのお仕事ですよ。」
「さすが師匠です。ありがとうございます。」
自分は民衆に向いた。
少し離れた位置から見ると、不安を押し殺してるのがよくわかる。
それでも残ってくれている。
だったら、自分がやることは一つっす。
「あっはっはっはっは、じゃあ皆さんは少し待っていてくださいっす。少し世界を良くしてくるっす。」
すると横でナガミーチさんがつぶやいた。
「精霊魔法発動。フジキーさんを魔王の間に転送。」
パリンという音と共に玉座に帰ってきた。
「ハーレムダンジョン」の画面には、また熱い『たこ焼き風』を無理やり食べさせられて、泣いているナガミーチ師匠が映っている。
今ならわかるっす。
呑気に見えるその姿は、周りの人たちへ安心を与えるための姿なんすね。
なるほど賢者っす。
そのあと、地獄天使さんたちも魔王の間に入れて作戦会議を延々行った。
お読みくださりありがとうございます。
次回は、急展開です。




