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藤木哲也 その3

登場人物紹介

フジキー:ダンジョンの魔王。16歳。

悪炎姫:正体は大炎姫。真理由華国には、腹に据えかねるものがある。

魔栗鼠:マリスと読む。のんきな小悪魔少女。だが強さは上級魔族より上。

デル魔女:デルリカの偽名。白いロリータ服にピエロのような仮面をかぶる。

―藤木哲也 その3―


結局、ナガミーチさんは、お菓子作りでデルリカさんに許された。

悪炎姫さんからいわせると、デルリカさんに許されて生き残ること自体が、かなり愛されている証明らしい。

たとえこき使われるとしても。


玉座の魔でテーブルを囲んで、みんなでのんびりしている。

いまナガミーチさんは奥のキッチンでお菓子を作っているから。


3時間くらいかかるといわれていたので、焦らず好きなことをしてくつろいでいる。

そうやって待っているのだけれど、そこに一人の少女がやってきた。

普通に正面から入って、地下10階まで歩いてきたのだ。

なぜ無傷?


少女はテクテク歩いてくると、当然のように目の前のテーブルに座る。

「ナガミーチのお菓子まだかなー。 (にぱあ)」

無邪気に微笑まれてしまった。


なんなんだろう?

ほかの人たちは当然のように受け入れているところを見ると、関係者なんだろうけど。

困惑しているとデルリカさんが紹介してくれた。

「魔王様、この子はマリーです。この子がどんな不条理なことをしても諦めて受け入れてくださいね。」


その言葉に悪炎姫さんを見たら、さも当然のように頷かれてしまった。

じゃあ、しょうがない。

「わかったす。」


そしてテーブルについてる人たちを見た。


黄金の美女、悪炎姫さん。

人妻バーサーカー女神、デルリカさん。

黒髪の無邪気系美少女、マリーちゃん。

小悪魔系コケティッシュ、魔栗鼠。

ドジっこ眼鏡受付嬢、受付子。


なんだろう、これってハーレムと表現していいんだろうか。

いや、だんじてハーレムではない。

女子からの、自分に対しての好感度が低すぎる。


周りに美人が沢山居ればハーレムだって思っていたけど、コレぜったい違う。

むしろ孤独感すら感じる。

寂しいほどに。


そこにナガミーチさんがお菓子をもってやってきた。

「お待たせしました、沢山作りましたけどデルリカさんはメチャクチャ食べるから、はやめに自分の分は確保してくださいね。」


するとデルリカさんが可愛くむくれる。

「もう、お兄ちゃんは一言おおいですよ。」


テーブルの上にドンと置かれたのはマドレーヌの山。

すぐに、見知らぬ黒髪のメイドさんが、お皿とお茶を並べてくれた。


全員に配膳し終わると、すっとナガミーチさんの懐にメイドさんは消える。

すごい、なんか今さりげなくすごいものを見た気がする。


でも誰もそこには触れない。


ナガミーチさんがマリーちゃんの横の席に着いたらデルリカさんが上機嫌で手を伸ばす。

「では、いただきましょう。」


ナガミーチさんは奥さんのデルリカさんを放って、マリーちゃんという子に食べさせてあげている。

ときどきデルリカさんも、ニコニコとマリーちゃんの口にお菓子を突っ込む。


まったくこの人たちの人間関係が謎だ。

しかも、お菓子を食べ終わると、ナガミーチさんはマリーちゃんを抱えて帰って行ってしまった。


残されたデルリカさんは結構機嫌がいい。

なんとなく、自分としてはビックリするほど自然に美女に話しかけてしまった。


「デルリカさん、ずいぶん上機嫌っすね。ナガミーチさんのお菓子がおいしかったからっすか?」


すると女神のようなニコニコを向けてくる。

「ワタクシが小さいころ、落ち込んでるとよくお兄ちゃん・・・ナガミーチがお菓子を作ってくれたのですよ。美味しいという意味ではシェフが作ったものの方が美味しいのですが、やはり子供のころの思い出の味は一流の味に勝りますわ。」


「ナガミーチさんの事が大好きなんすね」


「そうですわね。ワタクシが甘える相手はなんだかんだでお兄ちゃんでしたから。お兄ちゃんもワタクシが頼めば大体何とかしてくれるくらい、ワタクシの事が大好きですのよ。」


ふと天界の会話を思い出した。

「でも恋はしていないんすか?」


ニコニコしたままデルリカさんは頷く。

「恋とは遠いですわね。ワタクシの中でお兄ちゃんは、一生大好きなお兄ちゃんですし、お兄ちゃんにとってもワタクシは手のかかる我侭な妹ですわ。」


そこで魔栗鼠が口をはさんでくる。

「恋もしていないのになんで結婚したんですか?」


ふふふと微笑む。

「ワタクシも34歳で適齢を2倍も過ぎてしまいましたし、ナガミーチもマリユカさまの英知を手に入れる代償として生涯童貞の呪いを受けています。でしたら世間体を誤魔化す偽装結婚もよいかと思いましたの。どうせナガミーチが結婚相手でしたら、今までも一緒に暮らしていましたから何も変わりませんし。」


魔栗鼠はしばらく考えて結論を出す。

「つまり、兄妹で余生を過ごすために、偽装結婚しただけってことですか?」

「一言で言いますと、そんなところですわね。」


なんとも不思議な話だ。

でも、愛情はあるみたいだからいいのか?

ちょっと高校生な自分にはわからないけど、笑顔で暮らせるなら良いのだろう。

っていうか、デルリカさんって34歳なのか!ありえない美魔女だな。


自分なら、デルリカさんが倍の年齢でも全く問題なしっす。

その笑顔に、ときめくっす。


そんなことを考えていたら、受付から連絡が来る。

『警告を無視した侵入者あり。』


モニターを見る

表示では『探索者:戦士系:lv5相当』


弱い。

いきなり入り口直後の1-1のスライムにてこずってる。


ヤバイな、これ以上見ないでおこう。

これ絶対死ぬでしょ。


でも一角ウサギに攻撃されて深手を負ったら、いそいで逃げていった。

ふう、無駄死にしないでくれたか。


怪我した奴が受付で文句を言っている吹き出しが出る。

『怪我したのはそっちのせいだろ、治療くらいしろよ。』


警告を無視して中に入ったのはお前だろ、ずうずうしいな。


しばらく言い合いが続いた後、その男は捨て台詞を残し去っていった。

『しかるべき所に訴えてやる。後悔しやがれ。』


そういって去っていった。


やり取りを見ていたデルリカさんが扇子で口元を隠して嫌そうな顔をした。

「どこにでもバカが多くて嫌ですわね。」


そのあとも散発的に探索者が入ってきた。

でも、その日は運のいいことに、デルリカさんがいる地下2階へ続く階段までたどり着ける人はいなかった。


そんな風に散発的に誰かが入ってくるのを撃退し続けて数日。


その日も魔栗鼠マリスが、幼馴染風の起こし方をしてきた。

布団をガバッとめくる。

「おきなさーい、朝ごはんができますよ。」


股間のマグナムを隠すように丸くなって、いつもの言葉をつげる。

「5分後にいくっす。」

すると嬉しそうに「はやくしてくださいね」と魔栗鼠は出て行った。


この朝のイベントは嬉し恥ずかしだけど、マグナムを見られないかということだけが心配っす。


すぐに着替えて朝ごはんのテーブルに向かう。

すると、今日はサンドイッチだった。


美味い美味い、いくらでも食べられるっす。

朝ごはんを作っているのが美少女の魔栗鼠だと知ってから、余計美味い。

美少女補正はかなりっす。


食事が終わり、ダンジョンの管理アイテム『ハーレムダンジョン』のモニターを見ると、ダンジョンの外にたくさんの人がいるのが分かった。


なんだ?


すると受付から音声通信が来た。

『魔王様、たいへんなのです。真理由華国の軍がやってきました。その数およそ200。魔王様を討伐するといっていますが、もしも救済印を購入しようとしたら売ってもよいでしょうか?』


少し考える。

で、悪炎姫さん。と魔栗鼠をみた。

そこにデルリカさんが転送してきた。

「皆さま、おはようございます。外に敵の気配をたくさん感じますわ。本日は楽しめそうですわね。」

少し頬染めたなんともエロい表情で、白ロリータ服のデルリカさんが斧の刃をなめた。


う、ちょっとマグナムが元気なりそう。

服も脱がずにマグナムに刺激を与えるとは、恐るべしデルリカさん。

それとも自分が、Mなだけか?


モニター上で確認すると、敵の兵士のレベルは大体5~10。1人レベル14の人もいるけどそれが限界。

最初に来た『ベルセック聖騎士』の人たちは格別に強かったんだな。


そんなことを思いながら魔栗鼠をみると、いかにも悪魔っぽい好戦的な笑みを見せてやる気満々だ。

悪炎姫さんも静かに口元を緩ませて剣に手をかけている。


これ、かなりの大惨事になるな。

受付に返事をした。


「購入希望者には売っていいっす。商売は平等っす。そのうえで尋常に勝負をするっす。ただしこっちはけた違いに強いから、その覚悟だけしてもらってくださいっす。」


その声は敵の指揮官にも聞こえていたようで、笑っている。

『尋常な勝負か、よかろう。蹂躙してくれようぞ。全軍突入!』


敵が救済印を買わずになだれ込んできた。

自分は素早く指示を出す。


「地下2階に魔栗鼠が待機。その下の部屋には悪炎姫さん。敵が全員突入完了したら、出口の前にデルリカさんが待機!」


魔栗鼠はにやりとする。

いつもの人のよさそうな表情ではない。悪魔のような微笑みだった。

「フジキー様…いや魔王様。殲滅作戦ですね。さすが良い作戦です。」


そういうと持ち場に転送していった。


続いて悪炎姫さんも転送して消える。

デルリカさんはモニターを見ながら妖しい笑顔をこぼす。

「魔王様、よい作戦でしてよ。バカは殲滅してこそですわ。」


あ、その笑顔で完全に自分の股間のマグナムがマグナム状態になってしまったっす。

足を組んで誤魔化してみる。


モニター上で敵が全員ダンジョンに入ったのが見えた。

するとデルリカさんは優雅に片足を引きつつスカートをつまんで一礼する。

「では、殺戮ショーをお楽しみくださいませ。」


そのまま1-1の部屋に瞬間移動していった。


しかしみんな瞬間移動ができてすごいな。もしかして瞬間移動できないのは自分だけっすか。

あとで悪炎姫さんに瞬間移動とか習おうかな。


そしてモニターを眺めてみる。


出口を背に現れた、白ロリータ服のデルリカさんは、ピエロみたいな仮面をつけているようだ。

そういえば有名人らしいから顔は隠すか。


出口を背にデルリカ(デル魔女)さんから吹き出しが出た。

『ワタクシは、デル魔女と申します。短いお付き合いとなりましょうがお見知りおきを。本来は階段の守護をいたしておりますが、本日に限り出口の番をいたしますわ。外に出たいお方はワタクシを倒すか幽霊になるしかありません。ふふふ、掛かっていらしてもよろしくてよ。』


おおお、バーサーカー、結婚してくれ。

かっこいい。


慌てて数人がデルリカさんに向かおうとする。

すると司令官っぽい人が怒鳴った。

『やめろ!ここには10人だけ残す。そのご婦人が向かって来たら止めろ。だがそこに止まってくれているなら、部隊が戻ってくるまで見張れ。』


さすが司令官。ナイス判断っす。


そして部隊はモンスターを倒したり、ドロップした宝箱を開けたりしながら進んでいた。

宝箱、ドロップするんだ。初めて知った。


そこには偶然「救済印」が入っていた。

宝物は、荷物運び係と思しき一番レベルが低い兵士に預けられる。


フロアー1が制覇されて、敵はフロアー2に降りて行く。

そこで魔栗鼠が待ち構えていた。


『私の名は魔栗鼠マリスです。みなさんを一生懸命殺しますね。そして魔王様に褒めてもらいます。』

三又の槍を構えて兵士たちに襲い掛かる。


魔栗鼠の槍の一振りで、空間が避けて一気に5人の兵士が切り裂かれた。

騎士たちは盾を構えて密集形態をとる。

だがそんな盾を無視して空を飛び、空中から次々に刺し殺す。


我慢できなくたった騎士が、走り出す。

魔栗鼠は走って進む兵をあえて見逃した。


悪炎姫さんへの気遣いなんだろうと思う。


走って抜けた兵士は20人ほど。

すぐに地下3階の階段を見つけ、恐る恐る降りる。

するとそこには、金髪美女。悪炎姫さんが待ち構えていた。


『マリユカ様の教えを捻じ曲げし異端の国家よ。ここで死をもってその罪を償いなさい。』


悪炎姫さんが剣を一振りしたら、レーザーのような熱線が横薙ぎに兵士を襲った。

その一撃で、兵士は全員体を真っ二つにされて死んだ。

だが一人だけ、装備を残して光となって消える。


どうやら、ドロップした救済印を持っていた兵士のようだ。

っていうか、みんな買えばいいのに。

死んだら終わりなんだから、1金貨なんてケチっちゃダメっすよ。


そのあいだに、2階でかなりの兵士が殺される。

あわてて退却した兵士たちは一階で途方に暮れていた。


突入して1時間程度で半分以上の兵を失った真理由華軍。

いま生きているのは80人程度だろうか。


そりゃ途方もくれるよな。

なんか可哀想になってきたので受付子に電話した。

「ねえ、いま生きている人で希望する人に救済印を売れないかな。」

『それは構いませんよ。今行ってきますね』


敵が休憩している部屋に受付子が瞬間移動した。

『はーい、出張売店です。欲しいものはありますか?お勧めは救済印です。これがあれば生きてお外に出られますがどうしますか?』


すると警戒しながらも隊長らしい男が答える。

『手持ちがないが、ツケはできるか?』

『できませーん。ですが何か買取しましょうか。そのお金で救済印を買うといいと思います。』


隊長はつらそうな顔をして、盾を出した。

『これでいくらになる。』

『査定中…金貨2枚です。』


ゆっくり考える。

『盾を40枚売ろう。それで救済印というのを80個くれ。』


『はい、毎度あり。』

受付子は買った盾をポイポイ空間収納にいれると、ハンコのような救済印を80個渡す


『そのハンコは一回使うと壊れますよ。あと死んで脱出するときには装備はすべて失いますのでご了承を。それとー、救済印はこのダンジョン内でしか有効ではありません。』


そういって受付子は瞬間移動で消えた。

隊長は、全員に救済印を回すと使用させる。


『さて、できたら出口から出よう。出口から出られれば装備を失わないからな。』


そう言って出口まで行くと、デルリカさんを見張るためにおいていた兵士は全滅していた。


『白い魔女、なぜ殺した。』

『暇でしたもので。目の前に虫けらがいれば、暇つぶしに殺して遊ぶのは当然でしてよ。』


隊長の顔がクワっと怒りの表情になる。

『全員突撃!』


その言葉と同時にデルリカさんが凄い速度で動き出した。

まるでボールが狭い部屋を跳ね回るような動きだった。


数秒飛び回ると、また出口の前に立つ。


次の瞬間、兵士全員の足が斬れとんだ。

『ば、ばかな!見えなかった!』


足を失い血みどろで地に転がる兵士たちを満足そうに見下ろすデルリカさん。

『さあ、血を失いながらゆっくりと死になさい。楽しいですわね。ふふふ、虫けらを殺すのは本当に楽しいですわ。ふふふふふ。』


兵士は数分かけて少しずつ全員いなくなった。


自分はゆっくり玉座に身を預ける。

そして思わずつぶやいた。


「うちのダンジョンが怖すぎる件について。」

なにあれ怖い。


ナガミーチさん、あなたの嫁だろ、どうにかして。

高校生には怖すぎるっす。


あんな最終兵器が出口の番人とか、悪いことしたなあと思ってしまったす。

お読みくださりありがとうございます。

フジキー「ナガミーチさん、自分、怖いっす。主に仲間が。」

ナガミーチ「ここで生き残れば、ほかの場所ではモテモテですよ。」

フジキー「そうなんですか?」

ナガミーチ「ここではデリカシーや気遣いが足りないと死にますから。生き残れればほかの場所ではきっとモテますよ。」

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