はじまり⑥
ボートから落ちた3人を引っ張り上げて縛り上げて、結構な量の荷物+動けない男3人を乗せたボートを私一人が漕ぐ。
…かなりの重労働で時間がかかりましたとも、はい。
しかも「私が荷物を取り返してくる」と宣言したからか船着き場からは誰も支援がこない。
慣れてるけどさ、慣れてるけども…。
女の子が一人で窃盗犯捕まえてるんだから助けなさいよ!
「他の村の子供が遊びにきてね、違う村の子供同士で喧嘩になった時も誰も支援にこないの。それどころか私一人に対して相手の男子3人よ?昔っから私の扱いって悪いわぁ…」
「あはは…。普通なら女の子はその喧嘩に参加しないんじゃないかな?」
私の悲しい呟きにルオーネは愛想笑いしか返してくれなかった。
せっかく友達になれたというのに友達がいのない酷い子だ。
そこは私に同情するところなのに。
「まだ荷物の検査終わらないのー?」
「もう少し待ってください姐さん!」
「誰が姐さんよ!」
結局、私に突っかかってきた商人はグルだった。というか主犯だった。
商人たちは4人のグループで行動していたが、そのうちの一人がコソ泥雇って荷物を盗み儲けを独り占めしようとしたなんていうありきたりで簡単な理由。
事件は解決したがどさくさで盗られた物や無くなった物がないか確認で時間がかかっている。
正午の時間はすぎ、昼ご飯も済ませたがこの時間から船に乗ると、リベリムにつく頃には日を跨ぎそうだ。
…ちなみに私の荷物は盗まれてなかった。
多分、高価な物は持ってないと思われてボートに積む優先順位がかなり下の方だったんだね。
あと船着き場にいた人達の一部から何故か姐さん呼ばわりされるのは何とかならないのだろうか。
「それにしてもピスカは魔法の国の出身だったんだぁ…。魔法、初めて見たし魔法の国の旅人って凄く珍しいね」
「まぁ…珍しいどころか親には頭がおかしいんじゃないかと言われたくらいだったけどね」
ちなみに魔法の使用は国を出る時も特に制限されなかった。
なんでも他所の国の連中には魔法を使う素質がないし、技術を売り出す売国奴など我が国にはいないのだとか。
とことん身内には甘い思考して他所には厳しい魔法の国だね。
でもそれが普通で、私みたいにフレンドリーなのは見たことがないらしい。
「ピスカは何か旅の目的とかあるの?」
「冒険家なんだから自分の見たことのない物を見て新鮮感を味わい続けたいだけ」
「うわ、本当に生粋の冒険家なんだ」
「私をなんだと思ってるのよぉ!?」
ルオーネは冗談、冗談と笑ってくれてるが他所の国の人達は基本的に魔法の国のヤツ等が何しに来たって不信に思うのが当たり前らしい
この船着き場にも友達のルオーネ。姐さん呼ばわりする一部の船乗りと商人。不信がって私から凄く離れる家族やその他みたいに完全に勢力分けができてしまっている。
人間って見た目じゃ変わらないように見えるけど、国が違うってだけでここまであからさまに避けられたりするんだねぇ…。
「お待たせしてすんませんピスカの姐さん、ルオーネ姐さん!みなさんに乗っていただければすぐにでも出航できます!」
「私まで姐さんになっちゃった!?」
「私、ルオーネ姐さんには適いません。姐さんは凄い人です」
「私を一方的に持ち上げないで!?」
ルオーネにもこの何とも言えない気持ちを味わってもらった。
普通の女の子としてはこんな風に敬われても複雑だよねぇ。普通の女の子としては!
まぁそんなこんなで私の冒険1日目は終わりを迎えていく。
まだ日は沈む気配もないが、この後は船に乗ってルオーネと喋りしながら晩御飯とったり仮眠するくらいしかないだろう。
沢山の新鮮と思いを胸に加えながら、私は旅を続ける。
ここで1話目の『はじまり』は終わりです。
この小説は元々、前に携帯の小説サイトで女性視点、女性を動かす練習として書き始めた物です。
けど…練習で書いただけだったので区切りがついたらあっさり完全放置。
他の小説もスランプ云々で書くことができませんでしたが、あまりにも酷い扱いをしてしまったピスカちゃんです。
なので改めて書いてあげたいと思ったので書き直し、投稿させてもらいました。
しかし書き直すにあたって敢えて原作ともいえるサイトに載せた方の小説を全く見ずに書いております。
なのでピスカの友人を見ずに思い出せたのは…本当に忘れかけた友人を思い出す事ができたみたいで嬉しかったです。
ここからの話しも、もう少しは元の小説と同じような流れになるでしょうがキャラや細かい所が変わっていくと思います。
…ま、元の小説を読んでいる方がそうそういるとは思えないので関係ないですかね。
ともあれ、読んでくださりありがとうございました!