三話目
俺、谷義弘のこれまでの人生を簡単に紹介しよう。
現在、二三歳の大学生。大学は日吉にある私立大学。前回から分かるように二回留年している。そして一浪もしている。
国立駅にある国立大学を卒業した父と宮崎の実業家の娘であった母の間に生まれた。父は大学卒業後大手銀行に勤め、五十代になって知り合いの料理人と共に飲食店を立ち上げた。現在ではイタリアン三店、肉専門店二店、国産と輸入ワインを扱う専門店のオーナーをしている。
そして一人兄貴がいる。兄貴は平凡だ。母に似た兄貴は昔から大人しく目立つような人では無かった。才能という面では父の遺伝子のすべてを俺が受け継いだ。勉強、運動、社交性などなど、俺の方が兄貴より完全に優れている。兄貴は都立の小中高と進み、大学は目白にある私立大学を卒業し、現在は神奈川の市役所で働いている。ザ・安定。一番の売りは真面目と言って過言でない人だ。
一方俺は小学校は兄と同じだが、中学ではチャラさが売りの都内男子校の進学校に通った。スポーツでは特にバスケが得意だった。中学最高学年時はキャプテンとして、都大会ベスト4に導き、大会ベスト5にも選ばれた。誘われるままに宮崎の強豪校に入った。これが俺の人生の中で一番最初の谷になった。
言うならば、天狗状態だった上に強豪校でも問題なく才能を発揮できたせいで、先輩と監督と衝突してしまった。最終的に、十二月のウィンターカップ直前に思い出せない程些細なことで先輩と衝突し、監督から試合で使わないと宣告されたのを機に無断退学した。その後父親のコネで都内の底辺校に編入して、卒業までダラダラと過ごした。
高校卒業すると、自分と同じ優秀な中学の同級生達が最難関国立や医学部に現役合格しているのを聞いて、焦り八月の終わりから塾に通って、駒場の国立をめざした。
なぜ駒場かというと、都内で父よりも高いステータスの大学がそこしかないからだ。
そして二つ目の谷を経験する。
バスケでの挫折で自暴自棄になり、勉強どころか努力をするという事を忘れた自分がいきなりギアをあげられるはずもなく、塾に通ってもダラダラと過ごすだけで、集中しなかった。その為センターは通ったが二次試験で落ちた。そして現在の大学に仕方なく入学した。他の人からは羨まれる大学だが、本心では駒場の大学以外は意味がないというコンプレックスと、自分がその気になれば何でも達成できるという自信が打ち砕かれてしまったから、入学前には既に通学する気さえ起きていなかった。入学式は母に頼み込まれ出席したが、ガイダンスなどは全て欠席したため前期の単位申請方法さえ知らない状態だった。
やることが無いと人間性格が変わるもので、大学に入っていままで親の金を使いゲームアニメ漫画、アダルトサイトの閲覧、麻雀、ポーカー、競馬、パチンコと堕落の限りを尽くした。
堕落の生活は性格だけでなく見た目にも変化を与え、食事の過剰摂取で筋肉質だった体は肥満体系になり十五キロも太り、髪の毛もぼさぼさ、さわやかと言われていた顔も最近では単なるおっさんになりつつある。
そして、二留。
バイトもしない。
家でごろごろ、声優のラジオを聴きながらツイッターでバスケの批評ばっかりするクズ人間となった。
これが俺のクズな人生だ。
活動報告更新してます。