プロローグ
諸注意
・この物語のジャンルは、異世界チートハーレム、略して『イカとハム』です。イカやハムが嫌いな方はゴーバック。
・ヒロインは合法ロリ(ロリOBAかロリBBA)になりますので、違法ロリが好きな方はゴーバック。
・温くて、ゆるゆるな世界観ですので、堅牢な設定を期待する方はゴーバック。
・全部作者基準なので、世の中の常識は知らん。嫌なら速攻ゴーバック。
・いいんだな? ここまで注意して読むんだ。苦情は受け付けないが、良いんだな? 後悔しそうならゴーバック。
・『地向拳』をggrと幸せになれるかもよ。
世界最高の魔法学園に入学した当日、ゴンタ・オオクボは求婚した。
「精神系の魔法使いに診て貰ったら? 頭がいかれてるわよ」
求婚されたメティが、生クリームのついたフォークを、ゴンタに向けた。勝気そうに釣り合がった目が、ゴンタを射抜いた。
罵倒される心当たりのないゴンタは辺りを見回した。
学園のカフェテリアは、赤く色づいた紅葉や鮮やかな黄色が眩しい銀杏が舞い散っていた。真っ白いテーブルクロスをかけられたテーブルが、等間隔で並んでおり、ゴンタと同じ新入生が思い思いの席に座っていた。
一通り、辺りを見渡したゴンタは、メティに視線を戻した。
「どこにも異常者はいないようだ。君の気のせいじゃないか?」
「あんた、あんたの頭がいかれてる、て言ってるのよ」
メティが席から飛び降り、ゴンタを睨み付けた。大人と子供ほどの身長差があるにもかかわらず、メティの目には怯えや気おくれが見て取れなかった。
(ああ、やっぱりこの女が一番だ。このレベルの女が僕には必要だ)
ゴンタは唇を釣り上げて笑い、メティを見下ろした。
「なに、笑ってるの。馬鹿にしてるのッ!?」
「いや、馬鹿にしてない。ただ、僕の嫁にふさわしいと思ったんだ」
メティが後方に飛び、ゴンタから距離を取った。顔を真っ赤にしたメティの震えは、怒りか、興奮か、それとも感動なのかゴンタには分からなかった。
「それがいかれてる、て言うのよ。いきなり、新入生の交流会に乱入してきて、何考えてるのよ先輩!」
「それは誤解だ。僕も新入生だ。諸事情で入学が四年遅れたんだ」
ゴンタ、十六歳が胸を這った。ゴンタの胸には新入生を示す、『新』印のワッペンが張り付いていた。
同じく『新』印のワッペンを付けたメティ、十二歳の顎が外れた。
周りにいた精通前の同級生たちが騒めいた。胸の成長が始まりかけた同級生たちが、小グループを作り、何やら話し込み始めた。
呆然としてメティだが、すぐに澄ました顔で銀色の髪を掻き上げた。腰まで届く銀糸がたなびく。
「さっきの台詞、もう一度言ってもらえるかしら? アンタが基地外だってすぐ分かるわ」
「新入生云々は流すのか」
ゴンタのつぶやきに、メティが渋面になった。何か叫ぼうと胸を膨らませたメティの機先を制し、ゴンタは再度、求婚(永久雇用依頼)した。
「君の頭悪いぐらい大量にある魔力と、過去三代、宮廷魔法使いの筆頭を務めた優秀な家系に惚れた。
僕のために一人前の魔法使いを産んでくれ。
代わりに、一生、畑仕事をしながら、魔物退治をしなくちゃいけない辺境領地がついてくる」
騒がしかった周囲が静かになり、ゴンタから距離を取った。メティに対し同情の視線が投げられた。
どの視線も、「ないわ。その告白はないわ。家柄やしがらみは大事だけど、建前は大事だし、利益はもっと大事でしょ」と語っていた。
一言一句同じ求婚を受けたメティは、蟀谷を揉み解し、大きく肩をすくめてから、ゴンタを見据えて笑顔で言った。
「一昨日きやがれ、屑野郎」
「残念だが、そう言われて一昨日に来たんだ。他の答を求める」
「嘘言うんじゃないわよ! 時間操作系の魔法は、二百年前に存在を否定されてるわよ。物質を構成する四要素、雷。重さ。強さ。弱さ。全ての構成物は時間に依存し、超越できない。子供でも知ってる道理でしょ」
言外に子供以下の馬鹿と言われたゴンタは胸を張って、反論した。
「しかし、明後日同じやり取りをしたら、事実になる。そして僕は有言実行の男だ」
メティが頭を抱えて、しゃがみ込んだ。
ゴンタはメティの体調を心配し、隣にしゃがみ込んだ。メティの顔を覗きこむと、引き攣った笑みが拝見できた。
「大丈夫か? 気分が悪いなら、治療系の魔法使いに診てもらうとよい」
「誰のせいよッ! 誰の?」
顔を上げて突っ込んだメティだが、すぐに頭を抱えなおして唸った。
とりあえず、母体に肉体的な異常はなさそうなので、ゴンタはホッとした。
母体が不健康だと一人生んで死んでしまう可能性が高い。メティには、最低五人の子供を産んで、老衰するまで元気に動き回って欲しかった。
「ああ、もう、最悪じゃない。なんで、入学直後、馬鹿に絡まれなくちゃいけないわけ。私のサクセスロードが……バイトで盗賊や山賊を粉微塵にする日々が……」
ゴンタは、メティが起き上がりそうにないので、求婚の答を諦め、立ち上がった。今日は、今後メティに近づく同類へ宣戦布告しただけで、じゅうぶんと自分を納得させた。
「どうやら、求婚の答はもらえないようだ。また、夜に君の部屋に行く。その時、答を聞かせてくれ」
メティの全身が震えた。真っ青な面を上げて、引き攣った笑みをゴンタに向けた。
「あ、あんた、夜に部屋って何考えてるの? そんなのできるわけないでしょう?」
「ああ、男子寮と女子寮を監視する衛兵が邪魔だといいたいんだな。安心してくれ。隠密行動は得意だ」
ゴンタは、メティの不安を払拭しようと笑顔を作った。メティが涙目でゴンタから後ずさった。
「では、夜まで求婚の答を考えてくれ。では、また夜に」
ゴンタが踵変えして去ろうとすると、メティが呼び止めた。
「ま、ま、ま、待ちなさい! あんた、私の家は知ってるわよね。だったら、掟も知ってるでしょう? 悪いけど、アンタの嫁にはなれないわ」
ゴンタは懐から、紙の束を取り出した。メティに関して調査で、手にれた情報をまとめた書類だ。ゴンタはメティの実家の項を、音読した。
「ドランゴンスレイヤー家。とっても偉い貴族で、武闘派の筆頭貴族。名が示す通り、竜殺しの家系である。一族の男子は、竜殺しを持って成人とする儀式がある」
メティが我が意を得たりとばかりに、顔を輝かせた。
「それよ! 私と結婚したかったら、最低でも竜を殺してきなさい」
「分かった。明後日までに殺して来よう」
間髪入れず、ゴンタは了承した。思わぬ幸運に、ゴンタは興奮した。
元々、簡単にメティを嫁に出来るとは、考えていなかった。今日は、とっかかりが、自分の存在を示せれば、及第点だった。
まさか、こんな分かりやすい条件を出してくれるとは思ってもみなかった。
了承すると思ってなかったのだろう、呆然とした顔のメティが、慌てた口調で確認してきた。
「あんた、竜が何かを分かって言ってる? 今なら、撤回しても許してあげるわよ」
「無論知っている。
地水火風の四属性を司り、その体は巨大かつ強靭。息を吐くように魔法を使い。頭一つでも千年生きるといわれている。
力はドワーフを超え、寿命はエルフでもかなわない。その知能は人語に尽くしがたく、僕たちのもつ言語も技術も全て竜が気まぐれで教えてくれものだ。
世界の九割を支配しているとさえ言われている化け物だな」
真っ赤な顔になったメティが、地団駄を踏んで、吠えた。
「うちだって、ドラゴンスレイヤーと呼ばれているけど、一人で竜を殺せた人なんていない。皆、歴戦を潜り抜けた仲間と綿密な作戦を立てて、ようやく、勝ちを拾っているのよ」
ゴンタはメティを振り返り、心の底から沸き立つ喜びに身を任せて嗤った。
「だったら、僕が一人で竜殺しをなせれば、僕の求婚を断れないよね? 正真正銘の竜殺しより、ドラゴンスレイヤーの夫にふさわしい男はいない」
「できたらね。せっかく、心配してやったのに、それでも自殺しに行くなら、ご勝手に!」
ベー、と舌を出したメティが、ゴンタから背を向けて歩き出し出した。
荒々しい足音を聞きながら、ゴンタは呟いた。
「言質はとったぞ」
……どうしてこうなった?