藤木哲也 その6
今回はたくさん死にます。
そういうのに苦手な人は、最後のあとがきに書いてある、あらすじだけ読んでいただければOKです。
―藤木哲也 その6―
敵の指揮官は、不敵な表情で叫んだ。
『全軍前進!目指すは魔王の玉座。真理由華国に祝福を!』
『おおお』
軍隊は前進をはじめ、受付にも10人の兵士がなだれ込む。
受付子、大丈夫かな?
すると受付がすっと消えてしまった。
どこに行ったか探したら、ダンジョンの中央部ちかく、1-66にいた。
そこで受付子は10人の兵士と対峙する。
『受付に押し入った人には罰を与えます。覚悟してくださいね。』
受付子の周りに、ロケットパンチが30本現れた。
兵士は慌てて剣を抜いたが、あっけなく受付子のロケットパンチで全員吹き飛ばされて絶命してしまった。
受付子強い!
さすが受付、弱いわけがないか。
そうだ、指示を出さなくちゃ。
「緊急指令っす。5千の敵が侵入したっす。基本方針は前回と同じっす。魔栗鼠と悪炎姫さんと甘ロリマリーさんはダンジョンの中央近くで待機。軍が全部突入完了したら、出口にデル魔女さんが門番をお願いしまっす。」
すると4人から返事が来る。
『はい魔王様、ではわたしは中央付近で待機します』
『わーい、じゃあ私は右翼で待ちかまえちゃいまーす。』
『では必然的に私は左翼ですな。フジキー殿、細かい指示はお願いします。』
『ふふふ、全軍がダンジョンに入りきったら教えてくださいませね。ワタクシの素敵な舞をお見せいたしますわ。』
「了解っす。ではみなさんを今からダンジョン四天王と名付けるっす。ではよろしくお願いします。」
20分ほどで敵がダンジョンに入りきった。
50人ほどダンジョンの外で待機している兵がいたが、元に戻ってきた受付の受付子により、全員ダンジョンに放り込まれてしまう。
可哀想に。
全員放り込まれると、出口を背に現れるデルリカさん。
白いロリータ服に、返り血のついたピエロのお面をつけて、手には血みどろの斧を持っている。
夜に見たら、絶対トイレに行けなくなりそうに怖い。
『ひいい、白い魔女だ!はやく進め、ここに居たら殺されぞ、はやく進んでくれ!』
一番出口に近い場所にいた兵士は必死の形相で悲鳴を上げた。
しかし、彼はそれ以上しゃべることはない。
楽しそうにデルリカさんに真っ二つにされてしまったから。
このあと、出口付近にいた兵士60人ほどが血祭りに会う
一瞬で。
デルリカさん、そっと仮面を外す。
頬を染めて、エロい表情をしていた。
『ふふふ、今日は楽しめそうですわ』
あう、またデルリカさんのこの顔だ。もう、やめてくださいよ、マグナムが反応してしまったすよ。
急いで足を組んで、反応してしまったマグナムを誤魔化す。
出口で悲鳴も上げる事も出来ずに大量に殺さている時、軍隊の先頭はドロップする宝箱を物色しながら楽しそうに進んでいた。
『こんどはオリハルコン製の剣ですよ。こりゃ役得ですね。』
楽しそうに魔物を倒しながら進んでいる軍隊。
だけど、それは今だけ。
一応警告をしようかな、全館放送でメッセージを送る。
『マイクチャック、マイクチャック。えー真理由華国軍のみなさん、もう少し進むと我がダンジョンの四天王と遭遇する事になるっす。勇者でも勝てなかった四天王の力を思い知るっす。では健闘を祈るっす。』
今の放送に、『バカにするな』とか怒鳴って怒る兵士が何人もいた。
でも怒るのは筋違い。だってバカにしているのではなく、自分は同情しているのだから。
可哀想に、あの化け物達と戦うなんて。
しかもこの人達、そもそもレベルが8~12程度。
普通に配置されている魔物にすら被害者を出している。
まさかと思うけど、出口を封鎖するだけで、2~3日で全滅なんじゃないの?
だが、うちの四天王はそこまで気長ではないから待ってくれないだろうけど。
それに軍が進むしかないなら必ず四天王と当たらざる得ない。
ダンジョンは、細長い作りになっている。3列の状態で延々長く。
なぜ3列で伸ばしたかというと、3列あれば結構な迷宮が作れるから。
各部屋の出口を前方につけるか横につけるかで迷子にさせることもできる。
そんなわけで3列で伸ばしたんす。
・・・もちろん、ナガミーチさんアイディアっす。
ナガミーチさんは、ほんと地味なところに気が回るす。
なので3人居れば、完全封鎖も可能なのがこのダンジョンの特徴。
なのに、真理由華軍は最初に中央を一点突破しようとしてきた。
せっかくなので、魔物や罠を「ハーレムダンジョン」で進行の邪魔にないらないように再配置し、彼らが軽々と直進できるようにしてみた。
その甲斐あって、スムーズに真理由華軍は魔栗鼠までたどり着いた。
指揮官は魔栗鼠を見つけると、高笑いしながら指揮をする。
『小娘が出たぞ。羽が生えているということは敵であろう。構わぬ、蹂躙せよ!』
軍が盾と槍を並べて密集形態で直進しようとした。
魔栗鼠は羽を広げて槍を構える。
『私はこのダンジョン四天王の1人、魔栗鼠。みさなんを一生懸命に殺します、覚悟しなさい!』
宣言するなり、飛び上がり空から次々に兵を殺す。
三又の槍を振るたびに空間が裂けて、兵が飛び散る。
あっという間に兵士達が死体になる中、よく見るとポツポツと光になって消える兵士たちがいた。
それを見ていて、最近の救済印だけを購入して帰っていった人たちのことを思い出したっす。
「ああ、そういう事っすか。前回に突撃してきて生き残った人たちの話を真面目に受け取った兵士が、この日のために自腹で買っていたっすね。」
するとナガミーチさんが後ろから補足してくれた。
「そうですね。しかも前回は四天王うちの魔栗鼠、デル魔女さん、悪炎姫さん、までは情報を持ち帰られています。魔栗鼠が四天王最弱なのはバレているはずなので、ここを一気に押し込みたいでしょうね。」
なるほど。
でも自分だったらどうするか考えてみた。
「自分はこういう戦いに詳しくないんすが、魔栗鼠を相手にして大きな犠牲が出たら、まだ見ぬ1人が魔栗鼠よりも弱いことを祈りつつ、そっちを目指すかもしれないっす。」
ナガミーチさんは苦笑いをする。
「そもそも十分な調査なしで乗り込んできた段階で指揮官は無能ですから、その可能性は高いかもしれません。もっとも、まだ見ぬ強敵『甘ロリマリー』が最強なのは皮肉なことですが。」
その一言に驚いたっす。
「え?デルリカさんや悪炎姫さんより強いんすか?う、う、嘘っすよね。」
すると困った表情をされた。
「そもそも甘ロリマリーちゃんがロボットを使ってる理由は何だと思います?あれは武器ではないですよ。おもちゃです。マリーちゃんはオモチャで遊んでいる程度の認識なんです。」
あれは武器ではない・・・だと。
「じゃあマリーちゃんが本気を出すと、どうなるんっすか?」
「見当もつきません。少なくても本気で『遊びだす』と、デルリカさんは不幸に泣き叫ぶしかできなくなるし、悪炎姫さんですら体を砕かれて悲鳴を上げるくらしかできません。まして『本気で戦いだす』とどうなるかなんて…見当もつきません。」
「うわあ、無邪気系美少女だと思っていたら、化け物だったんすね。」
ナガミーチさんは力なくうなずく。
「僕は、マリーちゃんのあの子供みたいな無邪気さは、最強の証だと思っています。マリーちゃんはこの世に恐れるものがないし、だれもマリーちゃんに逆らえないからあの人は無邪気の子供のままでいられるんです。あの無邪気はそういう性質の無邪気さです。」
思わず、真面目な顔になってしまった。
「そして、戯れに人も国も滅するんっすね。」
「そうです。人も国も、彼女の前では積み木のオモチャでしかないですね。でもそれを彼女に叱る事ができる人はいないし、まして止めることなんて誰にもできません。ですから僕にできることは、最小の被害で彼女を満足させることだけです。」
ううう、高校生には恐ろしすぎる話っす。
聞くんじゃなかった。
でも大丈夫。マリーちゃんはナガミーチさんにしか興味がないように見えるす。こっちのことなぞ目にも入っていないから。
本当の意味での味方ではないかもしれないけど、嫌われて敵になることも無さそうっす。
今回ほど自分が女の子に全然興味を持たれていないことを嬉しく思ったことはないっす。
そんな話をしているあいだに、真理由華国軍はいったん退いていた。
別の進路へ進むことを検討し始めたようだ。
右ならマリーちゃん。左なら悪炎姫さん。
指揮官の会話を読む。
『大雑把な犠牲の概算は?』
『ハッ、少なくとも500人は犠牲になりました。四天王といっていましたが、あんな化け物があと3人もいるのかと思うと気が遠くなります。』
指揮官は厳しい顔で右を向く。
『だがあの強さでは、あの魔栗鼠とかい悪魔娘が四天王最強であろう。右に道を変えるぞ。別の道を通ればほかの四天王がいるだろうが、そっちの方が楽であろうよ。』
右に進路を変えて進行し始めた。
右に行くとそこは大きなフロアーになっている。
そのフロアーの一番後ろで、甘ロリマリーは紙袋をかぶって、ロボットの上に立って待っていた。
ちなみに紙袋は、さっきナガミーチさんに無理やりかぶらされていたっす。
敵が甘ロリマリーという初見の敵だったことに司令官お顔が緩んだ。
『運がいいぞ、先の報告にあった悪炎姫やデル魔女という化け物ではない。ゴーレム使いということはヤツ自身は強くあるまい。しかもフロアーが広い。数で押し込むぞ。』
甘ロリマリーが『わーい、沢山来ましたー。マリーも頑張っちゃうますよー』と楽しそうな声を上げて動かないことをいいことに、真理由華軍はドンドンフロアーに兵を入れる。
1000人ほど入れたところで、指揮官は大声を出す。
『ゴーレムの動きを止めてコイツを排除するぞ。全軍突撃!』
兵は大声をあげながら甘ロリマリーに駆け寄る。
素早くマリーちゃんがロボットの背中から搭乗すると、すぐにピンクロリータ風のロボットが動き出した。
『わーい、まずはスキップを見せてあげますね。』
腰に手を当てて、ロボットが兵士に向かってスキップしてつっこむ。
全長5メートルといえば二階建ての家と同じくらいの高さっす。
その大きさのロボットがスキップをしながら人混みに突っ込んだらどうなるか?
阿鼻叫喚っす。
威勢よく突っ込んだ兵士たちは、何もできずに踏み殺される。
ピンクロリータのロボットの足元が、赤いブーツでも履いたようにきれいに染まっていった。
『るんららん、るんららん。私はスキップ上手なんですよー』
ロボットの楽しそうな動きだけみればコミカルだけど、その足元で何もできずに次々に人が死んでいくのは恐ろしい光景だった。
指揮官が恐怖で声を裏返しつつ絶叫する。
『弓兵!魔法兵!仲間を巻き込んでも構わん、アレを止める。』
一斉に矢と魔法がロボットに降り注いだ。
だが、見えないシールドにすべて弾かれる。
甘ロリマリーは矢や魔法が飛んできた方向に腕を向けた。
『わーい、飛び道具勝負ですねー。じゃあこっちも撃ちまーす。カイルには全然効かなかったけど、この人たちには効くかなー?』
いうなり両腕に装着されたマシンガンを撃ちまくった。
ババババババババ
ババババババババ
ババババババババ
ババババババババ
数十秒は掃射していた。
マシンガンの弾丸は、兵士たちの盾も鎧も軽々貫通してバタバタと殺す。
このマシンガンの掃射だけで、部屋の中にいたほとんどの兵は何もできずに、ボロボロの死体に変わってった。
『今、弾を補給しますから少し待ってくださいねー。補給したらまた勝負ですよー』
可愛いマリーちゃんの声がそう告げると、ロボットは背中からマガジンを取り出し弾丸を補給しようとする。
その隙に司令官が振り返って逃げようとしたら、背後の兵がほとんど倒れているのが見えたようだ。
『今のうちに距離を…ひい!』
生きているのは司令官のそばにいる数十名だけ。
床はまるで、死体で出来た大地のようだった。
司令官は恐怖で、魂からの絶叫をする。
『うわああああ!』
事態を把握した生き残り達は、我先にと死体を踏みしめて走りだす。本能が無意識に逃走させたのだろう。
出口を抜けなければ生き残れるずがないから。
皮肉な話だが、生き残っていたのはロボットに一番近かった人間だけだった。
司令官はたまたまロボットに『近すぎた』。それが生き残った理由なのだ。
大きなロボットがマシンガンを構えたので、銃口は地上3メートルくらいの場所。
そのおかげ、ロボットに近すぎた司令官の頭上を弾丸が飛んで行った。
司令官の横を走っていた二人が、追いかけてきた甘ロリマリーのロボットに捕まる。
『逃げる悪い子は、頭を引っこ抜く刑です。』
ぐぐやあああ
ゴギゴギゴギ
悲鳴なのか音なのかわからない響きを背で感じて走る司令官。
二人が首を引き抜かれている間に、司令官はなんとか隣の部屋に逃げ込めた。
しかしそこで足を止めずに、さらに兵をかき分けてもう一部屋逃げて、そこでやっと倒れるように止まった。
『はあ、はあ、はあ。化け物か。あれと出会って勇者は生き残ったのか?ありえん。』
盾や鎧を貫通する重機関銃で至近距離から掃射されたら、そりゃあ、たまんないっすよね。
この数分の戦闘で1000人近い兵士が死んだっす。
司令官は、そのあと部隊長を集めて会議を始めた。
その会議は2時間たっても終わる気配がない。
部隊長の半分くらいが『撤退』を要求しているのに対して、司令官とほかの部隊長は『前進』を主張しているから。
5000人もいると、軍の後ろの方の人は前方の惨劇を知らない。
それどころか後方にデル魔女がいるのを知っているので『前進』を主張する。
だが前方で四天王と戦った生き残りの部隊は、恐怖で『退却』を主張するのだ。
司令官は、戦果を上げることができず大量の犠牲を出してしまい、なおかつ先行して入れた勇者からきちんと話を聞かなかったことも追及されては立場が危ない。だから一か八か『前進』して戦果を残したいと思っている。
その結果、一か八か左側の道を通って前進することになった。
高校生の自分から見ても、司令官の思惑は特に愚かっす。
するとナガミーチさんは優しく教えてくれた。
「博打うちの心理ですね。取り返しのつかない損失を出したり、破滅の危機を感じたりすると、普通の人は愚かにも『運を信じて祈るように進む』ことを選びます。ですがそれをする人が愚かなんではありません。損失や破滅の可能性の元を取っていないのに、なおかつ『やめる』ことができる人が優秀なんです。もしも追い詰められたり、大きな損をしたらこの場面を思い出してください。」
自分が向こう側だったらどうだっただろうか?
わからないっす。
そう、追い詰められていない人は、追い詰められた彼らの愚かさを理解できない。
それだけは高校生の自分でも理解できたっす。
同じ危機感の中に入らないと、きっと理解できない。
そんな、限界を超えた判断を司令官はしたんす。
左側に行くと、また大きなフロアーになっている。
その部屋の一番奥に、悪炎姫さんは待ち構えていた。
司令官は、フロアーの奥に金髪縦ロールを見つけたとき、一瞬絶望的な顔になったが、すぐにブツブツ言い出す。
『悪炎姫とかいう奴の情報は、レベルの低い一人の兵士から上がった分だけだ。もしかすると弱いかもしれない。』
司令官はそのまま前進して、フロアー内に1000人ほど入れる。
そのあいだ、悪炎姫さんはずっと腕を組んで待っていた。
すると小声でチャットが入ってきた。
『フジキー殿、もしも命乞いをされたら、受けてもよろしいでしょうか?』
さすが天使、ほかの人と違って慈悲がある。
当然の返事をした。
『お任せましまっす。自分としては撃退できればOKっすから』
『ありがとうございます』
悪炎姫さんはそのあとも、軍が配置を終えるまで根気よく待った。
すると司令官はいきなり叫ぶ。
『一斉掃射と同時に突撃せよ!撃て!』
矢や魔法や投槍が一斉に悪炎姫さんに向かう。
すると悲しそうな顔でぼそりとこぼした。
『おろかな、死に急ぐか。』
悪炎姫さんは剣を抜いて一閃する。
その瞬間、矢も魔法も槍もすべて燃え尽きた。
兵士達は遠距離攻撃が焼き落とされたことに気づかず走りこんでくる。
『人体発火!』
悪炎姫さんが兵士たちを指さした。
それと同時に、指から大量のビームが弧を描いてすべてに兵士に飛ぶ。
そのビームが当たると、フロアー内にいたすべての兵士の体が燃えた。
『ぐああああああ』
すべての兵士が悲鳴を上げながら、体内から燃える炎を消すこともできずに、バタバタ倒れる。
一分ほど火が燃え続けたが、火が消えるとフロアーの中には人はだれもいなくなる。
兵たちが持っていた武器と鎧と盾だけが大量に転がっていた。
一回の魔法で全滅だった。
これと15分も戦ったカイルという勇者、すごすぎっす。
こうして突入した真理由華軍5000のうち、2500が死亡した。
今回のあらすじ
真理由華軍5000がダンジョンにおそいかかる。
デル魔女、甘ロリマリー、魔栗鼠、悪炎姫の活躍により、真理由華軍は2500に数を減らした。
だが彼らはまだダンジョンから出られないでいる。




