表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

落下星

作者: エルル












何か壁にぶつかると、後戻りする。




何回もぶつかると、諦めてしまう。




迷路のその先。わざわざここを通る必要はないと。




そのたびに一つ、何かが消える。




泡のように儚く、そしていとも易く、消える。







迷路には少年がいた。




少年は迷路の曲がり角を幾度と無く曲がった。




道を引き返すことも、しばしばだった。




「いい加減嫌になってくる、」




少年は苛立ちを顕わに、頭を掻いた。




この迷路を抜ける必要の意味が分からなくなってくる。




もちろん、目的があってこの迷路に飛び込んだ。




僕なら抜けられると信じて。




行き止まりが多くても、僕は諦めないと誓って。




それが今、少年の心から消えようとしていた。




実は、抜けることは難しくても、戻ることは簡単なのである。




迷路の壁を思いっきり蹴飛ばせば、全ての壁が壊れ、戻れるのだ。




今までの苦労は何だったのだろうと思うほどに易く、戻れはするのだ。




――振り出しは現れても、終着点は現れはしない。




ここは、そういう仕組みの迷路。




それでも、きっと次こそ大丈夫だ、と少年は角を曲がる。




――行き止まり。




ちっ、と舌打ちする。




小さく希望を持ったあとの壁ほど、人を堕落させるものはない。




少年は思う。




もっと簡単な迷路だったら、僕も抜け出せるのに。




迷路なんて通る必要のないところを行けば、こんなに不愉快じゃないのに。




こんなにきつい思いをしてまで、迷路のその先に辿り着く必要はない。




はぁ、と息が吐かれる。




少年の目は、すっかり灰色になってしまった。




「別に僕じゃなくとも、」




きっと誰かは、この迷路の先に行くだろう。




この先に行くのは自分じゃない。




天を仰げば、空は暗くなっており、星と月が少年を見ていた。




希望の星とも呼ばれなどする星が、瞬いていた。




少年は、あーあと思いながら星を見つめ、やがて視線を目前の壁に移す。




次の瞬間、




少年は壁を蹴り倒した。




脱落者の道が一本、そこに現れた。







別の迷路で、また別の少年が、同じ時、空を見ていた。




疲れてはいたが、負けん気の強そうなその目で、空を。




すると一つの星が短く尾を引いて、流れ落ち、




消えた。




今日もまた一つ、消えたなと、少年は呟いて、明日のために寝るのだった。










身近にあったものを題材に。

要は、この迷路は何を具象化したものか、ということが

分かって頂ければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ